市場には同じような機能を持つ商品・サービスがあふれており、顧客から「選ばれる存在」になるためには、競合他社との差別化が必要です。
しかし、自社の強みを出す方法や立ち位置の決め方がわからず、試行錯誤を続けているマーケティング担当者もいるのではないでしょうか。
本記事では、マーケティング戦略のひとつ「ポジショニング」の基本的な意味や手法、成功させるためのポイントを詳しく解説します。自社の強みを最大限に活かす方法を学び、競争の激しい市場のなかで一歩先を行く戦略を取り入れてみましょう。
BtoBマーケティングの成果向上に繋がる資料3点セット
BtoBマーケティングの成果向上につながるおすすめの資料3つをセットにしました。まとめてダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

目次
ポジショニングの意味とは?

ポジショニングとは、ターゲットとなる市場のなかで企業や商品・サービスが「どのような立ち位置を占めるのか」を明確にする戦略のことです。
具体的には、ターゲット市場において「顧客にどのように認識されたいか」を定義し、自社独自の価値・強みを押し出して他社との差別化を図ります。
競争が激しい市場でポジションを確立するには、顧客が何を求めているのかを理解し「この企業の商品が欲しい」と感じてもらえるようなブランディングも必要です。
マーケティング戦略「STP分析」との関係
ポジショニングは、マーケティングフレームワークである「STP分析」のプロセスであり、セグメンテーション・ターゲティング後の最終ステップに行う手法です。STP分析の概要は以下のとおりです。
S:セグメンテーション | 市場を細分化し、顧客層の特性やニーズにもとづいてグループ分けを行う |
T:ターゲティング | 自社にとって有望な市場を決める |
P:ポジショニング | 選定したターゲットに対して、他社と差別化できるポイントを明確にする |
具体的なプロセスとしては、セグメンテーションで市場を顧客属性(年齢・地域など)ごとに細分化し、ターゲティングでどのセグメントに注力するかを選定します。
その後、ポジショニングで「ターゲット市場に対してどのような価値を提供し、自社を認識してもらうか」を決めるといった流れです。以下の関連コンテンツでは、STP分析の方法や注意点を詳しく解説していますので、本記事と合わせて確認してみてください。
関連記事:STP分析とは?活用する目的や分析方法、注意点などを詳しく解説
ポジショニングが必要な理由

マーケティングにおいてポジショニングが必要な理由は、主に以下の3点です。
- ブランドの確立につながるため
- 他社との差別化を図れるため
- 「選ばれる存在」になるため
確固たるポジションを確立できれば、他社にはない価値を顧客に提供でき、自社を選んでもらえる理由づけができます。
ブランドの確立につながるため
ポジショニングによって、ターゲットとなる顧客に「この会社はどのような価値観を持ち、なにを提供するのか」を提示できるため、ブランドの確立につながります。
たとえば、アウトドア用品のブランド「パタゴニア」は、環境保護への取り組みとして、化学燃料を原料とする製品の排除や、リペア事業部の立ち上げを行っています。
環境に配慮した製品づくりの姿勢を示し続けることで、高価格帯でありながらも、高機能かつ長く使用できる製品として支持されるブランドを確立しました。
競合他社にはない独自の価値を提供できれば、企業や商品・サービスに対する顧客ロイヤリティ(愛着)の向上にもつながるのです。以下の関連コンテンツでは、顧客ロイヤリティを高めるメリットや施策を解説しています。本記事と合わせて確認してみてください。
関連記事:顧客ロイヤリティとは?安定的な利益を自社にもたらす方法
他社との差別化を図れるため
ポジショニングで自社の価値や強みを見いだせれば、他社商品・サービスとの差別化が図れます。
食品業界のOisixでは、安心・安全な食品や食材を届ける「食のサブスクリプションモデル」の宅配事業を展開しています。
鮮度維持・検品の厳格な品質管理を行いながらも、ニーズに応じた料理キットや食材をラインナップしており、もう一品買いたくなるような顧客体験につながっているのです。
他社との差別化によって競争優位性を確保できれば、価格競争からの脱却も可能となり、ブランド価値をたかめることができます。
「選ばれる存在」になるため
ターゲット市場には類似した商品・サービスが多数存在していますが、他社と異なる価値を示すポジショニングによって、顧客から「選ばれる存在」となります。
家具業界のイケアでは、テーマに合わせてインテリアを自由に変えられるように、手頃な価格でデザイン性の高い家具を提供しています。
工場からの直接配送などコスト削減への取り組みによって、低価格ながらも良質な製品の提供につながり「家具ならイケア」といった選ばれる存在になっているのです。
選ばれる商品・サービスを長期的に提供できれば、信頼関係の構築やブランドイメージの向上によって、顧客の購買意欲をより高められます。
ポジショニングの方法・手順6ステップ

