省力化とは、作業の機械化や業務プロセスの合理化を行なって、業務の手間や労働力を省くことです。人手不足が深刻化する今、あらゆる業界で省力化が大きな経営課題となっています。
予算の問題で省力化のための設備機器やICTの導入が難しい場合でも、補助金を活用すれば道が開けるかもしれません。
本記事では、省力化の意味と関連語句との違い、メリットおよび効果、活用事例を紹介します。省力化を進めて企業の課題を解決したい方は、参考にしてみてください。
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省力化とは
省力化とは、作業の機械化・ICT化や業務プロセスの合理化によって、業務効率を向上させることだと解釈できます。
機械の導入や作業の合理化などで,手間や労働力を省くようにすること。 |
引用:大辞林 第四版|三省堂
たとえば、これまで手作業でメルマガを作成していた場合を考えてみましょう。AI搭載型のMAツールを導入すれば、AIによってリードや顧客それぞれのニーズに沿ったメールを自動生成することが可能です。
ツールの導入によってメルマガ作成の手間が削減されたため、省力化が成功したといえます。
人手不足が課題の企業にとって、作業の削減や業務負担の軽減は大きな課題であるため、省力化が急務です。昨今、急速に広まっているDX(デジタルトランスフォーメーション)とも、通ずるところがあります。
以下の記事では、省力化にもつながるDXの事例を解説しているので、参考にしてみてください。
【DX事例10選】業種別にわかりやすく紹介|進め方や課題も解説
効率化との違い
省力化と効率化は、ほぼ同義です。
効率化とは、作業や業務プロセスを改善して、生産性を高めることです。
効率化(こうりつか)とは、特定の作業やプロセスを改善し、同じ入力でより多くの出力を得ることを指す。 |
引用:実用日本語表現辞典
改善の手法には、機械化やICT化が含まれるため、省力化は効率化と同一であると捉えることが可能です。
省人化との違い
省力化と省人化(しょうじんか)は、省略する対象が異なります。
省人化は、省力化を通じて業務に割く人員や一人あたりの労働時間を削減することを指します。
業務を見直したり、機械化したりすることで省力化を図り、業務に携わる人員や労働時間を減らすこと |
引用:デジタル大辞泉|小学館
労働人員の数はそのままで、機械化やICTによる作業の自動化や業務の削減を行ったのであれば、省力化に留まります。
少人化との違い
省力化と少人化(しょうにんか)の違いは、削減する対象です。
少人化とは、各工程の稼働状況に合わせて最小限の人数で進められるように人数を調整することです。たとえば、A工程の人員をB工程に回すというように運用します。
省人化と似ていますが、全体の人員数をカットするわけではなく、リソース配置の最適化といえます。
なお、少人化は、トヨタ株式会社が生み出した「トヨタ生産方式」のなかで語られる造語です。
低成長の時代において、生産量の減少に見合った人数で生産できるラインを作り上げる必要がありました。そこで、少人数でも稼働できるラインを作る「少人化」に取り組んだのです。
軽労化との違い
省力化と軽労化は、大きく意味が異なります。
軽労化は、労働を楽にする概念です。たとえば、パワードスーツを着用して重いモノを運ぶ労力を削減することを指します。衰えた身体機能や体力を補い、人間の労働をサポートすることが目的です。
一方、省力化は機械やICTを活用して労働を自動化したり無人化したりするため、軽労化とはまったく異なる概念です。
省力化のメリット
省力化には、大きく4つのメリットがあります。
- 業務の効率化
- 人件費の削減
- 製品・サービスの品質向上
- 業務量の拡大
メリットを意識して省力化に取り組むと、大きな効果を得られるはずです。
業務の効率化
省力化では、そのプロセスにおいて業務の効率化を実現できます。
たとえば、業務プロセスを自動化すれば、手作業が減少して短時間でタスクを完了できるでしょう。また、作業の標準化によって業務フローが明確化され、経験の有無に関係なく、だれもが効率的に作業できるようになるはずです。
省力化に取り組むことで業務が効率化され、さまざまな企業課題の解消につながります。
人件費の削減
省力化のプロセスで機械やICTによる自動化が実現すると、人間の手による作業が減少するため、リソースの最適化と人件費の削減が可能です。
たとえば、単純作業を自動化すれば、その分ほかの業務に人手を割けます。リソース配分・配置の最適化によって、業務効率が向上し、時間外労働の減少に伴う残業代の削減も期待できるでしょう。
省力化に取り組むことで人件費の削減に成功した場合は、予算を再配分できるメリットもあります。
製品・サービスの品質向上
省力化のために導入した機械やICTは、製品・サービスの品質向上に役立ちます。
たとえば、省力化のためにAIチャットボットを導入すると、人間のオペレーターではできなかった24時間対応を実現できます。また、製造業で産業ロボットを活用すれば、人間には難しい安定した作業を繰り返すことが可能です。
省力化によって製品・サービスの品質が向上することで、顧客体験・満足度の向上も促進できます。
業務量の拡大
省力化のプロセスで機械やICTを導入すると、処理できるタスク量が増加するため、人間では難しかった業務量に対応できるようになります。
人手を増やすわけではないため、人間側には余裕が生まれます。その結果、急な需要増加が発生しても、柔軟に対応可能です。また、新規事業にも取り組む時間を生み出すことにもつながります。
同じリソースのままで業務量を拡大できる分、ほかの事業や業務に注力できるはずです。
省力化の効果

