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AIエージェントの不具合を、FDEが1週間で解決
ある予約プラットフォームは、AIエージェントを初導入するため試験運用を開始しましたが、いくつかの問題に直面していました。
この企業は、「Agentforce」というSalesforceのAIエージェント構築・導入を支援するプラットフォームを使い、利用者からの質問に答えるBtoB向けのAIエージェントを設計しました。
ところが、登録したデータの一部に不備があり、最適な回答を返せないことが時折あったのです。加えて、「よくある質問」などのナレッジ記事の更新が、データベースの「Data 360」に反映されていませんでした。
そこでSalesforceは、FDE(フォワード・デプロイド・エンジニア)チームを同社に派遣しました。
FDEは、会社が抱える懸念事項をヒアリングし、不具合の修正に向けてSalesforceの製品開発チームと連携して、AIエージェントの軌道修正を実施しました。「1週間ですべての問題を解決できました」と、SalesforceのFDE部門でディレクターを務めるSarah Khalid氏は述べています。
AIエージェントが順調に機能するようになり、手応えを得た同社は、2つ目のAIエージェントを立ち上げることを決めました。今では両方のAIエージェントに新機能が搭載され、とくに1つ目のAIエージェントは対応言語も拡大しています。
このようなAIエージェント導入の成功事例は、FDEの実力を示した証左でしょう。Sarah Khalid氏と同じく、FDE部門でディレクターを務めるBen Kracker氏は「FDEは今大きな注目を集めており、需要も高まっている」と話します。
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FDEとは? AI時代に生まれた新しい役割
近年、AIは多くの企業の適応力を超えるスピードで普及しています。FDEという役割は、こうした時代の流れに自然に応える形で誕生しました。
FDEは、専属の技術エキスパート・ビジネスコンサルタント・AI導入の伴走役の3つを兼ね備えたような存在。企業と二人三脚で、導入を妨げる壁を取り除きながら、AI活用を加速させます。同時に、顧客から寄せられた声を製品開発チームにも届け、AIエージェントの改善にもつなげます。
ベンチャーキャピタルのa16zは、このように例えています。
「企業がAIを導入する様子は、デジタルガジェットに詳しくない人が新しいiPhoneを買おうとする行為と似ています。使いたい気持ちはあっても、実際に使いこなすには、誰かのサポートが必要になることが多いのです」
(引用:Trading Margin for Moat: Why the Forward Deployed Engineer Is the Hottest Job in Startups)

時代を反映した役割
FDEという役割を最初に導入したのは、ソフトウェア企業のPalantirです。
2010年代初頭、Palantirは政府機関を中心とした顧客にエンジニアを直接派遣し、製品の導入をサポートしていました。このようなエンジニアを「デルタ」と呼び、2016年まではソフトウェアエンジニアよりも多くのデルタを抱えていました。
この役割は進化を遂げ、2025年にOpenAIをはじめとする大手テクノロジー企業がFDEの採用を発表したことで、いっそう大きな注目を集めるようになっています。IndeedとFinancial Timesの分析によると、FDEの求人数は2025年1月から9月の間に800%以上も急増したといいます。また、Salesforceも1000人規模のFDEチーム構築に取り組んでいます。
FDEとなるエンジニアの採用競争は非常に激しく、ソーシャルニュースサイト「Reddit」では「FDEに転向してから、自分のLinkedInは信じられないことになっています。好条件で魅力的なオファーが、次から次へと舞い込んでくるんです」というコメントも投稿されています。

