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AIはパートナー?私たちはもっと速く、クリエイティブになれるのか

生成AIの活用によって、どれだけ生産性が向上し、どれだけ創造性が向上するのか。実際のプロジェクトにおいてAIをパートナーとして活用した、3つのユースケースをご紹介します。生成AIの業務活用を検討している方、必見です!

最近、16歳の息子にChatGPTについて知っているかどうか尋ねてみました。
答えは、「もちろん知ってるよ!」だったので、学校でも使っているかと続けて聞いてみると、どうやら使っているようです。彼が言うには、ChatGPTは小論文の全体構成を決めたり、まず書き始めの段階でとても使えるらしいのです。そこで、ChatGPTを使うと誰もが「頭が良くなる」かを聞いてみると、彼は「いや、ただ速いだけだよ。」と。それをきっかけに、ChatGPTをはじめとする生成AIを自分の仕事にどのように活用できるかに興味を持ちました。

さて、生成AIは私たちをより速く、より創造的にしてくれるのでしょうか?そしてそれは、どうやってなされるのでしょうか?

Salesforceの最近の調査によると、デスクワーカーの40%(英語)は、業務で生成AIを効果的に使用することについて考えたことがないといいます。また、NNGの調査(英語)によると、実際の業務において活用する場合、生成AIツールはビジネスユーザーの処理能力を平均して66%向上させるとのことでした。皆さんはこの数字をどう思うか分かりませんが、生産性が66%も向上するということは、私はかなり魅力的だと思いました。

AI用語虎の巻: ビジネスのための生成AI用語集

「ChatGPT の LLM ってハルシネーションや機械学習バイアスは大丈夫だっけ?  」
この一文を読んで意味が分からなかった方必見、生成AIに関係する用語まとめ集を作成しました!
増え続けるAI用語のキャッチアップにご活用ください。

私の典型的な1日の流れを紹介しましょう。淹れたてのコーヒーを楽しんだ後、うんざりするほど山積みになったSlackやメールとの格闘が始まります。その後も次から次に会議に出席しなければならず、本当の意味で「自分の仕事」をできるようになるのは、誰からも連絡が来ない静かな深夜になってからということは日常茶飯事です。チームメンバーからも同様の経験談をよく聞きますが、結局、1日は24時間でしかないので仕事が山積みになってしまうのです。そこで私たちは、AIを「パートナー」として使う、ある実験することにしました。

私たちはSalesforce Igniteチームとして、お客様のイノベーションコンサルティングを支援しています。私たちのミッションは、最も戦略的なお客様が重大なビジネス課題に取り組むご支援をすることなので、自分たちのミッションを念頭に置いて、私たちは3つの質問をまず自分たち自身に問いかけることにしました。

  1. 新しいプロジェクトにどれだけ速く取りかかれるのか
  2. 研究段階をもっと速くすることはできないか
  3. 自分たちのビジョンをひらめきを生み出す、目に見える形でのアセットとして残すにはどうしたらよいか

この実験では、一般公開されている様々なAIツールを使用しました。どの程度時間削減につながったのかを測定し、それぞれの結果を1から10点のスコアで採点しました。

オンボーディングバディとしてのAIパートナー

Igniteチームはオンボーディングから最終的なアウトプットに至るまでに、平均して8~12週間程度かかります。長く見えるかもしれないですが、ここに無駄な時間は全く含まれておらず、最初の48時間は、お客様のビジネスや戦略的背景、競合他社を理解するために非常に重要です。しかし、もしもその時間を48秒に短縮できたらどうでしょうか?

