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DXの現場から〜Salesforceプロフェッショナルメンバーが語る課題と解決策 Vol. 5

ニューノーマルの世界において、これまでと価値観が変わった顧客や社員に選ばれ、成長し続けるには、DXの実現が不可欠であるという認識が広まる一方で、その本質はデジタル技術の革新にとどまりません。真のDXがいかなるものかを理解することが必要です。まざまな業界においてSalesforceのお客様のDXを直接ご支援してきたエキスパート達が、事例を交えながら「DXとは?」について解説します。

ニューノーマルの世界において、これまでと価値観が変わった顧客や社員に選ばれ、成長し続けるには、DXの実現が不可欠であるという認識が広まる一方で、その本質はデジタル技術の革新にとどまりません。真のDXがいかなるものかを理解することが必要です。さまざまな業界においてSalesforceのお客様のDXを直接ご支援してきたエキスパート達が、事例を交えながら「DXとは?」について解説します。

お客様のDXを支援するプロフェッショナル「Salesforceアドバイザリーメンバー」によるブログシリーズ。第5回は、シニアエクスペリエンスアーキテクトの相澤 渉太が解説します。

Vol. 5:DX成功のカギを握る「組織風土変革」と実現のためのフレームワーク

新型コロナウィルスの拡大により、多くの企業でオペレーションの主軸にデジタルが取り込まれていなかったことが明らかになり、在宅勤務やZoom等のオンライン会議ツールの採用が加速されました。また、これまで対面や紙を前提としていたやりとりも、いかに非対面でデジタルに実現するかに大きな関心が集まっています。

企業規模や業種に関わらず、デジタル変革への取り組みを求められる環境に置かれていますが、DXは最先端のツールを導入するだけで完了するわけではありません。ビジネスを変え、デジタルの変化に合わせた組織風土をつくり上げない限り、変革は成功しないのです。

ニューノーマルだからこそ求められる風土改革。今こそ好機と捉える

実際お客様と会話をしているとwithコロナの環境においてどのような働き方を模索すべきか戸惑いを感じると同時に、所属している組織のトップ層がどのような方向付けをしてくれるのか、答えを待っている方が多いように見受けられます。一方で、想定外の状況に応じて俊敏に対応できる組織力がこれまで以上に必要なのは論をまたないところです。

今までとは違う働き方や組織のあり方が求められるなか、危機を乗り越えチャンスに変える企業であり続けるために、どのような企業風土を作るべきか?「組織風土変革」ということへの関心が高まっているように感じます。

日本企業は長寿企業が多い傾向にあります。そういった企業が、なぜ時代の変化の波を乗り越え生きながらえてきたかを考えると、組織として大切にしているDNAとも呼ぶべき「カルチャー」を維持したまま、その時々の変化に合わせて人々の「振る舞い」を変えてきたからではないかと推測します。 つまり、従来のカルチャーを否定する必要はなく、いま私たちが直面しているデジタル変革の波に合わせた「あるべき振る舞い」が求められているのです。

DXに成功した企業に共通する4つの文化的特性

では、この「あるべき振る舞い」とはどのようにして決めればいいのでしょうか? 我々は、これまでに70社以上におよぶお客様のデジタル変革を支援するなかで、DXに成功している企業には4つの文化的特性が共通して見られることがわかってきました。 デジタル変革を推進するにあたって、企業はこの4つの文化的特性 – 1. 高い信頼があること、2. 革新的であること、3. 機敏であること、4. 目的主導であること、のうち、特に広めていかなければならない特性は何かを見極め、その文化的特性を体現する「あるべき振る舞い」とは何かを考えていけば良いのです。

当然ながら、DXを推進しようとする企業にはその企業独自の状況があります。このため、先達のデジタルネイティブ企業のやり方をそのまま模倣すればいいわけではありません。 これまで経験した失敗ストーリーを集め、組織における「失敗モード」を特定します。自分の所属する企業の風土をふまえて、DXを推進していく上で特に重要であるという文化的特性を特定するのです。そのうえで、望ましい文化を醸成するための振る舞いはどういったものかを考察します。

