【明石ガクト、澤円、ハヤカワ五味】「Agentforce World Tour Tokyo」はどうだった？エキスパートたちが見た、感じたAIインパクト

Expert 1 明石ガクト（ONE MEDIA 代表取締役社長）

Point 1 「顧客こそがヒーロー」をこの場でも

イベントの初日、基調講演で本社の共同創業者であるパーカー・ハリスさん自らが貢献度の高いユーザーを讃えるオープニングはとても印象的だった。

もともとカスタマーサクセス（顧客の成功）を重視している企業で、ユーザーコミュニティ活動にも熱心、顧客を大事にしている会社だと感じるが、このイベントでもその姿勢が強く感じられた。

Point 2 Agentic Enterpriseというコンセプト

今回のイベントで新たに発表した「Agentic Enterprise（エージェンティック・エンタープライズ）」。「人とAIエージェントが共に働き新たな価値を創出する新たな企業体」という意味とのことで、全ての企業はAgentic Enterpriseに進化する必要性を訴えていたが、それは本当にその通りだと思う。

人とAIの共存・協働はとくに新しくは感じなかったが、これをNo.1CRMカンパニーでありクラウドの草分け的存在のSalesforceが語ることに重みがある。基調講演で発表されたテクノロジーや具体的なデモ、顧客事例はどれも心を動かす内容で、「横綱相撲」を感じた。

Point 3 全体を通じて

自動車業界で例えると、Open AIをテスラと位置付けるなら、Salesforceはトヨタ自動車ではないだろうか。AI時代、OpenAIが常に注目の的だがまだ設立10年ほど。一方、Salesforceは設立25年であり、クラウド業界を牽引して久しい。重みが違う。

対象がBtoBのみのテクノロジーカンパニーであり、AI＝Salesforceというイメージは乏しいが、これだけの期間、テクノロジー業界を精通している企業が開発したビジネス向けのAIなのだから試す価値はあるだろう。イベントでもすでに活用方法が具体的で改めてそう感じた。

Expert2 澤円（圓窓代表取締役）

Point 1 「Customer Zero」への共感

基調講演の冒頭、共同創業者が「最初の顧客になって自らがテクノロジーを評価・検証し、プロダクトを改良するだけでなくその活用ノウハウをお客様にお伝えする」という「Customer Zero」というポリシーを改めて公言し、すでにあるAIエージェントの実践例を紹介していたことに共感した。

このポリシーは、最も経営者が理解する必要があることだと感じている。どんなプロダクトやサービスでも自らが利用し、その価値に自信を持っていなければ顧客に評価されないと考えいるからだ。Salesforceは以前からこの言葉を発しているが、それを継続的に大事にしている姿勢は素晴らしいと感じた。

Point 2 基調講演にメガバンクのCEOが登壇する重み

基調講演に日本を代表するメガバンクの三井住友フィナンシャルグループのトップが登場し、銀行業務におけるAIエージェントの具体的な活用方法が紹介された。

これだけ大きな企業がSalesforceのAIエージェントを評価し、導入を決めたこと。トップ自らが会場に足を運んで登壇しコメントしたことでSalesforceへの期待を高さを感じたこと。（AIエージェントの活用デモが）AIの活用法が具体的で主要業務に組み込まれており、部分的ではないこと。これらに衝撃を受けた。

AIエージェントは今の段階でより現実的なテクノロジーであると再認識させられた。

Point 3　全体を通じて

Salesforceが他のテクノロジーカンパニーにない強みの一つは、ユーザーコミュニティだろう。日本企業、日本のビジネスパーソンは社外のコミュニティへの参加にどちらかというと消極的というか苦手意識を持っている気がする。

Salesforceはそうした特性がある中でも強く活発なコミュニティを形成・維持している。イベントでも多くのコミュニティメンバーが参加していただろう。

このユニークなコミュニティを開発者やシステム管理者だけでなくビジネスの現場の方々にも広げていってほしい。

Expert3 ハヤカワ五味（ウツワ代表取締役）

Point1 営業シーンでの具体性

基調講演の三井住友銀行ファイナンシャルグループが手がけるAIエージェントのデモがとても印象的だった。営業現場での利用シーンを紹介していたが、とても刺激的な内容で、人とAIエージェントが協働できることがわかりやすく理解できた。

AIで営業手法を進化させたいというニーズは非常に強く感じており、CRMやSFAの領域で優位に立つSalesforceは、「AIで営業改革」というニーズと相性がいいと感じた。

Point 2 大企業でのガバナンスに耐えうるソリューション

AIは当然活用すべきテクノロジーだが、どこまでのデータを使うかなど気にしなければならないことも多い。とくに大企業ではスタートアップのような小規模企業とは異なるガバナンスの効かせ方があり、考えなければならないことが多い。

そんな中でもSalesforceはセキュリティやガバナンスも考慮したプロダクトを提供しており、利用しやすいだろうと感じていたが、基調講演の事例をみて改めてそう感じた。