営業パーソンの課題発見や、営業力強化に用いられる手法のひとつが「ロープレ(ロールプレイング)」です。ロープレを実施することで、自身の良い部分と改善点を客観的に把握でき、成長につなげられます。
また、目的に合わせてロープレの種類やテーマを設定することで、成果を上げているベテラン営業パーソンのノウハウやスキルを効果的に取得可能です。本記事では、ロープレの目的やメリット、デメリット、実施手順、効果的なロープレを行うポイントなどを詳しく解説します。
“営業お断り文句”への切り返し術 5選
営業でよく聞く”お断り文句”の裏に隠された意図を深掘りする質問術や、事前準備の重要性を解説します。よくある”お断り文句”と対処法、チーム演習問題も紹介します。

目次
ロープレとは

ロープレは「ロールプレイング」の略称で、特定の役割や立場を演じることで実践的なスキルを磨く研修手法です。ビジネスのなかでも、とくに営業研修では欠かせない手法として広く活用されています。
実際の商談を想定し、営業担当者と顧客役に分かれて模擬商談を行うことで、理論だけでなく実践的なスキルを効率的に習得できます。営業ロープレでは、商品説明から価格交渉、クレーム対応までさまざまなシチュエーションを設定し、安全な環境で実践的な練習が可能です。
ロープレの目的と種類に関して、詳しく解説します。
ロープレの目的
ロープレの目的は、営業パーソン一人ひとりの実践的なスキルを向上させ、組織全体の営業力を強化することです。
実際の商談では、さまざまな状況や予期せぬ展開に直面することがあります。ロープレを通じて、さまざまな営業パターンを事前に練習することで、実践での対応力を磨くことが可能です。
また、ロープレが効果的な理由として「安全な失敗の場」として機能することが挙げられます。実際の商談において「失敗は許されない」と気負いすぎてしまい、相手の悩みや課題を深く聞き出せなかったり、商材の魅力を伝えられなかったりする人も少なくありません。しかし、ロープレでは失敗を恐れずにチャレンジできます。
そのため、新人営業パーソンや営業力を磨きたい人にとって、効果的な訓練方法と言えます。
ロープレの4つの形式
営業ロープレには、目的や状況に応じて使い分ける、以下4つの形式があります。営業パーソンの成長段階や課題に合わせて最適な方法を選択してみましょう。
ロープレの形式 | 特徴 |
---|---|
ケース型ロールプレイング | ・実際の商談事例や取引先との営業シーンをイメージして、特定の状況での対応を練習する形式 ・「価格交渉で値引きを求められた場合」や「競合他社との比較を求められた場合」など、具体的なシチュエーションを設定することが大切 ・実際の営業をイメージして行うため、営業パーソンの練習に最適であり、新たな気付きが生まれたり自身の営業スタイルの改善につなげられたりする |
グループロールプレイング | ・複数人のグループに分かれて実施する形式 ・営業役や顧客役、観察者役に分かれることで、より多角的な視点からフィードバックが得られる ・顧客側の立場で営業に参加できるため、顧客視点を養うのに効果的 |
モデリング型ロールプレイング | ・成功している営業パーソンの商談スタイルを見て模倣し、その動作や話法を学ぶ形式 ・ベテラン営業の優れた対応力や説得力のある話し方を直接観察し、実践することで、効果的なスキル習得が可能 |
問題解決型ロールプレイング | ・営業活動のなかで起きた問題や取り組む課題に対して、解決方法を検討しながら行う形式 ・たとえば、失注になったケースや顧客からのクレームに対して、ベテラン営業パーソンも含めて営業全体で解決策を探る ・営業チーム全体のスキルアップや生産性向上が期待できる |
ロープレを取り入れる5つのメリット

