ソフトウェアやシステム開発を段階的に進める手法として広く採用されてきた「ウォーターフォール」。その明確な工程と進行管理のしやすさから、とくに大規模なプロジェクトで高い評価を得ています。
しかし、近年ではアジャイルの台頭や、AIを活用した効率化が注目されるなか、ウォーターフォールの課題も再認識されるようになりました。
本記事では、ウォーターフォールの基本から開発工程、そして課題解決に役立つSalesforceのソリューションまで、実務に役立つ情報をお届けします。
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目次
ウォーターフォールとは?

ウォーターフォールは、システムやソフトウェア開発で用いられる手法のひとつです。英語で「滝」を意味し、要件定義からテストまで各工程を細かく確認しながら完了させています。隣りあった工程での微細な反復は発生するものの、基本的に途中の工程をスキップしたり、完了した工程に戻ったりすることはありません。
また、開発工程に「V字モデル」を組み合わせることで、品質を確保しつつ計画的に開発を進められます。V字モデルとは、開発工程とテスト工程の対応関係を表したもので、各テストがどの工程を検証するのかが明確になるのが特徴です。
| 開発工程 | テスト工程 |
|---|---|
| 要件定義 | 受入テスト |
| 詳細設計 | 結合テスト |
| 詳細設計 | コンポーネントテスト(単体テスト、ユニットテスト) |
ウォーターフォールにV字モデルを組み合わせることで適切に検証しやすくなり、品質向上にもつながります。
ウォーターフォールとほかの開発方法の違い

ウォーターフォールの後発として、以下の開発手法があります。
- アジャイル
- スパイラル
- ハイブリッド
これらはよくウォーターフォールと比較検討される開発手法です。
ひとつずつ解説します。
アジャイル
アジャイルとは、大まかな仕様を決めたうえで、反復的なサイクルを用いて進める開発手法です。「すばやい」という意味の通り、短期間での開発と柔軟な対応ができます。
順序通りに進めるウォーターフォール開発とは異なり、アジャイルでは優先順位の高い機能から開発をはじめられるのが特徴です。イテレーション(反復サイクル)を繰り返すことで、途中の仕様変更にも柔軟に対応しながら完成度を高めていきます。
基本的に、1回のイテレーションは1週間から1ヵ月程度の短期間です。フィードバックを取り入れながら改善を重ね、より最適なシステムを構築していきます。
スパイラル
スパイラル開発は、同じ手順を繰り返しながら段階的に完成を目指す開発手法です。
アジャイルと似ていますが、大きな違いはシステムのプロトタイプを作成したあと、ユーザーやクライアントからフィードバックを受ける点です。フィードバックをもとに改善点を洗い出し、調整を重ねながら開発を進めていきます。
この手法により、仕様変更に柔軟に対応しながら、品質を重視したシステム開発が可能です。とくに、大規模なプロジェクトや要件が明確でない開発案件に最適でしょう。
ハイブリッド
ハイブリッド開発は、ウォーターフォールとアジャイルを組み合わせた開発手法です。
基本設計まではウォーターフォールのように要件を細かく定義し、計画的に進めます。一方、実装やテストではアジャイルの手法を取り入れ、フィードバックを反映しながら柔軟に開発を進行させていくのが特徴です。
ハイブリッド開発の魅力は、ウォーターフォールの計画性とアジャイルの適応力を両立できる点です。開発プロセス全体の効率を向上させながら、仕様変更にも柔軟に対応できるため、大規模プロジェクトや長期開発にも適しています。
ウォーターフォール開発に必要な6つの工程