大規模言語モデル(LLM)は情報の要約がとても得意です。大規模言語モデルに二次調査をすべて行ってもらい、それを要約してもらって、後は私たちがそれを理解するだけとなったら素晴らしいと思いませんか?ただ、これを上手く実現するためにはいくつか課題があると感じました。

知識のカットオフ日

すべての大規模言語モデルには「知識のカットオフ日」と呼ばれ、生成AIが知っている情報の時間的制約があるのです。たとえば、この記事の執筆時点では、ChatGPTは2021年9月まで、Claude2は2022年12月までの情報しか持っていないため、その時点までの情報しか検索することができません。ただ、この問題を解決する方法は既にあり、その一つがChatGPTのプラグインを使用することです。

ハルシネーション

大規模言語モデルの思考プロセスは、ある単語に対してあらかじめ決められた順序に則り、次の単語を思いつくこと(例えば「むかしむかし」と来たら、「あるところに」と生成するなど)です。そのため、タスク(例えば「とある企業における最新の投資家向け決算情報を調べて傾向を分析して」など)を与えると、真実かどうかは問わず、一見真実のように見えるそれっぽい回答を作り上げてしまうのです。よって、AIの作る回答が果たして本当に事実に沿い、適当な作り話にならないようにするためには、AIに与えるプロンプト(指示文)をしっかり練り上げて洗練させる必要があります。もちろんその場合でも、生成結果のファクトチェックは必要となります。

結果:

  • 推奨ツール:ChatGPTとChatGPTのプラグイン(GoldenとVoxScript)
  • 削減できた時間:4~5時間
  • パートナーとしてのスコア:7 – 役に立ちますが、多くの指導、改良、事実確認が必要です。

概要:この実験では、生成AIを使用して素晴らしい要約を得ることができましたが、プロンプトの調整と最適化に時間がかかりました。私たちが「F48」と名付けたこの実験の結果は、当初の期待ほどは素晴らしくなかったものの、将来的な可能性を感じるものでした。少なくとも今はまだ、当初期待していた48秒には到達できそうにありません。

共同研究者としてのAIパートナー

私たちの仕事の最も重要な1つに一次調査があります。これは、お客様の課題を理解するのに重要なもので、研究協力者へのインタビューの記録をまとめ、主要なテーマを特定し、その中から重要な引用を抽出することは、顧客理解にあたりとても有用なものなのです。

通常、プロジェクトごとに約15~20回、多いときはそれよりさらに多くのインタビューを実施します。Otter.aiやGoogleハングアウトなどのツールのおかげで、文字起こしはすでに自動化されていますが、これらの書き起こし文をまとめるのはとても面倒な作業ですし、研究の流れ全体をまとめるには、数時間から数日かかる場合があります。ただし、これらに生成AIを活用するにあたっても、いくつかの問題があるのです。

データプライバシー

ChatGPTやその他の大規模言語モデルにデータを入力すると、そのデータを使用して大規模言語モデルをさらにトレーニングしたり、後のクエリにされることがあるのです。なので、インタビューの書き起こし文などの機密情報を扱う場合は、データを適切に処理することが必要不可欠です。インタビューのまとめには、ゼロリテンションポリシーとデータマスキングを含む、Trust Layerを備えた独自のSalesforceゲートウェイを活用しました。ちなみに、ChatGPTではユーザーがチャット履歴とそれらを元にしたAIのトレーニングを無効にすることができ、これを行えば「モデルのトレーニングや改善に自分たちとAIとのやり取りが使用されなくなる」とWebサイトに記載(英語)されています。

人間的なコンテクスト

生成AIに「重要な引用」を含めてまとめてもらうと、それらは素晴らしい場合もあれば、そうでない場合もありました。プロンプトを適切に作ったため、モデルがハルシネーションを起こすことはめったになかったものの、生成AIは素晴らしいパンチの効いた引用コメントに対する勘所は持っていないようでした。

結果:

  • 推奨ツール:Einstein(カスタムインテグレーション)
  • 削減できた時間:12~16時間
  • パートナーとしてのスコア:8 – 人間と同じレベルの書き起こし要約、まとめを非常に迅速かつ簡単に行うことができますが、洞察力の面では人間に比べて一歩劣る部分もあり、選ばれた引用が常に適切であるわけではなく、時折誤りが見られました。

概要:全体的に、リサーチの分野でAIをパートナーとして活用することは非常に有効であり、書き起こし文が完成した数分後には、要約がすぐに生成されました。しかし、AIそのものが人間の研究者の代わりにはなり得ないと感じました。本当に有用なインサイトを得るには、やはり人間の頭脳が必要です。AIの活用は単純な時間削減にはなりますが、人間の代替にはなり得ないのです。

