「競合をベンチマークして改善案を出して」と上司に言われたが、そもそもどういう意味だろうか?
自社の客観的な立ち位置がわからず、具体的な目標設定に悩んでいませんか?
ベンチマークとは、一言でいえば「目標達成のためのものさし」です。正しく活用すれば、データに基づいた的確な意思決定ができるようになります。
本記事では、ベンチマークの基本的な意味から、マーケティングや経営企画ですぐに使える実践5ステップ、失敗しないための注意点まで、初心者の方にも分かりやすく徹底解説します。この記事を読めば、自信を持ってベンチマークを使いこなし、日々の業務課題を解決するヒントが得られます。
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目次
ベンチマークとは

ベンチマーク(benchmark)とは、基準や指標を意味する英単語です。各地点の高さを測る水準測量においては、水準点がベンチマークと呼ばれます。
そこから派生して、金融分野の資産運用や株式投資の指標銘柄をはじめとして、ビジネス分野やIT分野でも基準や水準を表す言葉として活用されています。
ビジネス分野におけるベンチマーク
ビジネス分野におけるベンチマークとは、競合他社の優良戦略や指標を指し、自社の経営や事業を改善するために活用します。
また、競合他社と比較して、自社の経営活動やマーケティングの改善自体をベンチマークやベンチマーキングと呼ぶこともあります。
たとえば、競合他社のサービスで導入されている新しいプラン体系や顧客サポートの改善例を調査し、自社の課題改善策として取り入れるといった流れです。
自社と事業内容・企業規模が近い他社や市場で結果を出している企業をベンチマークとして設定・分析することで、自社の課題発見と改善が促進され、よりよい成果を生み出せます。
IT分野におけるベンチマーク
IT分野におけるベンチマークとは、パソコンやスマートフォンに搭載されているICチップやハードディスク、ソフトウェアなどの性能を評価する際の指標です。
テストプログラムやWeb上のツールなどを使ってベンチマークを測定することをベンチマークテストと呼び、その結果のことをベンチマークスコアと呼びます。
消費者としてより性能の高いIT機器やソフトウェアを導入する際はもちろん、ハードウェアやソフトウェアの提供者もベンチマークテストで動作の不備や性能・品質を確認します。
ベンチマークとKPIの違い

ベンチマークは指標という意味でも使われますが、ビジネス分野でよく使われるKPI(Key Performance Indicator)とは意味が異なります。
ベンチマークは、自社の経営戦略や事業を改善するために参考にすべき競合他社の取り組みや成功要因を指標として捉えます。一方、KPIは日本語で「重要業績評価指標」と呼ばれ、企業目標や事業目標を達成するための中間指標として用いられるのです。
ベンチマークとKPIは意味や役割が異なる指標ですが、どちらも経営上重要であることには変わりありません。
ビジネス分野における4つのベンチマーク

ビジネス分野におけるベンチマークは、大きく4つに分けられます。
- 競合ベンチマーク
- 機能ベンチマーク
- 内部ベンチマーク
- ローカルベンチマーク
状況や実態に応じて適切に使い分けられるように、各用語の意味について理解を深めましょう。
競合ベンチマーク
競合ベンチマークとは、自社の事業における課題に対して、競合他社の成功要因との比較から改善のヒントを探る手法です。このとき、参考にする成功事例や要因をベストプラクティスと呼びます。
この概念は、1989年に出版されたロバート・C・キャンプ博士の著書『ベンチマーキング』で、はじめて紹介されました。
ビジネス分野でベンチマークという言葉を用いるときは、競合ベンチマークを指しているケースが多い傾向にあります。
機能ベンチマーク
機能ベンチマークとは、自社とは異なる業界の企業を参考に、自社の課題改善のヒントを探る手法です。
競合ベンチマークは、同業種や企業規模が近い他社の事例を参考にしますが、機能ベンチマークは業種を問わないため、幅広い業種や規模の企業が対象となります。
BtoB企業の場合はとくに、異業種でも営業やマーケティングなど共通の取り組みを参考にできることから、競合ベンチマークでは発見できなかった改善手法に巡り会える可能性があります。
内部ベンチマーク
内部ベンチマークとは、自社の他部門や自社グループの別チームの取り組みや事例を参考にして、自分のチームや部門の事業改善を図る手法です。
競合ベンチマークと機能ベンチマークが他社を対象としているのに対し、内部ベンチマークは自社を対象としている点が異なります。
たとえば、営業部門において顧客からのリクエストに迅速に対応できていないことを課題とした場合、カスタマーサポートの業務プロセスを参考にスピード向上を図ることが可能です。
内部ベンチマークによる業務改善が推進されると、企業全体の業務効率や生産性の向上が期待できます。
ローカルベンチマーク
ローカルベンチマークとは、経済産業省が提供する企業の健康診断ツールで、競合・機能・内部ベンチマークとは大きく意味が異なる用語です。
ローカルベンチマークは、地域企業の付加価値向上を図るために作成されました。企業が成長するためのポイントを見つけるために、地域経済の分析と企業経営の見える化を行ないます。
経済産業省が提供するフォーマットに入力するだけで、自社の現状把握と差別化ポイントを可視化できるので、活用してみてください。
ビジネス分野のベンチマーク調査で得られるメリット

