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【IBM × Slack】35万人、世界最大級のSlackユーザーが明かす活用術と「Slack is Agentic OS」に感じる無限の可能性

世界最大級の「Slack」ユーザー、IBMの活用術とビジネスパートナーとしてのAIエージェント事業の展望について日本IBMのリーダー2人に話を聞きました。

Key Takeaways

This summary was created with AI and reviewed by an editor.

IBMは、世界35万人がSlackを利用するグローバル最大級のユーザー企業です。2018年から全社導入を始め、強制なしに自然と全社基盤へと発展。そのSlack活用ノウハウを顧客に還元するパートナーでもあり、さらにはSalesforceとの協業を深めてSlackの価値向上にも貢献しています。

日本アイ・ビー・エム(日本IBM)の富高恵津子・理事/パートナーと、AIエージェント事業部長の鳥井卓・理事/パートナーに、Slackを起点にしたデジタル変革の実像と、Salesforceとの協業の展望を聞きました

Slack の実際の活用方法のデモをご覧ください

✓エージェント、アプリ、AI 対応のワークフローで仕事をスピードアップ
✓生成 AI 検索で回答を即座に取得
✓社内チームや社外パートナーとリアルタイムに連携
✓CRM データを会話の中で直接確認

なぜ35万人規模でSlackは“自然浸透”したのか

──IBMは全世界、約35万人がSlackを活用いただいています。コロナ禍で多くの企業がコミュニケーション課題に直面しましたが、IBMはそれよりも前からSlackを導入していただいたそうですね。

富高:はい。Slackを導入する2018年以前は、自社製品(当時)のグループウェア「Notes」とそれを拡張するコミュニケーションツールを使っていましたが、それらと並行してSlackが全世界で一斉に利用可能になりました。

リモートワークで顔が見えなくなり、希薄になっていた職場のコミュニケーションや同僚との会話から生まれるアドバイス、組織の方針が伝わる空気感、外出中の雑談から深まるエンゲージメント……。こうしたものが失われつつある中で、デジタル空間にコミュニケーション豊かな“オフィス”を再現できるツールが求められていました。

Slackは、緩いつながりや偶然の出会い、成果や事例の自然な共有と賞賛、そして業務プロセスを共有することで自然に生まれる会話や一体感を実現する場として、急速に支持を広げていったのです。

──トップダウンで「Slackに統一する」という強制があったのですか。

富高:いえ、ありません。Slackのほうが便利だという認識が自然と広まって、重要な情報が次々とSlackに集約されていった結果、「Slackに情報を上げよう」「Slackを見れば何でもわかる」という好循環が生まれたのです。そして「Slackなくして業務が回らない」というレベルにまで到達。いつの間にか全社基盤になりました。

そのうねりを生んだ動きはいくつかありました。その1つが、日本IBM社長の山口明夫さんが2019年3月に開設した個人チャンネル「#yamaguchi-channel」です。

お客様との商談の話から日常のちょっとしたプライベートの出来事まで、さまざまな話題を山口さんが毎日欠かさず投稿してくれたのです。ビジネスの話だけでなく日常の一コマも共有されるので、Slackを通じて山口さんとの距離がぐっと近くなりました。

そして何より、チャンネルの作成に制約を設けず自由に運営できるようにした結果、コミュニティが活性化してここまで広がったのだと思います。また、「便利にしたい」という現場の気持ちがアプリ開発を促し、さらに利用を加速。ガバナンスを厳しくかけていたら、こんなに急速には浸透しなかったかもしれません。


鳥井:私は以前の仕組みを10年以上使ってきたので、正直に言うと、抵抗はあったのです。ただ、連携する開発チームがSlackメインでコミュニケーションをとっていましたし、重要な情報であるビルドのエラー通知もSlackに流れてくる。「Slackを見ないと仕事にならない」という状況になり、完全に移行しました。

──改めて、数あるコミュニケーションツールの中でなぜSlackだったのでしょうか。

富高:本社の意思決定ですので聞いた話ですが、まず、コラボレーションに必要な機能が揃っていて使いやすいこと。そしてチャンネルを中心としたオープンなコミュニケーションによって、フラットな企業文化を醸成できること。

さらに、さまざまな社内システムやAIツールとの連携のしやすさ、「Slack Connect」を通じたお客様やパートナー企業との外部連携、モバイルでも同じ体験が得られること。こうした点が総合的に評価され、グローバル全社での導入が決定されました。

人事トランザクションの94%を処理。IBM流の「AI×Slack」活用術

──IBM独自のSlack活用法を教えてください。

富高:まず紹介したいのが「AskTECHNO」というAIチャットボットです。もともとの目的は技術情報を集約して検索することでしたが、「あれも知りたい」「これも知りたい」と対応範囲を広げていった結果、福利厚生や社内規則など何でも答えてくれる万能な存在になりました。