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クリエイティブアドバイザーとしてのAIパートナー

最終的なビジョンをお客様にご提示するにあたり、多くの場合、そのビジョンがどのようなものかを説明するために、優秀なデザイナーに素晴らしいビジュアル資料を作成してもらっています。それらは場合によって、手描きのスケッチやストック写真、または編集した画像などですが、生成AIの最もワクワクする可能性の1つは、言葉を使ってそれらのビジュアル資料を「想像」し、命を吹き込むことができることです。

さまざまな結果に驚かされましたが、他のものと同じように、注意しなければならない分野がいくつかあります。

一貫性と制御

複数のビジュアルやキャラクターを使用してストーリーを伝える場合、それらの一貫性が必要不可欠です。ストック写真のサイトでは、同じモチーフやキャラクターに対する、アングル違いなどのいくつかのパターン違いの写真が提供されています。しかし、Midjourneyのようなツールでは生成される画像それぞれが、大きく異なっている場合があります。これを回避する方法としては、自分たち独自の写真を使用してLoRAモデル(英語)をトレーニングするなど、StableDiffusionで得られる、より高度な機能にさらに深く踏み込む必要があります。同様に、画像(例:「大型の牽引トラックの横でタブレットを持っている若い男性」)の画像を描写してほしい場合、生成されるポーズは画像の生成毎に異なっている可能性があり、思い描いていたものを生成させるには、多くの試行錯誤(と忍耐力)が必要となります。ControlNet(英語)Inpainting(英語)のような機能に深く踏み込むことである程度良くなりますが、それでも望む画像を生成してもらうためには繰り返しの練習と使うためのノウハウが必要です。

倫理とバイアス

AIのデータは、私たちが通常認識していないような大量のデータに基づいてトレーニングされるため、データにはバイアス(偏りや偏見)が含まれていることがあるため、AIを使用する場合はこうしたバイアスに注意を払う必要があります。例えば、多くのAIプラットフォームで「医師」と入力すると、白人男性を描写した画像が多くの場合生成されます。使用するにあたっては自らが「AIクリエイティブディレクター」として、こうしたバイアスがあることを確実に認識する必要があるとともに、画像の元ソースが倫理的なものであることを確認する必要があります。生成AI技術はアーティストのスタイルを無断で許可なく「コピー」する可能性があり、これらには倫理的および法的問題が発生することがあります。

結果:

  • 推奨ツール:Midjourney、Leonardo.ai
  • 削減できた時間:なし、ただし生成結果のクオリティで補います
  • パートナーとしてのスコア:8.5 – 私たちが使用した技術は直接的には時間削減につながらなかったですが、まったく新しい可能性の扉を開き、私たちのインスピレーションにつながるアウトプットをいくつも生み出してくれる点で役立ちました。

概要:クリエイティブなプロセスの一環として生成AIツールを使用してしまうと、元に戻るのは困難です。場合によっては、ツールを色々と触っていく中で最終的な完成図へのインスピレーションが生まれることもありました。唯一の問題は、時間的な効率性向上などのメリットがないことくらいです。もちろんデザイナーの方々は、日頃から締め切りに間に合わせるようアウトプットを完成させ、彼らの創造性の限界を押し広げようと努力しています。しかし生成AIの各種機能は、既にあるデザイナーにとっても強力な武器になり得ますし、彼らに限らずクリエイティブな人材でない人達にも新しいスキルを与えてくれることさえあるのです。(私の絵のセンスが壊滅でも大丈夫ということです…!)

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AIは間違いなく新しいパートナー(まだトレーニング中)です

これらの実験により、生成AIが我々にもたらす恩恵がささやかなものであったとしても、生成AIがどのように生産性を向上させ、創造性を高めることができるかについて理解することができました。生成AI技術が、まだまだ日が浅い技術ということを考えれば、生成AIには多くの可能性が秘められていることは明らかです。企業におけるほぼすべてのチームがAIを自身の仕事のパートナーとして取り入れることで、仕事を迅速に行うことも、新しいスキルを獲得することも、クリエイティビティを高めることも、そして、仕事には直接的に影響しなかったとしても、私たちビジネスパーソンにインスピレーションを与えてくれるものであることは事実なのです。

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