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【NTTドコモ】AIで人と組織の能力を引き出す。5万人それぞれの成長を促す人的資本経営

NTTドコモグループは現在、通信の枠を超えてエンターテインメント、金融、スポーツビジネスといった分野にも進出、事業の多角化を進めています。

Key Takeaways

This summary was created with AI and reviewed by an editor.

NTTドコモグループは現在、通信の枠を超えてエンターテインメント、金融、スポーツビジネスといった分野にも進出、事業の多角化を進めています。

その基盤である人材への投資に余念がなく、グループ全体で約5万人におよぶ社員一人ひとりのスキルを可視化し、それぞれのキャリアアップを支援しています。そこで欠かせないのがテクノロジーの活用。ドコモ本社の場合、約8000人を総務人事部のわずか150人ほどでフォローしています。

こうした人的資本経営の取り組みを、人事戦略の司令塔である本昌子・執行役員総務人事部長と、テクノロジー実装を担う郡康之・総務人事部人事戦略担当部長に聞きました。

「人の成長」と「事業の成長」を循環させる

──まず、NTTドコモグループにおける人的資本経営の基本的な考え方を教えてください。

:「サステナブル・グロース・サイクル」という概念を中心に据えています。人材の成長を促すと、結果として顧客や社会へ新たな価値を提供できる。その価値が受け入れられれば事業の成長につながる。

さらに、その先にはまた人材成長への投資が可能になる。この好循環を回し続けることが、人的資本経営の基本方針です。

具体的な取り組みは、「3本柱」の推進です。

1本目は「事業の挑戦(動的人材マネジメントの実現)」。人材戦略と事業戦略が連動しない限りは、なかなかうまく成長につながりませんので、「数合わせ」ではなく、戦略の中に人材が持っているスキルを埋め込んでいくことが大切です。動的な人材ポートフォリオをしっかり作り、それを事業戦略の変化とともに変えていきます。

2本目は「個人の挑戦(個人の挑戦と成長)」。事業が多角化しているからこそ、社員が自分の思いだけでなく、「会社として何に力を入れていかなければいけないか」を理解したうえで成長を目指せるように支援を行っています。

3本目は事業を支える土台となる「風土・文化(”個”をいかす風土・文化の醸成)」。「オープン・アンド・フラット」を徹底し、担当者だろうが役員だろうが自由に意見が言える状態を目指しています。

これら会社としての取り組みに加え、一人ひとりが行動原則に従って日々の業務にあたることで、成長が実現できると考えています。

3割近くの社員がダブルワーク・社外OJTで「越境」

──「個人の挑戦」を支える具体的な取り組みについて教えてください。

自律的なキャリア開発の流れには「目標を定める」、「自分を磨く」、「キャリアに挑戦する」の3ステップがあると考えています。

「挑戦」の代表的な仕組みが、「20%ルール」と呼ぶダブルワーク制度です。所定労働時間の最大20%を、他部署や社外企業の仕事に充てることができます。

社外企業の場合、重宝されることが多いので本人のモチベーションが大きく高まりますし、ドコモの中にいるだけでは感じられない、世の中の動きや企業の課題が肌でわかるようになる。本人の価値向上だけでなく、ひいてはドコモの競争力向上にもつながります。

さらに1年間の社外OJT(出向)制度もあり、2016年度からこれまでに65人が広告代理店、コンサル会社、自治体など異業種企業で経験を積みました。人気のある制度で、面談で選抜が必要なほどです。

──所属組織から「優秀な社員を出したくない」という抵抗はなかったのですか。

:始めた頃は「うちの仕事もままならないのに」「残業もしているのに」と、すごい反発がありましたよ。それでも制度を推し進められたのは、確信があったからです。

10年ほど前、まだダイバーシティ推進の理解が広まっていなかった頃のこと。私がダイバーシティ推進室長として、会社の経営課題を社員で突き詰めていくワーキンググループを複数立ち上げました。

この時に集まってくれたメンバーは、本気で「課題を解決したい」という思いが強い人たちばかりで、ものすごいパワーを出してくれた。しかも、自分の部署の仕事にも全力で取り組んでいる。今の立場になり、「同じようなことが全社でもできたなら」という思いから制度化に向けて動き始めました。

:ダブルワークで外に出ることで、目線が上がり、本業のやり方も変わってきます。調べてみると、ダブルワークに取り組んでいる人の評価は高い。そうした実績が積み上がってきたので、事業部のマネージャーも「短期的には痛いけど、いいパフォーマンスを出してくれるようになる」と理解し、送り出すことに前向きになってきました。

現在は毎年800〜1000人規模が参加。ダブルワークに加え、NTTグループ内の転籍経験者などを含む越境経験社員(※)の比率は2024年度24.7%で、2027年度に30%を目指しています。

