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【エキスパート解説】金融・保険業界の「次世代営業モデル」とは。3つの課題を同時解決する方法

セールスフォース・ジャパンの業界スペシャリスト「Industry Advisor(インダストリー・アドバイザー)」が担当業界の現在と未来を占う連載「Next Gen Industry」。第4回は金融・保険業界編です。

Key Takeaways

This summary was created with AI and reviewed by an editor.

顧客データの断片化、営業ノウハウの属人化、コンプライアンスと顧客体験のトレードオフに悩む金融・保険業界。構造的課題の背景を分析し、AIエージェント「面談コンシェルジュ」による深い顧客理解と対面営業の質の最大化を実現する「次世代営業モデル」の具体策と先進事例を、高橋博樹と田中力が解説します。

金融業界が直面する3つの課題と背景

現在の金融・保険業界は、かつてない大きな構造的課題に直面しています。

私たちが数多くの金融・保険業の現場を視察し、意思決定者やアナリストと意見を交わす中で痛感するのは、金融・保険業は「営業生産性の低下」「顧客ロイヤルティの低下・アドバイスギャップ」「コンプライアンスコスト・リスクの増大」という3つの深刻な課題を抱えていることです。

これらは、決して個別の現場や担当者の怠慢から生じた課題ではありません。むしろ、時代の変化と金融・保険機能の高度化に対して、従来の業務設計やシステム基盤が限界を迎えているという「業界構造の変化」そのものです。

この3つの課題は相互に深く連動しており、業界の根幹を揺るがしています。一つひとつみていきましょう。

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1. 金融・保険営業の生産性低下

金融・保険営業の現場において、営業担当者が1日の可処分時間のうち「実際に顧客と向き合える時間」は極めて少ないのが実態です。

実態調査や現場の観察によれば、担当者の時間の大部分は、商談前の顧客情報の収集・照会、複雑な提案書の作成、さらには商談後の詳細な議事録作成、庁内・社内報告といった煩雑な事務作業に侵食されています。

営業プロセスが「商談前」「商談中」「商談後」の3フェーズに完全に分断されており、それぞれのフェーズでデータの重複入力や確認作業といった非効率が重発。これは個人の手際や努力の問題ではなく、分断された業務設計に起因する構造的欠陥です。

2. 顧客ロイヤルティの低下・アドバイスギャップ

銀行、証券、保険の窓口や訪問営業において、顧客は「本当に自分の人生や財務状況に合った提案」を得られていると感じているでしょうか。

顧客が求める高度でパーソナライズされたアドバイスと、実際に提供される商品提案との間には、依然として深刻な「アドバイスギャップ」が存在します。デジタルファーストの他業種で優れたカスタマー体験に慣れた顧客は、金融・保険業の体験格差に不満を募らせ、顧客ロイヤルティの低下を引き起こしています。

アドバイスギャップの根本原因は、顧客データが複数システムに散在し統合されていないため、担当者が顧客のライフイベントや全体像を瞬時に把握できないという設計です。「データは存在するのに活かせていない」自動で一元的蓄積ことが、顧客体験を毀損しているのです。

3. コンプライアンスコスト・リスクの増大

AML/CFT(マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策)対応、適合性原則の厳格化、説明義務および意向確認の強化など、金融・保険規制の高度化に伴いコンプライアンス対応コストと時間は年々膨張しています。

現在、現場では「規制対応に追われ、顧客対応に使えるリソースが削られる」という「ゼロサム」の構造に陥っています。しかし、コンプライアンスは顧客の資産と信頼を守るためのものであり、本来顧客満足と両立すべきものです。

「手作業による確認と厳格な記録管理」に依存した従来のプロセスが、コンプライアンスと営業生産性を対立させている要因です。

金融・保険業界の変革が進まない3つの構造的理由

現場の担当者は極めて真面目に努力している。それにもかかわらず、なぜ課題は年々深刻化するのか。この逆説を解き明かす鍵は、個人のスキル不足や組織の怠慢ではなく、金融・保険業界特有の3つの構造的問題にあります。これら3つが、前述した課題を深く固定化させています。

