本ブログは、本社で発表された「How Continuous Learning and Skills Development Are Essential to Success Today」の抄訳です。

 

第4次産業革命」とは、2016年にダボスで開催された世界経済において、Klaus Schwab氏が提唱した概念です。同氏は、さまざまなテクノロジーが融合し、物理学、デジタル、生物学の各領域の境が曖昧になってきた結果、経済や社会構造に根本的な変化が起きていると説いています。

2018年のダボス会議に参加した際、Salesforceは第4次産業革命がビジネス界に与える影響や、創造的破壊が進む時代を生き抜くために、CEOはテクノロジーとビジネス戦略をどのように再考すべきかについて、さまざまな最高責任者やソートリーダーにインタビューしました。

PwCアドバイザリー業務のPrincipal 兼 Global Digital Services LeaderであるTom Puthiyamadam氏は、最先端のデジタルファーストのビジネス戦略を導入することで、大企業の成長促進上を支援するプログラムの開発を担当しています。企業は、創造的破壊にどう備え、イノベーションを俊敏にビジネスに取り込むためにはどうすべきなのか、同氏にお話を伺いました。

 

 

―― お時間をいただきありがとうございます。最初に、アルファ銀行のCEOであるAlexey Marey氏の言葉を引用させてください。彼はこう語っています。「企業の10年計画の概念は、実現不可能な理想になりつつある」。この長期計画は、第4次産業革命のようにすばやく包括的に変化してしまう世界においては、達成が困難になりつつあります。 転換、変更、学習を、かつてないほど短い時間で速やかに実現していくために、企業はどのように改革と方向転換を行うべきなのでしょうか。

 

Puthiyamadam氏 : こうした問いに対する答えが、単に「新しいテクノロジーを導入すること」であると信じているCEOがあまりにもたくさんいます。新しいテクノロジーは確かに解決策の1つですが、単にテクノロジーのことだけを考えればいいというのは誤りです。「デジタル」という言葉は、しばしば精神的な支えになります。どんな変革を行う必要があるか、一言で伝えるのに便利な言葉です。しかしそれだけでは、従業員と消費者に大きな行動変化をもたらす具体的なアクションが見えてきません。

とても多くの上層部が、新しいテクノロジーを早急に導入していますが、そのために達成したい真の営業成果に焦点が合わなくなってしまっています。上層部が軽視している大きな問題が1つあります。それは「現実」です。テクノロジーが従業員や顧客に実際にどんな影響を与えるかについて考えるとき、テクノロジーそのものがあらゆる悩みの解決策になるという、形のない希望に委ねられていることが多くあります。しかしそれは間違いです。

第4次産業革命を生き抜く準備が万端な企業は、社内の人材をよく観察し、それに投資することから始めているはずです。大半の企業の従業員は、展開を任されたデジタル変革を行う上で必要なスキルを持ち合わせていません。企業は、従業員に適切なスキルを身につけさせることから始めなければならないのです。

従業員の準備が整っていなければ、どんなに高度なテクノロジーを導入したところで、組織としてそれを十分に吸収することはできません。

俊敏性を求めるCEOの真の課題は、テクノロジーをすぐに導入することではありません。必要な従業員、適切なスキル、適切な能力がバランスよくそろっているか確認することです。

そのためには、こうした変革がどのように起きる必要があるかを正しく理解できる、適切な経営幹部チームも必要になります。 しかし、実際のところ、企業にはこのようなリーダーシップをとるチームがないことが多くあります。

最後に、適切なカルチャーも必要です。企業には、これから目指すデジタル変革をサポートするカルチャーが必要となります。つまり、部門間の壁を取り払い、管理層が妨げになることを防ぐのです。これにより、考えて決定するまでの時間が短縮され、ほとんどの場合、新しい働き方が受け入れられるようになります。

私たちがまさに今対峙しなければならない最も急を要する課題は、人的資源ではないでしょうか。ロボット工学やAIは、常任幹事会や新聞で話題を独占するものではありますが、人的資源はそれらより重要です。 ほとんどのCEOに当てはまる重大な課題は、 「従業員が利用可能な新しいテクノロジーを受け入れて活用するために、組織力をどう変えるべきか」なのです。

 

ほとんどのCEOに当てはまる重大な課題: 従業員が利用可能な新しいテクノロジーを受け入れて活用できるように、組織力をどう変えるべきか?

