マーケティングプロセスとは、効率的かつ効果的にマーケティング戦略を立案するための一連の流れです。
マーケティングプロセスにもとづいて戦略の立案から施策の実行・評価までを行なうことで、顧客ニーズに沿った一貫性のあるアプローチが可能になります。
本記事では、マーケティングプロセスの概要と一般的な流れ、ポイントを解説します。マーケティング活動の効果がなかなか出ないとお悩みの方は、マーケティングプロセスに沿って自社の活動が進められているかどうかを確認してみてください。
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目次
マーケティングプロセスとは

マーケティングプロセスとは、マーケティング戦略の立案から実行までの基本的な流れを指します。
一般的な流れは、次の6ステップです。
- マーケティングリサーチ
- セグメンテーション
- ターゲティング
- ポジショニング
- マーケティングミックス
- マーケティング戦略の実行と評価
ステップ1から4では、内外の環境分析を通じて、市場の状況や自社の課題・リソース・立ち位置などを分析します。分析結果を踏まえることで、ターゲットに合った効果的な戦略を組み立てることが可能です。
ステップ5~6では、収集したデータと戦略にもとづく施策を設計し、効果測定を行ないます。
マーケティングプロセスに沿うことで、施策展開後に「ターゲットがズレていた」「なにが成果につながったのかわからない」といった課題が生じるのを防げます。その結果、戦略の実効性を高めることが可能です。
なお、マーケティングプロセスには、R-STP-MM-I-Cという考え方もあります。
R-STP-MM-I-Cとの違い
R-STP-MM-I-Cは、現代マーケティングの父と呼ばれるフィリップ・コトラーが考案した、5ステップのマーケティングプロセスです。
一般的な6ステップと大きな違いはなく、どちらもマーケティング活動を体系的に理解し、実行の精度を高めるために効果的なフレームワークです。
ただし、STPの扱いが異なります。
R-STP-MM-I-Cの5ステップは、次のとおりです。
- Research:市場調査
- Segmentation・Targeting・Positioning:セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング
- Marketing Mix:マーケティングミックス
- Implementation:実行
- Control:管理・評価
R-STP-MM-I-Cは、STP分析を一括で行なうのが特徴です。
一方、一般的な6ステップでは、STPを3つの独立したステップに分けて、より丁寧に分析・検討を行ないます。「だれに」「なにを」「どう届けるか」を明確にしやすいため、6ステップの考え方が広く用いられています。
フレームワークを使ったマーケティングプロセスの6ステップ【図あり】

マーケティング戦略の立案から実行までは、フレームワークを使って行なわれます。
ここでは、次の6ステップに沿って、フレームワークを使ったマーケティングプロセスの流れを解説します。
- マーケティングリサーチ
- セグメンテーション
- ターゲティング
- ポジショニング
- マーケティングミックス
- マーケティング戦略の実行と評価
マーケティング戦略を立案する際の参考にしてみてください。
1.マーケティングリサーチ
マーケティングプロセスの最初に、自社が戦う市場を見極めるために、社内外の環境を分析するマーケティングリサーチを行ないます。
効果的なマーケティング施策を設計するためには、自社の力を発揮できる分野や市場の選定が必要です。そこで、マーケティングリサーチを通じて収集したデータを使って、競合他社のシェアや業界の成長性、消費者のニーズや自社の強み・弱みなどを分析します。
このとき、一般的に活用されるフレームワークは次のとおりです。
- PEST分析:外部環境を分析する
- SWOT分析:内部環境を分析する
- 3C分析:内外を統合的に分析する
マーケティングリサーチでは、3つのフレームワークすべてを活用し、社内外の環境を整理・分析しましょう。
なお、以下の記事ではマーケティングにおけるフレームワークの使い方を解説しているので、あわせてご覧ください。
関連コンテンツ:マーケティングフレームワークとは?目的別の種類・使い方・選び方を徹底解説
PEST分析:外部環境を分析する

