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2021 年のホリデーシーズンショッピングのデータから 2022 年を予測する

レストランでの体験に変化をもたらす「デジタルダイニング」

小売業界では、現実の世界とデジタルの世界が共存し、店舗が消滅することはなく、消費者は常に新しいものを求めています。

オンラインショッピングの成長は、2020 年から 2021 年初頭にかけて大きなピークを迎えてから落ち着いた状態が続いていますが、小売業者は、時間や場所を問わず買い物客に対応できるように準備しておく必要があります。

昨年は、COVID-19 のロックダウンから解放された消費者のおかげで、小売店はある程度通常営業に戻りましたが、ホリデーシーズンの買い物額は期待された結果を大きく下回るものでした。その最大の要因は、年末にサプライチェーンの限界を超えたことでした。その後、インフレが加熱して労働力の確保が難しくなり、賃金が上昇しました。また、新型ウイルスの変異株が急速に拡大し、社会全体が不安定な状況になりました。

しかし、Salesforce のデータによると、デジタルショッピングの普及がさらに加速することが予想されます。2020 年には、デジタルショッピングの方が実店舗よりも多く利用されましたが、このデジタルショッピングの優位性はさらに確固なものになっていくことが予想されます。2021 年のホリデーシーズン(11 月と 12 月)におけるオンラインショッピングの世界全体の売上高は、前年比 5% 増の 1 兆 1,400 億ドル、米国では 9% 増の 2,570 億ドルでした。この数字はそれほど大きなものではありませんが、2020 年に大きく成長した上での数字であることに注意する必要があります。

また、2021 年のホリデーシーズンのショッピングでは、2022 年まで続くと思われる新しい根本的な変化も見られました。

ホリデーシーズンショッピングの前倒し

「ラストワンマイル輸送」の課題は、2020 年のホリデーシーズンのロードマップを大きく変えました。2021 年には「ファーストマイル」の課題により、港へのコンテナ搬入が大きな影響を受けたため、サプライチェーン全体に大きな影響が出ました。こうしたことにより、在庫商品への影響を消費者が意識するようになったため、Salesforce は、ホリデーシーズンのショッピングがこれまでよりも早い時期に始まるだろうと予想していました(英語)。データによると、在庫状況を心配した世界中の消費者が 11 月の第 1 週にショッピングを開始したことにより、オンラインショッピングの売上額が前年よりも 16% 増加しました。

BOPIS(Buy Online Pick-up in Store:オンラインで注文した商品を実店舗で受け取ること) などの新しいショッピングスタイルによってホリデーシーズンの出荷期間が延びたため、年末の 2 週間でデジタルショッピングの販売額が大幅に増加しました。

本当の意味での変化は、ホリデーシーズンの最後に起こりました。小売業界では、出荷の締め切り日がとっくに過ぎているにもかかわらず、年末の最後の 2 週間で前年比 11% 増となる 23% の売上を記録しました。実際に、クリスマスまでの 2 週間で 18%、ボクシングウィーク(12 月 26 日~ 31 日)で 16% の伸びを示しています。クリスマスまでの 2 週間は、ホリデーシーズン全体におけるデジタルショッピング額の最大の増加率になっています。マーケティング担当者はこの 2 週間に、買い物客に向けたメッセージを送信しましたが、メッセージの送信件数は米国で 39%、全世界で 43% 増加し、年末商戦の最後の追い込みに貢献しました。

一方、サイバーウィークの場合、売上高の増加はそれほど大きくありません。消費財を取り扱う小売業にとって、サイバーウィークは比較的軟調な展開となり、全世界におけるオンラインショッピングの売上高の増加率は 2% にとどまりました。サイバーウィーク期間中の全世界の売上高は、11 月と 12 月における全世界のオンラインショッピング売上高の 23% を占めていますが、オンラインショッピング全体のシェアとしては、2 年連続で減少しています。サイバーウィークの期間は、感謝祭(11 月の第 4 木曜日)の前の火曜日からサイバーマンデー(感謝祭の次の月曜日)までで、サイバーウィークから年末商戦が始まると考えられています。

では、この時期にデジタルショッピングの売上高がこれほどまでに増加しているのはなぜでしょうか。それは、多くの消費者が BOPIS(英語)などの新しいショッピングスタイルを選んだことにより、年末の商品出荷期間が延びたためです。BOPIS に対応している米国の小売業者は、BOPIS に対応していない小売業者と比べて、ホリデーシーズン最後の 2 週間で約 2 倍の売上高を記録しました。

小売業界の 2022 年の課題として、デジタルショッピングに対応することにより、販売プロセス全体を効率化する必要があります。デジタルオーダーの 60% は、実店舗における需要の創出や新たな注文につながるため、こうした取り組みが無駄になることはありません。