 

―― 「労働力の進化」は、第4次産業革命の重要な要素です。それは明らかに、あなたが推奨するデジタル変革へのアプローチの大黒柱となるものです。従業員を再教育し、より俊敏で革新的なカルチャーを取り入れ、第4次産業革命の目的に適うように従業員を育成したいと考えるCEOに対して、何かアドバイスいただけますか?

 

Puthiyamadam氏 : 必要なものをすべてそろえ、 総合的な解決策を準備する必要があります。イノベーションと俊敏性を推進するには、社内に「イノベーション部門」を個別に作ることだと考える企業が多すぎます。 そうした企業は、別のフロアや遠くのオフィスに、数十人、場合によっては数百人のグループを作り、彼らに素晴らしいアイデアや未来の働き方を考えてもらおうとするのです。

率直に言って、それは安易な解決法です。管理された小規模な環境でゼロから始めれば、CEOは社内の大半の従業員について考えることをやめてしまうでしょう。そしてCEOは、そのイノベーション部門のメンバーが学習したことを既存の従業員に広めてくれると期待しがちです。

ここで、少し考えてみましょう。

社内の片隅に陣取る少人数のインキュベーターがどんな影響を生み出すのでしょうか?

上層部は、その選ばれた少人数が自由に振る舞うのを、重要なことだと信じて放任しているのが現状です。率直に言って、今の創造的破壊は、取るに足りない実験的部門が必要以上に長い時間を費やして行っている取り組みという域を出ません。重要なのは、革新性と俊敏性を全社に浸透させる能力を構築することです。

 

今の創造的破壊は、取るに足りない実験的部門が必要以上に長い時間を費やして行っている取り組みの域を出ません。

 

一種の「誰も取り残されない」方針として考えてみてください。単純に新しい人材を雇えばいいというわけではありません。人材を育成できる社内環境を作らなければ、意味がありません。総合的な解決策を構築しましょう。

その実現には3つの段階があります。

第1段階は、既存の人材のスキルアップです。これは、昼休みに従業員向けのプログラミングクラスを開くような話ではありません。従業員にどんなスキルが必要なのか、また、そのスキルをどのような方法で授けるのか、判断するのです。まずは自身と直属の幹部チームから始めましょう。改革は上層部から行います。上級幹部チームのスキルと知識が向上するほど、従業員は反応しやすくなります。トップのリーダーが転換を図り、新しい行動をモデル化し、デジタルを中心とする考え方に順応する場面を、すべての従業員に見てもらう必要があります。

企業の教育と能力開発の場は急速に変化しています。未来では、現在求められているものとまったく異なるスキルが求められることは疑う余地もありません。 例えば、世界をAIの視点から見たとき、従業員にはどんなスキルと特性が必要になるでしょう?AIのもたらす創造的破壊を従業員が迎え入れることができるように、彼らをどのような方法で支援できるでしょうか?

第2段階では、既存の人材の再教育だけでは足りないため、 新しい人材を採用する必要があります。ただし、デジタルに精通していると自分を売り込むような人材をただ探せばいいわけではありません。 本当に必要なのがどんな人材、どんなスキルなのか、まずは見極めなければなりません。将来達成したいことが明確であれば、比較的簡単なはずです。 未来を見据え、欠落しているものは何か?を自問します。コンピューターサイエンスに精通している人材を雇うのは簡単ですが、最初はもっと視野を広げて考えてみましょう。創造性、デザイン、民俗誌学(人に優しいAIを作るのに役立ちます)に関するスキルは足りているか?分析や機械学習についてはどうか?ブロックチェーンに通じている従業員はいるか?大胆で創造性に富んだ考えと、実用的なテクノロジーと、ビジネス目標とのバランスを取れるソリューションアーキテクトはいるでしょうか?

