「プロダクトアウト」とは自社の強みや理念を活かして商品開発を行う手法で、消費者のニーズを優先して商品を開発する「マーケットイン」とは逆の意味をもちます。
本記事では、プロダクトアウトとマーケットインの意味、それぞれのメリット・デメリットを解説しています。「結局どちらがよいの?」という疑問も解決できる内容になっているので、製品開発に携わっている方はぜひ最後までご覧ください。
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目次
プロダクトアウトとマーケットインの違い

プロダクトアウトとは、企業独自のノウハウや強みを活かして商品開発を行う手法です。消費者のニーズよりも「作りたい、売りたいものを売る」という戦略で、「よいものを作れば商品は売れる」という考え方にもとづいています。
対してマーケットインとは、消費者のニーズを優先して商品を開発する手法です。企業側が売りたいものよりも「消費者が求めているものを売る」戦略で、「売れるものを作って提供する」特徴があります。「顧客中心の考え方」、「顧客中心のデザイン」などと呼ばれることもあります。
プロダクトアウトに代わりマーケットインが登場
「よいものを作れば商品は売れる」としたプロダクトアウトは、第二次世界大戦後から高度経済成長期に主流だった商品開発の手法です。当時は消費者が望む商品よりも、自社の強みを重視した販売スタイルで商品を提供している企業が多く見られました。
しかし独自性だけでは売上につながりにくく、大量生産で市場が飽和したことをきっかけに、消費者目線で商品を開発する「マーケットイン」へと戦略が転換されました。市場分析を徹底的に行い、企業が売りたいものよりも消費者のニーズに合った、売れるものを作る考え方です。
プロダクトアウトの対義語としてよく用いられ、現代はマーケットインの手法が主流になってきています。またマーケットインと近い意味で使われる「マーケットドリブン」という考え方も存在します。マーケットドリブンとは、市場やニーズを予測し、それにもとづいて製品を開発する手法です。
プロダクトアウトは時代遅れ?
第二次世界大戦後から高度経済成長期にトレンドだったプロダクトアウトは、時代遅れと見られることもあります。よいものを作っただけでは売れなくなった1990年代頃から、市場のニーズを優先したマーケットインが広がったためです。
しかしマーケットインが最新で素晴らしく、プロダクトアウトが古くて悪い戦略というわけではありません。両者ともにメリット・デメリットがあり、プロダクトアウトも依然として有効な戦略として利用されています。
プロダクトアウトのメリット

プロダクトアウトには以下3つのメリットがあります。
- 競合他社との差別化を図った商品を展開できる
- 商品開発に必要なコストを抑えられる
- ブランド価値の向上を図れる
それぞれ見ていきましょう。
1.競合他社との差別化を図った商品を開発できる
プロダクトアウトでは自社がもっている技術やアイデアをもとに商品を開発するため、革新的な商品を生み出せる可能性が高いです。他社が模倣しにくい独自の技術であれば、競合他社との差別化を図れるほか、市場の独占も優位になります。競合を寄せつけない独創的な製品を生み出すことで、最大限の売上が期待できるでしょう。
以下の記事では、他社商品と差別化するための具体的なプロセスを解説しています。ぜひ商品開発にお役立てください。
2.商品開発に必要なコストを抑えられる
これまでの自社技術を活かせるため、外部に頼ることなく商品開発を進められることもプロダクトアウトのメリットです。新しい機材の導入や人員確保が不要で、商品開発に余分な費用を必要としません。消費者ニーズを中心とした開発も少ないので、市場調査にかかるコストも最低限で済みます。
3.ブランド価値の向上を図れる
ありきたりな商品では競合他社に埋もれてしまいますが、画期的な商品を生み出すことで、企業ブランドの価値向上が期待できます。とくに新しい市場を切り開く商品は、消費者に強い印象を残し、多大なブランド価値の向上に寄与するでしょう。
革新的で高品質な商品が認知されると、企業の信頼性も高められます。たとえばiPhoneの発売で世界中にインパクトを与えたAppleは、圧倒的なブランド価値と信頼性を高めました。このようにブランドの価値を高めることで、長期的な競争優位性の確保が期待できます。
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プロダクトアウトのデメリット

メリットもある一方で、デメリットも存在します。
- 市場のニーズに合わず商品が売れない可能性がある
- 商品改善時のコストが大きくなる
とくに消費者ニーズに合わない商品を開発した場合、大きな損失を生む可能性があるでしょう。デメリットをしっかりと理解しておくことが重要です。
1.市場のニーズに合わず商品が売れない可能性がある
プロダクトアウトは「売れるもの」ではなく「売りたいもの」を優先するため、市場のニーズと合致しないケースがあります。消費者に必要とされない商品を開発してしまった場合、売上に結びつかない可能性が大きいでしょう。
在庫を抱える場合は赤字も考えられます。いくら優れた技術を活用していても、消費者にとって魅力的でなければ失敗に終わるリスクが高まってしまいます。
2.商品改善時のコストが大きくなる
消費者のニーズに合わず商品を改善する必要が出た場合、商品見直しに多大なコストがかかる点もプロダクトアウトのデメリットです。プロダクトアウトは自社の技術を中心に開発を行うため、大幅な変更が困難な可能性があります。
商品が売れない理由としては、他にもターゲティングミスや機能性の問題、マーケティング不足など、さまざまな理由が考えられます。いずれにせよ商品が売れなかった原因を追究して改善するには、時間的コストと人的コストの確保が必要です。
プロダクトアウトの成功例