ウォーターフォール開発に必要な工程は、以下の6つです。
- 要件定義を決める
- 外部設計を行う
- 内部設計を行う
- コーディングをする
- テストを実行する
- 運用を開始する
この工程を手戻りなく、上から順に行っていくのがウォーターフォールの特徴です。ひとつずつ解説します。
1.要件定義を決める
要件定義は、システムに必要な機能や性能などを明確に定義する重要な作業です。具体的には以下の項目が含まれます。
- システム機能の明確化
- 性能要件
- 操作性
- 品質要件
- 実行計画
この工程では、システムの機能や性能をしっかり定義することが重要です。要件を明確にすることでその後の開発プロセスがスムーズに進行し、プロジェクト全体の成功につながります。
2.外部設計を行う
要件定義を終えたあとは、実際にシステムやソフトウェアの設計を行います。主に、システムアーキテクチャやユーザーインターフェース(UI)の設計です。
この工程では、要件定義で決めた機能や性能を満たすために、どのようなシステム構成が必要かを検討します。たとえば、レイアウトや要素配置を示した「ワイヤーフレーム」や、システムのデザインを視覚的に示した「モックアップ」を活用しましょう。
これらを活用することで、開発前にシステム全体の構成やユーザーの操作感を具体的にイメージし、効率的に設計を進められます。
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3.内部設計を行う
内部設計では、システム開発における詳細な仕様を決定します。主に、システムの内部構造やデータ管理方法などです。
この段階では、システム内部の動作やデータの取り扱い方など、具体的な実装方法を設計します。外部設計で策定したシステムの構成を具体化し、内部の具体的な仕組みやフローを実現しましょう。
4.コーディングをする
定義された設計にもとづき、プログラマーがコーディングを開始します。プログラミング言語やフレームワークを使用して、実際にシステムを実装する工程です。
大規模なプロジェクトでは、作業を効率よく進めるために、多くのメンバーが協力して分担しながら開発を進めます。各担当者がそれぞれの役割にしたがってコーディングを行うことで、システムの各部分が組み合わさって完成度が高まるでしょう。
5.テストを実行する
作成したコードやシステムが仕様通りに正しく動作するかを確認するため、テストを実行します。テストで行われる工程は、以下の3つです。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 単体テスト | 各プログラムが要件定義を満たしているかを確認し、個別に検証する |
| 統合テスト | 複数のプログラムを組み合わせた際に、全体として正しく動作するかを確認する |
| 運用テスト | ユーザーが実際に使用する環境や状況を想定して、システム全体の動作を確認する |
各工程でしっかりと検証を行い、システム全体が円滑に連携して機能するかを確認しましょう。
6.運用を開始する
実際の運用環境でシステムが機能することを確認できたら、運用環境に展開します。リリース後も適切な運用を維持するために、保守や品質改善を行いましょう。
状況に応じてシステム運用中にユーザーからのフィードバックを収集し、追加機能の開発や改善を検討するケースもあります。運用業務を通じて、システムのパフォーマンスや機能を向上させ、継続的に最適な状態を保ちましょう。
ウォーターフォール開発のメリット

ウォーターフォール開発を取り入れる主なメリットは、以下の3つです。
- 進捗状況を確認しやすい
- 品質を担保しやすい
- 人材を育成しやすい
それぞれのメリットを把握して、自社での導入を検討していきましょう。
進捗状況を確認しやすい
ウォーターフォールは、事前にシステム開発の計画をすべて決めてから進行するため、進捗状況を把握しやすい点が魅力です。各工程の役割や作業量が明確に設定されているためスケジュールが立てやすく、進行状況を一元的に管理できます。
さらに、各工程には仕様書やタスクが設定されており、プロジェクトの進捗も追跡可能です。もし問題が発生した場合、どの段階で何が起きたのかを迅速に把握できるため、早期に適切な対応ができるでしょう。
品質を担保しやすい
ウォーターフォールは事前に決めた計画や仕様通りに開発が進行するため、品質を担保しやすい点がメリットです。段階的に進行することで方向性がぶれず、一定水準の品質を確保します。
また、各段階で着実に作業を完了させる必要があるため、大規模な変更や手戻り作業が少なく、予定通りに開発を進行できる点も魅力です。開発チームは、開発を進めるなかで、安心感をもちながら着実に成果を上げられるでしょう。
人材を育成しやすい
ウォーターフォールは各工程に専門の担当者が割り当てられるため、特定のスキルに特化した人材を育成しやすいメリットがあります。基本的に担当する工程に必要な技術だけを習得すればよいため、複数の工程を担当するよりも短期間での育成が可能でしょう。
また、プロジェクトが段階的に進行し、各工程が文書化されることで、新入社員や未経験者でもタスクを理解しやすい点も魅力です。各段階で仕様書が整備されているため、教育する側の負担も軽減され、学ぶ側も段階的に知識を深めながら習得できます。
ウォーターフォール開発のデメリット

