ハイタッチ営業とは、企業が代理店を介さずに顧客と直接コミュニケーションを取り、深い関係を築く営業手法です。ハイタッチ営業では、顧客のニーズを詳細に把握し、顧客一人ひとりにとって最適なソリューションの提案が重要とされます。
コスト削減や顧客からの信頼獲得などのメリットがある一方、デメリットにも注意が必要です。本記事では、ハイタッチ営業の概要や直販営業・ロータッチ営業との違い、取り入れるメリット、成功させるポイントなどを詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてください。
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目次
ハイタッチ営業とは

ハイタッチ営業は、メーカーや製品・サービス提供企業が、代理店を介さずに顧客企業と直接やりとりする営業手法です。
スポーツで見られる、味方同士が頭上で手を合わせるジェスチャー「ハイタッチ」のように、メーカー企業と顧客企業がチームメイトのような関係性を築き、ともに成長を目指します。
特徴的なのは、単なる商品やサービスの提供にとどまらず、顧客企業の課題解決や事業成長に深く関与する点です。ハイタッチ営業でのアプローチにより、深い信頼関係を築き、長期的なビジネスパートナーシップの確立が期待できます。
直販営業との違い
直販営業は、メーカー企業が顧客に直接アプローチする営業手法です。代理店やパートナー企業を介さない点ではハイタッチ営業と共通していますが、その本質的な考え方が異なります。
直販営業では中間流通を除外して展開しますが、ハイタッチ営業では代理店との関係を維持しつつ、戦略的に顧客との直接的なコミュニケーションを図ります。
ロータッチ営業との違い
ロータッチ営業は、CRMやSFAなどのデジタルツールを駆使して多数の顧客に効率的にアプローチする手法です。ハイタッチ営業は、顧客一人ひとりの課題や要望をヒアリングして最適な対応を考えるため、ロータッチ営業とは対照的と言えます。
また、コスト面もハイタッチ営業と大きく異なります。
ハイタッチ営業は高額商品や重要な顧客に対して個別対応が求められるため、コストがかかりますが、ロータッチ営業は多くの顧客に一度にアプローチできるため、コストを抑えつつ広範囲なサポートが可能です。
パートナー営業との違い
パートナー営業は、代理店や販売店のネットワークを活用して市場展開を図る営業手法です。連携するパートナーを増やすことで顧客とのつながりが増え、ロータッチ営業以上の信頼関係を構築することも可能です。
また、パートナー営業では、各地域や業界に精通したパートナーを通じて幅広い顧客層にリーチできますが、顧客との直接的な関係構築には限界があります。これに対しハイタッチ営業では、とくに顧客生涯価値(LTV)の高い企業や、ほかの顧客を紹介してくれるような顧客に対して、自社の専門知識や技術力を直接活かした深い関係構築が可能です。
ハイタッチ営業を取り入れる5つのメリット

