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【Dreamforce 2026 基調講演】最高のAIと最高のCRMが出会う時

Dreamforce 2026基調講演のテーマは、確率論的なAIと決定論的なCRMをどう結ぶか。「SaaS is dead」論への反論、新レイヤー「AIforce」、CRM推論モデル「Koa」まで、ベニオフらが示した未来像を解説します。

Key Takeaways

This summary was created with AI and reviewed by an editor.

なぜ企業のAI変革はまだ止まっているのか

2026年9月15日(米国時間)に開幕した「Dreamforce 2026」の基調講演(Keyonote)のポイントは、一言で言うと「確率論と決定論をどう結びつけるか」でした。

会長兼CEOのマーク・ベニオフがこの2か月ヨーロッパを回って200社以上のCEOと話した結果、見えてきたパターンがあります。

【映像】確率論と決定論、その統合の現場をこの目で

AIforceやKoaなど、Dreamforceの基調講演で語られた最新発表を余すことなく収録。ベニオフCEOやNVIDIA・Anthropicトップの発言をまずは動画でご確認ください。

個人の生産性向上ではAIはもう当たり前になっている一方で、企業全体の変革にはまだ届いていない。多くのビジネスパーソンは「自宅ではChatGPTやClaude Coworkを日中に使っているけれど、会社の業務に向き合うと、まだ全社的な変革は実感できない」という中間状態にいるという指摘は生々しいものでした。

理由は、明快です。

モデルは強力ですが、確率論的に動きます。答えは「もっともらしい」けれど保証されたものではない。一方、企業のCRMやワークフローは決定論的にできています。同じ入力には同じ結果を返す。この2つの世界を橋渡ししないと、AIは企業の中核業務を任せられる存在にはなれないということです。

「SaaS is dead」騒ぎとその中身

この半年、業界では「SaaSpocalypse(SaaS is Dead=SaaSの終焉)」という言葉が活発に飛び交いました。AIエージェントがあらゆるソフトウェアを代替し、既存のSaaSモデルが崩壊するという論調です。

基調講演では、これを真正面から取り上げつつ反論しました。

終わるのはソフトウェアそのものではなく、あらゆる作業を人間にやらせるソフトウェアの終わ

マーク・ベニオフCEO

つまり、SaaSという仕組みが不要になるわけではなく、「人がログインして画面を操作し、メニューをたどって必要な情報を探すという人が動くモデルが終わる」という整理です。

この考え方は、共同創業者のパーカー・ハリスの発言とも重なります。

6か月前のイベントで、パーカーはカメラに向かって「そもそもSalesforceにログインする必要があるのか」「もう二度とログインしなくなるかもしれない」と語っていました。

UIこそが自社製品だと考える他のソフトウェア企業なら口にするのが恐ろしい発言のはずですが、「Salesforceにとっての製品とは、顧客が預けてくれる信頼、データ、ワークフロー、権限、セキュリティルールそのものだから言えること」だというロジックです。

実際、今回発表した「AIforce」(後述)は、まさにこの考え方の具体化でした。

Salesforceにログインしてダッシュボードを探し回るのではなく、ClaudeやSlack、Lightningといったすでに人が仕事をしている場所にSalesforceの機能そのものがやってくる。

ソフトウェアの終わりではなく、「ソフトウェアを操作する」という行為の終わりというのがベニオフの整理です。

NVIDIAのジェンスン・フアン社長兼CEOも同様に「ソフトウェアの上に新しいエージェント型の層ができ、ソフトウェアをはるかにうまく使えるようになる」と述べ、SaaS終焉論を明確に否定しています。

裏付けとなる数字も示されました。第2四半期決算では通期売上高見通し464億ドル、フリーキャッシュフロー10億ドル、cRPO成長14%、顧客解約率は過去最低、契約期間は過去最長を記録。SaaSが終わるという論調とは裏腹に、既存のCRMビジネスは至って健全であることを、あえて数字で見せる構成になっていました。

【映像】確率論と決定論、その統合の現場をこの目で

AIforceやKoaなど、Dreamforceの基調講演で語られた最新発表を余すことなく収録。ベニオフCEOやNVIDIA・Anthropicトップの発言をまずは動画でご確認ください。

AIforceが拓く「 インターフェースが固定されない時代」

ここでSalesforceが打ち出したのがAIforceです。データ、アプリケーション&セマンティクス、エージェント、インターフェースという4つのレイヤーのうち、これまで手薄だったインターフェースを動的で組み合わせ可能なものに変える取り組みです。

面白いのは、この発想自体はSalesforceにとって全く新しいものではないという点。27年前にメタデータ駆動でプラットフォームを作るという決断をした時から、この瞬間のための土台はすでにできていた。その点は、なるほどと思いました。