ビジネス分野でベンチマークを活用すると、大きく2つのメリットを得られます。
- 成功事例や施策を発見できる
- 自社の課題を明確化できる
ベンチマークのメリットを理解しておくと、ベンチマーク調査における目的の明確化もスムーズに進められるため、参考にしてみてください。
成功事例や施策を発見できる
ベンチマーク調査のなかで、競合他社や異業種の企業の取り組みを洗い出すことで、成功事例や施策を発見できます。
すでに成果を出している事例や施策を取り入れることで、イチから改善策を検討する手間と時間を省くことが可能です。その結果、自社の課題改善におけるPDCAを回す速度が向上したり、課題解消が容易になったりと、相乗効果を期待できます。
自社の課題を明確化できる
他社と比較するなかで、これまで気づかなかった自社の課題を発見することがあります。ベンチマーク調査実施前と比べて、自社の課題や弱みが明確化され、具体的な改善策を考えやすくなるはずです。
また、弱みだけではなく強みが明らかになることもあります。他社に引けを取らない強みが見つかれば、それを起点に新たな戦略を立てることも可能です。
ベンチマーク調査・設定の流れ

ここでは、一般的な競合ベンチマーク調査・設定の流れを以下に沿って解説します。
- 目的の明確化
- 自社の現状分析
- ベンチマークとなる競合他社の選定
- ベンチマークとなる競合他社の分析
- ギャップの分析と課題の特定
- 改善アクションプランの策定と目標設定
- 効果測定の実施
ベンチマーク調査・設定のプロセスで実施するさまざまな分析や効果測定は、ツールの活用で効率化できます。迅速に自社の事業改善を進めたい場合は、適切なツールを取り入れたうえでベンチマーク調査・設定を実施しましょう。
1.目的の明確化
まずは、ベンチマーク調査の目的を明確化します。目的を明確化しておくと、必要な調査内容の選定や最適な分析手法の選択につながるため、効果の高い改善策の発見が期待できます。
以下は、サブスクリプション型SaaSのSFAを提供するBtoB企業における、ベンチマーク調査の目的と調査内容の例です。
調査目的 | 調査内容 |
---|---|
サービスの改善 | サービスの機能・UI/UX・活用技術など |
顧客満足度の向上 | カスタマーサポート・アフターサービスなど |
競合優位性の獲得 | 市場ポジショニングや競合シェアなど |
なお、調査内容は一例であるため、目的に沿って必要な項目を洗い出す必要があります。
2.自社の現状分析
ベンチマーク調査で競合他社と比較する前に、自社の強み・弱みや業界内の立ち位置を明らかにする現状分析を行ないます。これにより、課題が具体化され、競合他社との比較時に改善点に注目できます。
以下は、自社の現状分析に活用できるフレームワークです。
内部環境分析の手法を使って自社の現状が明らかになると、比較すべき競合他社も選びやすくなります。
3.ベンチマークとなる競合他社の選定
競合他社はやみくもに選ぶのではなく、目的に合わせて最適な対象を選びましょう。
対象は、事業領域や顧客層が重なる直接競合と、業界でトップシェアを誇る業界リーダーを選ぶのが一般的です。特に業界リーダーは、目標とすべき姿として参考になります。
また、業界は違っても、優れた業務プロセスやマーケティング手法を持つ企業があれば、革新的なアイデアのヒントが見つかる可能性があるため、比較対象として選定します。
4.ベンチマークとなる競合他社の分析
ベンチマークとなる競合他社を選定したら、以下を活用して必要な情報を収集します。
- 企業のホームページ
- 調査機関による公開情報
- 各種出版物
- ヒアリング調査
- アンケート調査
ベンチマーク調査は、競合他社の売上高や経常利益、店舗数などの企業の内部情報である数値データが必要です。
