Key Takeaways
AIエージェント活用の実践知
人とデジタル労働力が共創する次世代の顧客体験
最新のテクノロジーが、単なる自動化を超えて「現場の働き方」をどう変えるのか。実戦から生まれたリアルな知見を、デモンストレーションと共にぜひご覧ください
目次
MWCとは
MWC(Mobile World Congress)は、世界最大級のモバイル通信業界団体のGSM Association(GSMA)が主催するイベントで、今年は2026年3月2日から5日までスペイン・バルセロナで開催されました。
今年は世界200以上の国と地域から10万人以上の来場者が集まり、2900社以上のブース展示や多数のカンファレンスが行われました。かつてはモバイル端末や通信インフラを中心としたイベントでしたが、現在ではAI、クラウド、IoT、自動運転など、業界の垣根を超えた最先端テクノロジーが交差する場へと進化しています。
MWC2026で語られた主要テーマ
今年のMWCは「Welcome To The IQ Era」をテーマに掲げ、通信業界が「通信(Connection)基盤」から「知能(IQ)基盤」へと移行する「IQ時代の幕開け」を強調しました。AIがネットワークやビジネスをどう変革するかが最大の焦点となり、世界中のテクノロジーリーダーが最新のイノベーションを発信しました。キーノートと、とくに印象に残ったセッション、展示ブースで感じた所感を紹介します。
【Keynote】
「接続された知能」が拓くIQ時代 ― 成長と信頼を支える3つの挑戦
オープニングを飾った「Main Keynote 1」では、GSMA事務局長のヴィヴェック・バドリナス氏が登壇。「IQ時代」の到来に向けて通信業界が乗り越えるべき「3つの挑戦」として、「AIの民主化」「信頼の構築」、そして「5G SAの完遂」について語りました。

第一の挑戦は「AIの民主化(誰もが使えるAI)」。現在、AIの学習データは英語などの少数言語に偏っており、世界にはネットワーク圏内にいながらデジタルサービスを利用できない人々が31億人も存在します。
バドリナス氏は、AIが一部の地域や特権階級だけのものにならないよう、通信業界が主導して地域や言語に根差した「通信事業者級のAI(Telco Grade AI)」を構築し、このギャップを埋める責任があると語りました。
第二は「信頼の構築」です。AIの進化は便利さをもたらす一方で、高度な詐欺被害を急増させており、世界では「毎秒1万5000ドル」が失われているという衝撃的な事実が共有されました。
インドの通信事業者最大手であるAirtelが、自社のネットワーク上で数十億件のスパムや不正リンクを強力に遮断している事例が示すように、これからの通信インフラは「信頼と安全性」を単なる“おまけ”ではなく、「デジタル経済を動かす“OS”として企業の競争力に直結する」とバドリナス氏は強調しました。
第三が「5G SA(スタンドアロン)の完遂」。5G SAは技術的な実験段階を過ぎており、5G SAの普及率が10%を超えた市場では、未導入市場の2倍にあたる「平均8%の収益成長率」を記録しているというデータが示されました。
企業がAIの恩恵をフルに受けるための「次世代インフラへの移行は、経済的な成長と持続可能性を両立させるための必須条件である」(バドリナス氏)と結論づけました。
【Pickup Session 1】
Agentic AIがもたらす経済的衝撃と組織の再発明
AGIスタートアップのSierraでCEO兼OpenAI取締役会長を務めるブレット・テイラー氏と、シンガポールの大手通信会社であるSingtelのCEO、ウン・ティアン・チョン氏によるセッションでは、自律的に思考・行動する「Agentic AI」がもたらす破壊的なインパクトが語られました。
テイラー氏によれば、かつて1回10ユーロかかっていた人間による電話対応コストは、将来的にウェブの1PVと同等の「0.01ドル」まで激減するといいます。企業はコスト削減で浮いた予算を、解約防止や売上向上といった「成長エンジン」へ再投資することが新たな生存戦略となります。