オブジェクトやルール、権限、ビジネスロジックが全部メタデータとして格納されているからこそ、それをブラウザ向けに再構成し、モバイル向けに再構成し、今度はClaude、Slack、LightningといったAIインターフェース向けに再構成できる。

実際にClaudeforce(Claude Cowork上)、Slackforce(Slack上)、Agentforce Coworker(Lightning上)という3つの実装がすでに動いているのは象徴的です。

パイプラインを尋ねてダッシュボードのリンクを渡されるのではなく、直接答えが返ってくる。商談を進め、ケースを解決し、キャンペーンを立ち上げる、そこまでインターフェースがやってくれる世界です。

ダリオ・アモデイが語った「進歩のペース」

Anthropicのダリオ・アモデイ CEOとのインタビューもとても印象的でした。

アモデイが語ったのは、AI開発のペース調整に関する自動車会社のたとえ話です。他社で事故が起きたときに競合を攻撃するのではなく、まず自分たちの実績を見直し、透明性への責任を確認し、業界全体で基準を作ろうと働きかける。これがリーダーシップだという考え方です。

そしてもう一つ、アモデイが「この10年で最も驚いたこと」として挙げたのが、モデルの性能向上そのものではなく、それが企業に浸透していくスピードでした。

MCP、Cowork、Claudeのスキル、どれもまだ人々が使い始めたばかりの技術なのに、経済的な価値が大きいのでものすごい速さで採用が進んでいる。技術の進化予測はできても、社会への浸透速度までは読み切れなかったという素直な告白は印象的でした。

ジェンスン・フアンの「すべての企業がAI企業になる」

NVIDIAのジェンスン・フアン社長兼CEOは、GPUの会社からフルスタックのAIインフラ企業への進化を語りながら、こう言い切りました。「すべての会社、すべての企業、すべての国がAI企業になる」。

安全性についての彼の立場も明快でした。

安全性はエンジニアリングで解決すべき課題であり、イノベーションの速さと安全性を二者択一で考えること自体が間違っている。市場に出せると確信できるまで自らペースを調整し、両方を同時に実現すればいい、という考え方です。規制を待つのではなく、企業自身が判断する。

そして最後に「取り残されないでほしい」というメッセージ。今日試して80%しか満足できなくても、2週間後にはもっと良くなっている。だから見限らずに触り続けてほしいという言葉は、今まさにAIforceやAgentforceを検証している私たちへのエールのようにも聞こえました。

Koa ― CRM専用の推論モデル

もう一つの発表が「Koa」です。Customer 360のための、Salesforce初のCRM推論モデルのこと。27年間の製品イノベーションと利用シナリオの理解、10年以上のAI・データ研究が注ぎ込まれたモデルで、NVIDIAのNemotronを基盤に、合成データのみで追加学習されています。顧客データは1バイトも使わないというゼロデータリテンションの約束は、ここでも徹底されていました。

長時間稼働し、複雑な業務目標を追いかけるエージェントを支えるために設計されているという説明は、まさに確率論的なインテリジェンスと決定論的な基盤を結びつけるという今回の基調講演全体のテーマを体現しているように感じます。

基調講演が示した4つのメッセージ

今回のメッセージを整理すると、次の点に集約されると思います。

  1. SaaSは終わらない。終わるのは、人間がソフトウェアを操作しに行くという行為だけ。
  2. モデルは素晴らしいが、それだけではビジネスは運営できない。確率論的なAIと決定論的なCRMの両方が必要。
  3. AIforceは、企業に眠っていた価値を解き放つレイヤーであり、Salesforce独自のUIを置き換えるものではなく拡張するもの。
  4. AIforceは、あらゆるTrailblazerにとってのインテリジェントなパートナーであり、既存の専門知識を置き換えるのではなく、その適用範囲を広げてくれる。

マーケティングの立場から見ても、この「確率論と決定論の統合」という説明の仕方、そして「SaaSの終わり」という業界の不安を逆手に取って「ソフトウェアを操作する行為の終わり」に読み替える構成は強力だと自負しえいます。

技術の話を誰もが実感として持っている「AIは賢いけど自分の会社のことは知らない」という違和感から始めて、そこにCRMという答えを重ねていく。手前味噌ながら、良質なストーリーテリング。ぜひ、無料のアーカイブ映像をご覧ください。

【参加申込】Dreamforceの熱狂、AIforceの実像をを東京で

記事に登場したAIforceの実像や、確率論・決定論の話を東京のイベント「Agentforce World Tour Tokyo」で体感できます。開催時期は11月。事例やデモも多数用意していますのでぜひ足を運んでください。