営業の場面では、効果的に信頼や成約を得るために心理学テクニックが用いられることがあります。心理学テクニックとは、人間の心の作用を利用し、効果的に得たい反応を引き出す技術です。
心理学テクニックを活用すれば、印象や伝わり方が変わり、同じ商品を提案していても成約率に影響します。
ここでは、営業で心理学を活用するための準備と、具体的な心理学テクニックを10個解説します。ご自身の営業活用にお役立てください。
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目次
営業に心理学テクニックが役立つ理由

心理学とは、人の心や行動を科学的に研究した学問です。心理学テクニックは、学問的に解き明かされた心や行動の仕組みをベースに、相手に効果的に働きかける技術です。
営業では、お客様の心を限られた時間の中で開き、信頼を獲得し、売りたいサービスや商品の魅力を伝え、最終的にイエスをもらわなければなりません。
心理学的なアプローチを取り入れれば、限られた時間の中でも、対話を通じて得たい答えを引き出しやすくなります。
信頼関係を築く心理学4選

心理学テクニックを営業に用いる場合、大きくシーンを分けると、信頼関係の構築時、商品提案時、最後の成約を決める場面に分けられます。
ここでは信頼関係を構築する場面で有効な、心理学テクニックを4つ解説します。
語らせて信頼関係を構築|オープンクエスチョン
オープンクエスチョンとは、回答を「はい・いいえ」で答えられない質問です。質問には、「はい・いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンと、このオープンクエスチョンがあります。
たとえば、「野球は好きですか?」といった質問は、「はい・いいえ」で答えられるのでクローズドクエスチョンです。一方で「野球のどこが魅力ですか?」と聞くのは、理由を具体的に述べる必要があり、オープンクエスチョンです。
オープンクエスチョンは、続けることで相手のニーズや意見を引き出し、「聞いてもらえた」「わかってもらえる」といった感覚を与え、信頼関係の構築に役立ちます。
営業シーンであれば、顧客のニーズを把握したり、条件を明示してもらったりする際に積極的に活用できます。
ただし注意点として、オープンクエスチョンで引き出した内容をもとに、営業側が相手のニーズを断定してはいけません。重要なのは、顧客自身が語ることで、自分のニーズに気づくことです。
関連記事:営業ヒアリングのコツとは?基本的な流れやフレームワークを解説
仲間意識を生み出す|ミラーリング
ミラーリングは、相手と自分が同じタイミングで同じ仕草を取ることです。
人間は仕草や話し方など、自分と類似した行動を取る人に仲間意識を抱きやすいといわれており、ミラーリングはその心理に無意識に働きかける心理学テクニックです。
営業の場面なら、会話の速度や息継ぎのタイミングをあわせたり、同じタイミングでペンを持つなどすると、自然とミラーリングを取り入れられます。
ただし、ミラーリングはあからさまに取り入れてはいけません。相手にミラーリングを行なっていることが伝わると、悪印象につながるからです。
商談時にミラーリングを行なう際は、気づかれない自然な範囲で取り入れるようにしましょう。
よい印象を持たれる|メラビアンの法則
メラビアンの法則は、人がコミュニケーションにおいて、聞き手が話し手のどの情報から印象を決めるのかを示した心理学の法則です。
メラビアンの法則によると、コミュニケーションの中で聞き手が話し手から影響を受けやすい情報の割合は、言語情報が7%、声や話し方などの聴覚情報が38%、見た目による視覚情報が55%だとされます。
これを踏まえると、商談時は必死に言葉で説明するよりも、営業担当者の見た目や表情、商品やサービスの視覚的なインパクトなどが顧客の判断に大きな印象を与えることがわかります。
営業の場面ではメラビアンの法則を意識し、よい印象を抱いてもらえるよう、見た目を磨いていきましょう。
ついお返しをしたくなる|返報性の法則
返報性の法則は、別名「好意の返報性」と呼ばれます。返報性の法則は、相手から何かしてもらうと、こちらもお返ししなければ申し訳ない気持ちになる心理学上の効果です。
たとえば、営業担当者が手土産を持参してくれたら、いつもよりしっかり話を聞いてあげたいし、感謝の気持ちを返したいなと思う経験もあるでしょう。これは返報性の法則が働いているからです。
営業で返報性の法則を利用する場合は、手土産を持参するだけでなく、より気軽に取り入れることもできます。相手の身につけているものや活躍を褒めるだけでも、相手はお返しによい対応をしたいと考えやすくなります。
ただし、オーバーな褒め言葉や、相手が恐縮してしまうような贈りものは避けましょう。相手の役に立ちたい気持ちがベースにあることで、この心理学テクニックは効果を発揮します。
提案時に役立つ心理学3選

