「Slack(スラック)」は、今やビジネス現場に欠かせないコミュニケーションツール。チームでのやりとりを円滑に進める強力な手段ですが、組織ごとに文化や運用ルールが異なるため、新しいメンバーを迎える時、些細な違いが戸惑いを生むこともあります。たとえば、メンションやDM(ダイレクトメッセージ)、時間外の連絡など、文化の違いがストレスや疎外感の原因になることも。
本記事では、新しいメンバーを迎えるにあたって、Slackを使った“チームづくり”を円滑にするコツを、前編で「先輩社員編」、後編で「新入社員編」の2部構成で紹介します。
【公式】Slack(スラック)とは?最新3機能を5分解説
Slackは、より効率的に仕事を進めるためのプラットフォームです。何ができるのか、基本機能と最新機能を解説します。

目次
世代間ギャップを越えて、心理的安全性の高いチームづくりを
この春から新入社員を受け入れる立場になった人の中には、世代ごとのコミュニケーションスタイルの違いに、戸惑う人も多いのではないでしょうか。
対面はもちろん、「Slack」などのオンライン環境でもこの違いは表れます。そんな時に役立つのが、チーム内で共通の「Slack運用ルール」を持つこと。
「迎える側」と「迎えられる側」の双方が安心してコミュニケーションが取れる環境づくりにつながります。今回は、「Slack」を効果的に使いこなすためのポイントを4つに絞って紹介。ルール策定にあたっては、若者のコミュニケーション事情に詳しい日本大学 文理学部 社会学科の小川豊武准教授にアドバイスをいただきました。

小川豊武准教授プロフィール
1981年東京都生まれ。早稲田大学教育学部社会科を卒業後、一般企業での勤務を経て、東京大学大学院学際情報学府博士課程に進学(満期退学)。博士(社会情報学)の学位を取得し、現在は日本大学文理学部准教授を務める。専門は若者のコミュニケーションをめぐる社会学で、戦後日本における「若者」言説の歴史研究や、現代の若者文化とコミュニケーションに関する量的研究に取り組んでいる。近著に『「最近の大学生」の社会学』(共編著、ナカニシヤ出版)、『広告文化の社会学』(分担執筆、北樹出版)などがある。
1.Slackでの質問・指摘は「共感」から始めよう
テキストだけのやりとりは、声のトーンや表情が伝わりにくく、意図が誤解されてしまうことがあります。だからこそ、「Slack」では建設的で丁寧な伝え方が大切です。
小川准教授コメント:
「若い世代は、“個”を尊重する意識が非常に高く、“共感”を重視するので、“共感”を欠いた指摘や質問に傷ついたり、脅威を感じやすい傾向があります」
先輩社員が意識しておきたい伝え方のポイントは、以下の4つです。
① 人ではなく「行動」にフォーカスし、建設的なフィードバックを意識する
質問や指摘をする際は、人格やアイデンティティを否定しないよう配慮し、行動や内容に絞った改善提案を。また、チーム全体で「否定しない文化」を共有しておくと、安心して発信できるようになります。
❌「どうしてこんな結果になったの?」
✅「この結果になった背景を教えてください」
②深読みせず、素直に受け取る
相手の意図を勝手に推測すると、無用なストレスを抱えたり誤解につながったりすることも。メッセージはシンプルに受け取り、前向きな意図を信じる姿勢をチームで共有しましょう。
❌「冷たい言い方だな……怒ってるのかな?」
✅「より良くするためのフィードバックだ」と捉える
③遠回しな表現を避け、透明性を持たせる
回りくどい言い方よりも、シンプルで明確な表現のほうが信頼されやすく話も早く進みます。オープンなやりとりを意識することで、問題解決のスピードも上がります。
❌「なんとなくわかりにくい気がするんだけど…。」
✅「〇〇に変えるともっとわかりやすくなりそうです」
④会話の前提や背景を共有する
背景の共有は、認識のズレを防ぎ、議論を効率的に行えます。新しく加わったメンバーが会話に入りやすくなるよう、背景、前提をひとこと添える意識を持ちましょう。
🗣「このプロジェクトは、〇〇の背景があるため、今△△を優先してます」
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2.メンションとDMの使い分けを意識しよう
小川准教授コメント:
「若い世代は、目立つことを苦手とする傾向があります。集団の中で1人だけ注目されることに負担を感じることも。個人に注目が集まるような場面では配慮が必要です。」
Slackでは、公開チャンネルでのメンション投稿は注目を集めやすく、相手にプレッシャーを与えてしまうことも。そこで大切なのが、「伝えたい相手」と「伝える範囲」に応じた使い分けです。
- 特定の相手とやりとりしたい場合は、スレッドやDMも活用しましょう。組織の全メンバーが参加するような公開チャンネルでのやりとりは、意図せず注目を集める可能性があります。
- メンション付きの投稿は、通知がチャンネル全体に飛ぶため、必要以上の注目を集めてしまいます。一方、スレッド内でのメンションであれば、該当の相手にだけ通知が届くため、周囲への配慮も可能です。
Slack で AI を使って仕事をさらに先へ
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3.ステータス表示で働き方を「見える化」しよう
小川准教授コメント:
「若者は、自分のライフスタイルも、相手のライフスタイルも尊重したいという意識が強く、相手が何をしているかわからない状態で連絡することに、ためらいを感じやすい傾向があります。反応を求めないことが当たり前になっているSNSのタイムラインに慣れ親しんでいるため、『報・連・相』の意識に世代間ギャップがあるようです。」
Slackの「ステータス表示機能」を活用すれば、「今は連絡しても大丈夫かな?」という不安を軽減できます。特に新入社員は、先輩の忙しさが見えないと声をかけづらくなりがち。
だからこそ、自分の状態を可視化しておくことが、チーム全体の安心につながります。
ステータス例
- デフォルト:🗓 会議中、🤒 病欠、🏝 休暇中 など
- カスタム:📌 納期対応中、🍱 ランチ中 など
現在の仕事の状態や、休暇中の代わりの連絡先を知らせる便利な方法で、ユーザーが自由にカスタマイズできます。