省力化のメリットは、企業に次の3つの効果をもたらします。
- 労働生産性の向上
- 労働時間の削減
- 人手不足の解消
省力化の効果は、さまざまな課題の解消や企業成長の促進につながるでしょう。
労働生産性の向上

出典:令和元年度 年次経済財政報告(内閣府)(2025年1月16日利用)
内閣府が発表した「令和元年度 年次経済財政報告」によると、省力化投資を実施すると、労働生産性が上昇することがわかっています。労働生産性とは、従業員1人あたり、または1時間あたりに生産できる労働の成果を指し、労働の効率性を測定する尺度です。
省力化投資と労働生産性のグラフでは、省力化投資によって1時間あたりの労働生産性が約20%上昇するという結果が示されています。
省力化投資は直接労働生産性の向上につながることが期待できるため、積極的な取り組みが重要です。
労働時間の削減

出典:令和2年度 年次経済財政報告(内閣府)(2025年1月16日利用)
内閣府が発表した「令和2年度 年次経済財政報告」によると、バックオフィスの省力化を意図したIT投資の結果、労働時間の削減効果が認められています。
バックオフィスの省力化では、たとえばWeb・IT関連のソフトウェアやシステム、RPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入します。RPAとは、単純作業や定型業務を自動化するツールです。
同調査の分析では、バックオフィスの省力化を意図したIT投資を行なっている企業は、そうではない企業と比較して正社員1人あたりの月間労働時間が2時間短いことが指摘されています。省力化が従業員の負担軽減につながることを期待できます。
人手不足の解消

出典:令和元年版 労働経済の分析-人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-(厚生労働省)(2025年1月16日利用)
厚生労働省が発表した「令和元年版 労働経済の分析」によると、省力化・合理化投資に取り組む企業では、人手不足の解消効果が認められています。
「省力化・合理化投資」による効果のグラフからは、製造業は39.4%で全産業の20.3%よりも19.1ポイント高くなっており、とくに製造業における人手不足の解消効果が高いことがわかります。
さまざまある人手不足の緩和対策のなかで、省力化が手段のひとつとして選択肢になり得るでしょう。
以下の記事では、AIによる人手不足の解消について解説しているので、参考にしてみてください。
人手不足はAIでカバーできる?ビジネスにおけるAIとデータ活用の実態 Vol.2
省力化のデメリット

省力化を推進する際は、機械やICTなどを導入するため、従業員のリテラシーが問われます。
たとえば、社内のデータを一元化するためにデータプラットフォームを導入しても、使い方やデータ分析の有用性がわからなければ、定着しないでしょう。
そのため、機械化やICT化に対応できるように、人材育成に取り組む必要があります。
また、機械やICTの導入には初期投資が必要となるため、予算状況によっては負担が増大するおそれがあります。
活用できる補助金がさまざまあるので、省力化に取り組む前に調べてみましょう。
省力化に活用できる補助金

補助金を活用すれば、省力化に必要なシステムや設備の導入費用を抑えられる可能性があります。
省力化に活用できる補助金の代表的な例は、次のとおりです。
補助金 | 概要 |
---|---|
中小企業省力化投資補助金 | IoTやロボットなど生産性の向上につながる製品を「製品カタログ」から選択・導入する際に申請できる |
IT導入補助金 | 中小企業・小規模事業者などが労働生産性の向上を目指してITツールや関連サービスを導入する際に申請できる |
対象条件や対象ツールが決められているため、まずは概要をチェックして、自社の省力化に活用できるか判断しましょう。
なお、補助金制度は、年度ごとに内容が変更されることがあるため、必ず該当年度の要項を確認してください。
成功事例からわかる省力化の方法

ここでは、成功事例をもとに省力化の方法を紹介します。
- 事例1.SFAの導入で営業の事務作業を標準化
- 事例2.MAツールで業務プロセスを改善
- 事例3.AIチャットボットの活用で有人対応を削減
- 事例4.ロボットの導入でヒューマンエラーを削減
- 事例5.セルフレジの導入で人手不足を解消
先駆者たちの取り組みを参考にして、省力化のイメージを描いてみてください。
事例1.SFAの導入で営業の事務作業を標準化