PEST分析とは、次の4つの観点から、自社を取り巻く外部環境分析するフレームワークです。
4つの観点 | 具体的な調査項目例 |
---|---|
Politics(政治) | 現在の政府の方針・法改正や規制(強化・緩和) |
Economics(経済) | 経済指標や成長率などからわかる景気動向 |
Society(社会) | 人口動態(少子高齢化・人口移動など)・ライフスタイルや価値観の変化 |
Technology(技術) | 業界における技術革新や新技術の登場・自動化やAI、IoTなどの浸透状況 |
現在の状況だけではなく、今後の変化も見通したうえで分析する必要があります。
なお、PEST分析の結果はSWOT分析のOとTを整理する際の材料として役立つので、活用してみてください。
SWOT分析:内部環境を分析する

SWOT分析とは、自社のStrength(強み)とWeakness(弱み)を洗い出したうえで、外部環境のOpportunity(機会)とThreat(脅威)を明らかにし、組み合わせて戦略を検討するフレームワークです。
次のように、各項目を掛け合わせて自社ができることを検討します。
- 強み×機会
- 強み×脅威
- 弱み×機会
- 弱み×脅威
自社だけではなく、競合他社に対してもSWOT分析を実施すると、差別化できるポイントやより自社に合った方針が見える可能性があります。
より内部環境を詳細に分析したい場合は、VRIO(ヴリオ)分析も併用してみてください。
3C分析:内外を統合的に分析する

3C分析とは、Customer(顧客)・Competitor(競合)・Company(自社)の三者の視点からマーケティング戦略を検討して、バランスよく構築するためのフレームワークです。
一般的に、次のような流れで分析を進めます。
視点 | 着眼点 | 分析項目例 |
---|---|---|
Customer(顧客) | 顧客が求める価値はなにか | ・顧客のニーズ・行動傾向 |
Competitor(競合) | 競合に勝てるポイントはどこか | ・競合のシェア・競合の強み、弱み |
Company(自社) | 自社が提供できる強みはなにか | ・自社の経営資源・差別化できるポイント |
顧客ニーズからズレたアプローチにならないよう、上から順に分析を進めることが大切です。
なお、複数の企業でサービスや商品を展開している場合は、Co-operator(協力者)が加わり4Cになることもあります。
2.セグメンテーション

セグメンテーションとは、市場を顧客ニーズや特性などにもとづいて細分化し、グルーピングするプロセスです。
顧客は異なるニーズを持っているため、効果的にアプローチするには個別対応であるOne to Oneマーケティングが理想的です。しかし、一人ひとりに異なる施策を展開するのは現実的ではありません。
そこで、ターゲットをいくつかのセグメントに分けたうえで施策を検討すれば、よりニーズに沿ったアプローチが可能です。
セグメンテーションを丁寧に行なうことで、次のステップであるターゲティングやポジショニングの精度が高まり、成果につながりやすくなります。
セグメンテーションで活用されるフレームワークは、STP分析の「S」です。
STP分析の「S」:ターゲット選定のために市場を細分化する