ステータスは最大100文字、任意の絵文字も設定できます。また、管理者はステータスの種類の追加や調整が可能です。組織の特性に合わせて調整することで全体の使いやすさを向上できます。
▶ Slack 活用術 : Slack のステータスを更新する方法はこちら
4.絵文字とメンションで「既読スルー」を防ごう
SNSに慣れている若者でも、ビジネス系コミュニケーションツールに触れるのは初めてで戸惑うこともあるはず。重要度が伝わりにくい投稿や、誰に向けたかわかりにくいメッセージはスルーしてしまうことも。「Slack」でも「反応がないまま流れてしまう」ことがあります。
そんな状況を気にすることなく、返事がない状況が続くと不安やストレスがたまりやすくなります。そんなときに効果的なのが、「Slack」のメンションや絵文字です。
メンションの使い方:誰宛かを明確に
「Slack」では、メンション機能(@名前)で特定の相手にメッセージを届けることができます。しかし、メンションがないと「これは自分へのメッセージかな?」と相手が戸惑い、反応が遅れることも。次のようなルールをチームで共有しておくと、やりとりがスムーズになります。
- 送信者は相手にメンションをつける
メンションがあると、相手のデバイスに通知が届きやすくなり、見逃し防止にもつながります。 「これ誰宛?」という戸惑いを防ぎ、早いレスポンスも引き出しやすくなります。
- 受信者は、返信 or リアクションで既読のサインを絵文字や返信でリアクションをつけることで、既読のサインを示しましょう。
「読んだよ✅」「確認中👀」などのサインを出すだけで、発信者の安心感がまったく違います。
絵文字リアクション:感情や温度も伝わる“第二の言語”
▼絵文字を使う時のポイント
- 誰に対してもフラットに使う
- ありがとう・確認中・ナイス!などを即座に伝える
- リアクションを習慣化し、ポジティブな雰囲気を伝える
「Slack」ではカスタム絵文字を作って共有することも可能です。会社やチームのカルチャーが表現され、チーム内の温かさや遊び心も共有できます。
- 🎉 greatjob(がんばりを讃えるときに)
- 🙌 thanks(「ありがとう!」の気持ちをすばやく伝える)
- 🐶 yasashii(思いやりや助け合いに対するリアクション)
- 👀 checknow(「確認中です」のサインに)
- 🧠 brainstorm(アイデア歓迎の空気を作るときに)
「Slack」のリアクション機能は、安心感と信頼関係を育むカギです。ちょっとしたリアクションでも、チームの雰囲気が大きく変わります。「反応がない」ことによるストレスを減らし、前向きなコミュニケーション文化を育てていきましょう!
▶「Slack絵文字」、始めました。オリジナル絵文字の第1弾はAgentforce大集合!
まとめ
「Slack」は、世代や価値観の違いを乗り越え、チームの心理的安全性を高めるための心強いツールです。今回ご紹介した
- 共感を意識したフィードバック
- DMとメンションの使い分け
- ステータス機能の活用
- 絵文字リアクションによる“見える反応”
といったちょっとした工夫の積み重ねが、日々のコミュニケーションを円滑にし、チームワークに大きな差を生み出します。
では、迎え入れられる側はどうすればいいのでしょうか。次回は、新入社員の立場から見た「Slack」活用のヒントをご紹介します。
→【後編】Slackで始めるチームづくり:新入社員のためのスタートガイドはこちら