レコメンドとは、サイトを訪れたユーザーに最適な商品やサービスをおすすめすることです。ECサイトで買い物を楽しんでいる際に、「あなたへのおすすめ」といった案内を見た経験がある方も多いでしょう。検索・行動履歴にもとづいて、ユーザーにおすすめの商品を提案する機能をレコメンドエンジンと言います。
本記事では、レコメンドとは何か、仕組みやメリット、導入方法を詳しく解説します。すでにECサイトを運営しているが売上に伸び悩んでいる方、これから運営しようと考えている方は、ぜひ本記事をお役立てください。
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目次
レコメンドとは

「レコメンド」とは、サイトを訪れたユーザーの関心や行動履歴にもとづいて、最適な商品やサービスをおすすめすることです。英語の「recommend(薦める、推薦する)」からきており、ECサイトや動画配信サービス、SNSでこのレコメンド機能が見られます。
よく「リコメンド」との違いを気にする方がいますが、リコメンドとレコメンドの意味は同じです。
レコメンドエンジンの意味
レコメンドエンジンとは、WebサイトやECサイトにおいて、ユーザーの検索履歴や購入履歴のデータにもとづき、おすすめの商品をレコメンドする機能を指します。たとえば、以下のような例が当てはまります。
- 同じ商品を購入した人が検索している他の商品
- 検索した商品と系統が似た商品
- 閲覧履歴からのおすすめ商品
ユーザー目線だと、自分で商品を検索しなくても「おすすめ」として表示されるため、効率よく自分好みの商品を見つけられる点がメリットです。一方でサイト運営者目線だと、ユーザーが興味のありそうな商品を効果的に提示でき、購買率や満足度を高められることが魅力です。
レコメンドエンジンが活用されているサイト
レコメンドエンジンは、主にECサイトや動画配信サービス、SNS、マッチングアプリなどで活用されています。
サービスジャンル | 例 | 目的 |
---|---|---|
ECサイト | ・Amazon ・楽天市場 ・Yahooショッピング | おすすめの商品を紹介し購入率を向上させるため |
動画配信サービス | ・Netflix ・ディズニープラス | 嗜好にもとづいた動画の提案で解約を防止するため |
SNS | ・Instagram ・TikTok ・YouTube | 興味のある投稿を表示し回遊率を上げるため |
マッチングアプリ | ・恋愛マッチングアプリ ・転職マッチングアプリ | 条件に合ったおすすめの提案でマッチング率を向上させるため |
ECサイトでは、「よく一緒に購入されている商品」「類似商品と比較する」など、おすすめの商品を紹介して購入率の向上を狙っています。また動画配信サービスやSNSでは、「おすすめ」欄にユーザーの興味がある投稿を流し回遊率をアップすることが目的です。
ECサイトの種類や運営方法について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
レコメンドエンジンの仕組み(アルゴリズム)
レコメンドエンジンは、おもに次の4つのアルゴリズムを組み合わせて構築されています。
- ルールベースレコメンド:独自ルールで提案
- 協調フィルタリング:行動履歴で提案
- コンテンツベースフィルタリング:商品属性で提案
- ハイブリッドレコメンド:異なる手法を組み合わせて提案
それぞれの仕組みについて具体的に解説します。
ルールベースレコメンド:独自ルールで提案
「ルールベースレコメンド」とは、サイトの運営者があらかじめ定めておいた提案ルールにもとづいて商品を提案する仕組みです。
たとえば以下のような例が考えられます。
- クリスマスのキャンペーン広告から流入したユーザーに人気のケーキやプレゼントを推薦
- 母の日ギフトの広告から流入したユーザーにおすすめの花やプレゼントを推薦
ルールベースレコメンドでは、新商品や期間限定商品など、とくにアピールしたい商品の売り出しに効果的です。しかしユーザーの行動データを分析しておすすめするわけではないため、設定したルールがユーザーの興味に合った最適な提案になるとは限りません。A/Bテストを行いながらベストな提案方法を探しましょう。
協調フィルタリング:行動履歴で提案
「協調フィルタリング」は、検索や購入など、ユーザーの行動履歴にもとづいて商品を提案する方法です。中でも「アイテムベース」と「ユーザーベース」の2つの提案方法に分かれています。
アイテムベース | 商品間の類似性をもとに提案 |
ユーザーベース | ユーザー間の類似性をもとに提案 |
まずアイテムベースとは、類似したアイテムを提案する方法です。たとえば、商品Aを購入したユーザーが商品Bも購入する傾向にあるとき、商品Aを検索した人を対象に商品Bもおすすめします。
一方のユーザーベースとは、趣味や行動履歴が似ているユーザー間の類似性をもとに提案します。購入パターンが似ている他ユーザーの購入履歴を参考に、商品を提案する方法です。
この手法は膨大なデータを必要とする一方で、精度の高い提案を可能にします。
コンテンツベースフィルタリング:商品属性で提案
「コンテンツベースフィルタリング」とは、ジャンルやブランド、色、価格など、事前に設定した商品の属性にもとづいて提案する方法です。
たとえばECサイトであれば、以下の例が当てはまります。
- ブランドAのカバンを探しているユーザーに対し、同じブランドの異なるカバンを提案
- 黒色のTシャツを探しているユーザーに対し、異なるブランドの黒色のTシャツを提案
動画配信サービスにおいては、俳優Bが出演するドラマを見たユーザーに俳優Bが出演する他のドラマを推薦します。
属性は運営者が自由に設定できるため、新しいユーザーで閲覧履歴や購入履歴のデータが十分になくても、商品をおすすめできる点が魅力です。
ハイブリッドレコメンド:異なる手法を組み合わせて提案
「ハイブリッドレコメンド」とは、上で紹介した「ルールベースレコメンド」や「協調フィルタリング」「コンテンツベースフィルタリング」を組み合わせて提案する手法です。各手法のデメリットを補い、メリットを最大化できます。
秋物のコートを探しているユーザーに向けて、たとえば次のような提案ができるでしょう。
- コンテンツベースフィルタリング:同じタイプのコートを提案
- 協調フィルタリング:他のユーザーが一緒に購入したスカーフやブーツを提案
同じタイプのコートを提案(コンテンツベースフィルタリング)しつつ、他のユーザーが一緒に購入したスカーフやブーツを同時に提案(協調フィルタリング)します。
今回は上記2つの手法を組み合わせましたが、組み合わせ方は自由に設定できます。
レコメンドエンジンを活用するメリット