第3段階では、イノベーションを推進して強化する企業環境と企業文化を築き、その中で、既存の人材と新しい人材が共に働けるような環境作りをする必要があります。

これを支援するために、PwCではBXT哲学というものを開発しました。 さまざまな人材とさまざまな観点を結び付けることにフォーカスした考え方で、 BXTは、Business(ビジネス)、Experience(エクスペリエンス)、Technology(テクノロジー)を表します。

非常に多様なチームが団結して問題を解決する。これは現時点で既に重要なことですが、将来的にはさらに重要になります。ただし、実行する場合、1つの言語で成し遂げることが必須となります。あらゆることをどのように話すのか、問題とソリューションにどのようにアプローチするのか。それこそがBXTであり、私たちはほぼすべてのデジタル変革に、BXTにもとづく働き方を適用しています。

 

非常に多様なチームが団結して問題を解決する。これは現時点で既に重要なことですが、将来的にはさらに重要になります。

 

―― あなたは、現在の労働力に必要なスキルと能力は大きく変化していると指摘しました。 また他のところでも、スキルの半減期の概念と、世界の変化が速くなるにつれて、その半減期がいかに短くなるかについて書かれています。 AI主導型の世界において、人間にはどのようなスキルが必要になるのでしょう?また、従業員を継続的にスキルアップさせ前進させるプロセスの作成に、企業はどのように取り組めばよいのでしょうか?

 

Puthiyamadam氏 : デジタル変革と、第4次産業革命への備えについては、ブロックチェーン、IoT、AIなどのテクノロジーを単に理解すればいいというものではありません。テクノロジーの理解によって解消できるのは課題の10%程度です。

課題の大部分を占めるのは、私たち全員が被ることになる、スキルの半減期を縮める変化の速度に対応することです。 テクノロジーが進化するにつれ、今のスキルは加速的に時代遅れになっていきます。課題は、今日のビジネス環境に適応できるスキルを育てることではなく、かつてない速さで継続的にスキルアップする能力を育てることなのです。

フォーカスすべき課題はシンプルです。新しいスキルを継続的に学習して育成する環境に、従業員をどう移行できるかです。 未来について確実なことはほとんどありませんが、1つ確かなことは、今から1~2年後に私たちが対応することになるテクノロジーは、今の私たちが慌てて導入しようとしているテクノロジーとは異なるであろうということです。

PwCでは、250,000人の全従業員を、いわゆる「デジタル適合性」で評価しています。 その評価の結果を受けて、私たちは各従業員に、パーソナライズされた簡単な情報と習得すべきインサイトを提供しています。各自のスキルを補完し、伸ばすための情報です。

デジタル適合性により、絶えず変化し、学習が求められる世界に、従業員がどの程度移行する準備ができているかを把握することができます。 デジタル適合性には2つの重要な要素があります。

1つ目は、 その従業員が「協力者であるか?」です。 その従業員は、さまざまな社会的能力を活用して問題を解決する方法を知っているでしょうか? どの程度前向きな姿勢を見せているでしょうか?

2つ目は、「どの程度の興味を示しているか?」です。 従業員は、新しい物事を学び続けたいと思う人物でしょうか? そのような考えがなければ、現在どんな評価を受けても、将来どんなトレーニングを受けても、意味はありません。1年後には、再びいくらか的外れな方向へ向かうだけです。

結局は、単にテクノロジーの問題ではないということです。 企業が第4次産業革命を生き抜くための能力は、上層部が従業員の物の見方を育てることで養われます。これについては、技術的なスキルを構築することよりも、はるかに取り組むべき範囲が広くなります。 まずは、従業員に高いレベルの興味を植え付ける方法を懸命に考えることから始めてください。 従業員にチームの一員として働きたいと思わせるにはどうしたらいいのか? これこそが、労働力改革の真の核心です。

私たちは、デジタル適合性、学びへの興味、そしてBXTにフォーカスすることで、新しいタイプの人材のための新しい環境と、次のステップを開拓する考え方を育む職場環境を作り出しているのです。

 

この記事は、第4次産業革命に関するTrailblazerスポットライトシリーズに掲載されています。第4次産業革命とは、世界経済フォーラムでKlaus Schwab氏が提唱した概念です。同氏は、さまざまなテクノロジーが融合し、物理、デジタル、生物学の各領域の境が曖昧になってきた結果、経済体系と社会構造に根本的な変化が起きているとしています。 このシリーズでは、第4次産業革命がビジネス界に与える影響について、さまざまな最高責任者やソートリーダーに話を聞いています。このシリーズの他の記事もぜひお読みください。