事業拡大を目指す企業にとって、ハイタッチ営業は効果的な営業手法です。ハイタッチ営業を取り入れる具体的なメリットは、以下の通りです。
- コスト削減の効果がある
- 顧客にとっての最適な提案を実現できる
- 製品やサービスの詳細情報を顧客に提供できる
- 顧客からの信頼獲得につながる
- 営業担当者の知識やスキル向上につながる
それぞれ詳しく解説します。
コスト削減の効果がある
ハイタッチ営業を導入することで、代理店手数料や中間マージンが不要になるため、直接的なコスト削減効果が得られます。また、代理店との契約管理や教育研修、販促資料の作成といった間接的なコストも大幅に軽減できます。
さらに、顧客との直接的なコミュニケーションにより、商談のスピードが向上し、営業サイクルの短縮化も実現。これにより、一人あたりの営業効率が上がり、人件費に対する投資対効果も向上します。
顧客にとっての最適な提案を実現できる
直接的な対話を通じて、顧客企業の表面的なニーズだけでなく、経営課題や将来の事業展望まで深く理解することが可能です。
顧客のニーズや課題を把握できると、顧客の業界特性や組織構造を考慮した、より実効性の高い提案を行えます。その結果、新規案件の受注率が向上するだけでなく、既存顧客に対するアップセルやクロスセルの機会も自然と増加し、取引額の拡大につながります。
さらに、直接的に顧客から意見を取り入れることで、今後の新サービスの開発や既存製品のブラッシュアップに役立てることも可能です。
製品やサービスの詳細情報を顧客に提供できる
製品やサービスを熟知した担当者が直接顧客と対話することで、技術的な特徴から具体的な活用事例まで、より正確で詳細な情報を顧客に提供できます。
代理店を挟む場合、製品やサービスに疑問をもった際に、正確な回答をするために一度メーカーに問い合わせるケースもあります。ハイタッチ営業であれば、顧客からの技術的な質問や運用相談に対して、迅速かつ的確な対応が可能であり、顧客満足度の向上につながるでしょう。
顧客からの信頼獲得につながる
ハイタッチ営業は、新規顧客や既存顧客との信頼関係を深めるという視点において、大きな効果を発揮します。直接的なコミュニケーションを通じて、自社の企業理念や事業ビジョン、さらには製品開発に込めた想いまでを顧客と共有可能です。また、対面での会話や丁寧なヒアリングによって、顧客は企業の信頼性や誠実さを直に感じられ、長期的な取引が期待できます。
強固な信頼関係が構築できると、競合他社への乗り換えを防ぎ、長期的な取引関係の維持につながります。結果として、安定的な収益基盤を確保し、持続的な事業成長を実現できるでしょう。
営業担当者の知識やスキル向上につながる
顧客企業の業界知識や経営課題に向き合い、解決策を立案するハイタッチ営業は、営業担当者の知識やスキル向上につながります。
また、直接的な商談を通じて、提案力や交渉力、課題解決能力といった実践的なスキルも向上します。顧客との密接なコミュニケーションにより、市場トレンドや競合情報もリアルタイムで把握でき、より戦略的な営業活動が可能です。
ハイタッチ営業を通して得た経験は、担当者個人のキャリア成長だけでなく、組織全体の営業力向上にも大きく貢献します。
関連記事:営業力とは?ある人の特徴と強化する方法
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ハイタッチ営業を取り入れる3つのデメリット

ハイタッチ営業には多くのメリットがある一方で、実施にあたって以下のようなデメリットもあります。
- 営業担当者ひとりの業務量の増加につながる
- 顧客に過度な期待を与える可能性がある
- 顧客が営業担当者に依存しすぎる
それぞれ詳しく解説します。
営業担当者ひとりの業務量の増加につながる
ハイタッチ営業では、個々の顧客に対して密接なコミュニケーションが求められるため、営業担当者ひとりあたりの業務量が増えやすい傾向にあります。とくに、複数の顧客を同時に管理する場合は、業務負担の増加から効率的な対応が難しくなるでしょう。
また、投資対効果が見込めない顧客に過度な時間を費やしてしまうと、営業担当者だけではなく、営業部門全体の生産性が低下する危険性があります。そのため、営業担当者のストレス緩和や顧客の優先順位付け、業務の効率化、適切な人員配置など、組織的な対策が不可欠です。
顧客に過度な期待を与える可能性がある
ハイタッチ営業による手厚いサポートと丁寧な対応は、顧客の期待値を必要以上に高める危険性があります。たとえば、特別な対応や緊急の要望への迅速な対応を当たり前と考えるようになり、通常のサービスレベルでは満足が得られなくなるケースも少なくありません。
また、製品やサービスの機能面においても、実現が難しい要望や開発ロードマップに含まれていない機能の実装を期待されるケースもあります。現実的にはすべての期待に応えることは難しいため、このギャップを放置すると、かえって顧客満足度の低下や信頼関係の破壊につながる可能性があります。
そのため、顧客との対話に注意を払いつつ、できることとできないことを明確に伝えることが大切です。
顧客が営業担当者に依存しすぎる
ハイタッチ営業においては、顧客と営業担当者の間に構築される強い信頼関係により、顧客が特定の営業担当者へ過度に依存するケースが少なくありません。
その結果、担当者の異動や退職に伴い、顧客との関係性が急速に悪化するリスクが生じます。さらに、些細な質問や要望であっても必ず担当者への確認が必要となる行動が常態化し、顧客による自律的な製品・サービスの活用が阻害されることも懸念されます。
これにより、担当者の業務負荷が増大し、新規案件への対応の遅延等の機会損失を招くリスクも発生するのです。こうした依存関係を回避するためには、組織的な顧客サポート体制の確立と、CRMやSFAなどの業務効率化ツールを活用した顧客情報の一元管理・共有が不可欠となります。
ハイタッチ営業に効果的な営業手法やテクニック