次は、過去にプロダクトアウトで爆発的な成功を収めた商品事例をご紹介します。
- ポケモン GO
- iPhone
- WALKMAN(ウォークマン)
誰もが知るこれらの商品も、実はプロダクトアウトによって開発されました。
ポケモン GO
『ポケモン GO』とは、位置情報を活用したスマホ向けゲームアプリです。現実世界を舞台にポケモンを捕まえたりバトルさせたりするゲームで、2016年に発売されました。
AR(拡張現実)を使用したテクノロジーと、実際に歩きながらゲームを楽しめるという革新性があらゆる世代に刺さりました。絶大的なブームを巻き起こした、2010年以降のプロダクトアウト代表例です。
iPhone
2007年に登場した『iPhone』も、プロダクトアウト成功事例のひとつです。今は画面をタッチして操作するスマホが一般的ですが、iPhoneが登場するまではボタンを押して操作する携帯電話が主流でした。既存市場にはなかった「スマートフォン」の先進的なアイデアが全世界を魅了し、世界的な成功を収めました。
WALKMAN(ウォークマン)
『WALKMAN(ウォークマン)』とは、ソニーが販売するデジタルオーディオプレーヤー(DAP)です。家で音楽を楽しむのが当たり前だった時代に「持ち運び可能な音楽プレイヤー」という新しい価値を市場に提供し、爆発的な売上を記録しました。WALKMANを使って外出先でも気軽に音楽を聴けるようになり、若者を中心に高く評価されました。
マーケットインのメリット

続いては、プロダクトアウトの対義語であるマーケットインのメリットを見ていきましょう。
- 消費者ニーズに合った商品を作れる
- 顧客満足度の向上につながる
- 売上予測を立てやすい
それぞれ詳しく解説します。
1.消費者ニーズに合った商品を作れる
マーケットインは事前に市場リサーチをし、消費者の要望や課題を把握します。このアプローチにより、ニーズに合った商品を開発できるため、販売成功確率を高められるのが特徴です。また売れやすい商品が作りやすいため、在庫を莫大に抱えたり商品を大幅に変更させたりする可能性も低い傾向にあります。
2.顧客満足度の向上につながる
消費者ニーズにマッチした商品を提供できるようになると、顧客満足度が向上する点もメリットです。顧客が満足するとリピーターの獲得や顧客ロイヤリティの向上など、長期的な視点でも大きなメリットがあります。
さらに口コミが広がると広告費の軽減にもつながるため、売上の最大化だけでなく宣伝にかかるコスト削減にも寄与します。
顧客満足度を向上させる方法について知りたい方は、ぜひ以下の記事を参考にしてください。
関連記事:顧客満足度(CS)を向上させて業績アップを目指すためには?
3.売上予測を立てやすい
マーケットインは市場データをもとに商品開発を行うため、ある程度の売上予測を立てられる点が特徴です。売上が予測できると適切に在庫管理ができるようになり、在庫不足や過剰在庫といった問題を解決できます。また人材配置や予算配分も行いやすく、売上拡大に向けた戦略的な施策立案が可能です。
売上予測の精度を高めるコツを以下の記事で解説しています。あわせてお役立てください。
関連記事:売上予測の精度を高める5つのヒント
マーケットインのデメリット

マーケットインには多くのメリットがありますが、短所も存在します。
- 画期的な商品の開発が難しい
- 飛躍的な売上を生み出しにくい
- 短期志向になりやすい
1つずつ見ていきましょう。
1.画期的な商品の開発が難しい
マーケットインは、既存ニーズに応えることが基本となった考え方です。そのため、これまでの商品とはひと味違うような、画期的な商品の開発が難しい傾向にあります。消費者が自覚していない潜在的なニーズを掘り起こすのは容易ではなく、新しい市場を創造する力には限界があります。
また市場に合った商品を提案することから、競合他社との差別化も困難です。似通った商品になりやすいため、自社商品を売り出すための工夫が求められます。
2.飛躍的な売上を生み出しにくい
保守的な商品開発が特徴のマーケットインは安定性をもたらす一方で、飛躍的な売上はあまり期待できません。既存市場の需要に応えるだけでは、プロダクトアウトの代表例であるiPhoneやWALKMANといったヒット商品を生み出し、爆発的な売上を挙げることは難しいでしょう。
3.短期志向になりやすい
目の前の市場や消費者ニーズを意識しすぎて短期志向になりやすい点も、マーケットインのデメリットです。顧客のニーズに応えて安定的に売上を上げることは悪いことではありません。しかしその結果、企業の長期的なビジョンや視点を失う可能性があります。
消費者の一時的な流行にあわせて商品開発を続けたとき、長期的に見てブランド価値の低下を招くことも考えられるでしょう。
プロダクトアウトとマーケットインはどちらがよいの?

マーケットインの考え方が広がり、次第にプロダクトアウトが古い戦略だと考えられるようになりました。しかし、どちらが「正しい」というわけではなく、状況や目指す目標によって適切な戦略は異なります。
企業の技術力が突出している場合や、市場ニーズが明らかでない場合はプロダクトアウトが優位でしょう。一方で競争が激しく顧客の声が明確な場合は、マーケットインが適していると言えます。
ただ上で解説したように、どちらの手法もメリットとデメリットがあります。どちらかに偏った戦略を立てるよりも、両者を融合した柔軟な戦略が成功への鍵です。
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プロダクトアウトとマーケットインを融合した戦略を立てよう

プロダクトアウトとは、自社の強みや理念を活かして「作りたい、売りたいものを売る」という商品開発の手法です。対してマーケットインとは、企業側が売りたいものよりも「消費者が求めているものを売る」商品開発手法です。
近年はマーケットインへの注目が高まってきていますが、商品開発においてはどちらかが正しいというわけではありません。両者ともにメリット・デメリットがあり、状況や目指す目標によっても適切な戦略は異なります。どちらかの手法を選択するのではなく、プロダクトアウトとマーケットインを融合した柔軟な戦略を立てていくとよいでしょう。