1. 顧客データの断片化

多くの金融・保険業において、顧客情報はCRMや基幹システム、各事業部門のデータベースに高度に蓄積されています。しかし、預金、融資、投資信託、保険といった商品ラインごとにシステムがサイロ化されており、担当者が商談前に「この顧客は一体どんな背景を持っているのか」を把握するためだけに多大な時間と手間を要しています。

既存のレガシー基幹システムとの連携が困難であることが、データの断片化を強固に固定化させています。情報の量の問題ではなく、顧客データが一人の人間としての文脈でつながっていないという設計の限界が存在します。

2. 営業ノウハウの属人化

優秀な営業担当者が持つ「顧客の課題を見抜く目」や「対話の場の読み方」、「適切な提案のタイミング」といった高度な知見は、個人のスキルや経験の範囲内にとどまっています。

特に保険業界では、代理店の高齢化に伴う後継者不足が深刻化しており、地域や組織を支えてきたベテラン募集人のノウハウが伝承されないまま廃業や交代を迎え、貴重な顧客資産や営業機会が失われています。

商談の前・中・後における思考プロセスやノウハウがシステム上に構造化・記録されないため、組織の共有資産として継承されていません。結果として、担当者変更のたびに顧客との関係性がリセットされ、膨大な育成コストと機会損失が繰り返し発生しています。組織としての営業力を再現性高く構築できない構造がここにあります。

3. コンプライアンスと顧客体験のトレードオフ

コンプライアンスを徹底しようとすると手続きが増えて顧客体験(CX)が低下し、顧客体験の円滑さを優先するとリスクが高まるという二項対立が、現場の絶対的な前提として君臨しています。

このトレードオフは、規制対応や記録の作成・チェックが「人手によるアナログ作業」に頼っていることから生じています。二項対立は業界の宿命ではなく業務設計の限界であり、プロセスの再設計によって解消されるべき課題です。

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レガシーシステムの統合や顧客対応の自動化に挑む海外7社の事例から、次世代営業モデルの具体的なヒントが得られます。

面談コンシェルジュが面談ジャーニーを支援

ここまで挙げた3つの構造的問題(顧客データの断片化・営業ノウハウの属人化・コンプライアンスと顧客体験のトレードオフ)は、個々の担当者の努力や単なるツールの継ぎ足しでは決して解決できません。

特に保険をはじめとする金融商品は、顧客が自発的に調べるケースが限られるため、対面での「信頼関係構築」が販売の要であり続けます。そのため、AI活用の本質は対面営業の無人化ではなく、対面の「時間と質」を最大化することにあります。

これらの構造限界を乗り越え、金融・保険業が「本来目指すべき営業の姿」を実現するために私たちが提示するのが、「面談コンシェルジュ」というビジョンです。

面談コンシェルジュとは?

面談コンシェルジュとは、AIエージェントが営業担当者一人一人の専属コンシェルジュとなり、顧客理解・リアルタイム情報提供・記録作成・コンプライアンスチェックといった高度な業務を一貫して支援する次世代の営業エージェント構想です。

単なる作業の自動化ツールではなく、営業担当者を複雑な事務作業や確認業務から解放し、顧客との深い対話と価値創出に100%集中できる環境を整えます。

従来の「どのようなAIツールを導入するか」という視点から脱却し、まずは「担当者・顧客・組織がどのような姿を目指すべきか」というビジョンを掲げることが不可欠です。

面談コンシェルジュ」は、商談前・商談中・商談後のジャーニー全体を通じて、担当者が作業から解放され、顧客価値の創造に集中できる世界を実現します。それぞれのフェーズにおける面談コンシェルジュの効果を順に解説します。

【商談前】顧客情報を集約し深い顧客理解を持って臨む

商談前フェーズにおいて、担当者は高度に統合された顧客コンテキストをひと目で把握できるようになります。家族構成やライフステージ、過去の相談履歴、潜在的なニーズまでを「一人の人間」として可視化。