商品やサービスの提案時は、限られた時間の中で、その商品やサービスに魅力と信頼を感じてもらわなくてはなりません。
しかし営業という立場からの提案は、どこまでいっても主観的な立場の話です。心理学テクニックを活用し、効果的に相手に納得してもらえるような提案を進めましょう。
口コミや調査結果で信頼アップ|ウィンザー効果
ウィンザー効果は、利害関係のない第三者の情報を入れることで、信頼性や信憑性を高める心理学的な効果です。
たとえば、アンケート結果や口コミ、第三者機関のお墨付きなどは、利害関係のない声の代表です。
ほかにも、顧客満足度調査の結果や、有名人やインフルエンサーが自社製品を使用していた情報なども、ウィンザー効果があります。
商談時にウィンザー効果を狙うなら、こうした客観的に見える情報を盛り込み伝えると、相手からの信頼が得られやすくなります。
デメリットを伝えて信頼を得る|両面提示の法則
両面提示は、物事のメリットとデメリットの両方を伝える心理学テクニックです。
物事には常にメリットとデメリットがあります。デメリットを隠して商談を進めると、相手の中で、「本当はなにか裏があるのではないか」といった不信感を抱かれかねません。
デメリットをあえて伝える際は、デメリットを上回るメリットがあることを感じてもらうことが重要です。
たとえば、「この製品は〇〇の機能が備わっていません。そのぶん本体は軽量な作りになっており、お子様や女性でも扱いやすくなっています」などです。
デメリットをメリットとともに提示すると、印象は下がるどころか、むしろ誠実な印象を持ってもらいやすくなるでしょう。デメリットを上回るメリットがあることで、聞き手は安心感を抱き、成約にもつながりやすくなります。
実績で安心感と成約を得る|バンドワゴン効果
バンドワゴンとは、パレードの先頭にいる楽隊車を指します。バンドワゴン効果とは、「多くの人が支持するものは、さらに多くの支持を集める」という意味の心理学効果です。
バンドワゴン効果は、日常でもよく起きています。人気の商品がさらに売れたり、行列のお店にさらに行列ができたり、SNSの人気アカウントがさらに人気を集めたりなどがバンドワゴン効果の一例です。
営業でバンドワゴン効果を狙うなら、お客様が商品に対して実績があって人気であると感じてもらえるような情報を盛り込みましょう。
導入事例や販売実績、累計売上、顧客満足度など、さまざまな方法で呼びかけることができます。こうした情報をもとに、顧客は「それだけよいなら、きっとよいものだろう」といった判断をしやすくなります。
成約率を高める心理学3選

セールスでは、最後に商品を購入するのか、成約の返答をもらう必要があります。ここでは、成約の場面で有効な心理学テクニックを3つ解説します。
関連記事:クロージングとは?営業の流れからコツ・テクニックまで例文付きで解説
1度断られて成約率アップ|ドア・イン・ザ・フェイス
ドア・イン・ザ・フェイスは、「一度提案を断ったら、人は次の提案を断りにくい」といった性質を利用した心理学テクニックです。
ドア・イン・ザ・フェイスでは、最初に本来の要求よりも高いものを提示し、1回断らせた上で、本来の要求を提示し、受け入れやすくする心理学テクニックです。
営業の場面では、価格や期間など、さまざまな方法でこのテクニックを活用できます。たとえば、先に高価格の商品を提示し、その後にキャンペーン価格や中価格帯の本来売りたい商品を提示する方法があります。
こうした順番で価格や条件を提示されると、顧客も後から提示された話に応じなくてはといった気持ちになり、要求を受け入れやすくなります。
今だけ効果で成約につなげる|カリギュラ効果
カリギュラ効果は、物事に禁止や制限を設けることで、相手の意欲を高める心理学上の効果です。
人は行動や選択を制限されると、逆にストレスを感じます。その不快感を解消するために、制限されたものを欲してしまう特徴があります。
このカリギュラ効果を営業の場面に取り入れていきましょう。
たとえば、「先着5名様」「今から1時間だけ」「◯◯に当てはまる方限定」など、制限を設ける文言は多数あります。
ただし、過剰にあおりすぎるとお客様も警戒心を抱くため、やりすぎには注意が必要です。キャンペーンや特典といった要素を効果的に組み込むことで、営業トークにもカリギュラ効果を活用できます。
特別感を出して成約する|ハード・トゥ・ゲット
「実はここだけの話ですが」と切り出されて、相手が本音で話してくれる人だなと、信頼感を寄せた経験はありませんか。これはハード・トゥ・ゲットを活用しているから抱く感覚かもしれません。
ハード・トゥ・ゲットは、「あなただけ」「あなただから」といった個人に対する特別感を言葉で伝え、相手から信頼を勝ち取るテクニックです。
営業トークであれば「実はここだけの話ですが」だけでなく、「お客様だけにお伝えしますが」「今だけの特別なご案内です」「本来は扱いがない製品ですが特別に提供できます」など、ハード・トゥ・ゲットを応用した言い回しはさまざまあります。
こうした提案をすれば、相手は自分が特別扱いされたように感じ、成約にもつながりやすくなるでしょう。
ただし、ハード・トゥ・ゲットは、話の頭に「ここだけの話ですが」とただ付け加えても効果は生まれません。特別な提案を行なう際に、テクニックを活用しましょう。
営業で心理学テクニックを活用するには