FDEチームが機能する仕組み
FDEの働き方は、多くの点で従来のITコンサルタントに似ています。しかし、「最大の違いは対応の俊敏性とスピードにあります。Salesforceならではの進め方で、クライアント企業のAIエージェントを立ち上げ、稼働させる。そのために本当に必要なことだけを行います」(Khalid氏)。
また、FDEの役割は、企業や案件によって変化します。SalesforceがFDEチームを立ち上げたのは2025年4月。多くの場合は個々のメンバーが各顧客を担当しますが、デプロイメント・ストラテジスト(導入戦略の責任者)1人と、FDE 2人でチームを組むこともあります。
デプロイメント・ストラテジストは、企業ごとに最適なAI活用法を見極め、全体のAI戦略を描きます。これをもとに、FDEがAIエージェントの設計・構築・導入を実施。チームの技術設計だけでなく、プログラミングまで行うのがFDEの役割です。
ひとつの案件につく期間は、約3か月。または1〜2つのユースケースでAI導入が成功するまで、1社に専属で向き合います。状況によっては顧客先に常駐し、日々の業務に深く入り込むこともあります。

Salesforceパートナーとは、どう違う?
FDEはSalesforceパートナーと同様の仕事を行っているように感じるかもしれませんが、それぞれが担う役割は異なるため、両者が連携することで、AIエージェントをより効果的に導入できます。
Salesforceパートナーは依然として、顧客のテクノロジー導入サポートの核心部分を担います。一方、SalesforceのFDEは、コンサルティングやエンジニアリングに加え、現場で得た顧客の声を製品開発チームへ直接フィードバックする「プロダクトマネジメント」の観点を持つ点が特徴です。
この製品チームとの密な連携により、SalesforceのFDEは単なる導入支援を超えて、製品そのものの改善までつなげることができます。
SalesforceのFDEと連携するには
Salesforceの顧客は、どうすればFDEに相談できるのでしょうか。現時点では、特定の顧客に無料で提供される「モメンタムプログラム」への参加推薦を、営業担当者から受ける必要があります。
「これは、Salesforceからお客様への投資だと考えています」と、SalesforceでFDEプログラムのシニアコンサルタントを務めるPaige Elia氏は述べています。今後1年以内には、FDEサービスを有料で利用できるオプションの提供も始める予定です。
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独自のスキルセットが求められるFDE
FDEの採用競争が激化している理由の1つが、あまり例のない組み合わせのスキルを求められる点です。
テクノロジーに長けているだけではなく、優れたコミュニケーション能力を持ち、顧客対応業務に前向きに取り組む姿勢が必要です。栄養ドリンク片手に、1人で黙々とコードを書く……。そんな「インドア派エンジニア」のイメージとは、むしろ対照的でしょう。
FDEやデプロイメント・ストラテジストは、顧客の声にじっくり耳を傾け、ビジネスの仕組みを理解したうえで、専門知識のない担当者にも伝わる言葉で解決策を届ける力が求められます。
ここからは、優れたFDEになるために必要な5つのスキルを紹介します。
1.問題解決能力
FDEにとって最も重要なのは、問題解決に積極的に取り組む姿勢です。その理由として、AIに関するテクノロジーが非常に新しいことから、誰もが解決法を見出すための試行錯誤の段階にいるという点が挙げられます。
Kracker氏はこう述べます。「問題解決能力は、FDEに欠かせない最重要スキル。私たちは、何がわからないのか気付いていない顧客と直接向き合い、技術的な専門家として解決策を見出す役割を担っています」。
2.幅広い技術力
FDEは、Salesforceのプログラミング言語「Apex」でのコーディングから、カスタムJavaScriptの実装まで、あらゆる技術に対応できる「なんでも屋」でなければなりません。
「AIエージェントへの指示作成やプロンプトの試行、複雑なシステム連携など、日々さまざまな業務に取り組んでいます」とKhalid氏は語ります。「製品開発チームと協力し、現場で得た知見をもとに新機能を開発することも少なくありません」。
【事例5選】噂のAIエージェント、Salesforce社内はこう使ってる
FDEが支える現場と同じく、Salesforce社内でもAgentforceを実践活用しています。Data 360連携など5つの事例を、短い動画でぜひご確認ください。
3.わかりやすく伝えるコミュニケーション能力
技術以外の対人スキルも重要です。FDEは顧客と頻繁にやり取りするため、明確でわかりやすく伝える力が欠かせません。
Khalid氏はこう述べます。「顧客対応スキルを身に付けることも非常に重要です。技術的な専門用語に精通していない担当者や経営層とも、頻繁に話をすることがあるからです」。
4.ビジネス感覚
優れたコミュニケーション能力だけでは、FDEは務まりません。ビジネスを理解する感覚も必要です。これがあると、顧客がなぜその機能や使い道を求めているのか、理由まで理解できるようになります。
「FDEは、玉ねぎの皮を一枚ずつ剥くように、顧客が本来に解決したい課題と、その背景にある理由を正確に掘り下げていく必要があります」とKracker氏は語ります。「そうすることで、顧客が表面的に求める解決策ではなく、本質的な答えを届けられるのです」。
5.学習思考
AIエージェントの技術は、すさまじいスピードで進化しています。だからこそ、FDE自身も常に現場で学び続ける姿勢が求められます。
Salesforceのデプロイメント・ストラテジスト部門 ディレクターであるJude Umeh氏はこう説明しました。「FDEは、いつでも準備が整っている状態でなければなりません。抜群の賢さとスキルも必要です。そしてもちろん、学ぶことへの情熱も求められます。なぜなら、FDEの現場は、学びが絶え間なく続く場だからです」
スキルは「Trailhead」で身につけられる
FDEに必要なスキルの多くは、Salesforceの無料学習プラットフォーム「Trailhead(トレイルヘッド)」を通じて習得できます。学ぶだけでなく、認定資格の取得や、スペシャリスト試験への挑戦も可能です。さらに、TrailheadのAgentforce関連トレーニングで最高ランクにあたる「Agentblazer Legend」を目指すこともできます。
また、Salesforceは、FDEチームの新しいメンバー向けに「Builder Boot Camp」という短期集中型の研修プログラムを用意しています(オリエンテーション、メンター付きの実際のカスタマーエンゲージメントのシャドーイング、その後のスキルアセスメント・スキル構築・Builder Labを経て認定Builderへ、という流れ)。
FDEチームの新メンバーであるAlex Imperiale氏は、Salesforceの技術設計職から転向し、この研修を修了しました。彼が特に楽しんだのは、2週間の集中的な現場研修だったそうです。Alex氏はこう振り返ります。「すばらしい講師陣が、日々の業務に役立つツールの実演を披露してくれました。Elementsのセッションや、Cuneiformを使った実践演習もあり、本当に充実していました」

