
ミレニアル世代とZ世代は、同じ「若者」でもマーケティングキャンペーンへの反応が異なります。両者の買い物動向の違いを探ってみましょう。(本記事はUS本社ブログの翻訳版です。翻訳元のブログはこちら:Millennials vs. Gen Z: How Are They Different?)
マーケターやビジネスオーナーにとって、各世代のニュアンスや性格の違いを理解することは、楽しみの1つであるとともに、課題でもあります。Z世代は、オファーやマーケティングキャンペーンにミレニアル世代と同じようには反応しません。この2つの世代の買い物動向の違いについて、まさに今こそ詳しく調べるべきです。
それぞれのオーディエンスを理解することで、適切なメッセージを適切なチャネルで発信できるようになります。また、マーケティング対象のオーディエンスの大半が若者の場合には、人口統計学的に深く掘り下げることが特に重要です。
まず、基本的なことをいくつかご説明します。
ミレニアル世代は、1980年から1995年の間に生まれた世代と定義されています。2020年に25歳から40歳を迎える世代です。
この世代がこうして括られるのは、その成長がデジタルの台頭とともにあったためです。インターネット環境の整備が飛躍的に進んだ時代に育ち、情報リテラシーに優れ、インターネットでの情報検索やSNSを利用したコミュニケーションを使いこなします。そんな、ITに高い親和性を持った世代です。
Z世代とは、1996年から2015年の間に生まれた世代と定義されています。デジタルが当たり前の時代に生まれてきたことから「デジタルネイティブ」とも呼ばれます。2020年に5歳から24歳を迎え、世界全体では人口の4分の1を占める世代です。日本においては、令和のスタートと共に社会に飛び出し新しい時代を切り開く世代ともいえるでしょう。
では、Z世代の次はどうなるのでしょう? 一部ではこの新しい世代を 「ジェネレーションα(アルファ世代)」と呼んでいるようです。この世代がどのような世代となるか、それは未来の記事のテーマとなりますが、少なくとも彼らがスマートフォンのない世界を知ることはないでしょう。
現在のマーケティングにおいて、消費者グループは性別や家族構成で分けるのではなく、世代で分類して戦略を立てることが主流となっています。
人は幼少期や青年期に受けた影響により、その後の消費傾向や価値観が決まっていきます。したがって、消費者の過ごした時代や各世代の特徴を知ることが、効率的なマーケティング施策を立てる上で重要となります。
そして今、この消費者グループの中で、働き盛りを迎えているミレニアル世代に代わる新しい消費トレンドを作る世代として注目されているのが「Z世代」なのです。
「若い」点ではどちらの世代も同じです。しかし、ミレニアル世代とそれに続くZ世代の人たちでは、買い物の仕方やブランドとの付き合い方、お金に対する考え方が大きく異なります。
ミレニアル世代は、顧客体験への期待が高く、良い体験のためにお金を出します。最近の調査によれば、顧客体験に対する期待水準が以前よりも上がったと回答したのは、Z世代が53%だったのに対し、ミレニアル世代では66%でした。また、ミレニアル世代の76%は、優れた顧客体験に対して高い料金を支払うと答えています(Z世代は71%)。
新型コロナの大流行を受けて、Z世代はミレニアル世代以上に新しい製品やサービスを求めています(55%対46%)。また、Z世代はミレニアル世代よりも、既存の製品やサービスのデジタル化を企業に望む傾向が高くなっています(76%対73%)。
Z世代は急速なイノベーションの時代に育ったため、さらなるイノベーションを期待しているのかもしれません。たとえば、ビデオレンタル店「ブロックバスター」が思い出のミレニアル世代に対し、Z世代はYouTubeやTikTokをはじめとするコンテンツ視聴プラットフォームを、家にいながらモバイルで楽しんでいます。
2020年のSalesforceの調査によると、ミレニアル世代の50%が企業を信頼していると回答したのに対し、Z世代では42%にとどまりました。いずれの数字も2018年から大きく減少しています。またこのレポートでは、Z世代の59%、ミレニアル世代の57%が、企業側の個人情報の取り扱いについて自分たちにはコントロールできないと感じていると報告しています。
2020年のデータによると、企業に対する信頼感の感じ方について、この2つの世代で全く異なる結果が出ていますが、どちらも近年低下傾向にあります。ミレニアル世代に比べてZ世代は全体的に信頼感が低く、企業が信頼を得る手段はほぼありません。
ミレニアル世代は、親や周囲の大人に甘やかされて育った楽観的な世代だと一般的に考えられています。その証拠として、英語には「参加するだけでもトロフィーがもらえる」ということわざがあります。一方、Z世代はもっと現実的です。ミレニアル世代は好景気の時代に育ちましたが、Z世代が育ったのは不況の時期でした。
Z世代は、経済的なプレッシャーを受けた親や地域社会が、雇用や家計のことで苦しむ姿を目にして育ちました。そのため、もっとも成功したZ世代向けのマーケティングは、長期的な価値や賢い投資に焦点を当てています。
Z世代の若者は、ミレニアル世代が同じくらいの年齢だったときと比べて、貯金に高い関心を持つ傾向があります。Z世代はお買い得感の高い商品に魅力を感じますが、ミレニアル世代は、商品を購入するという体験全体に興味を持っています。
