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DXの現場から〜Salesforceプロフェッショナルメンバーが語る課題と解決策 Vol. 6

ニューノーマルの世界において、これまでと価値観が変わった顧客や社員に選ばれ、成長し続けるには、DXの実現が不可欠であるという認識が広まる一方で、その本質はデジタル技術の革新にとどまりません。真のDXがいかなるものかを理解することが必要です。まざまな業界においてSalesforceのお客様のDXを直接ご支援してきたエキスパート達が、事例を交えながら「DXとは?」について解説します。

ニューノーマルの世界において、これまでと価値観が変わった顧客や社員に選ばれ、成長し続けるには、DXの実現が不可欠であるという認識が広まる一方で、その本質はデジタル技術の革新にとどまりません。真のDXがいかなるものかを理解することが必要です。さまざまな業界においてSalesforceのお客様のDXを直接ご支援してきたエキスパート達が、事例を交えながら「DXとは?」について解説します。

お客様のDXを支援するプロフェッショナル「Salesforceアドバイザリーメンバー」によるブログシリーズ。第6回は、サービス営業本部長 澤野 弘明が解説します。

Vol. 6:継続的なDX実現のために〜顧客エンゲージメント推進組織「Salesforce CoE」とは?​

「CoE(Center of Excellence)」は従来、「企業統治」の文脈で語られることがほとんどでした。CoEはガバナンスモデルとその組織体制のことで、いかにガバナンスを利かせてシステムを運用管理するか、という観点があります。

Salesforceでは、CoEを「カスタマーエンゲージメント領域においてビジネスとIT双方の機能を持ち、能動的に革新的な取り組みを推進し、組織の付加価値を恒常的に高める組織」と定義しています。端的に表現すると、「カスタマーエンゲージメント推進組織」となります。顧客の多様性と変化に追随していくためにはDXを継続していく必要があり、専門的な組織体制「Salesforce CoE」が必要であると考えています。

カスタマーエンゲージメント推進組織としてのSalesforce CoE

デジタル化により多様な顧客の特異性の把握が可能となった現代において、この「カスタマーエンゲージメント推進組織」は、企業が他社と差別化を図り、勝ち残るためのトランスフォーメーション施策の一つになります。 さらに新型コロナウィルスという外圧により、顧客の生活様式や消費行動も急激な変化を余儀なくされ、従業員の働き方も大きく変わるなか、企業も半ば強制的にビジネス環境のデジタル化を求められています。こうした想定以上の急激な変化に柔軟に対応できる「デジタル慣れ」した人材・組織がCoEを迅速に立ち上げ、ニューノーマルとなるカスタマーエンゲージメント(新しい顧客体験の価値創造と社内プロセス変革)を推進していけるかが、今後の成功の鍵と言えるでしょう。

「カスタマーエンゲージメント推進組織」であるCoEは3つの機能「変革推進(企画)」「導入」「改善/運用」と、3つの構成要素「体制」「プロセス」「ツール」で成り立っています。

3つのガバナンスモデルとその成熟ステップ

DXは90%の確率で成功できていないと言われています。近年では日本企業でもDX推進を掲げ、「トランスフォーメーション」を冠した組織ができつつありますが、実際には機能しきれていないことが多いようです。その原因は以下のようにまとめられます。

  • 明確な目標と計画の欠如
  • ビジネス部門とIT部門の連携不足
  • レガシーシステム&サイロ化したデータ
  • 人材/能力ギャップ
  • 変化を嫌う文化
  • デジタル変革の実行能力欠如

これらの原因を取り除き、DXを真に推進するためにCoE組織を立ち上げるのです。まず、責任を負うエグゼクティブがDXの明確な目標と戦略を持ち、強いリーダーシップを発揮することが必要です。また、業務/ITの垣根を超え、マーケ/営業/サービス/ITといった部門の垣根を超えた組織体制をつくることも重要です。

これらの組織、体制づくりについては、最初から組織に人材を集めるのは難しいので、小さくはじめてかまいません。人材採用・育成計画と併せて必要な人員を集め、徐々に組織体制を強化していきます。初期には我々アドバイザリーメンバーが支援に入り、スキルやナレッジトランスファーするケースも多いです。まずは構えすぎず、できるだけ早く立ち上げることが肝要です。