ポジショニングの具体的な方法として、以下の6つのステップで解説します。
- セグメンテーション・ターゲティングを行う
- ポジショニングの方向性を定める
- ポジショニングマップを作成する
- 競合他社をマップ上に配置する
- 自社のポジションを決める
- ポジションの検証・見直しを行う
他社との差別化を図りながら自社の価値を見いだすために、マーケティング戦略の基盤を構築していきましょう。
1.セグメンテーション・ターゲティングを行う
ポジショニングは「STP分析」の最終ステップであるため、まずはセグメンテーション(市場の細分化)とターゲティング(市場の選定)を行います。
セグメンテーションにおいては、以下の4つの変数を用いて市場を分類し、各セグメントの傾向やニーズを分析します。
地理的変数 | 地理的な違いを基準とした分類(国・地域・気候など) |
人口動態変数 | 個々の置かれている状況を示す変数(年齢・家族構成・収入など) |
心理的変数 | 感性にもとづく要素による分類(性格・価値観・趣味など) |
行動変数 | 購買行動に関連する分類(購買頻度・購買量・価格感度など) |
つぎは、ターゲティングで「どのセグメントに焦点を当て、リソースを集中させるか」を決定します。市場規模の大きさや市場の成長性、顧客の関心度などを考慮し、自社の商品・サービスに最適なターゲットを選定しましょう。
関連記事:
・セグメンテーションとは?やり方と活用事例、ターゲティングとの違い
・ターゲティングとは?重要性やフレームワークを簡単に解説
2.ポジショニングの方向性を定める
ターゲットとなる市場が明確になったら、その市場のなかで自社の価値・魅力が受け入れられる立ち位置を検討していきます。具体的な差別化ポイントとして、価格や機能性だけではなく、以下のような点も含めて検討してみましょう。
- 独自技術(特許・AI など)
- 顧客体験(実店舗と同じような購入体験 など)
- 価格以外の付加価値(品質・アフターサービス など)
自社の強みを最大限に発揮し、ブランドイメージの定着を図るためには、発信するメッセージや企業理念などの一貫性を保つことが重要です。
3.ポジショニングマップを作成する
ターゲット市場で自社の立ち位置を明確にするため、競合他社との位置関係を把握できるポジショニングマップを作成しましょう。マップ上には、横軸・縦軸それぞれに相反する4つの要素を記載し、各要素に近いタイプなのか遠いタイプなのかを視覚的に把握します。
コーヒー店でたとえると、横軸にコーヒー品質(高級豆・リーズナブルな豆)、縦軸にサービススタイル(セルフサービス・フルサービス)といった要素です。
競合との差別化を図るために、どの要素(価格・品質・サービスなど)を強調すべきかを判断してマップを作成しましょう。
4.競合他社をマップ上に配置する
ポジショニングマップ作成後は、ターゲット市場における競合他社をマップ上に配置し、どのような強みでポジションを獲得しているかを分析します。具体的な分析ポイントは、以下のような点です。
- 市場の集中度(マップ上に集中しているか)
- 未開拓領域の特定(競合が存在しない領域があるか)
- 強み・弱みの把握(どのような特徴を活かしているか)
- 顧客との関係性(顧客ニーズに応えているか)
顧客の視点に立って、どのような価値提供が受け入れられるかを検討することで、競争優位性の確保につながります。
5.自社のポジションを決める
ポジショニングマップ上の競合他社が少ない領域や空白領域において、自社の強みが押し出せるかを検討し、具体的なポジションを設定しましょう。
たとえば、ファーストフード業界で「マクドナルド」と「モスバーガー」の位置関係を考えた場合、マクドナルドは「手軽な価格のハンバーガー」として認知されています。
モスバーガーでは「高品質で健康志向の食材を使用したハンバーガー」をコンセプトに掲げて、マクドナルドとの差別化を図っています。
このように、自社が提供したい価値や機能にもとづいて、他社とは重ならない明確なポジションを設定しましょう。
6.ポジションの検証・見直しを行う
ターゲット市場における自社の立ち位置を検証し、必要に応じてポジションの見直しを行いましょう。具体的な検証のポイントは、以下のとおりです。
- 市場環境の変化(経済状況や顧客の価値観に変化がないか)
- 顧客視点での評価(顧客満足度・ブランドイメージが低下していないか)
- 競合他社との差別化(自社独自の強みが活かされているか)
競合他社が新しい技術を導入して顧客の価値観が変わった場合など、市場の動向に応じて自社のポジションを再評価しなければなりません。自社のポジションを継続的に見直すために、以下の関連コンテンツを参考にして、PDCAサイクルを実践してみてください。
関連記事:PDCAサイクルとは?運用のコツと事例を使ってわかりやすく解説
ポジショニングを成功させるポイント