営業場面で心理学テクニックを用いる場合、闇雲に取り入れても不自然な振る舞いとなり、逆効果にもなりかねません。
営業で心理学テクニックを取り入れる際は、ご紹介する3つの事前の準備が重要です。それぞれ解説します。
トークスクリプトに盛り込む
トークスクリプトとは、商談時に何をどの順番で話すかを決めた台本です。これから提案する話の流れの中で、どの心理学テクニックをどこで使うかはあらかじめ決めておきましょう。
たとえば、顧客とのご挨拶場面では、返報性の法則を意識的に取り入れると効果的であると、先ほどご紹介しました。
挨拶の部分には、「返報性の法則を入れる」といった抽象的な記載ではなく、「いつもおしゃれな小物を持たれていて、ステキですね」など、具体的な言い方をあらかじめ決めて記載しておきましょう。
また、トークスクリプトを作る際は、相手の回答を想定し、フローチャート形式で会話のパターンを用意しておくと、どのような答えにも対応でき、慌てず必要なことを伝えられるでしょう。
関連記事:トークスクリプトとは?営業力の上がる作り方や活用のポイントを解説
ロールプレイングで練習をする
ロールプレイングとは、実際の場面を想定し、特定の役割を演じながらスキルを身につける練習方法です。
ロールプレイングは1人で行なってもよいですが、同僚や上司などに協力してもらい、実際の商談場面を想定し会話を行なうと効果的です。
また、ロールプレイングはやりっぱなしにせず、相手からのフィードバックをもらい、営業トークの見直すことが重要です。
心理学テクニックは、慣れないうちは使い忘れたり、不自然な言い方になったりして、かえって悪い印象を与えてしまうこともあります。繰り返しロールプレイングで練習をすれば、営業トークが磨かれ、心理学テクニックも自然に取り入れられるでしょう。
関連記事:ロープレとは?意味や目的、手順や効果的に実施するポイントも解説
関連動画:AIで営業力アップ!AIエージェントと営業ロールプレイ|『Agentforceセールスコーチング』を解説
商談の場で使い改善を加える
トークスクリプトやロールプレイングで会話のブラッシュアップをしたら、実際の商談で使用し、お客様の反応を見ながら改善を加えていきましょう。
不自然な会話になっていなかったか、提案のタイミングは適切だったか、相手の返答にしっかり対応できていたかなど、細かい点に注意を払うことが大切です。
また、上司などが商談に同席をする場合、商談後にフィードバックをもらうようにしましょう。適時改善を加えれば、ご自身や自社製品に適したトークスクリプトが完成します。
AIを搭載したCRMを活用すれば確度の高い顧客への提案が実現

心理学テクニックとあわせて、効果的に営業を進める際に取り入れたいのが、CRMです。
CRMとは、会社全体で顧客情報を一元管理できるシステムです。CRMを使えば、購買行動履歴や行動データ、サービスの利用情報を集約して管理でき、効率的な営業活動をサポートします。
AIを搭載したCRMを活用すれば、顧客情報を管理できるだけでなく、売上予想と管理ができたり、CRMデータをもとにして、その顧客にあったメールの自動作成ができたり、案件の優先度の分析をAIが行なってくれたりします。
心理学テクニックは、提案に望めなければ使うことができません。一方、営業にCRMを取り入れれば、業務の大幅な効率化が叶うだけでなく、人間の精度をこえた緻密な顧客分析ができ、営業活動に大きく貢献します。
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心理学テクニックを営業に活用し成約につなげよう

心理学テクニックは、効果的に使えば営業場面の大きな助けになります。しかし、あからさまに取り入れては相手にも気づかれ、効果を発揮しません。
心理学テクニックを用いる際は、トークスクリプトに盛り込み、事前の練習を行なってから提案時に使うようにしましょう。また、心理学テクニックを使う前に、提案する顧客の興味関心や確度をCRMで分析できれば、より効率的な営業活動が実現します。
営業組織を強化し、売上向上に繋がる資料3点セット
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