株式会社荏原製作所は、ポンプや風力・水力機器を製造する企業です。大正元年創業と、長い歴史のなかで培ってきた高い技術力で世界を席巻してきました。
同社は、企業拡大に伴って拠点数が増えたことで、仕事のやり方が不統一になり、効率が低下することをひとつの課題と捉えていました。なかでも、営業の生産性向上が大きな課題だったといいます。
営業の業務改革を進めるべく、同社はSFAである『Sales Cloud』を導入。拠点ごとにバラバラになってしまった仕事のやり方を標準化し、担当者のスキル育成に注力できるようになりました。
その結果、約900名だった営業部門を約700名に再編成でき、省人化に成功しています。
SFAは、営業業務を効率化できるITツールです。担当者だけではなく、部門あるいは社内全体で各商談やプロジェクトの進捗を可視化・共有できるため、担当者以外のメンバーが対応できるようになります。
株式会社荏原製作所でも、以前は製品のメンテナンス依頼で営業担当者がつかまらず、お客さまに不便を強いるケースがありました。ところが『Sales Cloud』によって、だれもが顧客情報と提供サービス内容を把握できるようになったことで、お客さまの利便性向上につながっています。
出典:Salesforceを使った業務改革で効率化と生産性向上に成功した荏原製作所の挑戦
事例2.MAツールで業務プロセスを改善

大手ピザチェーンである株式会社ピザハットは、新型コロナウイルスの流行をきっかけに、認知度向上に取り組むことになりました。
以前は、宅配ピザチェーンが競合でしたが、宅配ビジネスが一気に広まったことで競合の増加・多様化が起こったのです。収益成長のためには、さらなる認知度向上が必要でした。
最初に着手したのは、メルマガによる顧客接点の強化です。同社は、メルマガを通じてカスタマージャーニーの設計から評価までを自動化できるMAツールとして『Marketing Cloud』を導入。
『Marketing Cloud』で省力化しつつ、きめ細かなメルマガキャンペーンの設計やカスタマージャーニーの検討が可能となり、顧客の購買頻度向上に成功しました。
MAツールは、マーケティング活動を自動化して成果向上を図るITツールです。リードの獲得から商談化までの業務の効率化を担います。メルマガの作成だけではなく、Webサイトにおける顧客行動の分析や広告の効果測定などが可能です。
顧客一人ひとりに寄り添ったOne to Oneマーケティングを実現するためには、MAツールによる分析・自動化が役立ちます。
出典:最小の負担で最大のマーケティング効果をデジタルの力で「カスタマージャーニー」を実現
事例3.AIチャットボットの活用で有人対応を削減

WILLER MARKETING株式会社では、顧客の問い合せを迅速に解決する手段として『Einstein ボット』を活用しています。
Einstein ボットとは『Service Cloud』をはじめとするSalesforce製品と連携できるAIチャットボットです。AIチャットボットは、顧客の問いかけに対してAIが自動で返答を行うツールで、カスタマーサービスに取り入れられています。
WILLER MARKETING株式会社は、フリーワードによる質問に対してAIが「一問一答型」で答える形式を採用して運用を開始しました。さまざまな検証を経て、AIが選択肢を提示する「複数型」に移行した結果、解決率が一気に上昇したのです。
チャットによる問い合わせは、ほぼEinstein ボットで解決できるようになり、有人対応率の低下やオペレーターのチャット対応時間の短縮など、省力化に成功しています。
チャットボットのほかにもAIはさまざまな場面で活用されており、省力化に役立ちます。たとえば、ChatGPTやGeminiなどの生成AIは、ビジネスにおける文書の作成をサポート可能です。このように、AIは省力化の手段として大いに活用できます。
出典:パーソナライズされた問合せ対応にEinstein ボットを導入、回答チャネルの多様化で解決率上昇へ
事例4.ロボットの導入でヒューマンエラーを削減
三友工業株式会社は、発電機設置工事の事前測定のプロセスでロボットを導入し、省力化に成功しました。
従来は、発電機設置場所の測定を手作業で行っていましたが、3Dスキャナを搭載した自走式ロボットによる自動測定へ切り替えたのです。手作業のときは2人で1日がかりだった作業が自動化され、従業員の負担軽減とヒューマンエラーの削減に寄与しています。
ロボットには、工場で活用する大型の産業用ロボットから、無人搬送機(AGV)のような小型のものまで、さまざまあります。初期投資は必要ですが、ロボットによる省力化によって、業務の大幅な効率化やヒューマンエラーの削減効果を期待できるでしょう。
出典:平成28年度ロボット導入実証事業 採択事例紹介(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/robot/161019handbook.pdf) をもとに作成
まとめ:省力化に取り組んで生産性を向上させよう

省力化を進める際は、機械やICTの導入が必要です。いずれも初期費用がかかるため抵抗を感じられるかもしれません。
しかし、生産性の向上や労働時間の削減、人手不足の解消などの効果が認められており、長い目で見ると企業の収益成長を支えてくれるはずです。まずは、自社の生産性向上につながりそうな取り組み事例を参考に、省力化のプランを立ててみましょう。
Salesforceでは、省力化に役立つ製品を数多く用意しています。営業業務をサポートする『Sales Cloud』や、マーケティング活動の自動化を実現する『Marketing Cloud』は、みなさまの省力化をサポートします。
無料トライアルも提供していますので、お気軽にお問い合わせください。
また、以下の資料では省力化以外の方法で営業組織を強化するヒントをまとめていますので、あわせてご覧ください。
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