ポジショニングを成功させるために、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 自社の強みを押し出せるポジションを選ぶ
- ポジショニングにもとづくマーケティングを行う
- 顧客視点でポジショニングを検討する
効果的なポジショニングによって、競争市場においても「選ばれる存在」として確固たる地位を築き、売上向上やブランド力強化につながります。
自社の強みを押し出せるポジションを選ぶ
ポジショニングを成功させるためには、自社の強みを前面に押し出せるポジションを選び、提供できる価値や独自性を検討することが重要です。
競合他社と似たようなポジションでは、すでに他社を支持している顧客を自社に引きつけるのは難しいため、独自のブランディングが求められます。
たとえば、地方企業が都市部にカフェを出店する場合、地元の農家とのつながりを重視すれば、新鮮な食材を使った料理や地域の歴史に根ざした店舗デザインが可能です。
自社の強みを活かせるポジションを選ぶことで、ターゲット市場において影響力のある営業活動を展開でき、競合他社との差別化を図りやすくなります。
以下の関連コンテンツでは、ブランドの見直しを図るリブランディングについて解説しています。顧客から選ばれる存在になるために、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:いま求められる顧客中心のリブランディング:市場で選ばれるブランドづくりの要点を探る
ポジショニングにもとづくマーケティングを行う
競合との差別化を図るためには、自社の立ち位置を決めるだけでなく、ポジショニングにもとづくマーケティング戦略が必要です。
商品開発から広告配信、販売までのプロセスにおいて、ターゲット市場に向けた一貫性のある情報やメッセージを発信しなければなりません。たとえばアパレル業界で、環境や社会問題に配慮した素材を使って衣類を開発する場合、以下のような戦略が考えられます。
プロセス | 具体例 |
---|---|
商品開発 | ・オーガニックコットンや再生ポリエステルの素材を使う・長期間の着用を保証するためのリサイクルプログラムを提供する |
プロモーション | 公式サイトや商品タグにおいて、生産地の情報やサステナブル素材を使った背景を記載する |
販売戦略 | 環境負荷を最小限に抑えるため、簡易包装での直販体制を整備する |
ターゲット市場に一貫したメッセージを届けることで、顧客にも自社の魅力が伝わり、商品のブランド価値の向上につながります。以下の関連コンテンツでは、マーケティング戦略の立て方やフレームワークを解説していますので、本記事と合わせて確認してみてください。
関連記事:マーケティング戦略とは?策定手順・フレームワーク・成功事例を解説
BtoBマーケティングの成果向上に繋がる資料3点セット
BtoBマーケティングの成果向上につながるおすすめの資料3つをセットにしました。まとめてダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

顧客視点でポジショニングを検討する
ポジショニングでは、顧客のニーズや問題点を深く理解したうえで、自社がどのような形で価値を提供できるかを考える必要があります。
「他社よりも品質や機能が優れているから」と企業視点で戦略を練っても、顧客のニーズを満たす価値提供ができず、収益化につながりにくいためです。自社商品・サービスが提供できる価値(ベネフィット)を検討する際は、以下の3つの視点を考慮しましょう。
機能的ベネフィット | 商品が持つ機能・特徴によるプラスの効果 |
情緒的ベネフィット | 商品の使用によって得られるポジティブな感情(幸福感、楽しさ など) |
自己表現ベネフィット | 商品使用後に実現できる顧客の未来や世界観 |
ターゲットとなる顧客の心理や購買行動にもとづいたポジショニングによって、商品・サービスの選択肢として自社を強く印象づけられます。
AI活用で顧客ニーズに応じたポジショニングが可能に

AIを搭載したツールの活用によって、市場のトレンドや競合他社の動向をリアルタイムで追跡し、変化する顧客のニーズに応じて迅速なポジションの調整が可能です。
たとえば、顧客の行動データと組織目標を照らし合わせれば、あらゆるタッチポイントにおいて、顧客ごとに最適化された提案や情報発信ができます。
その結果、商品・サービスを通じて価値を実感するため、競合他社がひしめく市場においても「選ばれる存在」となるのです。
Salesforceの「Marketing Cloud」では、AIの活用でブランドイメージに合ったコピーやビジュアルコンテンツを即座に作成できます。30日間の無料トライアルも実施中ですので、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
ポジショニングを検討する際の注意点