また、現在のAIの普及状況を「1995年のウェブサイト黎明期」と表現。Chat GPT-4がわずか1年半で価格を100分の1にし、精度を50%向上させたように、技術は猛烈なスピードで進化しています。来年の能力を見越して今すぐAIエージェントを導入することが、先行者利益を得る「ラストチャンス」であると両者ともに強い警鐘を鳴らしました。
さらに、チョン氏 が語った「AI導入は単なる技術プロジェクトではなく、組織そのものの再発明である」というメッセージが強い共感を呼びました。
同社は「AIファースト・テルコ(*)」を掲げ、AI変革を現場任せにするのではなく、CEO直轄のプロジェクトとして推進しています。AIプロジェクトが社内の階層に埋もれてしまわないように、CEO直属の「AI・データアナリティクス責任者」を新設するなど、トップダウンで組織の壁を破壊する体制を整えています。
*AIファースト・テルコ(AI-First Telco):とは、従来のネットワークインフラ中心の事業運営から脱却し、AIを事業の中心に据えたビジネスモデルへと根本的に変革する動き
中でも興味深かった内容が、チョン氏が提示した、AI時代における「新たな人事評価のジレンマ」です。「100人の人間の部下を管理するベテラン社員」と、「300体のAIエージェントを操って圧倒的な成果を出す若手社員」がいた場合、企業はどちらを『上位者』として評価すべきかといった問いが例として挙げられました。
また、テイラー氏が挙げた「ATMのパラドックス」も無視できません。1980年代にATMが登場した際、銀行員の仕事はなくなると予想されましたが、実際には単純作業から解放された職員がより高付加価値な業務へシフトし、競争はむしろ激化しました。AIによって生まれた「余力」を、どこに再投資して競争力を維持するかが、AI時代の経営の真髄なのです。
このように、人間とAIが混在する新しい組織においては、評価基準の根本的な見直しや、AIが生み出した余力の再投資こそが、技術的な課題よりも遥かに難しく、最優先で取り組むべきテーマであると強調されました。
【Pickup Session 2】
電力危機を救う「光」の革命と物理的限界への挑戦
NTTの島田明代表取締役社長が登壇したセッションでは、生成AI市場が今後40倍に拡大することで直面する「電力消費の爆発」と、熱の物理的限界をいかに突破するかが語られました。従来の電気配線はすでに限界に達しており、NTTはこの危機を「IOWN構想」で乗り越える道筋を示しました。

具体的には、電気配線を完全に「光(フォトニクス)」に置き換える光電融合技術により、2032年までに電力消費を「100分の1」にするという野心的なロードマップを提示。直近では、2026年度に大規模AIスパコン向け光電融合デバイス「PAC2」が商用化される予定です。
さらに、AIのその先を見据えた「光量子コンピュータ」への挑戦も明かされました。
従来の超電導方式が抱える極低温・真空環境といった制約を打破し、「室温・常圧」で動作する光アプローチを採用することで、圧倒的な低電力とスケーラビリティを実現。
2030年に100万量子ビットの達成を目指しており、これが実現すればパーソナライズ創薬や次世代エネルギー開発など、これまで不可能だった計算が解き放たれ、大きな社会変革がもたらされます。
【展示ブース】
熱気渦巻く自律型AIと物理世界の融合
展示会場では、各社がIQ時代において、AIと物理世界が融合した最先端のライフスタイルやビジネスモデルを提案し、新たな世界の到来を表現していました。特筆べき展示を紹介します。
T-Mobile (Deutsche Telekom)社
AIをネットワークのコアそのものに直接組み込んだ「アプリ不要(app-less)」の未来を提示していました。
中でも象徴的だったのは、ネットワークに統合されたAI通話アシスタント「Magenta AI」です。アプリを立ち上げることなく、未知の着信のフィルタリング、リアルタイムの音声翻訳やディープフェイク検知、さらには通話内容に基づいた次のアクションの自動生成までを実行します。
また、スマートグラスやAI搭載スマートフォンを通じ、アプリを介さず自然言語の対話だけで商品検索から決済、スマートホームの制御までを自律的に完結させる、シームレスな次世代のライフスタイルを描き出していました。


Ericsson社
低遅延のプライベート5Gを「ロボティクスの統合制御OS」として再定義していました。地上走行ロボットと空飛ぶドローンが連携して倉庫の空き棚検知などの在庫管理を自律的に行い、さらにヒューマノイドロボットによる精密な物体操作を実現するなど、産業のスマート化を牽引するデモが注目を集めました。


