顧客ロイヤリティとは?安定的な利益を自社にもたらす方法

更新日:2021.07.27

ここ数年、さまざまな業界で顧客ロイヤリティの向上が話題にされています。収益を高め、維持するためには欠かせないといわれていますが、それはどういうことでしょうか。また、顧客ロイヤリティを高めるためには、何が必要なのでしょうか。 ここでは、顧客ロイヤリティの基礎知識や向上のための手法について解説していきます。

顧客ロイヤリティとは顧客が企業や商品に持つ信頼や親しみのこと

ロイヤリティ(loyalty)とは、「愛着」「忠誠」などの意味を持つ言葉で、顧客ロイヤリティといえば、顧客が企業やブランド、商品に向ける信頼や親しみ、愛着といった感情を表します。
「この顧客はロイヤリティが高い」「顧客ロイヤリティの向上を図りたい」というように使われます。

顧客ロイヤリティを計測できるNPS

製品・サービスやブランドに、顧客がどれほどの愛着を持っているか。これは、測定し定量化することが難しいものです。「◯◯が、どれくらい好きか」と聞かれて、すぐに答えられる人は少ないでしょう。そのため、顧客ロイヤリティは、顧客の購買行動などから推察するしかありませんでした。
しかし、2003年にアメリカで顧客ロイヤリティを測定し、確認できる指標が誕生しました。それがNPS、ネット・プロモーター・スコア(Net Promoter Score)です。現在では、顧客ロイヤリティの指標として、多くの企業で活用されています。

<参考>
NPSの活用が業績アップにつながる!?NPSの効果的な活用方法

NPSの計測方法とは?

NPSを計測するには、まず顧客に1つの質問を投げかけます。「あなたはこの商品(あるいはサービス)を、友人や同僚におすすめしますか?0から10までの11段階でお答えください」
「おすすめしない」は0、「ぜひすすめたい」が10で、その範囲内で答えてもらうのです。そして、9、10と答えた顧客を「推奨者」、0~6までを「批判者」に分類し、推奨者のパーセンテージから批判者のパーセンテージを差し引いたものを、最終的なスコアとします。
たとえば、100人にアンケートをして、推奨者が50人、批判者が40人だったとしたら50%-40%で、NPSは10というわけです。もちろん、数値が高いほうがいいことは、いうまでもありません。

NPSは顧客満足度とは違うのか?

NPSを語る際によくいわれるのが、NPSと顧客満足度(CS)は違うのかということです。
自社の製品やサービスに、顧客がどれほど満足しているかということを表す点では、どちらも同じといえます。しかし、製品を購入した、あるいはサービスを受けたそのときは十分に満足したとしても、その後も購入してくれるかどうか、さらに「他者にすすめる」というアクションを起こす可能性があるかどうかは、また別の話です。
そのようにとらえると、CSとは購入あるいはサービスの提供を受けた時点での満足度の指標であり、NPSはその満足度が次のアクションにつながる可能性を含めた指標だということができます。
つまり、CSよりもNPSのほうが、将来的な収益との関連が強いというわけです。

なぜ、顧客ロイヤリティが重要なのか?

さまざまな製品やサービスがあふれている現在、消費者の興味を惹き、企業が売上を確保するのは、簡単なことではありません。競合他社との競争に勝ち抜き、生き残るためには、他社との差別化は不可欠ですが、誰もがネットで多くの情報にふれられる状況では、その差別化すらも難しくなります。
このような状況だからこそ、顧客ロイヤリティの重要性が高まるのです。

ロイヤリティが高い顧客は、自社のブランドや自社製品に対して愛着を感じ、繰り返し購入してくれるようになります。少々の質や価格の違いがあっても、競合他社のものを押しのけて、自社製品を選んでくれる確率が高まります。
つまり、ロイヤリティの高い顧客は、安定した売上に貢献してくれる、優良顧客なのです。多くの企業が顧客ロイヤリティの向上に力を入れる理由は、まさにそこにあります。

顧客ロイヤリティを高めるメリット

リピーターとして、自社製品・サービスを継続的に購入してくれる。それが顧客ロイヤリティを高めることで得られる大きな成果ですが、それだけというわけではありません。
顧客ロイヤリティを高めるそのほかのメリットには、下記のようなものがあります。

1. 口コミでの拡散を期待できる

口コミは、とても強力な販促ツールです。そして、ロイヤリティの高い顧客は、自分のお気に入りを周囲にもすすめる傾向が強くなります。利用者数が増えているSNSを経由して拡散していけば、新規顧客の拡大にも期待できます。