※越境経験社員:キャリア採用、NTTグループ内転籍、国内出向・OJT、海外出向・OJT、国内ダブルワーク、社外ダブルワーク、兼業の総数

:ダブルワークが浸透してきたので、2024年度からはチャレンジすること自体も評価する「プラスチャレンジ」という制度も始めました。目標設定において、所属部署の目標とは別に、自分がやりたいことを自由に書ける枠を設けたのです。

これには非常に効果があって、ダブルワーク制度の外でも、自ら他部署の仕事に関わる動きが自然発生。たとえば、ドコモではネットワーク品質の改善に取り組んでいますが、担当でない部署の社員が「自分も協力したい」という強い思いで品質改善に貢献するプロジェクトを立ち上げました。

:施策初年度の2024年度、45%の社員がプラスチャレンジ目標を設定。2027年度には100%を目指しています。

:固定回線が主力のNTTから分離独立した移動通信の会社なので、ベンチャー気質は元々あった。ただ、事業が多角化して細分化されると、自分の仕事が小さくなっていく感覚が生まれてくる。その失われかけた「会社全体のテーマに対して、自分ごととして動く」という意識を取り戻すための仕組みが、10年にわたる積み重ねによって機能するようになってきました。

18分野・130職種・400スキルを定義したスキルベース組織への転換

──1本目の柱「事業の挑戦」では、スキルベース組織への転換を図りました。詳しく聞かせてください。

:専門性を高めて会社の競争力を上げようという構想は以前からありましたが、ずっと壁になっていたのが、誰がどのスキルを持っているのかわからないこと。まずスキルを可視化することが出発点でした。

:これはかなり大変な作業でした。ドコモの中にどういう職種や仕事があり、そこにどんなスキルが紐づくのか。そしてその仕事に、どのスキルを持った社員が従事しているのかを整理していきました。

NTTグループ共通の18専門分野をベースに、ドコモグループとして約130種の職種を定義し、生成AIを活用してそれぞれの職種に必要な約400種のスキルを紐づけたdスキル(スキルタクソノミー)を策定しました。

社員には、これに対応するスキルチェックを年に1回受けてもらい、各人のスキルとレベルを可視化したスキルマップを作成。生成AIで継続的にブラッシュアップできる仕組みにしていますが、そもそもAIがなければ実現できていなかったかもしれませんね。

こうして積み上げたスキルデータを実際に人材配置や育成に活用するためのシステムが、「Job-Voyage」です。会社として用意した多様な機会の中から、自分に合ったものを見つけやすいように支援します。

Job-Voyageは、「キャリアオーナーシップ経営AWARD2025 人事/HRの変革部門 最優秀賞」、「HRテクノロジー大賞 イノベーション賞」など複数の外部表彰を受けています。定量的な効果よりも先に、アルゴリズムや発想・思想・コンセプト面を評価していただいている印象です。

機能は大きく「配置」「育成」の2つ。「配置」では、やりたいことをテキストで入力すると、スキルに合ったおすすめのポストが表示されます。そこにダブルワークの募集中情報やJob Board(公募人事制度)への応募リンクもついているので、そのままアクションが取れます。

──スキルやキャリアのデータを社員自身が蓄積していくためには、使ってもらえるかどうかがカギだと思います。

:一番悩んでいるところです。活用の好循環を回すために、自動的に取れる情報をベースにまず検索できる状態にして、「人事がこの情報を使って配置を決めている」というインセンティブの事実を作りました。このことが社員に伝わると、自発的に入力率が上がっていくと考えています。

個人が自分の状況を把握できる「Career Growth Hub」というダッシュボードも昨年10月にリリース。自分がどのスキルをどのレベルで持っているか、組織の中での相対的な位置はどのくらいか、去年と比べてどう成長したかがわかる仕組みです。

たとえば、「8割の人はこの研修を受けてスキルアップしているのに自分は受けていなかった」という数字が見えるので、ゲーム感覚でスキルアップへの意欲が自然と高まります。

:今は「組織に人をはめていく」使い方が中心ですが、スキルデータが蓄積されればプロジェクトの立ち上げ時にバイネームで声をかけてチームを組めるようになります。今後、期間が区切られるプロジェクト型の仕事が増えると、スキルベースに変えた成果が明確になるでしょう。

前田社長のAIアバターがキャリア相談に応じる

──Job-Voyageの「育成」機能についても紹介していただけますか。

:AIエージェントによるキャリア開発支援(育成レコメンド)です。前田社長のアバターが社員と対話。「今までどんなプロジェクトを経験してきましたか」「何が一番良かったですか」「どこで充実感・達成感を得ましたか」といった問いかけを通じて、自分のスキルを可視化しながらキャリアゴールを引き出します。