また企業の大きさ、たとえば事業の異なる複数のビジネスユニット、カンパニーを抱える企業などの特性に応じて、代表的な3つのCoEガバナンスモデルから、自社に合ったモデルを選択します。3つのガバナンスモデルの、それぞれの特長は以下のとおりです。

集約型:強いガバナンスで単一事業体のケースが多い。プロセス・システムが標準化され効率化される一方、変化への対応スピードに欠けるデメリットもある。

分散型:自由度が高く、業務部門主導のケースが多い。プロセス・システムはそれぞれ自由で、ナレッジ共有のみのゆるやかな連携を行う。ただしプロセス・システムが肥大化するリスクもある。

統合型:ハイブリッドなモデルで、ガバナンスレベルは企業によってさまざま。どこまで自由度を認めるかがカギとなる。

ガバナンスモデルを選択する場合、Salesforceの組織(Org)戦略とセットで検討します。システム的なセキュリティ方針やデータ共有モデルの形式が、ガバナンスの強弱によって決まります。これらのステップを経て、CoEを進化、成熟させていくのです。

日本のお客様におけるCoE構築事例

ここで、我々が支援したCoE構築とDXの事例をいくつかご紹介します。

インターネットサービスA社

A社は長期にわたってSalesforceを利用していましたが、「組織が多岐にわたり顧客情報も分散している」「Salesforce製品の活用が不十分」「グループ内に複数の環境が存在」といった問題を抱えていました。

そこで、我々アドバイザリーメンバーが支援に入り、新しい営業スタイルとプラットフォーム戦略を立案し、CoE構築に着手しました。 新COOがCoEのトップに就き、強いリーダーシップを発揮し、Salesforce推進ユニットを組織化していきました。IT部門主導でSalesforceの活用が進み、Customer 360 への取り組みを推進することで、当初の問題を解決していきました。

銀行B社

B社の場合は「営業プロセスの最適化・定着化」「コールセンタープロセスの改善」「デジタルマーケティングへの取り組み」という個別の目標が点在し、これらをCustomer 360の導入で解決したいという考えがありました。そこである程度の期間を設けて段階的に目標を達成すべくCoEを構築しながら、Customer 360実現のための体制を整えていく方針を固めました。

プロセス初期段階で我々アドバイザリーメンバーが支援を開始したのですが、ほどなくして我々の支援がなくてもいいほどアジャイル型で Customer 360の環境を整え、問題を解決していくような体制ができあがっていきました。 これはCoEのトップである常務が強力なリーダーシップを発揮し、その直下のSalesforceを熟知したリーダーによる舵取りがうまくいった事例です。

これらの事例のように、企業によってさまざまなスタイルがありますが、結局のところCoEとは「最高の顧客体験は何か」ということをお客様企業と一緒につくり上げ、そこから出てきた要件を理解し、リーダーのビジョンに従いながらアジャイル型でCustomer 360を実現し、その企業のDXを成功に導くということになります。

最初は少ないメンバーでかまわないので、ともかくはじめることが重要です。どのように始めたらよいのか、と思われる企業は少なくないと思いますが、ナレッジを提供しスキルを発揮するSalesforceのプロフェッショナルメンバーが、お客様を成功に導くご支援をさせていただきます。

ブログシリーズ:DXの現場から〜Salesforceプロフェッショナルメンバーが語る課題と解決策

Vol. 1: バズワードからの脱却〜Salesforceが考える真のDXとは?
Vol. 2: データのサイロ化を脱却〜真の顧客理解のために動きはじめた日本企業
Vol. 3: DXにおいて打破すべきデジタルマーケティングの壁とは?
Vol. 4: 顧客中心主義を実現する「Customer 360」テクノロジー鳥瞰図
Vol. 5: DX成功のカギを握る「組織風土変革」と実現のためのフレームワーク
Vol. 6: 継続的なDX実現のために〜顧客エンゲージメント推進組織「Salesforce CoE」とは?

Hiroaki Sawano カスタマーサクセス統括本部 アドバイザリー本部 サービス営業本部長 Hiroaki の他の記事
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