営業力を強化する方法のひとつとして、多くの企業がロープレを取り入れています。ロープレを取り入れる具体的なメリットは、以下の5つです。
- 営業スキルを効率的に磨ける
- 営業トークに慣れる
- 自分の課題を客観的に把握できる
- 営業ノウハウを学びやすい
- 自社商品の理解が深まる
それぞれ詳しく解説します。
営業スキルを効率的に磨ける
実践的な訓練であるロープレを取り入れることで、実際の商談で求められる臨機応変な対応力や説得力などを学べ、効率的に営業スキルを磨けます。
ロープレでは、顧客への挨拶から商品アピール、価格交渉、クレーム対応まで、実務で直面するさまざまなシチュエーションを設定して経験を積むことが可能です。また、成功パターンだけでなく失敗しがちなケースも含めて練習できるため、実践で苦手意識をもちやすい場面を重点的に練習して弱点を効率的に克服できます。
ベテラン営業パーソンからフィードバックを得られることで、実際の商談では気づきにくい自身の課題や改善点にも気がつけます。
営業トークに慣れる
ロープレを数多くこなすことで、営業トークへの苦手意識を克服し、実践の営業に慣れることが可能です。
営業に慣れていない場合、実際の商談において緊張や焦りから言葉に詰まったり、伝えたいポイントを忘れたりする人も少なくありません。
また、カタログや資料の内容を頭で理解しているだけでは、顧客との会話のなかで適切なタイミングで必要な情報を引き出すことは困難です。
しかし、ロープレを通して、商品の特徴やメリットを自分の言葉で繰り返し説明することで、スムーズな商品説明が可能になります。また、想定される質問への応答も練習できるため、実際の商談での対応力も向上します。
自分の課題を客観的に把握できる
客観的な意見を聞けるロープレを通して、実践では気づきにくい自身の課題を把握することが可能です。
たとえば、商品説明時の論理展開の甘さや質問の仕方、悩みの聞き出し方、クロージングのタイミングなど、細かな改善点を第三者の視点から指摘してもらえます。
また、録画してあとから自身の営業トークを見直すことで、普段は気づかないクセや改善点も明確にすることが可能です。
反対に、自身の強みも客観的に知れるため、課題と強みの両面を正確に把握して、より効果的な改善が期待できます。
営業ノウハウを習得しやすい
営業ノウハウの習得において、ロープレは非常に効果的です。
とくに、ベテラン営業パーソンとのロープレでは、長年の経験から得られた実践的なテクニックや商談を成功に導くためのコツを直接学べます。
また、ベテランの商談スタイルを間近で観察し、その場での質問やフィードバックを通じて、対応方法や発言の意図を深めることにもつながります。ベテラン営業パーソンが経験してきたさまざまなケースや対処法を知ることで、同じ失敗を防ぎ、より効率的なスキルアップが可能でしょう。
自社商品の理解が深まる
実際に商品やサービスをアピールする場面を想定してロープレすることで、自社商品の理解を深めることが可能です。
たとえば、自分の言葉で話せるように繰り返し練習することで、商品知識の向上が期待できます。また、顧客役から以下のような商品の特徴や優位性に関する質問をしてもらうことで、自身の理解度を確認できるでしょう。
- 競合製品との違いは?
- 導入後のサポート体制は?
- コストパフォーマンスの根拠は?
自社商品の理解が深まることで、顧客の課題や悩みに対してどのような価値を提供できるかを自分の言葉で説明できるようになります。
ロープレを取り入れる2つのデメリット

多くのメリットがあるロープレですが、導入するにあたって、以下のようなデメリットも把握しておきましょう。
- 顔見知り同士で実施することで緊張感が欠けてくる
- 時間の確保が課題になりやすい
デメリットに気をつけながらロープレすることで、より効果的な成果が期待できます。詳しく解説するのでご覧ください。
顔見知り同士で実施することで緊張感が欠けてくる
ロープレを社内で実施する際のデメリットとして、回を重ねるごとに緊張感が薄れていくことが挙げられます。
ロープレは、社内の同じメンバーで行うのが一般的です。何度も同じ相手とロープレすることで、お互いの特徴や反応パターンを把握してしまい、形だけのやり取りになる可能性があります。
また、日常的に接している同僚との練習では、実際の商談で感じる緊張感や不安感を十分に想定できない問題も発生します。
これらの問題への対策として、以下のような工夫が有効です。
- 定期的にロープレ相手を変更する
- 予期せぬ展開や難しい状況設定を組み込む
- 他部署のメンバーと合同でロープレを実施する など
また、ロープレの評価基準を明確にし、競争要素を取り入れることで、適度な緊張感を維持することも可能でしょう。ロープレは、練習でありながらも「本番」の姿勢で臨むことが大切です。
時間の確保が課題になりやすい
日々忙しい営業現場において、ロープレのための時間確保は大きな課題と言えます。営業パーソンは日々の商談や顧客対応に追われており、さらにロープレには複数人の時間調整が必要なため、定期的な実施が困難になりがちです。これらの課題を解決するには、以下のような組織的なアプローチが重要です。
- 週1回の定例ミーティングの一部をロープレに充てる
- 朝礼や終礼の時間を活用する
- 月に1度のスキルアップデーを設定する
- 30分のミニロープレを取り入れる(2名×15分の交代制)
とくにロープレの時間確保に課題を抱えている方は、以下のような手順・時間配分で30分のミニロープレを取り入れてみるのがおすすめです。
- 1人目のロープレ実施(5分)
- マネージャーと営業相手役からのフィードバック(10分)
- 2人目のロープレ実施(5分)
- マネージャーと営業相手役からのフィードバック(10分)
「効果的なロープレを実施するための手順」として、あらかじめカレンダーに入れておくことで、開始時刻にきっちりロープレをスタートできます。また、アイスブレイクなく開始することで緊張感を保ったままロープレに移れて、ロープレの質を高める効果もあります。一例ですが、このような工夫も取り入れることで、限られた時間でも高い学習効果を得ることが可能です。
効果的なロープレを実施するための手順