最終的に「現状とのギャップ」と「次のアクション」として、具体的な研修や、社内にいるキャリアコンサルタントを紹介してくれます。


:直接社長と話したことがない社員が大多数なので、アバターが相手でも適度な緊張感があって、ちゃんと話してみようという気持ちになるようです(笑)。

──システムの内部では、どのような仕組みが動いているのですか。

郡:「マルチAIエージェント」と呼ばれる構成を採用しています。全体を管理する「オーケストレーション(管理型)エージェント」と、会話の進行フェーズに応じて役割が切り替わる「スキル可視化」「ゴール設定」「アクション提案」の3つの役割特化型エージェント、合計4つのAIエージェントが協調して動いています。

役割特化型エージェントはそれぞれ対話の状態を記憶しており、あるフェーズの会話が十分に深まったと判断したらオーケストレーターに報告し、次のフェーズへ自然に移行します。話し込むと20〜30分かかることもあるほど、深い対話ができる仕組みです。

音声はNTT人間情報研究所が開発したクロスリンガル音声合成技術によって、社長本人に近い声を生成しています。将来的に多言語に展開すれば、海外の社員も社長と母国語で話せるようになるかもしれません。

──Job-Voyageの開発ではどんなことに気をつけましたか。

:私はどうしても利用者目線を強く意識し過ぎてしまう傾向があり、現行の人事運用を踏まえた方向で仕様を検討しがちです。それに対して本さんからタイミングよく会社・経営目線でのアドバイスをいただき、本来目指すべき方向に軌道修正してくれました。このアドバイスが結果的にとても重要だったと考えています。


スキルベースの発掘というのは、これまで人事担当者が認識していなかった人を発見すること。知っている人の中から選ぶという旧来のやり方をシステムに実装してしまうと、せっかくの発掘機能が無意味になってしまいます。使ってもらえるための機能実装は必要ですが、適材適所を実現するというビジョンの本筋を曲げないことが大事です。

全部入れましょう。同じ場所に3つ並べると弱くなるので、読者の気持ちが動くタイミングで“点在”させるのが最適です。配置の考え方と、そのまま貼れる完成形を出します。

💡 AIエージェントが、人事の現場を支える時代へ
AIエージェントが支える人事サポートとは

挑戦を支援するため、人事も挑戦を続けていく

──AIエージェントの普及によって、人事の仕事そのものはどう変わると考えていますか。

:業務プロセスがガラッと変わることを想定しながら採用計画を立てなければいけない時代になっています。今までは定年退職者数を前提に人数を合わせるような発想でしたが、AIでどれくらい業務を効率化できるのかを考えながら、人数と「どういう人を採るか」という質の両方を見ていかなければいけない。

さらにいうと、採用もスキルベースで見ていく必要があります。今は「どういうことを学んできたか」という観点が中心ですが、例えば大学と連携して求める人を育ててもらうようなところまで踏み込んでいかなければ、本当に必要なスキルを持った人材を得られないように感じています。

──そのスキル、つまりテクノロジーが進化しても大切にすべき人間ならではの能力とは何だとお考えですか。

相手の感情を読み取りながらどう対応するかという、行動心理学のような能力。そして創造力を持つこと。例えばアーティストのような人を採用することは今まであまりなかったかもしれませんが、芸術系大学からの積極採用なども面白いかもしれません。

私たちは消費者向けのサービスを展開しているので、宣伝を見てもらえない時代に、インフルエンサーを介して発信することで心を動かさなければなりません。心を動かすものを作り続けていく能力が、これからますます価値を持つと思っています。それは心理を理解している人でないとできない部分が大きいと考えています。


:感情に関わるところは、やはり人が対応したほうがいいと思っています。いくらAIが熱弁しても、モチベーションだったり、腹落ち感や納得感の醸成だったりにはつながりにくい。

発想力も同じで、AIでどんどんアイデアを出せるけれど、その中から選び抜くところまで任せてしまったものには魂がこもっていないのではないかと考えています。人がやりたいと思うからこそ、その仕事に魂がこめられる。人の仕事として守り続けなければならない領域はどこなのかを見極めて、業務を設計する必要があります。

──最後に、今後の展望をお聞かせください。

:コーポレート部門全体でAIエージェントをどんどん増やしていきたいと思っています。各領域にエージェントが増えてきたら、ユーザーインターフェースを統一して、1つの窓口から全エージェントを呼び出せるように。最終的には自律的に解決できる仕組みにしていきたいですね。

人事の領域は、「人とAIをどう組み合わせるか」を設計する役割として、ますます重要になってくるはずです。NTTドコモの挑戦と社員個人の挑戦を後押しするため、私たちも挑戦し続けます。

取材・企画:池上雄太
撮影:遥南碧
編集:木村剛士

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