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【DXオンラインセミナーレポート③<前編>】コロナ禍を契機とする「消費者の価値観や行動の変容」をエキスパートが鋭く分析

【DXオンラインセミナーレポート③<前編>】コロナ禍を契機とする「消費者の価値観や行動の変容」をエキスパートが鋭く分析

COVID-19がもたらした消費者行動の変化や、それを受けて企業はどのような施策を講じるべきなのか。そのヒントにしていただくため、「嗜好/消費/行動/接点の大転換 顧客との新たな関係作りとは」と題し、オンラインセミナーを行いました。前編の記事では、「消費者の価値観や行動の変化」のパートのハイライトをお届けします。

COVID-19の影響によって、消費者のライフスタイルやカルチャーは大きく変化しました。これを受けて、企業はこれまで以上に「顧客が求める本質的な価値を提供し、接点やつながりを再構築すること」が求められています。

ネクストノーマルを見据えて企業が着手すべき取り組みとは何なのか。そのヒントにしていただくため、今回は「嗜好/消費/行動/接点の大転換 顧客との新たな関係作りとは」と題し、日本最大級の経営コンサルティングファームとして知られる、PwCコンサルティング合同会社(以下、PwC)からゲストを迎え、オンラインセミナーを行いました。

登壇するメンバーは、PwCで顧客接点領域のセールス・サービスを中心としたトランスフォーメーションをリードする糸山敏士氏、マーケットトレンドやデジタルテクノロジーへの知見が豊富な武藤隆是氏。さらに、セールスフォース・ドットコム 常務執行役員 アライアンス事業 井上靖英と、オフィス・オブ・イノベーションイグナイトプログラム 日本責任者 田島佳奈が加わり、4名でパネルディスカッションを実施。

COVID-19がもたらした消費者行動の変化や、それを受けて企業はどのような施策を講じるべきなのかについて語りました。前編の記事では、「消費者の価値観や行動の変化」のパートのハイライトをお届けします。

消費者は「企業が提供する本質的な価値・社会貢献への姿勢」に目を向けはじめている

最初のトピックは、「COVID-19の感染拡大を契機に消費者の価値観・行動はどう変わったのか」について。まず、PwCの武藤氏は次のように分析します。

武藤氏:消費者は、COVID-19感染拡大の危機を発端に、たとえば教育や医療など[本質的に大切なこと]を考え直すようになりました。そして、“本質的に大切なこと”を提供している企業に共感します。

さらに、デジタルシフトが起きたことで、生活シーンにおいても「デジタルで十分じゃないか」「デジタルは信用できる」という、アダプテーションが発生していると認識しています。

また、リモートワーク、リモートライフを充実させるための消費が拡大。最終的には、これまであまり重要視していなかった、“安心・安全・衛生的な体験”が、顧客体験デザインにおいて非常に重要になってきていると思います。

これらを総括すると、PwCの「消費者の価値観・行動の変容」と、それに対して企業はどう向き合えばいいのかに関する考察は、次のようになります。

PwCコンサルティング合同会社 武藤 隆是氏

<企業のパーパス(PURPOSE)と行動への共感>

企業として、本質的な社会課題に向き合って行動し、時代に合った顧客価値の提供ができているのか。そのための「仕組み」が自律的に機能していたのかを消費者は問うています。不確実性の高まる社会のなかで、顧客の声のみならず、現場を担う従業員の声を聞き、サービスに取り込むことに、迅速に提供していくことが必要です。

<消費者のデジタルシフト>

消費者のデジタルシフトが半強制的に進み、企業側のトランスフォーメーションにおいても、「なぜやるのか」「どのように進めるのか」といった施策に行動がシフトしています。デジタル体験がニューノーマルとして受け入れられるなか、リアルと合わせて、十分なデジタル体験を提供できない企業やサービスは淘汰される時代に突入しています。

続いて、Salesforceの井上と田島が、リサーチや実例をもとに、消費者の変化を次のように考察しています。

井上:「世の中をより良くしていきたい、貢献したい」という個人の気持ちがこれまで以上に強くなってきていると考えます。それにともない、企業に対しても社会にどのような価値を生み出しているのか、貢献しているのかを期待する風潮が高まっています。

Salesforce創業者のマーク・ベニオフは、創業当初から「ビジネスは世の中を変革させる最高のプラットフォーム」という考えのもと、企業が先頭に立って世の中を良くしていくべきだと思い、行動で示してきました。弊社では、全従業員に就業時間の1%以上、年間56時間の社会貢献活動時間が付与され、業務時間中にボランティアへ従事することが強く推奨されています。

平時から意識的に社会貢献活動に取り組んでいるからこそ、東日本大震災やコロナ禍など、未曾有の事態が起きたときにも、社員の側から「このようなお手伝いができるのでは」という声が自然に上がりました。それが、新型コロナ保健所業務支援クラウドパッケージの無償提供にも繋がっています。