担当者は事前準備の時間を、情報探しではなく、商談の対話設計や質の高い仮説構築に当てることが可能です。準備の質が根底から変化することで、顧客との間に深い対話と信頼関係が生まれます。

【商談中】リアルタイム情報活用で顧客課題の解決に集

商談中、担当者は情報を探す人から、顧客と共に課題を考える人へと進化します。対話の中で必要な最新のナレッジ、提案根拠、関連規制情報が即座に参照可能となり、その場で顧客の疑問に説得力をもって答えることができます。

さらに、適合性原則や説明義務に関するチェックもリアルタイムでアシストされるため、顧客体験を損なうことなく高度なコンプライアンス遵守が同時に達成されます。

【商談後】記録・コンプライアンス対応の自動化で本来の顧客対応へ回帰

商談が終わった後の議事録作成、案件情報の更新、法令に基づくコンプライアンスチェック、次回アクションのタスク作成は大幅に自動化・構造化されます。

さらに、保険業務で発生する満期・契約更新ご案内や保全手続き、他部署・事故担当へのスムーズな引き継ぎ処理までAIがサポートします。

単なる後処理時間の短縮にとどまらず、手作業による疲弊から解放された担当者が、すぐさま次の顧客への手厚いフォローや準備に注力できる好循環が生まれます。これにより、アドバイスギャップとコンプライアンスのトレードオフは「高次元での完全な両立」へと変化します。

【金融向け】AIエージェント実装ロードマップ

セキュリティ、老朽化したシステム、増え続ける運用負荷… 金融特有の「データ分断」を克服し、収益向上につなげる方法を解説します。

金融・保険業界の「次世代営業モデル」を実現する技術基盤と先進事例

「面談コンシェルジュ」のビジョンを絵に描いた餅に終わらせず、現実の営業現場で稼働させるための技術基盤と、先行する金融・保険業の挑戦・成果を紹介します。

金融・保険業の収益を最大化する「価値創出モデル」とは何か

金融・保険業の収益を最大化する価値創出モデルとは、金融・保険業が保持する膨大な情報資産と対面営業の知見を融合し、顧客エンゲージメント向上と営業事務の削減を両立させる技術モデルです。

単なるツールの継ぎ接ぎではなく、データを価値に変換する役割ごとにプロセスが構造化されています。主な構成要素は下記の4つです。

  • 顧客コンテキスト基盤
  • 面談前サブエージェント
  • 面談中サブエージェント
  • 面談後サブエージェント

1. 顧客コンテキスト基盤

分散した顧客データを統合し、AIに文脈を与えるための情報基盤
取引先情報、商談履歴、口座や契約状況、デジタル行動履歴を自動で一元的に蓄積。既存のCRMデータと対面営業で得られた定性情報を高度に融合し、あらゆるプロセスの源泉となる「コンテキスト(文脈)」を持続的に供給します。

2. 面談前サブエージェント

蓄積されたデータから仮説を導き、提案の質を高める
供給された顧客コンテキストを活用し、過去の折衝記録の参照、論点の整理、最適な仮説を自動生成。営業担当者の「提案の壁打ち相手」となり、質の高い商談デザインを支援します。

3. 面談中サブエージェント

リアルタイムのナレッジ提供で、顧客との対話を高度化
商談中に必要なナレッジや類似事例をタイムリーに提示して提案力を補強。同時に会話ログを正確に記録し、情報の抜け漏れを防ぎながら担当者を対話に集中させます。

4. 面談後サブエージェント

対話の結果を自動で構造化し、確実な次アクションへ繋ぐ
面談終了後、会話ログから議事録を自動で構造化し、案件情報の更新、認識ギャップの検知、コンプライアンスチェック、フォローアップタスクの作成までを包括的に実行します。