調査範囲は、企業の内部情報からはじまり、ベンチマーク企業のステークホルダーがもつ情報、ユーザーや消費者がもつ情報などまであります。ユーザーや消費者を対象とした生活調査まで範囲を広げると、コストが増えることを押さえておきましょう。
情報を集めたら、競合他社の成功要因や自社にはない要素を抽出するために、各種フレームワークを活用した競合分析を行ないます。
このとき、活用できる分析手法は以下のとおりです。
競合調査の結果をもとに、自社の課題を解決する戦略・戦術に落とし込みましょう。
5.ギャップの分析と課題の特定
データが集まったら、自社の数値と比較して、ギャップを分析します。このステップで重要なのは、「単なる数値の比較で終わらない」ことです。
まずはグラフなどを用いて、どの項目で、どれくらいの差があるのか、客観的に把握します。そして「なぜ、この差が生まれたのか?」という背景を探ります。
たとえば、Webサイトの購入率に差がある場合、要因には「製品価格」「サイトの使いやすさ」「プロモーション活動」「ブランド認知度」など、さまざまな可能性が考えられるでしょう。
このように、複数の視点から要因を仮説立てすることが大切です。
6.改善アクションプランの策定と目標設定
分析によって課題が特定できたら、それを解決するための具体的な行動計画に落とし込みます。
その際、「誰が」「いつまでに」「何を」「どのように」実施するのかを明確にするアクションプランの策定と、分析結果を基に、「3ヶ月後までに購入率を〇%改善する」といった、具体的で測定可能な目標(KPI)を設定します。
この目標を達成するために行動し、定期的に進捗を確認しながらPDCAサイクルを回していくことが、ベンチマーク活用のゴールです。
リアルタイムにKPIの進捗を確認するためには、企業のデータを収集・分析するBIツールや顧客情報を集約するCRMの活用がおすすめです。
KPIの設計に活用できるテンプレートを無料で配布しておりますので、適切なKPIを設計したい方は、ぜひご活用ください。
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7.効果測定の実施
調査・改善の効果を測定し、自社にとっての成功要因となるかどうかを観測します。
KPIの達成度合いが想定より低い場合は、ベンチマークやKPIの設定にズレがあると考えられるため、変更が必要なことがあります。
【職種別】ベンチマークの指標例
ベンチマークは、職種によってもニュアンスや指標が異なります。ここでは、以下3つの職種の具体例を解説します。
- 経営・事業企画
- マーケティング
- IT・システム
順番に見ていきましょう。
経営・事業企画の指標
経営や事業企画では、自社の経営状態の健全性や市場での競争力を客観的に評価するためにベンチマークが用いられます。
競合他社や業界平均と比較することで、全社的な課題や目指すべき方向性を明らかにします。
経営事業企画におけるベンチマークの指標一例は以下の通りです。
- 売上高成長率
- 営業利益率
- 従業員一人当たりの生産性
- 自己資本利益率(ROE)
マーケティングにおけるベンチマーク
マーケティングでは、Webサイトのパフォーマンスや広告キャンペーンの効果などを客観的に評価し、改善の方向性を見つけるためにベンチマークが不可欠です。
主な指標の例は以下の通りです。
- Webサイトのコンバージョン率(CVR)
- 顧客獲得単価(CPA)
- 広告のクリック率(CTR)
- SNS投稿のエンゲージメント率
IT・システムの指標
IT・システムでは、主にコンピューターのハードウェアやソフトウェア、ネットワークなどの性能を客観的な数値で測定・評価します。
専用のツールを使って性能を測る「ベンチマークテスト」という言葉がよく使われます。
IT・システムの主な指標の例は以下の通りです。
- サーバーの処理性能
- システムの応答速度
- システムの稼働率
- データベースの読み書き速度
ビジネス分野でベンチマークを活用する際の注意点