ハイタッチ営業をより効果的に実践するためには、以下のような営業で活用できるテクニックを用いるのがおすすめです。
- インサイト営業
- SNAPセリング
- SPIN話法
それぞれ詳しく解説するので、参考にしてみてください。
インサイト営業
インサイト営業とは、顧客自身も気づいていない潜在的なニーズや課題を発見し、顧客自身にニーズや課題を認識させた上で、解決策を提案する営業手法です。
インサイト営業では、業界動向や市場環境の分析から、顧客企業の将来的なリスクや成長機会を予測し先回りした提案を行います。たとえば、競合他社の動向や規制環境の変化を踏まえた戦略提案や、新技術導入による業務改革の提案などが含まれます。
顧客一人ひとりとの深い関係構築を目指すハイタッチ営業において、インサイト営業は非常に相性のよい営業手法と言えるでしょう。
関連記事:インサイト営業とは?メリット・デメリットや成功事例を紹介
SNAPセリング
SNAPセリングは、顧客と同じ目線に立ち、複雑な商談プロセスをシンプルに進める効果的な手法です。営業担当者がSNAPセリングを活用するにあたって、以下の4要素を念頭に置く必要があります。
- keep it simple(常にシンプルに)
- be invaluable(価値のある存在に)
- always align(顧客と足並みを揃えて)
- raise priorities(優先順位を明確に)
これらの要素を意識することで、営業担当者は顧客と同じ目線で情報を見ることが可能です。また、顧客の意思決定プロセスに合わせて提案のタイミングを調整し、商談の各段階で明確な優先順位付けを行うことで、効率的なクロージングを実現します。
SPIN話法
SPIN話法は、イギリスの行動心理学者ニール・ラッカム氏が提唱した、体系的な質問技法を用いて顧客に最適な提案を導き出す営業手法です。この手法は、以下の4つの要素の頭文字にもとづいて名付けられています。
- Situation(状況質問):現状を正確に把握するための質問を行い、顧客の事業環境や課題の背景を理解する
- Problem(問題質問):具体的な課題を特定するための質問を通じて、顧客が直面している問題点を明確化する
- Implication(示唆質問):問題がもたらす影響について質問し、課題の重要性を顧客とともに認識する
- Need-payoff(解決質問):解決策がもたらす価値や効果について質問を重ね、提案の有効性を認識する
インサイト営業と同様に、SPIN話法は顧客の潜在的なニーズや課題への気づきを促すことに効果を発揮します。この手法を活用することで、自社製品やサービスを一方的に提案するのではなく、顧客自身が必要性を実感できるよう対話を通じて導けるでしょう。
関連記事:営業戦略・戦術の立て方と役立つフレームワーク16選|具体例も紹介
ハイタッチ営業を成功させる3つのポイント