重要なことは、正の連鎖を生み出すような「礎となるような振る舞い」とは何かを見出すことです。ドミノ倒しのように最初の一コマを倒すことが出来れば、次のコマを倒していき、多くの結果を生み出すことが可能です。その最初の一コマとなるような「礎となる振る舞い」を4〜5つ程度定義するのです。

振る舞いに変革をもたらすフレームワーク「LEVERS」

企業を構成する従業員が普段何気なく取っている行動「振る舞い」は、実際には社会的、個人的、組織的観点から形成された環境の下で行われています。DXを成功へ導く文化的特性を生み出すような、「新たな振る舞い」を組織へ広めていくには環境作りが不可欠です。いわば、木が新しい根を張り、新たな芽を育むための土壌作りのようなものです。 我々は、新たな振る舞いを根付かせる土壌づくり、風土変革のためのフレームワーク「LEVERS」をつくり上げました。次の6つの項目の頭文字を取って「L・E・V・E・R・S(6つのレバー)」としています。

Leadership(リーダーシップ):公式および非公式のリーダーは、新しい働き方の実践を推奨、モデル化、支援をしているか。

Ecosystem(エコシステム):現在の顧客、従業員、パートナー、ベンダー、コミュニティは、新しい働き方を推奨するように組織化され、連携しているか。

Values(価値観):従業員は新しい働き方の価値、モチベーション、目的意識の関連性を理解しているか。

Enablement(イネーブルメント):新しい働き方をつくり上げるために必要な情報、ツール、トレーニング、リソースを従業員に提供しているか。

Rewards(報奨):現在の業務管理プロセス、評価基準、インセンティブは新しい働き方の実践を推奨するよう設計されているか。

Structure(構造):現在の組織のテクノロジー、ツール、インフラ、プロセス、ポリシー、ビジネスルールは新しい働き方の発展を推奨するようデザインされているか。

それぞれの項目の問いかけに対して回答できるような適切な施策を考えることで、企業に振る舞いの変革がもたらされるのです。 実践の際のポイントは、それぞれの施策を、全員を巻き込んで同時並行的に進めることです。1つの施策を試して上手く行かないから次の施策、というやり方では最終的に成功に結びつきません。LEVERSの中から4項目以上を同時に実践することにより、DXの成功確率が10倍上昇することがわかっています。

組織風土変革がもたらすさまざまな果実

組織風土の変革に取り組むことで、さまざまな側面で改善が図れることを把握しています。DX成功率の向上にとどまらず、企業が価値を生み出すまでの時間短縮、迅速なイノベーションとケースに応じた方向転換などが可能となります。加えて、プロジェクトを実行するための組織的能力や、従業員のエンゲージメントなども向上させることができます。

具体的な数字として、組織風土の変革に成功した企業においては、イノベーションレべルが30%向上し、従業員エンゲージメントが向上することで離職率が59%低下するといった成果が出ています。さらには、10年間で、516%もの売上増加の実現を可能にしたケースも存在します。

弊社のアドバイザリーメンバーは、Salesforceを活用したビジネス戦略の立案やITアーキテクチャの策定にとどまらず、組織風土の変革もご支援させていただくことが可能です。 デジタルをうまく取り入れることで効率性を上げ、ノーマルに近い生産性を取り戻すという発想ではなく、風土変革まで踏み込み、ニューノーマルの働き方の方が明らかに成果を出すことが出来る時代を一緒につくっていきたいと思っています。

ブログシリーズ:DXの現場から〜Salesforceプロフェッショナルメンバーが語る課題と解決策

Vol. 1: バズワードからの脱却〜Salesforceが考える真のDXとは?
Vol. 2: データのサイロ化を脱却〜真の顧客理解のために動きはじめた日本企業
Vol. 3: DXにおいて打破すべきデジタルマーケティングの壁とは?
Vol. 4: 顧客中心主義を実現する「Customer 360」テクノロジー鳥瞰図
Vol. 5: DX成功のカギを握る「組織風土変革」と実現のためのフレームワーク
Vol. 6: 継続的なDX実現のために〜顧客エンゲージメント推進組織「Salesforce CoE」とは?

Shota Aizawa カスタマーサクセス統括本部 アドバイザリー本部 シニアエクスペリエンスアーキテクト Shota の他の記事
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