2. 顧客単価が上がる

顧客ロイヤリティが高いと、定期的な購入だけでなく、よりハイグレードな上位商品を購入する機会が高まります。また、同ブランドの別商品にも親しみを感じやすくなるため、顧客単価が上昇する傾向がみられます

3. 評価や意見を吸い上げやすい

ロイヤリティの高い顧客は、自分のお気に入りの製品やサービスが改善・改良されることに肯定的です。ですから、モニター調査などを行うと、公正で詳細な意見を出してくれることが多く、商品開発に役立ってくれます。

顧客ロイヤリティを下げるさまざまな要因

どんなに注意しているつもりでも、ちょっとした油断で顧客ロイヤリティは下がってしまいます。一度失った信頼を回復するのは容易ではありませんし、ネガティブな評判ほど早く広く拡散していくものです。
そうした事態を防ぐためには、顧客ロイヤリティを下げる要因がどこに潜んでいるのかを知り、対策を施しておくことが大切です。

チャネルの不合致

今や、幅広い年齢層の人々が、個人間あるいはオープンな場所で、さまざまな方法で情報を発信しています。
この傾向は、企業と顧客とのコミュニケーションにも表れています。これまで一般的だった電話や、問い合わせフォームによるメールだけでなく、SNSやチャットを使ったやりとりを望む顧客が増えてきました。
ですので、こうした顧客の要望に応えられないと、そこで顧客ロイヤリティは下がってしまいます。企業側としては顧客とのチャネルの多様化に対応するとともに、どのチャネルを用いてもスピーディなレスポンスを実現できるよう、体制を整える必要があります。

不適切なアプローチ頻度

顧客との適度なコミュニケーションを保ち、タイミング良くリテンションをかけて購入意欲を刺激するのは大切なことです。そのための手段として、メールだけでなくSNSやアプリなど、顧客が好むチャネルを活用するのも重要なことでしょう。

しかし、コミュニケーションの頻度については、慎重に検討する必要があります。あまりに頻繁にメッセージを送りつけられると、わずらわしく感じられてしまいます。また、メール、SNS、アプリなどのすべてのチャネルで、同じメッセージを同じタイミングで送信するということをしていては、あっという間に顧客ロイヤリティが下がってしまうでしょう。
適切なチャネルを選び、適切な頻度で、顧客から嫌われないアプローチを心掛けることが大切です。

カスタマーサポートの不手際

顧客からの問い合わせや要望の窓口であるカスタマーサポート。企業にとって重要な顧客との接点であり、顧客ロイヤリティを高められる重要なポイントです。それは裏を返せば、顧客ロイヤリティを失う可能性も潜んでいるということです。
電話がなかなかつながらない。オペレーターが問い合わせ内容に答えられず、いくつもの部署をたらい回しにされる。その度に、同じ説明を繰り返さなくてはならない。さんざん時間をかけたあげく、疑問や問題の解決ができなかった。このような経験を味わってしまうと、誰でも「もういいや」という気持ちになってしまいます。

また、時期によっては顧客からの問い合わせが多く、オペレーターにストレスがかかり、つい応対が雑になってしまうこともあります。このようなことでも、顧客ロイヤリティを下げる要因となりますので、くれぐれも注意が必要でしょう。

顧客ロイヤリティを高める3つの施策

では、ロイヤリティを高めるためには、どのような施策をとればいいのでしょうか。考えられる手法はいくつもありますが、代表的な3つの施策をご紹介します。

1 顧客の声を正確に把握する

顧客の要望を正確に把握することは、顧客ロイヤリティを上げる施策をとるために必要なことです。
売り手や作り手は、「こういう商品、サービスを提供したい」という意識が強くなりがちです。それは、必要なものではあるのですが、企業側のひとりよがりに陥る危険も秘めています。それよりも、顧客の視点に立ち、顧客が求めているものを追求した製品やサービスを生み出せば、「こういうものが欲しかった!」と市場にも受け入れられるものです。
決して簡単ではありませんが、顧客のニーズを正しく把握し、それに応えるということは、顧客ロイヤリティを高める上で非常に大きな意味を持っています。

2 カスタマーエクスペリエンス(CX)を高める

近年、注目されている概念に、「カスタマーエクスペリエンス(CX)」があります。これは「顧客体験」と訳され、製品やサービスを購入する前後のプロセスにおける、顧客の体験を指します。
人気のカフェやレストランに、なぜ人が集まるのか。それは、一杯のコーヒーや一皿の料理の味や価格もさることながら、そのお店でしか味わえない雰囲気があるためではないでしょうか。つまり人は、そのお店でコーヒーや料理を味わう以上に、「雰囲気を楽しむ」という体験を味わっているのです。それが独自のものであればあるほど、「ほかのものでは代用できない」ということになります。
顧客ロイヤリティを高めるためには、顧客に対して質の高い体験を提供する、カスタマーエクスペリエンスを高めることも大いに有効です。