メールとの違いでわかりやすい例が「YourLearning」です。IBMには「Think40」という、年間最低40時間の職能開発・学習を奨励するプログラムがあります。その学習計画や進捗状況がSlackを通じて通知される仕組みになっていて、締め切りが近づけば本人にリマインドが届き、管理職にはメンバーの進捗状況が見えます。

メールだと自分に関係ないものも多く含まれる中で埋もれてしまいがちな情報も、Slackなら当事者へ確実に届く。しかもその場でアクションを取り、ついでにコミュニケーションもできるわけですから、解決がとても早いのです。

そして今イチオシなのが「watsonx HR Support for Slack」です。これは従業員向けのサポートエージェントです。市場変化が著しい環境において、組織・人事がアジリティーを高めるため、現場に人事機能・人事権限を移管する企業が増えてきています。IBMではこのエージェントを実際に活用しています。

先進ユーザー、メルカリ登壇。Slackユーザー感謝祭で「仕事のためのOS」となった最新Slackを体験

セールフォース・ジャパンは3月9日、「Slackユーザー感謝祭」を開催しました。

鳥井:watsonx HR Support for Slackは、watsonxの技術基盤を活用してIBMが3年間、自社の人事業務を通して育てたHRエージェントで、外販もしています。単なるQ&Aの機能だけでなく、手続きまで含めた人事トランザクションの94%を処理できます。

富高:たとえばSlackで「明日休みを取りたい」と入力するだけで手続きが始まります。「何日間ですか」などと対話形式で進み、休暇申請が完了。

実は私自身、IBMへの入社前に人事部からSlackのIDを頂いて、Slackを通じていつでもなんでも気軽に会話させて頂きました。まるで同じ社員のようにそしてスピーディーにコミュニケーションが取れて驚いたのを覚えています。

すべての業務がSlackで始まる

──Salesforceは「Slack is Agentic OS」を提唱。「すべての業務をSlackから始める」というスタイルを追求していますが、このコンセプトをどう捉えていますか。ご意見をお聞かせください。

富高:共感しています。すでにIBMが「Client Zero」として体現し、その価値をお客様にもお届けしています。

ClientZeroとは、IBMがソリューションやプラットフォームを率先して自ら導入・活用し、そこで得た知見やノウハウを顧客への提案や支援に還元する取り組み。Slackについても、ClientZeroのアプローチを実践しています。

Slackというデジタルプラットフォームを中心に据えて、その上にはビジネスプロセスを乗せ、下にさまざまなITインフラをつなげる。業務の入り口がそれぞれのアプリケーションに分かれていることが情報のサイロ化の大きな要因だと思いますが、すべての業務がSlackを起点に始まるので、業務システム活用のハードルは大きく下がります。

IBMの独自調査「IBM Institute for Business Value」では、CEOの多くが「協業・協働が回らない構造」を経営課題として挙げ、68%が部門横断的な連携とイノベーションを推進するには「統合された企業データ・アーキテクチャ(企業データ基盤)が不可欠」と回答しています。

これはまさに「デジタルHQ」が必要な理由であり。Slackで解決可能な領域だと感じています。デジタルHQ(Digital Headquarters=デジタル本社)とは、物理的なオフィスに代わって、あらゆる業務コミュニケーション、ビジネスプロセス、ITシステムが1つのデジタルプラットフォーム上に集約され、そこを起点に仕事が進む状態を指す概念です。

まず使い始めてみたら使い勝手が良く、ビジネスプロセスのデータを全部集められることを体感してしまった。その結果として「これがデジタルHQだ」と言えるようになったのです。

7年のユーザー経験をもとにコミュニケーション変革を支援

──日本IBMは2021年からSlackのビジネスパートナーでもあります。パートナーの立場から見たSlackビジネスの現状をお聞かせください。

富高:私たちには培った知見がありますから、単にSlackのライセンスを販売するのではなく、コミュニケーションやコラボレーションの変革を支援するコンサルティングサービスと併せて提供しています。

正直に明かすと、お客様にSlackが爆発的に広まっているわけではなく、まだこれからの段階です。多くの企業がMicrosoft製品をビジネスやIT管理の基盤としている延長線上で、すでにTeamsを全社導入済み。「Teamsがあるから」という反応も少なくありません。

ただ、Slackはチャットツールではなく、人とビジネス、そしてシステムをつなぐプラットフォームであることは、7年間のユーザーとしての経験で実証済み。その違いをもっとお伝えしたいです。AIが出てくると、Slackの価値はさらに大きくなっていくと考えています。

──Salesforceとの協業では、AI領域を中心にさまざまなアセットを共同開発してきましたね。

富高:そうですね。IBMの強みを生かして、AI市場全体の活性化に貢献したいと考えて取り組みを進めてきました。

多くのシステムインテグレーターがインプリメンテーションに特化する中で、IBMは独自のテクノロジーをもち、コンサルティング、システムインテグレーションのすべてを包括的にカバーできる唯一の企業だと自負しています。だからこそ設計レベルまで踏み込んだアセットのSalesforceとの共同開発が可能なのです。