支出を控えることへのZ世代の関心は、経済の混乱の中で育ったことによる必然的な結果であり、彼らは派手な消費活動に魅力を感じてはいません。むしろ、お金がなくなることを心配しているのです。彼らにマーケティングを行う際は、質の高い投資を強調し、豊富なお買い得品や特典(送料無料やおまけなど)を提供するのが賢明な戦略でしょう。
ブランドは、どんな場面でも信頼されるよう努力すべきであり、その結果が利益につながります。ミレニアル世代の61%が企業は概ね信頼できると回答しています。しかし、そう考えるZ世代はわずか53%です。
皆さんもご存知のように、ミレニアル世代は透明性を支持し、価値観を共有(英語)するブランドを好みます。しかし、Z世代はそれ以上に彼らの理想を反映するブランドを見つけることに熱中しています。たとえば、部屋の装飾品を提供しているDormify(英語)というショップは、高画質ではない暗めの画像がZ世代の胸を強く打つことに気付きました。スタジオで撮ったような写真ではなく、実際の顧客のビフォー・アフターの写真を見せる手法で大きく成功しています。同じように、一般の女性を起用したDoveのマーケティングキャンペーン(英語)は、色や形、サイズなどの多様性を表現したコンテンツの視聴を希望する10代の若者の共感を得ました。
Z世代は、洗練されすぎず、自分にも当てはまるようなコンテンツを見たいと考えています。そのため、インフルエンサーマーケティングを活用して(英語)、Z世代が認めたトレンドのリーダーが発信している、彼らの共感を呼ぶようなコンテンツを利用することを検討してください。
ミレニアル世代は、オンラインでの買い物のプロです。何か新しいものが欲しいときは、すぐにスマートフォンやノートパソコンを取り出します。AOL社のダイヤルアップから常時接続へと世界が移行するのを目の当たりにしてきた彼らは、この便利さを常に享受しています。
世界的なパンデミックの影響で、私たちは皆、これまで以上にオンラインでショッピングをしています。このことは、2つの世代の買い物動向にどのような影響を与えているでしょうか。パンデミック後、今まで以上にオンラインで買い物をするだろうと回答したZ世代は62%です。一方、同じ回答をしたミレニアル世代は67%です。実店舗が再開して消費者の信頼が戻ってきたとき、店舗に足を運ぶのは、ミレニアル世代よりもZ世代のほうが少しだけ多いかもしれません。
店舗に安全性が確保されたら、教育的あるいはソーシャルメディア的に価値のある体験を用意し、多くの10代の若者を店舗(物理的な場所がある場合)に呼び込む方法を考えてみましょう。Z世代は、化粧品店での美容教室やアスレジャーを取り扱う洋服店での体操教室など、実店舗ならではの体験に興味を持ち続けているでしょう。
ミレニアル世代が中高生の頃は、ブランド品が大人気でした。彼らは、Tシャツ、ジーンズ、靴を流行のブランドで飾ることで、ファッションセンスをアピールしました。ミレニアル世代が大人になった今、好きなブランドにさらにお金を払うでしょう。この世代の60%は、ブランドに思い入れがあると答えています。
一方Z世代は、自分らしさが自分ではなくブランドによって表現されることに少し神経質になっています。アメリカのバラエティ番組、サタデーナイトライブで放送された、「Woke jeans(英語)」というジーンズのパロディを見ればわかるでしょう。彼らは自分らしさを大事にしたいと思っており、ソーシャルメディアを使って自分たちの居場所だと思えるコミュニティを探しているのです。ミレニアル世代と比較して、この世代でブランドと思い入れがあると回答したのは57%です。
したがって、Z世代に対しては特定のイメージに押し込めるのではなく、個性を賞賛し、好きなイメージ、なりたい人になれることを伝えるのが最善のマーケティング方法だと言えます。
ミレニアル世代は、彼らが成長してきたその時代背景や経験から、楽観的で理想を追い求める価値観を持っています。そんなミレニアル世代にアプローチするには、SNSを通じて彼らに共感してもらえるメッセージを発信すること。そして、そのメッセージが自分たちにとって理想的な体験・経験につながると実感できるものであることが重要です。
また、彼らはオンライン消費の主役であるため、その消費行動に対応したインフラを整備する必要があります。
ミレニアル世代よりもデジタルが生活に浸透した社会、また混沌とした経済の中で育った彼らへは、サービスや商品の質の高さをアピールし、リアルに体験してもらうようなアプローチが理想的です。そのためには、トレンドセッターに共鳴するコンテンツを活用することが重要となります。実際に体験できる場所の提供や、どのような体験ができるのかが分かる動画を用意することも有効です。
そして、個人を賞賛し、好きなイメージ、なりたい人になれることを伝えることができれば、それが最良のマーケティングアプローチとなるでしょう。
Salesforceのコンテンツ戦略ディレクターであるHeikeは、セールス、顧客体験、デジタル変革に関するトレンドを調査し、執筆しています。彼女は、Salesforceが賞を獲得したデジタルマーケティング関連のポッドキャスト「Marketing Cloudcast(マーケティングクラウドキャスト)」のホストとプロデューサーを2年にわたって務めました。Salesforceの前は、ベストセラーのノンフィクション本の編集を担当し、B2Cブランドのソーシャル戦略およびコンテンツのマネジメントを行いました。Heikeの仕事ぶりは、USA Today、Forbes、Wall Street Journal、Business Insiderなどの誌面で取り上げられています。