ハイタッチ営業は、一朝一夕で成功させられるものではありません。営業担当者として、日頃から意識すべきポイントもあります。ハイタッチ営業を成功に導くための重要なポイントは、以下の3つです。
- ヒアリング力を磨く
- アフターフォローを徹底する
- SFAやCRMなどの業務効率化ツールを活用する
それぞれ詳しく解説するので参考にしてみてください。
ヒアリング力を磨く
ハイタッチ営業の成否を決める重要なスキルのひとつが、ヒアリング力です。
単なる質問対応ではなく、顧客の発言の背景にある真の課題や要望を読み取る力が求められます。効果的なヒアリングには、オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを適切に使い分け、会話の流れを作ることが重要です。
また、業界特有の専門用語や経営用語への理解も不可欠です。日々の営業活動では、顧客との会話内容を録音してあとで振り返ったり、社内でロールプレイングを実施したりすることで、継続的なスキル向上を図れるでしょう。
アフターフォローを徹底する
ハイタッチ営業は顧客との信頼関係を築き、継続的な付き合いをすることが大きな目的です。そのため、営業後も積極的にアフターフォローを行い、次の購買行動へとつながる工夫を行うことが重要です。
定期的な利用状況の確認や新機能の提案、業界動向の情報提供など、顧客にとって価値ある接点を継続的に作ることを心がけます。
とくに、導入直後の3ヶ月間は週次での状況確認を行い、運用上の課題を早期に発見・解決することで、顧客満足度を高められます。また、経営層への定期的な報告会を設定し、投資対効果の可視化や今後の展望を共有することで、より戦略的なパートナーシップを築くことが可能です。
SFAやCRMなどの業務効率化ツールを活用する
顧客との緊密なコミュニケーションを維持しつつ、効率的な営業活動を実現するためには、SFAやCRMなどのツールの活用が不可欠です。SFAの導入により商談の進捗管理や行動計画の最適化が実現でき、CRMを通じて顧客の要望や課題を組織的に共有・管理することが可能となります。
ハイタッチ営業において最適な提案を実施するためには、顧客情報を常に最新かつ正確な状態に維持する必要があります。
効果的なハイタッチ営業の実現には、顧客とのコミュニケーションや商談内容を詳細に記録し、必要な情報に随時アクセスできる体制を整備することが求められるのです。これにより、担当者不在時の対応やチームでの連携が円滑となり、組織全体の営業力強化へとつながります。
Salesforceでは、SFA「Sales Cloud」やCRM機能も組み込まれた「Sales Engagement」を提供しているので、業務の効率化を検討する人はぜひ確認してみてください。
関連記事:SFA・CRM・MAの違いや活用方法とは?連携のメリットや事例も解説
ハイタッチ営業のデメリットをカバーするAIツール

ハイタッチ営業には、顧客からの信頼獲得や顧客にとっての最適な提案の実現など、多くのメリットがある一方で、営業担当者の負担増大が大きな課題となります。しかし、業務効率化を促進するデジタルツールを活用することで、営業担当者の負担を効果的に軽減可能です。
また、AI機能が搭載されたSalesforceの「Sales Cloud」を活用することで、さらなる業務の効率化と営業成果の向上が期待できます。Sales Cloudでは、蓄積されたデータをもとに機械学習を行い、AIによる営業機会予測やプロダクトの提案が可能です。たとえば、過去の商談データや顧客とのコミュニケーション履歴を分析し、最適なアプローチのタイミングや提案内容の提示によるサポートを受けられます。
さらに、顧客との会話から重要なインサイトを自動で抽出し、競合分析や価格設定の参考情報として活用できます。Sales Cloudの予測をもとに、スピーディーに見込み顧客へのアプローチを行うことができ、AIによる提案により商談の成約率を向上させることが可能です。
これらのAIツールを活用することで、人的リソースの制約を克服しながら、質の高いハイタッチ営業を展開できるでしょう。
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まとめ:ハイタッチ営業を用いて顧客との信頼関係構築を目指そう

ハイタッチ営業は、デジタル化が進む現代においても、なお重要性を増している営業手法と言えます。
実施にあたっては人的リソースやコストの面で課題もありますが、適切な戦略とツールの活用により、これらの課題を克服することは十分に可能です。ヒアリング力を磨いたりアフターフォローを徹底したりすることで、顧客とのより強い信頼関係を得られる可能性が高まります。また、業務効率化ツールを活用することで、営業担当者の人的リソースの課題解消につながります。
戦略的にハイタッチ営業を展開することで、競争優位性のある強固な顧客基盤を構築できるでしょう。
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