STP分析とは、Segmentation(セグメンテーション)・Targeting(ターゲティング)・Positioning(ポジショニング)のプロセスを経て、ターゲットや市場、自社の立ち位置を決めるフレームワークです。
セグメンテーションでは、消費者のニーズはもちろん、居住国や年齢・ライフスタイルや購買行動などにもとづいてセグメントを分類します。そのため、消費者行動や属性などのデータを収集したり、プロファイリングしたりする必要があります。
3.ターゲティング
ターゲティングとは、セグメンテーションで分類したセグメントから、自社がアプローチすべき市場を選定するプロセスです。
セグメントごとの市場規模や成長性、競合の状況、自社の強みとの相性などをもとに、もっとも成果が見込めるセグメントを見極めます。
明確なターゲットを定めることで、以降のポジショニングや施策設計の方向性が定まりやすくなります。
ターゲティングで活用されるフレームワークは、STP分析の「T」です。
STP分析の「T」:自社の強みを発揮できる市場を選定する
ターゲティングでは、セグメントごとの「市場の魅力度」「競合状況」「自社との適合性」を軸にして、自社が注力すべき市場を選定します。
たとえば、成長性の高い市場でも、競合が強ければ避ける判断が必要です。また、ニーズがマッチしていても自社のリソースが足りない市場なら、優先度を下げる必要があります。
このように、複数の要素を比較しながら、自社の強みをもっとも活かせる市場を見極めることが重要です。
4.ポジショニング
ポジショニングとは、市場における自社の商品やサービスの立ち位置を明確にするプロセスです。
競合が真似できない独自の地位を築くことを目指すために、商品・サービスのコンセプトや購入すべき理由を設計します。
たとえば、「低価格で気軽に購入できる」という印象が強い競合がいる市場では、「専門性が高く信頼できる」といった印象を顧客に与えられるように商品・サービスを設計すると、差別化を図れます。
ポジショニングを決めてから施策の設計に入ることで、メッセージやアプローチに一貫性が生まれ、マーケティング施策全体の精度が高まるでしょう。
ポジショニングで活用されるフレームワークは、STP分析の「P」です。
STP分析の「P」:競合と差別化できる立ち位置を決める
ポジショニングでは、競合と比較した際に自社の製品・サービスがどのような価値を持ち、どこに位置づけられるべきかを明らかにする必要があります。
よく用いられる手法がポジショニングマップです。
ポジショニングマップは、縦軸に「価格」、横軸に「品質」というように、異なる評価基準を設定したうえで、競合や自社の商品・サービスを配置します。これにより、各社の立ち位置をひと目で把握できるようになります。
「競合が密集している領域」や「空白地帯(ブルーオーシャン)」が可視化されるため、自社が狙うべきポジションを戦略的に選定することが可能です。
5.マーケティングミックス
STPでマーケティング戦略が明確になったら、次にマーケティングミックスで戦略の具体化に移ります。マーケティングミックスとは、STP分析で定めたターゲット市場に対して、具体的な施策を設計するプロセスです。
自社の戦略やポジションと整合性をとりながら、顧客の購買行動を促す施策へと落とし込みます。あわせて、施策ごとのKPI(重要業績評価指標)も設定します。
以下の動画では、KPIを設計するうえで重要なポイントを解説しているので、参考にしてみてください。
10分で学ぶシリーズ
〜マーケティングKPI実践編〜
マーケティング戦略において、KPIの設計は非常に重要です。本動画では、実際にKPIを設計するうえで重要な以下3つのポイントを解説します。

施策設計には、4P分析や4C分析などのフレームワークを活用します。
4P分析:企業視点で施策を設計する

4P分析とは、Product(製品・サービス)・Price(価格)・Place(流通方法)・Promotion(販促活動)の4要素から施策を検討するフレームワークです。
自社の商品・サービスを「どう売るか」という企業視点で、新商品の企画や販売戦略を設計する際に用いられます。
各要素をバランスよく組み合わせることで、ターゲットに対して効果的に価値を届けることが可能です。
商品設計から価格設定、販路選定、広告展開までの一貫した方針を策定するのに役立ちます。
4C分析:顧客視点で施策を最適化する

4C分析とは、Customer Value(顧客価値)・Cost(コスト)・Convenience(利便性)・Communication(コミュニケーション)の4要素から施策を検討するフレームワークです。
顧客にとっての「価値」や「体験」を重視し、マーケティングミックスにおける4P分析を補完・修正するために活用されます。
企業視点の4Pに対し、4Cは顧客中心の戦略設計に適しており、ニーズや購買行動に即したマーケティング施策の最適化に役立ちます。
6.マーケティング戦略の実行と評価
施策を実行したあとは、評価と改善までを行なうことで、マーケティングプロセスが完結します。
効果的に改善するためには、KPIやROI(投資対効果)などの指標にもとづく定量的な評価が重要です。
指標の推移をもとに戦略の妥当性や施策の効果を検証し、必要に応じて施策を見直すことで、継続的な成果の向上を目指せます。
マーケティングプロセスの実行前に知っておくべきポイント