一方で、ウォーターフォール開発を取り入れることで生じるデメリットもあります。
- 開発期間が長期化しやすい
- 臨機応変な対応が難しい
- トラブルに対してリスクが大きくなりやすい
それぞれ詳しく解説します。
開発期間が長期化しやすい
ウォーターフォールは企画や要件定義に十分な時間をかけるため、開発期間が長期化しやすい傾向があります。プロジェクトが順序通りに進行する特性上、各工程で担当者の合意を得られなければ、次の工程へ進めない点も課題です。
また、予期せぬトラブルが発生すると、全体のスケジュールに大きな影響を与える可能性があります。とくに、工程が進んでからの仕様変更が難しく、初期段階の小さな問題が後に大きな遅延へとつながるリスクもあるでしょう。
臨機応変な対応が難しい
ウォーターフォールは開発プロセスが各工程で厳密に定められているため、柔軟な対応が難しい点がデメリットです。手戻りが発生した場合でも、現在のフェーズのみを修正するのではなく、前工程に立ち戻って調整する必要があります。
また、市場の変化や顧客からのフィードバックにもとづく仕様変更も容易ではなく、計画全体の見直しが不可欠です。変更には追加のリソースも必要となり、結果として開発期間の長期化を招く可能性があるでしょう。
トラブルに対してリスクが大きくなりやすい
トラブルや問題が発生した際、各工程を遡って修正する必要があるため、やり直しにかかる時間やコストが増大しやすい点がウォーターフォールの課題です。とくに、プロジェクトの後半で問題が発覚すると、その影響はより大きくなります。
開発の遅延だけでなく追加費用の発生にもつながり、結果としてプロジェクト全体のコストが膨らむ恐れがあります。ウォーターフォールは事前に緻密な計画を立てる分、一度仕様変更が必要になるとスケジュール全体が大きく崩れる点には注意が必要です。
ウォーターフォールは時代遅れ?

ウォーターフォールは認知度の高い開発手法と知られている一方で、「時代遅れ」と指摘されることもあります。その背景にあるのが、企業を取り巻く環境の変化です。
変化の激しい現代では、システムやソフトウェア開発においても迅速な対応が求められています。そのため、柔軟な変更が難しいウォーターフォールよりも、アジャイルやスパイラルなど、ニーズにすばやく対応できる手法を採用する企業が増えてきています。
要求の変化やフィードバックへの迅速な対応が求められる場合、ウォーターフォールは不向きです。しかし、品質を重視するプロジェクトや、要件が明確で安定している開発など、ウォーターフォールが適しているケースもあります。
メリットを最大限に活かせるよう、自社の開発プロセスに適した手法を選択しましょう。
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ウォーターフォールが最適な4つのケース