具体的なアセットとしては、まずIBMのメインフレームからSalesforceのデータ活用基盤「Data 360(旧Data Cloud)」へゼロコピーでデータを渡せる仕組みがあります。AI活用が進む中で、基幹システムに眠るデータの活用は大きな可能性を秘めています。

また、BYOLLM(Bring Your Own LLM)として、エンタープライズ向け大規模言語モデル「Granite」をSalesforce上で利用できるようにしています。

さらに注目いただきたいのが、AgentforceとIBM watsonxのエージェント連携です。

たとえばAgentforceに「関西地区の製造業で、500億円規模の見込み客を見つけたい」と伝えると、Agentforceがwatsonxに探索を依頼し、Salesforceに登録されていない広範なデータから候補をリストアップ。

営業担当者が取り込みたい候補を探し出したら、そのままSalesforceに登録できます。CRM内のデータを深掘りするだけでなく、外側のデータを取り込んで見込み客を広げるという、新しい営業支援の形を実現しています。

直近ではまだ野望なのですが、IBMが展開中のスペック駆動開発ツール「IBM Bob」にSalesforceの仕様やガバナ制限を組み込むことで、自然文での開発を可能にする取り組みができるようになるといいなと、Salesforceの皆様とも話させていただいています。これができるようになると開発効率の大幅な向上が見込まれます。ており、今後の重要な協業テーマの1つと考えています。

──これらのアセットやサービスを今後どのように広げたいと考えていますか。

鳥井:「営業活動と経営の高度化の支援として」ですね。私たちAIを使った業務分析アプローチを持っており、たとえば営業がタスク単位で何に時間を使っているかを可視化することができます。

「もっと顧客対面の時間を増やせる」「提案活動を高度化できる」といった分析結果をもとに、それを実現するための仕組みをAgentforceの機能を活用してSalesforceに実装できないだろうかと考えています。

また、お客様からの期待が高く、非常に可能性を感じているのがコンタクトセンターの高度化です。信頼関係の強化につながる会話をAIで実現しようと、すでにプロジェクトも始まっています。

AI音声エージェントの「Agentforce Voice」にはとても期待しており、その内容は、お客様が前回どんな問い合わせをしたか、今どんな契約をしているかといったコンテキストに基づいたもので、これは顧客接点データを持つSalesforceだからできること。

それから、Salesforceは市民開発ツールとしての成熟度が非常に高いのも魅力です。事業部門が業務プロセスの変化に合わせてAIエージェントを変更したいというニーズは多いのですが、SalesforceであればIT部門に頼らなくても現場が自ら改修できる。つまり、ビジネスのスピードを上げることができるのです。

もう「おもちゃ」ではない。AIエージェントは2026年、飛躍的に伸びる

──AIエージェント事業部長として、2026年のAIエージェント市場をどう見ていますか。

鳥井:飛躍的に伸びるでしょう。昨年まではポイントソリューションやPoCレベルが中心でしたが、今は全社規模での導入が進んでいます。たとえばAIエージェントを活用した80以上のユースケースを前提とし、100億円規模のインパクトを経営計画に組み込む企業も出てきました。

少し前までは「おもちゃ」扱いでしたが、完全にエンタープライズスケールの段階に入りました。

──AIが普及する中で、人間の役割はどう変わるとお考えですか。

鳥井:人間固有の優位性は「企画力」「共感力」「意思決定能力」の3つだと考えています。

企画については、AIで80点から100点の企画は作れるかもしれません。しかし120点を取るための発想は、まだ人間にしかできない。

共感力は、顧客との信頼関係やエンゲージメントを築く力です。「あなただから話します」という情報をいかに引き出せるか。それがCRMのデータとなって企業の競争力になっていきます。

そして意思決定能力。ミドルオフィスやバックオフィスの業務価値は相対的に下がっています。営業事務だけで数千名規模の企業も少なくありませんが、そこを自動化して人材をフロントに振り向ける。

AIエージェントは人間を置き換えるものではなく、人間がより高い価値を発揮できるポジションへのシフトを後押しするものです。

Slackで全社の情報とプロセスをつなぎ、そこにAIエージェントを組み合わせることで、企業の働き方は根本から変わっていきます。IBMが7年間かけて体現してきたデジタルHQの姿が、これからAIエージェントを迎え入れる多くの企業にとって1つの道標になれば幸いです。

Slack の実際の活用方法のデモをご覧ください

✓エージェント、アプリ、AI 対応のワークフローで仕事をスピードアップ
✓生成 AI 検索で回答を即座に取得
✓社内チームや社外パートナーとリアルタイムに連携
✓CRM データを会話の中で直接確認

執筆:加藤学宏
撮影:大橋友樹
取材・編集:木村剛士

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