次のポイントを知っておくと、より効果的にマーケティングプロセスを実行できます。
- BtoBとBtoCの違いを押さえておく
- MOps(マーケティングオペレーション)を整備する
マーケティングプロセスの実行前に確認してみてください。
BtoBとBtoCの違いを押さえておく
BtoBとBtoCでは、マーケティングプロセスの流れは同じでも、手法に違いがあります。
BtoBは購買までの意思決定に時間がかかり、複数の関与者が存在するのが特徴です。一方、BtoCでは感情やブランドイメージが購買行動に大きく影響します。
そのため、セグメンテーションやプロモーション手法は、それぞれの特性に合わせて使い分ける必要があります。
以下の記事では、BtoBマーケティングに効果的な手法を解説しているので、参考にしてみてください。
関連コンテンツ:BtoBマーケティングとは?その必要性から基礎知識までわかりやすく解説
MOps(マーケティングオペレーション)を整備する
MOps(マーケティングオペレーション)、マーケティングプロセスを支える専門チームや担当者のことです。MAツールの運用やデータの統合管理、KPI設計などを担い、戦略の実行をスムーズに進める役割を果たします。
テクノロジー・データ・人を連携させ、施策の精度や再現性を高めることで、マーケティングにおける生産性の向上に貢献します。
戦略を立てても実行面で属人化や非効率が起こりやすいため、早い段階から整備することが重要です。
以下の記事では、MOps組織の設計ポイントを解説しているので、参考にしてみてください。
関連コンテンツ:【新常識】米国企業の8割以上が導入。「マーケティングオペレーション(MOps)」とは何か
マーケティングプロセスのなかで役立つAI搭載型MA『Marketing Cloud』

マーケティングプロセスでは、社内外の環境分析や顧客分析などを行なったり、KPIを管理したりするため、データを収集する仕組みが求められます。そこで役立つのが、AI搭載型のMA(マーケティングオートメーション)です。
『Marketing Cloud』は、日頃のマーケティング活動のなかで顧客の属性や行動などのデータを自動収集し、データ基盤として活用できるMAです。収集したデータを可視化・追跡できるため、マーケティングプロセスにおけるKPI管理にも役立ちます。
また、AIが顧客データをもとに顧客の行動を予測し、最適なコンテンツや配信タイミングを自動で提案・実行してくれます。
このように『Marketing Cloud』は、マーケティングリサーチから施策の実行・評価までを効率化し、サポートすることが可能です。
以下の動画で詳しい機能を紹介しているので、あわせてご覧ください。
マーケティングプロセスに沿って効果的な戦略・施策を立案・実行しよう

マーケティングプロセスでは、各ステップを戦略的に設計・運用することが重要です。
STP分析をはじめとするフレームワークを活用することで、論理的かつ実行可能な戦略が立てられます。また、MAを活用することで、マーケティングプロセスに必要なデータの収集やKPIの管理を効率化できます。
Salesforceが提供する『Marketing Cloud』は、顧客のライフサイクル全体のエンゲージメントのあらゆる瞬間をパーソナライズできるように設計された、完全なマーケティングプラットフォームです。またAgentforce for Marketingはエンドツーエンドの一人ひとりの顧客にむけたエンドツーエンドのキャンペーン作成を支援し、マーケティング担当者の作業時間を削減します。
AI搭載型のMAです。一般的な機能に加えて、蓄積したデータをもとにAIが自律的に判断してマーケティング施策の立案・実行をサポートしてくれます。
マーケティングプロセスにおける『Marketing Cloud』や 『Agentforce for Marketing』の具体的な活用方法を知りたい場合は、お気軽にお問い合わせください。
また、以下の動画では、マーケティングプロセスにおいても重要なKPI設計のポイントを解説しているので、あわせてご覧ください。
10分で学ぶシリーズ
〜マーケティングKPI実践編〜
マーケティング戦略において、KPIの設計は非常に重要です。本動画では、実際にKPIを設計するうえで重要な以下3つのポイントを解説します。