ウォーターフォールが適しているのは、以下のようなケースです。
- 作りたいものが明確に決まっている場合
- 仕様変更をしない場合
- 品質が重要視される場合
- プロジェクトの規模が大きい場合
自社のプロジェクトと照らし合わせ、最適な開発手法を選びましょう。
作りたいものが明確に決まっている場合
開発するシステムの要件や仕様があらかじめ明確に決まっている場合、ウォーターフォールは最適な手法です。計画に沿って進行するため柔軟性の低さがデメリットにならず、スムーズに開発を進められます。
また、要件定義や設計がしっかりしていることで後からの変更が少なくなり、開発期間の長期化リスクを抑えられます。ウォーターフォールは事前に緻密な設計を行うため、仕様が確定しているプロジェクトに最適でしょう。
仕様変更をしない場合
ウォーターフォールは、一度計画を立てたらその通りに進行するため、仕様変更を前提としないプロジェクトに適しています。事前に全体の設計を固めることで開発途中での大きな修正やコストの増加を防ぎ、効率的に作業を進められるのがメリットです。
ただし、途中での変更が難しく、問題が発生すると手戻りの負担が大きくなる点には注意が必要です。あらかじめ仕様が確定しており、計画通りに進めたいプロジェクトでは、ウォーターフォールが最適な選択肢となるでしょう。
品質が重要視される場合
リリースの速さよりも品質や信頼性を重視する場合、ウォーターフォールが適しています。たとえば、銀行のATMシステムのように障害が許されないプロジェクトでは、慎重な設計と多段階のテストが必要です。
ウォーターフォールでは、各工程の完了時に品質が精査されるため、ミスが発生しにくく、厳しい品質要求にも対応できます。安定性が求められるシステム開発において、有効な手法といえるでしょう。
プロジェクトの規模が大きい場合
大規模なプロジェクトや長期間にわたる開発では、事前に要件定義や仕様を決めておくウォーターフォールが最適です。とくに、多くの部署や企業が関与する場合、各工程を明確に区切ることで進捗管理がしやすくなり、問題発生時の対応も迅速に行えます。
また、各フェーズでプロダクトの最終形を意識しながら進めるため、リスクを抑えつつ計画的に開発を進められるのもメリットです。規模が大きく、確実な管理が求められるプロジェクトに最適な手法といえるでしょう。
Salesforce製品を基盤としたシステム開発も可能
システム開発において、ウォーターフォールが時代遅れと見なされることが増えており、柔軟性や開発スピードを重視する企業は移行を検討するケースもあります。とくに、変化の速い現代ではクラウド技術を活用したアプローチが有効です。
従来のウォーターフォールからアジャイルを採用してシステム開発を行った企業に、株式会社三菱UFJ銀行が挙げられます。同社は、新規システム開発の需要が増加する一方で、開発や更新費用の高さに課題を感じていました。
同社は課題解決のために、Salesforceの『Salesforce Platform』を採用して、システム開発を行っています。Salesforce Platformとは、迅速にカスタムアプリケーションを構築・展開できるクラウド型ツールです。ローコード・ノーコードツールでアプリ開発ができるほか、業務プロセスの自動化を図れます。
株式会社三菱UFJ銀行はSalesforce Platformを導入したことで、システム開発費用3分の1・開発期間3分の2を実現しています。
柔軟性やスピード感が求められるシステム開発が必要な際には、Salesforce製品の活用により、クラウドの利点を活かした効率的なシステム開発を実現できるでしょう。
ウォーターフォール開発プロセスへのAI活用

ウォーターフォール開発では、各工程を計画的に進めるため、高精度なデータ管理と自動化が必要です。SalesforceのAIを活用することで、開発効率と品質向上が実現します。
なかでも、Salesforce Platformには「Einstein Trust Layer」が組み込まれており、顧客情報を安全に取り扱える仕組みが整っています。AIによって生成された応答が適切であることを確認するための検証プロセスが含まれるため、企業も安全にAIを活用可能です。
ウォーターフォール開発の各工程にAIを取り入れることで、高精度なシステム開発が進められるでしょう。
Einsteinについては以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひこちらも参考にしてみてください。
関連コンテンツ:【Salesforce Einstein】Salesforceが開発するAI、Einstein(アインシュタイン)ってなんだ?
ウォーターフォールを導入してプロジェクトを成功させよう

ウォーターフォールは、システム開発の各工程を上流から下流へと順に進めることで、品質と安定性を確保できる手法です。しかし、要件変更への対応が難しく、開発期間が長くなることが課題です。近年では、AIやクラウド技術を活用し、こうした課題を解決する動きも広がっています。
Salesforceでは、システム開発の生産性向上を支援するクラウドソリューションを提供しています。効率的な開発を実現したい方は、ぜひ一度ご相談ください。
ローコード ハンドブック
〜スピーディなAIアプリケーションの構築と自動化〜
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