レコメンドエンジンの活用は、以下のような大きなメリットをもたらします。
- 商品の購買率が高まる
- カスタマーエクスペリエンスが向上する
- 最適な在庫管理ができる
具体的に見ていきましょう。
商品の購買率が高まる
レコメンドエンジンを活用すると、ユーザーに対して最適な提案が可能です。ユーザーの多くは自分好みの商品を見つけられない場合、サイトを離脱して他のサイトを閲覧します。しかしレコメンドエンジンはユーザーが興味のありそうな商品を効率的に表示できるため、サイトの滞在時間を伸ばし、離脱する前に購入してもらえる可能性を高められます。
関連する商品の提案も行うことでクロスセルやアップセルも狙え、購入予定でなかったアイテムの購入も促せる点がポイントです。アップセル・クロスセルの解説は以下の記事をご覧ください。
関連記事:アップセル・クロスセルとは?違いや活用方法、成功事例を紹介
カスタマーエクスペリエンスが向上する
カスタマーエクスペリエンス(CX)とは、顧客体験や顧客体験価値を指します。私たちが商品を購入する際、値段や機能、利便性など、商品自体の価値だけでなく、購入にいたるまでの過程なども重視しています。ECサイトの場合は、購入したい商品を見つけるまでのプロセスです。
たとえ商品の価値が高くても、見つけにくいサイトであればCXが高いとは言えません。そこでレコメンドエンジンでおすすめの商品を提案できると、ユーザーが「自分に合った提案を受けている」と感じCXが向上します。結果として顧客の満足度アップにもつながります。
最適な在庫管理ができる
ユーザーの行動履歴やトレンド情報が把握できれば、商品の売れ行き予測を立てられる点もメリットです。レコメンドエンジンで商品の需要を予測できるため、適切なタイミングで在庫を補充できるようになります。
また在庫が多い商品や売れ残りそうな商品を特定のユーザーに優先的にレコメンドすることで、在庫を効率的に消化できることもポイントです。
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レコメンドエンジンを導入する方法

