Key Takeaways
AIを導入したマーケターは79%。しかし81%が、いまだ画一的なキャンペーンを送り続けていると認めています。テクノロジーを手にしたのに、顧客との距離が縮まらないーー。
Salesforceが日本の250人を含む世界26カ国4450人のマーケティング意思決定者を対象に実施した最新調査『マーケティング最新事情(第10版)』が示すのは、「使っている」と「使いこなしている」の間にある溝、そしてその溝を埋める3つの転換点です。
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世界各国4450人のマーケターから得たインサイトから、AI、データ、パーソナライズのトレンドを探ります。
『マーケティング最新事情』レポート第10版の要点
1,AIエージェントが一方通行マーケティングを終わらせる
2,データ統合がパーソナライゼーションの成否を分ける
3,AEO(AI検索最適化)が顧客発見のルールを塗り替える
1. AIエージェントが一方通行マーケティングを終わらせる
マーケターの79%がすでにAIを導入しています。にもかかわらず、81%が画一的なキャンペーンを実施していると認めています。
AIを「使っている」のに成果につながらない。この矛盾の背景にあるのは、AIの使い方そのものです。多くの企業がAIを「一方通行のメッセージをより多く、より速く送る」ためのツールとして使っている。つまり、従来のキャンペーン運用をAIで加速しているだけなのです。
顧客が求めているのは「対話」
83%のマーケターが、顧客は一方的なメッセージではなく、双方向の対話を求めていると回答しています。メールやSMSに返信したとき、きちんと応答が返ってくることを期待しているのです。
しかし実態はどうでしょうか。顧客からの返信に確実に対応できていると答えたマーケターは約半数にとどまり、62%が迅速な対応に苦戦しています。
エージェント型マーケティングとは何か
この課題を解決する次の進化が「エージェント型マーケティング」です。AIエージェントが顧客のコンテキスト(文脈)を理解し、一人ひとりに合わせた双方向の対話を自律的に行うアプローチを指します。
調査によると、AIエージェントを活用しているマーケターの76%が顧客接点の統合ができていると回答したのに対し、AIを活用していないマーケターは55%にとどまっています。AIエージェントの導入が、組織のデータ活用力そのものを引き上げているのです。
マーケターが今日から始められること
エージェント型マーケティングの第一歩は、AIに「何を送るか」だけでなく「どう対話するか」を設計することです。
顧客がメールに返信したとき、その内容を理解し、適切に応答できる仕組みから着手しましょう。すべてのマーケターが同じAIモデルにアクセスできる時代において、差別化要因は「コンテキスト(文脈)=顧客の状況をどれだけ深く理解できるか」にかかっています。
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2. データ統合がパーソナライゼーションの成否を分ける
マーケターの99%がパーソナライゼーションに壁を感じており、最も多い原因はデータに関する問題です。
80%のマーケターが、自分たちが制作できる量を上回るパーソナライズドコンテンツが必要だと回答しています。AIにはその規模を拡大する能力がありますが、AIが正しく機能するには信頼できるデータ基盤が不可欠です。
データのサイロ化がボトルネック
調査が明らかにした課題は、部門間のデータ分断です。マーケターのうち、すべてのサービスデータに完全にアクセスできているのは58%、営業データは56%、コマースデータは42%にとどまっています。
顧客は、購買履歴も問い合わせ履歴もすべて企業側が把握していると期待しています。しかしデータがサイロ化されていれば、マーケターは顧客のコンテキストにアクセスできず、結果として画一的なメッセージを送らざるを得ません。
データ統合の効果は数字に表れている
この課題を解決した企業は、明確な優位性を確立しています。データ統合を満足のいく形で実現したマーケティングチームは、データ基盤に課題を抱えるチームと比べて、顧客に対して継続的に返信できている割合が42%高く、対応規模の拡大を目的にAIエージェントを活用している割合が60%高くなっています。
さらに、パフォーマンスが高いマーケターは、顧客データを活用して関連性の高い体験を提供する割合が1.7倍高く、データソースを統合している割合も1.7倍高いことがわかりました。
マーケターが今日から始められること
データ統合の第一歩は、マーケティング・営業・カスタマーサービスのデータを一か所で参照できる環境を整えることです。すべてを一気に統合する必要はありません。
まず「顧客が最後にサポートに問い合わせた内容」をマーケティングチームが参照できる状態から始めましょう。その一歩だけで、次に送るメッセージの精度は大きく変わります。
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3. AEO(AI検索最適化)が顧客発見のルールを塗り替える
マーケターの82%が、AIによって自社のSEO戦略が再構築されていると回答しています。さらに83%が、すでにChatGPTやGoogleのAIによる概要(AI Overviews)など、AI生成の回答に向けた最適化を開始しています。
AEO(Answer Engine Optimization)とは何か
AEOとは、従来の検索エンジン最適化(SEO)に加え、AIが生成する回答に自社の情報が引用・参照されるよう最適化する手法です。
Google検索の半数でAIによる概要が表示される現在、顧客は「10件の青いリンクをクリックする」のではなく、「AIから直接答えを得る」行動に移行しています。
これはマーケターにとって何を意味するのか。従来のマーケティングファネル上位——認知フェーズ——が縮小し、企業のWebサイトが完全にバイパスされるケースが増えているのです。
AI経由の購買はすでに巨大な市場
すでに影響は実売上に表れています。ホリデーシーズンだけを見ても、AIとAIエージェントを通じて行われた購買は全体の20%、売上高にして2620億ドル(約39兆円)を占めました。顧客が商品を発見し、購入する経路が明確に変化しているのです。
パフォーマンスが高いマーケターはすでに動いている
調査結果で注目すべきは、マーケティング投資に対して最も高いリターンを上げているマーケターは、成果の低いマーケターに比べ、AI検索への最適化を行っている可能性が2.2倍高いことです。
一方、65%のマーケターが自社の戦略をAIの広範な活用にどう適応させるべきか明確な方向性を見いだせていないと回答しており、先行者との差は今後さらに開く可能性があります。
マーケターが今日から始められること
AEO対策の基本は、「AIが引用しやすいコンテンツ」を作ることです。具体的には以下の3点が出発点になります。
(1)質問と回答のペアで構成する:AIは「問い→即答」の構造を好んで引用します。FAQ形式や、見出しを問い・直下を端的な回答にする構成が有効です。
(2)一次情報を発信する:独自データ、独自事例、専門家の見解など、他では得られない情報をAIは優先的に参照します。
(3)構造化データを実装する:FAQ構造化データ(schema.org)の実装により、AIが正しい文脈でコンテンツを理解・引用できる確率が高まります。
これからのマーケターの競争力とは
第10版レポートが描き出すのは、マーケティングの根本的な転換です。AIの役割が「効率化ツール」から「対話の担い手(エージェント)」へ。データが「分析の材料」から「パーソナライゼーションの生命線」へ。SEOが「検索エンジン最適化」から「AI回答エンジン最適化(AEO)」へ。
共通するのは、一方通行から双方向へという方向性です。顧客に語りかけるのではなく、顧客と対話する。この転換を実現できるかどうかが、これからのマーケティングの競争力を決めるでしょう。
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