顧客の声が、製品改善に届く
FDEと連携する最大のメリットは、顧客と製品開発チームが直接つながり、協力できる点にあります。FDEは、AIエージェントの導入を速めるだけの存在ではありません。「何がうまく機能して、何が機能しないのか」顧客のフィードバックも収集します。
「私たちは、最前線で得たすべてのインサイトを製品開発チームやエンジニアに共有します。そうすることで、『顧客が本当に実現したいこと』を叶える製品をつくれるのです」とKracker氏は述べます。つまりFDEは、顧客の声を製品に反映させる「橋渡し役」でもあるのです。
たとえば、SalesforceのFDEチーム初期の顧客から「AIエージェントの働きぶりを測る方法をもっと増やしてほしい」という要望が挙がっていました。そこで、FDEがこの声を製品開発チームとエンジニアリングチームに伝達。その結果、開発されたのが顧客がAIエージェントの状態を分析・監視し、改善できるツール群「Agentforceオブザーバビリティ」です。
また、「AIエージェントがどのように回答を導き出したのか知りたい」という顧客の声をもとに、Agentforceの「セッションデータ追跡機能(AI判断の過程を記録する機能)」も誕生しています。

FDEは、まだ始まったばかり
AIエージェントの普及とともに、FDEの役割はさらに拡大していくでしょう。FDEの介在こそが、導入や運用の成否を左右する重要なカギだからです。
最後に、Khalid氏はこのように語りました。「FDEがいなければ、多くの顧客が試験運用のフェーズにとどまってしまうリスクがあります。登録はしたものの、本番導入に至らないまま停滞してしまうのです」。
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画像クレジット:Aleona Pollauf/Salesforce