【Salesforce MWC2026】
IQ時代の最高レベルの顧客体験を
「Agentforce&Trust」で実現
MWC2026においてSalesforceは、昨年10月にサンフランシスコで開催した「Dreamforce」で掲げられた新たな テーマ「Welcom to the Agentic Enterprise」 のテーマのもと、通信事業者向けに自律型AI「Agentforce」を活用し、長年抱えているレガシーな課題を解決する具体的なユースケースをSalesforceのソリューション、パートナーとの共同ソリューション、お客様事例として多角的に紹介しました。
また、自らAgentforceの構築・体感のできる「Agentforce Lab」、お客様間のコミュニケーションのためのラウンドテーブルなど、さまざまなプログラムを4日間を通して提供し、会場となるSalesforce Gardenは「通信ビジネスにおけるAI」というテーマで活発な議論がなされました。

特に多くの参加者の関心を集めたのが、いよいよ実用化が始まったLumenとOne NZ(Vodafone NZ)、Telecom Argentina社におけるAIエージェントの活用事例です。
Lumen
Agentforceのリニューアルエージェントとオペレーションエージェントが、契約更新手続きや新規契約の注文内容の検証を自動化し、初年度で560万ドルのコスト削減と毎週300時間以上の生産性創出を実現。

One NZ
Agentforceのお客様対応エージェントが、顧客のプラン変更プロセス(本人確認から最適なプランの提案、注文の自動実行まで)を自動化し、スタッフの手を借りることなく50万人の顧客のプラン移行を「タッチレス」で実現。わずか5週間でのエージェント構築というスピード感とともに、顧客エンゲージメントを400%向上。

Telecom Argentina (Personal)
お客様先へ訪問するフィールドエンジニア向けのサポートエージェント。作業前にサポートエージェントがトラブルの事象やお客様とコールセンターとの会話内容を要約して提供することで、訪問時間の遵守率を22%向上。またトラブルに併せた作業手順をサポートエージェントがガイドし、作業案内をすることでオペミス等のヒューマンエラーも防止する。

昨年のMWC2025ではベルカナダ社の法人営業支援エージェントが注目を集めておりましたが、今年は各社で実装されている様々なAIエージェントが紹介されており、来年度に向けてます「Agentic Enterprise」への進化が期待されます。
現場で感じた通信業界とAIの未来
「AIは今後あらゆる業界で革命を起こす」と言われています。MWC2026は、通信業界が、「ビジネスと文化において最先端のAI活用が始まっている」と感じさせたと同時に、AI活用を支えるための 「AIを活用したインフラ開発」も推進しているAI最先端の業界であるということを印象付けられました。
様々なセッションで何度も繰り返されていた「There’s never been a better time to be in telecom(通信業界にいることにとって、今ほど素晴らしい時期はない)」
という言葉通りの勢いを、キーノート、展示ブースを含めイベント全体から感じました。このIQ時代のすべての技術革新における「北極星」(最終目標)は、「顧客ロイヤリティと体験の向上」にほかなりません。IQ時代のキーワードである「信頼」と「業務変革」は、まさにこの目標を達成するための基盤です。

改めてSalesforceが創業当初から掲げる「信頼(Trust)」と、マーケティングからサポートまで顧客接点の全てを網羅する「Customer 360」、そして抜本的な業務変革を実現する「Agentforce」が、これらを体現する重要なピースとなると確認しています。
MWC2026は、通信からIQ(知能)へと進化を遂げたインフラの上で、私たちがこれからどんな未来を築いていくのか、非常に期待の膨らむイベントとなりました。
そしてSalesforceは、真の「カスタマーサクセス」というビジョンに基づき、人間とAIの共創を通じて、最高の顧客体験の実現に向けてお客様と共に邁進し続けます。
Agentforceで実現する、人とAIが共に働く「エージェンティック エンラープライズ」の世界
フロントからバックオフィスまで、業務部門主導で即座に構築・連携。自律型AIエージェントが拓く、顧客体験と業務効率の新たなステージへ。