サプライチェーンに関する問題

在庫量の減少や価格の上昇が小売業界全体で発生しましたが、これが消費者や小売業者にとって大きなプレッシャーになりました。これに伴い、ホリデーシーズン全体として以下のような影響がありました。

  • 在庫数の不足:出荷可能な商品の平均数は、米国と全世界でそれぞれ 2% 減少しました。2020 年の同時期には、米国で 16%、全世界で 30% 増加しましたが、これに比べると大幅な減少です。
  • 価格の上昇:全世界の価格は、前年同期比で 9% 上昇しました。米国では上昇率が 25% になったため、米国の消費者にとっては大きな衝撃になりました。
  • 注文数の減少:オンラインショッピングの売上額は全体として増加したものの、オンラインでの注文数は世界全体で 4% 減少し、米国では前年並みとなりました。また、消費者が購入した商品数も減少しました。最近の調査データでは、ホリデーシーズンにおける最大の懸念事項として、多くの消費者がインフレを挙げているため、この注文数の減少は驚くべきことではありません。
  • 割引販売の減少:新型ウイルスの拡大により、全世界的に厳しい状況が続いているため、割引販売も控えめになりました。サイバーウィーク期間中の全世界平均の割引率は、2020 年は 26% でしたが、2021 年には 24% に低下しました。ホリデーシーズン全体としての割引率も、2020 年の平均値を 2% 下回りました。これは、小売業者が繁忙期に割引を抑えた初めてのケースになりました。

つまり消費者は、財布と相談しながら欲しい商品を選び、より高い価格でより少ない数の商品を購入したということになります。

Salesforce は、2022 年もサプライチェーンとインフレに関する問題が続くと予想しています。しかし、これが原因で米国の製造業(英語)が復活したり、新しいテクノロジーが生み出される可能性があります。いずれにしても、サプライチェーン分野には大きな改革の余地があります。

オンラインショッピングにおけるクレジットカード利用率の減少

2021 年のホリデーシーズンショッピングのデータを見ると、消費者の購入商品と支払方法も変化していることがわかります。

人気の高い商品は、快適性や利便性を求める商品からスタイルを意識した商品へとシフトしています。これは、消費者の嗜好が食品や日用品から高級品やファッション用品へと変わったことを示しています。11 月と 12 月におけるオンラインショッピング売上高増加率の上位 3 つは、以下の商品でした。

  • 高級ハンドバッグ(45% 増加)
  • 家具(34% 増加)
  • フットウェア全般(32% 増加)

モバイルウォレットや決済ツールを使用する消費者が増えたため、オンラインショッピングにおけるクレジットカードの利用率が初めて減少しました

また、クレジットカードによるオンライン購入の割合も初めて減少しました。これは、クレジットカードよりも、Apple Pay などのモバイルウォレットや BNPL(後払い方式)などの決済ツールの方が便利だと考える消費者が増えているということを示しています。BNPL による購入は、2020 年と比べて 29% 増加しました。これは、オンライン購入全体の 8% を占めています(前年は 6%)。Apple Pay の利用率は前年比で 68% 増加し、売上高に占める割合は 2% から 4% に倍増しました。

現在は新商品が次々に発売され、新しい支払方法を選ぶ消費者が増えていますが、こうした状況に対処するには、スムーズな購入プロセスを維持しながら、各種の支払方法に対応することが重要になります。

ホリデーシーズンショッピングのデータから見えてくるもの

これからは、すべてのタッチポイントで消費者の行動を把握し、消費者が求めるエクスペリエンスを提供していく必要があります。新年になっても、消費者が求めるものは変わりません。それはデジタル技術です。

デジタル技術により、現実の世界とオンラインの世界の両方において、消費者のショッピング方法は大きく変わりました。消費者は、サイバーウィークなどに関係なく、どの商品をどんな方法でいつ購入するかを自分自身で決めているのです。ショッピングのピークシーズンは、これまでよりも早く始まり、これまでよりも長く続きます。オンラインショッピングの成長は、2020 年から 2021 年初頭にかけて大きなピークを迎えてから落ち着いた状態が続いていますが、小売業者は、時間や場所を問わず買い物客に対応できるように準備しておく必要があります。「現実の世界とデジタルの世界が共存し、店舗が消滅することはなく、消費者は常に新しいものを求める」という新しい小売モデルに対応する必要があります。

Caila Schwartz

Caila Schwartz は、Salesforce で、小売・消費財の消費者インサイト・戦略担当ディレクターを努めています。幅広いデータ分析とストーリーテリングのバックグラウンドを持ち、データ主導のエビデンスにもとづいて新規機会を特定することで、小売店に競争力を得るための鍵を提供することを中心に取り組んでいます。2014 年に Salesforce に入社。ウェルズリー大学卒業。

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