効果的なロープレを実施するための手順は、以下の通りです。
STEP1:テーマを設定する
効果的なロープレを実施するには、明確なテーマ設定が不可欠です。
漠然と「営業練習」というだけでは、いくらロープレを繰り返しても具体的な成果を得るのは難しいでしょう。テーマ設定では、「何を学び」「どのようなスキルを向上させたいのか」を具体的に定義することが大切です。
また、テーマに応じて、適切なロープレ形式を選択しましょう。注意点は、参加者の経験値に合わせてテーマを調整することです。
STEP2:役割を設定する
テーマ設定が終わったら、役割を決めましょう。基本的には、スキル向上を図りたい営業パーソンが「営業役」を、経験豊富な上司や先輩が「顧客役」を務めます。この組み合わせにより、実践的なアドバイスとフィードバックが可能になり、自身の営業スキルを客観的に把握できます。
ただし、役割設定は固定化せずに、時には逆の立場を経験することも有効です。たとえば、経験の浅い営業パーソンが顧客役を務めることで、顧客心理への理解が深まり、より効果的な提案を思いつける可能性があります。
同時に、上司がどのように営業してくるのかを体感できる良い機会になるでしょう。
STEP3:事前準備を行う
ロープレの成果を最大化するためには、入念な事前準備が欠かせません。具体的には、以下のような準備を行います。
- 想定される商談シナリオの作成
- 必要な資料やツールの準備
- 評価項目の設定 など
重要なのは、現実の商談に近い状況を作り出すための情報設定です。
たとえば、顧客企業の業界動向や経営課題、競合状況などの背景情報を設定することで、より実践的な練習が可能になるでしょう。また、価格帯や導入実績、想定される質問や反論なども事前に整理しておくことで、スムーズなロープレ進行が可能になります。
評価シートの準備も重要です。「商品説明のわかりやすさ」「質問力」「課題解決提案力」など、具体的な評価項目を設定することで、客観的なフィードバックが可能になります。
STEP4:実施後のフィードバックを行う
ロープレ実施後には、必ずフィードバックを行いましょう。良かった点(Good)と改善点(More)を具体的に共有することで、営業スキルの向上につながります。フィードバックは、事前に準備した評価シートにもとづいて行うことで、より客観的な内容となるでしょう。
また、具体的な改善提案を含めてフィードバックすることで、ロープレの成果向上が期待できます。フィードバックの内容を記録に残しておくと、次回のロープレで改善状況を確認でき、継続的な成長につながります。
人と自律型エージェントの協業により営業組織を拡張し売上を最大化
自律型エージェント「Agentforce for Sales」が人が持つ可能性を最大限に引き出すのみでなく、組織の一員となって商談創出を完遂します。人と自律型エージェントが共創する新たな営業組織の姿を、デモ動画でご紹介します。