ポジショニングを検討する際は、以下の点に注意しましょう。
- ターゲットの市場規模を確認する
- 顧客から共感を得られるポジションにする
- ポジションと企業理念との整合性を図る
綿密な市場調査でターゲットとなる顧客が求めているものを把握し、それに合った情報提供や商品開発が求められます。
ターゲットの市場規模を確認する
ポジショニングをする際は、ターゲットの市場規模を確認したうえで、十分な収益性を確保できるかを確認しましょう。小規模の市場やニッチなセグメントを選んだ場合、ターゲットとなる顧客の母数が少ないため、想定よりも需要が見込めない可能性もあります。
また、市場規模の確認が不十分だと過剰にリソースを投下したり、逆にリソース不足に陥ったりと、費用対効果も見合わなくなります。
市場規模や市場成長率などのデータを収集・分析し、長期的に利益を得られるかを評価して自社のポジションを検討しましょう。
顧客から共感を得られるポジションにする
顧客のニーズ・価値観・ライフスタイルに合致するポジションを設定することで、顧客から信頼と共感を得られ「選ばれる存在」となります。商品・サービスのコンセプトがあいまいな状態では、他社と似通ったポジションになってしまい、顧客からの支持が得られません。
- デザイン性を前面に押し出すべきか
- コストパフォーマンスを重視すべきか
- 高機能の商品を開発すべきか
上記のような点を市場調査の段階で検討し、顧客から「こういう商品を求めていた」と言われるような共感ポイントを明確にする必要があります。
ポジションと企業理念との整合性を図る
ポジショニングにおいては、自社のポジションと企業理念との整合性を図り、一貫した商品開発や情報提供が求められます。他社より優位なポジションだったとしても、企業理念・ビジョンと一致しない戦略では混乱を招いてしまい、顧客との長期的な関係は築けません。
たとえば、エコをうたっていながら大量生産を行う企業は、その実態に矛盾を感じさせ、ブランドに対する忠誠心(ロイヤリティ)を損なうリスクがあります。
企業理念との整合性を図るために、社内外のステークホルダーとも共通認識を持ち、一貫性のあるメッセージ発信が必要です。
ポジショニングに成功した企業事例

ポジショニングに成功した事例として、2社の取り組みを紹介します。
- デジタル媒体に特化した求人サイトの構築(ディップ)
- 顧客との関係重視の税財務コンサルティング(みどり財産コンサルタンツ)
それぞれの企業が「どのようにポジショニングで成果を上げているのか」を把握し、自社の戦略を策定する際の参考にしてみてください。
デジタル媒体に特化した求人サイトの構築|ディップ

会社名:ディップ株式会社
事業内容:人材サービス事業等
アルバイト・パート求人情報サイト「バイトル」などを運営するディップでは、企業と有期雇用労働者とのマッチング率を高めるため、デジタル技術を積極的に活用しています。
Webやメールを中心としたデジタル媒体に特化したシステムをつくり、競合他社との差別化を図ってきたほか、CRM(顧客関係管理)への取り組みにも着手しました。
求人応募者の属性や行動履歴に応じて、きめ細かなメルマガ配信を効率的に実施するなど、顧客視点に立ったマーケティングで確固たるポジションを獲得しています。
顧客との関係重視の税財務コンサルティング|みどり財産コンサルタンツ

会社名:株式会社みどり財産コンサルタンツ
事業内容:法人税財務コンサルティング等
税財務のコンサルティングを行うみどり財産コンサルタンツでは、一般的な会計事務所ではカバーできない「事業承継型M&A」や「組織再編」などのサービスも提供しています。
会計事務所を母体としているため、独立系のコンサルティング会社と比べると、以下のような点が差別化ポイントになっています。
- 顧客からの信頼や情報を得やすい
- 基本的に顧客の担当者を変えない
- 継続的なコミュニケーションで関係を構築・維持できる
ビジネスの「資産」である顧客との関係を強化するため、情報の一元化とビッグデータの分析が可能なCRMを導入し、顧客の要望に沿った提案を効率的に実施しています。
ポジショニングは他社との差別化に有効な戦略

競争の激しい市場において、ポジショニングは自社の独自性を打ち出し、ターゲット層に強く訴求するための重要な戦略です。
顧客から選ばれる企業になるためには、単に低価格・高品質のサービスを提供するだけではなく、顧客にとっての価値を明確に示し、他社と差別化を図る必要があります。
まずは、STP分析のセグメンテーションとターゲティングを実施したうえで、競合他社にはない強みを活かせるポジションを決めていきましょう。
BtoBマーケティングの成果向上に繋がる資料3点セット
BtoBマーケティングの成果向上につながるおすすめの資料3つをセットにしました。まとめてダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