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先行する金融・保険業界の挑戦と事例

ここからは先進的なユーザーの事例をみていきましょう。先進的な金融・保険業は、単なるIT導入を超えて組織の営業プロセスを変革し、圧倒的な成果を創出しています。

米大手銀行

商談前後の一連の営業ジャーニー全体に高度な自動化とAI支援を組み込むことで、担当者の事務負担を劇的に削減し、顧客一人ひとりに寄り添う面談時間を創出することに成功しています。

三菱UFJ銀行

AIが顧客データやベテランのノウハウを即座に収集・分析することで、面談準備などの作業負担を大幅に軽減。組織全体で提案品質を均一化・高度化し、行員が戦略立案や顧客との深い対話といった「高付加価値な業務」へ専念できる環境を構築しています。

(出典:三菱UFJ銀行、Salesforceの金融業界向けAIエージェント「Agentforce 360 for Financial Services」を本稼働

三井住友カード

Agentforceを活用した「AIバディ」を導入し、営業支援を行っています。商談履歴の要約、企業情報やグループ取引状況の整理、提案ストーリー骨子の自動生成により、提案準備時間を約45%削減しました。

また、若手や着任者の商談質向上(ボトムアップ)を実現し、毎日50〜150件利用されるなど現場に定着。営業が顧客対話に集中できる環境を整備しています。

詳しくは、Agentforce World Tour Tokyo 2026 金融講演「【金融機関】AIは「試す」から「成果」の段階へ〜PoCで終えないビジネス成果創出までの具体解」をご覧ください。

企業の競争力は、もう人間だけでは決まらない

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「よくある質問」でおさらい

A. 金融・保険サービスのコモディティ化が進み、商品や金利だけでは差別化が難しくなっているからです。


顧客が「この担当者・この会社だから任せたい」と感じる根拠は、提案の質と信頼の蓄積にあります。その信頼を組織として再現可能な形で作り出す思想と仕組みを持てるかどうかが、今後の金融・保険業の競争力を左右します。

A. 個人の努力には構造的な限界があります。


担当者がどれだけ優秀でも、顧客情報が分断され・準備時間が削られ・商談後の事務に追われる環境では、本質的なアドバイスを届け続けることは困難です。アドバイスギャップは「担当者の質の問題」ではなく「業務設計の問題」として捉え直すことが、組織全体の底上げへの第一歩になります。

A. 現状の業務設計を前提にする限り、この二項対立は解消されません。


しかし、コンプライアンス対応が「人手による確認・記録」に依存している構造そのものを見直すことができれば、両立は可能になります。この問いに「どちらかを諦める」という答えを出し続けることが、業界全体の信頼低下を招いていることを認識する必要があります。

A. 金融営業では顧客との信頼関係が長期にわたって資産価値を持つため、担当者交代によるリセットのコストが他業界より格段に大きいからです。

加えて、規制対応・商品知識・顧客理解という複数の専門性が求められるため、属人化したノウハウを再現することが極めて難しい。この構造が人材育成コストと機会損失を慢性化させています。

A. 「自社の営業担当者は今、何に時間を使っているか」という問いです。
顧客と向き合う時間と、事務・記録・準備に費やす時間の比率を把握している経営者は多くありません。その実態を直視することが、業務設計の何を変えるべきかを考える起点になります。変革は技術の導入より先に、この問いへの答えから始まります。

金融業界の「次世代営業モデル」実現に向けた次のステップ

金融営業の変革は、単なるデジタルツールの導入ではなく「担当者が顧客と向き合う本来の価値を取り戻す」ための業務設計の再構築から始まります。

本稿で提示した課題やビジョンは、貴行・貴社においても決して他人事ではないはずです。まず始めるべきは、自社の営業現場において「担当者の時間が何に消費されているか」の現実を直視し、データとプロセスの統合に向けた一歩を踏み出すことです。

Salesforceの金融機関向けソリューションは、2025年にAgentforce Financial Services(旧Financial Services Cloud)へと名称を変更し、リブランディングしました。ぜひ、未来に向けた変革のパートナーとして、最新機能をこちらからご確認ください。

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