ロープレを効果的に行うための5つのポイント

ロープレの成果は、実施方法によって大きく変わります。同じ時間を使うのであれば、より高い効果を得られる方法を選びたいものです。形式的な実施に陥ることなく、確実に営業力向上につなげるために、以下の5つのポイントに気をつけましょう。
- 営業役と顧客役は定期的に変える
- フィードバックは良い点・改良点の両方をもらう
- ロープレを行うゴールを明確にする
- 動画撮影を行い振り返りチェックを行う
- ロープレの内容をチーム内で共有する
それぞれ詳しく解説します。
営業役と顧客役は定期的に変える
効果的なロープレを行うためには、役割のローテーションが重要です。
同じ相手と固定的に実施していると、お互いの特徴や反応パターンを把握してしまい、実践的な学習効果が低下する可能性があります。しかし、定期的な役割変更を行うことで、新鮮な視点と多様な経験を得ることが可能です。
また営業役と顧客役を変える際に効果的なのは、さまざまなスキルレベルの営業パーソンと組むことです。たとえば、トップセールスとのロープレでは高度な商談テクニックを学べ、同期との練習では互いの成長ポイントを共有できます。新人と組む際は、基本的なスキルの再確認や、指導力の向上にもつながるでしょう。
また、営業経験のない社内メンバーに顧客役を依頼することで、より現実の顧客に近い反応を引き出すことも可能です。専門用語の使いすぎや説明のわかりにくさなど、営業パーソン同士では気づきにくい課題もはっきりするでおすすめです。
フィードバックは良い点・改良点の両方をもらう
効果的なフィードバックは、営業スキル向上に欠かせません。ポイントは、良い点(Good)と改善点(More)をバランスよく指摘することです。とくに良い点の指摘は、参加者のモチベーション維持に影響します。
改善点を伝える際は、単なる欠点指摘や感情的な指摘ではなく「このような方法を試してみては?」という、具体的な改善案を含めることで具体的な改善アクションを打てます。
また、優先順位をつけて指摘することで、段階的なスキル向上が期待できるでしょう。
ロープレを行うゴールを明確にする
効果的なロープレ実施には、明確なゴール設定が不可欠です。
たとえば、「新規開拓の成約率を向上させたい」「価格交渉における値引き希望に対する返答のパターン」など、具体的な目標を設定してみましょう。
また、個人の成長段階に応じたゴール設定も効果的です。新人であれば「基本的な商品説明をスムーズに行える」「的確な質問ができる」など、基礎的なスキルの習得からはじめ、徐々にレベルアップを図っていきます。
最初に具体的なゴール設定を行うことで、ロープレの内容や評価基準も明確になり、より効果的な練習が可能になります。
動画撮影を行い振り返りチェックを行う
ロープレの効果を高めるためには、動画撮影による客観的な振り返りが非常に効果的です。
動画撮影することで、自分では意識していない話し方のクセや表情、姿勢などの非言語コミュニケーションの要素を映像を通じて具体的に確認できます。あらためて振り返ることで、その場のフィードバックだけでは気づけない改善点を発見できます。
また、成功している部分も同様に確認できるため、良い部分をさらに強化することも可能ですし、モチベーション維持にもつながるでしょう。
ロープレの内容をチーム内で共有する
個人のスキル向上に加えて、チーム全体の営業力を高めるためには、ロープレでの学びを組織的に共有することが重要です。
たとえば、以下のようなアクションにより、個人の経験をチーム全体のノウハウとして活用できます。
- 週1回のミーティングでロープレの好事例や改善点を共有する
- 成功事例をデータベース化する
「価格交渉での効果的な説得方法」「クレーム対応での解決プロセス」「競合対策の具体的アプローチ」など、さまざまなシチュエーションを共有するのも有効です。これにより、チームメンバー全員が同じような課題に直面した際の対応力が向上します。
Salesforceの「セールス向けAI」ならより効果的なロープレを実現可能

最新のAIテクノロジーを活用することで、ロープレの効果をさらに高めることが可能です。
Salesforceの営業支援ツールである「Sales Cloud」では、顧客のあらゆる情報を一元管理でき、見込み顧客のリストアップから売上予測、商談のクローズまで、あらゆる営業活動の効率アップを支援しています。
また、Salesforceが開発したAI「Einstein」を搭載しており、過去の商談データや顧客とのコミュニケーション履歴を分析することで、効果的な営業が実現可能です。
たとえば「もっとも受注確率が高い商談をリストアップして」と依頼することで、進行中の商談情報と顧客データをもとに回答してくれます。受注率の高い顧客がわかれば、その顧客の情報をインプットして、成果につながりやすいロープレを実施できるでしょう。
さらに「優先度の高い案件への対応練習」「業界特性に応じた提案力強化」など、より戦略的なロープレも可能になります。これにより、限られた時間でより効果的な営業力強化を実現できるでしょう。
ロープレを効果的に活用し営業力強化を目指そう

営業ロープレは、実践的な営業スキルを効率的に向上させるための重要なトレーニング手法です。
座学では得られない実践的な経験と具体的なフィードバックを通じて、着実な成長を実現できます。効果的な実施のためには、明確なゴール設定と入念な準備が欠かせません。また、役割の定期的な変更や動画撮影による振り返りなど、さまざまな工夫を取り入れることで、より高い学習効果が期待できます。
時間の確保や緊張感の維持といった課題はありますが、ロープレの仕組みを確立し継続的に取り組むことで、営業パーソン個人だけではなく組織全体の営業力強化にもつながります。
営業支援ツールや最新のAIツールも活用しながら、効果的なロープレを実現してみましょう。
営業力強化塾“安易な値引き”と“無駄な失注”をなくす3つの質問
本資料では、安易な値引きや失注を減らすために、お客様が営業や提案をどうやって選んでいるのか、その心理や構造を解き明かすとともに、価格だけに左右されない営業力を身につけるための質問方法や、効果的な営業メンバーへの育成・マネジメント方法を紹介します。