田島:私は「Ignite(イグナイト)チーム」で、お客様の変革を支援するプログラムを提供しています。具体的には、お客様の経営課題に対し「デザインシンキング」というアプローチで、お客様の“こうありたい姿”を一緒に創ることに取り組んでいます。

このプログラムでは、消費者の持つ価値観を深く理解するため、インタビューや行動観察を行って、アイデア創造に向けてインプットします。

このリサーチを通して、さまざまな消費者ニーズが浮き彫りになります。たとえば、デジタル化について言えば、実はコロナ禍以前から若い世代では商品の購入や手続きに関して、「ネットで完結できるのであればそうしたい」というニーズはかなり高かったです。しかし、多くの企業では対応できていませんでした。

また、60代以上の高齢層のデジタル活用についても、「高齢層は対面サービスを好む」と考える企業側に対し、「インターフェースの分かりにくさ、使いづらさ」「情報漏洩などセキュリティに不安を感じる」と、消極的な理由で対面サービスを選択する方も多いことが分かりました。今回、COVID-19の影響を受けて、消費者のデジタルシフトが進んだ理由の一つに、企業側のデジタルシフトが促進された面も大きかったのではないかと思います。

消費者の購買行動は「不可逆なデジタルシフト」へと前進している

また、PwCでは、このオンラインセミナーに合わせて、COVID-19感染拡大前後で大規模な消費者調査を行い※1、消費者の価値観・行動を分析。購買体験にまつわる変化について、武藤氏は具体的なインダストリーごとに紹介しました。

<食品・飲料>

Eコマースやテイクアウトの利用が増加。将来にわたり増加が予想される購買チャネルだと考えられます。リアル店舗は、利用目的が明確なスーパーマーケット以外が苦戦しています。小売業においては、デジタル化を進めるとともに、顧客のタッチポイントに応じて、事業の中身を再考する必要があります。

<スマートフォン>

感染拡大以前に新規契約や機種変を考えていた人が、感染拡大期においてどのような行動をとったかについてリサーチしました。その結果、「手続きを延期/取りやめた」は38%にのぼります。主な理由として、「対面での感染リスク回避」が41%、「慎重な検討が必要」が37%と続きました。

一方で、購買実施をした人は40%ほどおり、オンラインや郵送を選んだ人が多い模様です。機能的にはデジタル商材ではあるものの、これまでリアル店舗での購買が重視されていましたが、コロナ禍で非接触型の購買に変化したと認識しています。

オンラインを利用した人が求める将来の購買体験については、「待ち時間のない店舗体験」が37%と高いことが分かります。また、オンラインサイトの使いやすさ、プランの相談などはニーズがあります。デジタルにおいてもリアル店舗と同じような購買体験を提供するべきだと考えられます。

<生命保険>

生命保険も、対面での感染リスク回避や買い控えにより、「延期/取りやめ」が38%となっています。かたや、何らかの契約等を行った人たちは39%存在します。その人たちが求めていることとして、対面営業や店舗への期待はあるものの、手続きやプラン、相談はすべてデジタル化できるものはしてほしいというニーズが顕在化しました。60歳以上でも、デジタル化できるものはしてほしいという声が多く、デジタルシフトに対する消費者の感度は上がっています。

なお、Salesforceでは、企業のデジタルシフトを後押しする取り組みを展開しています。井上は、消費者ニーズに応えるデジタルシフト事例として、現在導入を進めているファッション小売業のシナリオを紹介しました。

セールスフォース・ドットコム 井上 靖英

井上:デジタルマーケティングを活用して、ウェブサイトで接客する仕組みの構築を進めています。サイト上で気の合いそうな接客スタッフを選び、お客様が接客日時を予約し、当日はオンラインで接客します。これによりスタッフも接客に集中できる時間を予め決めることができます。また、テレワークが可能になるので、店舗に来られないスペシャリストも自宅から接客が可能になるなど、店舗側にもメリットがあります。

仲良くなれば、お客様のクローゼットにある服や靴などを見せてもらうこともできるかもしれません。そうすれば、より細かい顧客の好みをこれまで以上に把握できます。それにより、商品のセールなどではお客様へピンポイントでお知らせも可能です。これは間違いなく顧客満足度が上がると思います。

この仕組みは、保険、銀行、証券、通信、不動産、住宅など、これまで対面接客・営業が常識だった業界にも適応できます。リアルとバーチャルを融合させて、顧客に付加価値のある接客を提供する仕組みづくりについては、業界問わずさまざまな企業からご相談を頂戴しています。

まとめ

消費者の価値観や行動が様変わりするいま、デジタル化のニーズは高まり続けていることが、パネルディスカッションを通してよく理解できました。そして、デジタルシフトは不可逆であることから、顧客満足度を向上させるためにも、ニューノーマルを見据えてリアルとオンラインの融合が不可欠だと言えそうです。

本オンラインセミナーのオンデマンド配信をこちらからご視聴いただけます。

参照元:
※1 PwC「消費者の価値・ライフスタイル変容 感染拡大前・感染拡大後・将来の3点における顧客体験への期待」

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