ビジネス分野でベンチマークを活用する際は、次の3つに注意が必要です。
- ベンチマークの選定基準を明確化する
- データの偏重に注意する
- 適切な調査方法を選択する
ベンチマークを適切に扱うことで、より効果の高い改善策の実行につながるはずです。
ベンチマークの選定基準を明確化する
ベンチマークを選定する際は、調査対象の選定基準を明確化しておくことが大切です。
たとえば、自社が50人未満の小規模な企業であるのにもかかわらず、選定先のベンチマーク企業が1,000人超えの大企業となれば、対象の成功要因を取り入れるリソースがないといったことが起こります。
以下のような選定基準を明確化し、自社と近いベンチマーク企業を選定する必要があります。
- 企業規模・事業規模
- 展開エリア
- サービスや商品のジャンル
- 顧客への提供価値
有益な調査結果を得るためにも、調査前に選定基準を明確化しておきましょう。
データの偏重に注意する
ベンチマーク調査を行なう際は、データが偏らないように注意する必要があります。
たとえば、自社の現状分析のためにユーザーや取引先に向けてアンケート調査やヒアリング調査を実施しても、自社への関心が強いユーザーの声ばかりでは、データが偏ります。
ベンチマーク調査における現状分析では、自社の課題や弱みを明らかにする必要があるため、自社に対して批判的なユーザー・取引先からの情報収集が重要です。
そのため、アンケート調査やヒアリング調査を行なう際は、対象が偏らないように注意しましょう。
適切な調査方法を選択する
ベンチマーク調査では、必要な情報を収集するために以下のようにさまざまな手法を用います。
- 企業のホームページ
- 調査機関による公開情報
- 各種出版物
- ヒアリング調査
- アンケート調査
収集したい情報にあわせて適切な手法を選択することが大切です。そのためには、ベンチマーク調査で収集したい情報を洗い出す必要があります。
ただし、情報が多すぎるまたは少なすぎると、有益な結果を得られないおそれがあるため、あらかじめ調査範囲や情報量の見通しをもっておくとよいでしょう。
ベンチマーク分析を効率化するツール【AI搭載】

『Tableau』は、データの分析が可能なBIツールです。分析したデータの共有やビジュアライズが容易にできるだけではなく、AIのサポートによりデータからのインサイトを高いレベルで得られます。
ベンチマーク調査における現状分析では、顧客データをもとに顧客分析を行ないます。『Tableau』なら、CRMに蓄積された情報やCSV化されたデータを適切に処理したうえで、分析を実施することが可能です。
また、ベンチマーク調査を通じて改善戦略・戦術を講じたあとは、KPIを設定してリアルタイムに観測できます。効果測定を効率化することで、事業改善のPDCAを加速させられるでしょう。
『Tableau』の詳しい機能は、デモ動画でご確認いただけます。
What is Tableau
本動画では、Salesforceが提供するTableauが、なぜ市場から愛され多くの人が分析ツールとして利用しているのか、5分でTableauが何かをご紹介します。

まとめ:ベンチマーク調査を実施して事業を改善しよう

自社と類似した企業をベンチマークに設定し、成功要因を分析・参考にして改善戦略・戦術を実践することで、自社の経営や事業を改善できます。
ただし、ベンチマーク調査を実施する際は、ベンチマークの選定基準や目的を明確化するなど、入念な準備が必要です。また、定量調査から定性調査など、さまざまな分析を行なう必要があるため、日頃から活用できるデータを収集・管理する体制を整えておく必要があります。
『Tableau』は、各種システムやCSVからデータを取り込み、分析・可視化するBIツールです。各種データ分析を効率化できるため、経営や事業改善までのプロセスを短縮できます。
ベンチマーク調査だけではなく、競合調査やKPIの観測にも活用できますので、ぜひご利用ください。
以下のレポートでは、ベンチマーク調査の実施後に自社の経営・事業の改善策を立案する際の重要なポイントを紹介しているので、あわせてご覧ください。
スペシャルレポート:中堅・中小企業のトレンド
このレポートは、今日の中堅・中小企業(SMB)にとって戦略的に重要な3つのトピックに焦点を当てています。