3 データを管理・分析し、施策に活かす

CRMやMAなどのITツールの登場と普及によって、顧客の行動をデータ化し、詳細に分析することが容易になりました。こうしたツールを使ってデータを管理すれば、顧客の要望をより正確に把握することができますし、反対にどのようなところに不満を感じているかをあぶり出すこともできるでしょう。
そして、分析の結果を基にさまざまな施策を打ち、さらにその結果を分析することで、広範囲にわたって改善を加えることができます。
過去の成功体験や勘にばかり頼らず、データにもとづいた施策で、着実に顧客ロイヤリティの向上を狙っていきましょう。

顧客ロイヤリティの向上から改善を図った事例

顧客ロイヤリティの向上は、実に多くの企業があらゆる場面で取り組みを進めています。工場のためには、情報を収集・管理し、データにもとづいた施策を展開することが、欠くことのできない要素です。
最後に、業界や分野を問わず実践されている、顧客ロイヤリティ向上の事例をご紹介しましょう。

事例1 詳細な顧客情報のデータベース化で質の高いサービスを提供

会社名:Caesars Entertainment

ネバダ州リノにオープンしたビンゴパーラーを起源に持つCaesars Entertainmentは、現在ではカジノの運営をはじめ、世界的なエンターテインメント企業に成長しました。その発展に貢献したもののひとつとして、全米さらには各国の顧客とのソーシャル化を果たしたことが挙げられています。

カジノは、ゲームそのものでの差別化が難しいため、ほとんどの企業がショーやイベントに力を入れ、総合エンターテインメントの提供というスタイルで運営されています。同時に、顧客ロイヤリティの向上は、各企業にとって最上位に位置する課題です。
Caesars Entertainmentは、重要なゲストに最上のサービスを提供できるよう、顧客データを「Salesforce」で一元管理。過去の予約履歴はもちろん、ショーやイベントの観覧情報、嗜好の傾向などを詳細にデータベース化し活用しています。そのため、全世界の同社のリゾート拠点で、質の高いサービスを提供できるようになりました。

さらに、7万人を超える従業員が専用のソーシャルメディアによってつながり、ショーやイベントのスケジュールのほか、あらゆる情報を共有。部門の垣根を越えた高品質のサービスを、コンスタントに提供する体制が整えられ、顧客ロイヤリティの向上に大きく貢献しています。

事例2 Sales Cloudによる戦略的な施策で、顧客ロイヤリティ向上を目指す

会社名:銀座美容外科クリニック

最新機器と熟練の技術で高度な美容医療を提供する、銀座美容外科クリニック。同院では、2010年の1号院開院から急速に症例数を積み上げてきましたが、その一方で顧客情報の入力作業が過大となり、人的リソースが大きく圧迫される状況が続いていました。しかし、同院が掲げる「顧客満足度第一」の理念を実践するには、詳細な顧客情報は必須です。そこで、「Sales Cloud」の導入によって、受付業務の効率化に動き出しました。

それまで同院で使用していたのは、オンプレミス型システムと、Excelによる管理方法です。しかしこれでは、入力の作業負荷と所要時間が大きい上、複数拠点での共有やセキュリティの不安など、多くの問題が残ります。この体制をSales Cloudに移行したことで、業務は一気に効率化しました。また、初診時に来院した顧客自身にタブレットで情報を入力してもらうことで、作業負荷も大きく削減。各拠点間で安全かつ簡単に情報共有ができるしくみが構築できました。

さらに、蓄積されたデータを基に「Pardot 」を活用し、既存顧客への効果的なアプローチにも着手。タイミングを図ったステップメールは60%以上という高い開封率をクリアするとともに、メール1本で70人ものリピーター獲得にも成功しています。
同院では、BIツールの「Wave Analytics」も導入して、データにもとづいた経営戦略をとり、サービスの拡充と顧客ロイヤリティの向上を目指しています。

今すぐ、顧客ロイヤリティの向上に動き出そう

自分を大切に扱ってくれる相手に、悪い感情を持つ人はいません。同じことが、企業と顧客のあいだにもいえます。
企業が顧客の立場に立ち、顧客を大切にすれば、顧客もまた企業を大切にしてくれるもの。顧客ロイヤリティを高める手段は数多くあります。まずは、すぐにできるところから着手してみてはいかがでしょうか。

 

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