レコメンドエンジンを導入する方法は、大きく分けて以下の3つです。
- 既存のレコメンド機能を活用する
- レコメンドエンジンツールを導入する
- オープンソース型レコメンドエンジンを活用する
それぞれの特徴を1つずつ解説していきます。
既存のレコメンド機能を活用する
ASP(Application Service Provider)型のECサイトでは、既存のレコメンド機能の活用が可能です。ASPとは、インターネットを経由してアプリケーションを提供する事業者のことで、ASPを活用すれば自社サーバーを持たずにクラウド上でECプラットフォームを利用できます。
大手ECサイトだと『BASE』や『Shopify』、『STORES』などが代表的です。レコメンド機能が標準搭載されているものであれば、追加費用なしでレコメンド機能の利用が可能です。ただしカスタマイズには限界があるため、初期費用やランニングコストを抑えたい小規模事業者におすすめの選択肢と言えます。
レコメンドエンジンツールを導入する
専用のレコメンドエンジンツールを導入する方法もあります。これらのツールはリアルタイムレコメンドやランキング表示、テキスト・画像でのおすすめ機能など、あらゆる機能を利用できる点がメリットです。
自社サーバーも不要で、予算や欲しい機能に合わせてツールを比較・導入できます。ただし導入コストがかかるため、導入の際は後述する効果的なツールの選び方を参考にしてみてください。
オープンソース型レコメンドエンジンを活用する
自社のニーズにマッチしたレコメンドシステムを構築したい場合は、オープンソース型のレコメンドエンジンがおすすめです。自社で用意したサーバーにインストールし、カスタマイズや管理を自社で行います。
カスタマイズにあたって専門知識は必要ですが、オリジナルのレコメンド機能を利用できる点が魅力です。自社サーバーを活用するため、セキュリティ面も安心できるでしょう。
効果的なレコメンドエンジンツールの選び方

レコメンドエンジンツールを検討する際は、以下3つのポイントを確認しましょう。
- 費用対効果が高いか
- 必要な機能が揃っているか
- レコメンド方法は適切か
これらの観点を意識してツールを選ぶことで、自社に合った効果的なツールの活用が実現します。
費用対効果が高いか
ツールを選定する際には、初期導入費用や月額費用だけでなく、それによって期待される効果を考慮しましょう。
レコメンドエンジンツールはPV数に応じた課金制であったり、具体的な費用は問い合わせが必要であったりするケースが多くあります。またオプション機能を追加すると、費用がさらに膨らむ可能性もあるでしょう。売上増加や顧客満足度向上など、具体的なベネフィットを得られる、費用対効果が高いツールを選びましょう。
必要な機能が揃っているか
搭載されている機能はツールによってさまざまです。自社のニーズに応じた機能が含まれているかあらかじめ確認しましょう。
たとえばランキングを表示させたいのであれば、ランキング表示機能が搭載されているツールを選ぶ必要があります。自社サイトに必要な機能は何か、レコメンドエンジンツールを導入する目的を明確にすることが重要です。
レコメンド方法は適切か
ツールによってレコメンドやフィルタリング方法が異なる点にも注意が必要です。
レコメンド方法 | 提案の仕方 |
---|---|
ルールベースレコメンド | 独自のルールで提案 |
協調フィルタリング | 行動履歴をもとに提案 |
コンテンツベースフィルタリング | 商品属性で提案 |
ハイブリッドレコメンド | 異なる手法を組み合わせて提案 |
たとえばアパレル系のECサイトであれば、似たような好みのユーザーが購入した商品を提案できる、協調フィルタリング(ユーザーベース)が有効でしょう。自社サイトに適したレコメンド方法があるか、ツールを導入する際に必ずチェックしましょう。
AI搭載のレコメンドなら最適な商品の提案が可能

近年、多くのレコメンドエンジンはAI技術を活用しており、パーソナライズされた提案が可能です。Salesforceのコマース向けAI『Einstein レコメンデーション』は、AIが最適な商品・サービスをユーザーに自動で提案します。
顧客がクリック、ダウンロード、参照、購入するたびに顧客の嗜好に関するデータを蓄積します。アルゴリズムと独自のビジネスルールを組み合わせ、顧客ごとにもっとも関連性の高い商品をリアルタイムでおすすめすることが可能です。SalesforceのAI『Einstein』に関して詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:【Salesforce Einstein】Salesforceが開発するAI、Einstein(アインシュタイン)ってなんだ?
レコメンドエンジンを活用してECサイトを成長させよう

レコメンドとは、サイトを訪れたユーザーの嗜好や行動履歴にもとづいて最適な商品やサービスをおすすめすることです。ECサイトや動画配信サービス、SNSなどでよく見られます。
- ルールベースレコメンド:独自ルールで提案
- 協調フィルタリング:行動履歴で提案
- コンテンツベースフィルタリング:商品属性で提案
- ハイブリッドレコメンド:異なる手法を組み合わせて提案
これら4つの手法を活用することで、商品の購買率やカスタマーエクスペリエンスの向上、最適な在庫管理に役立てられます。ECサイトの運営者は、レコメンドエンジンを活用してECサイトをさらに成長させましょう。
Salesforceの『Einstein レコメンデーション』を活用すれば、AIが最適な商品・サービスをユーザーに提案します。ECプラットフォームである『Commerce Cloud』でレコメンド機能を活用し、ECサイトの販売力を強化させてみませんか。商品に関するデモ動画は以下よりご覧ください。
Commerce Cloud
製品デモ動画
EコマースプラットフォームであるCommerce Cloudの実際の操作と解説を交えながらご紹介します。
