インターネット上で個人の趣味嗜好が分析しやすくなった現代では、関連商品を紹介することが多くあります。昨今の経済状況の中、顧客に商品を欲しいと思ってもらうには工夫が必要です。
本記事ではマーケティング用語のひとつであるクロスセルに注目し、クロスセルの定義や実施するメリット・デメリット、アップセルやダウンセルとの違い、はじめる手順まで詳しく解説します。商品の魅力が顧客に伝わるように、ぜひ試してみてください。
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目次
クロスセルとは

クロスセルとは、顧客が購入しようとしている商品と関連する別の商品を提案し、購入を検討してもらう手法です。
クロスセルは、マーケティング用語のひとつです。関連商品を勧めることで、顧客が一度に購入する金額(顧客単価)をアップさせる効果があります。
昨今ではネットショッピングなどで、顧客の購入履歴から「こちらもおすすめ」と表示させるものがあります。これもクロスセルです。ほかにもファーストフード店でハンバーガーを購入した際に、「ご一緒にポテトはいかがですか?」とセット購入を勧められるのも、クロスセル戦略の一種です。
関連記事:中小企業担当者が知っておくべき デジタルマーケティングの基礎 Vol.2 これだけはおさえて!超訳「デジタルマーケティング用語」10選
アップセルとクロスセルの違い
クロスセルと似た手法で「アップセル」というものがあります。アップセルとは、顧客が購入しようとしている商品よりもグレードの高いものを勧める手法です。
クロスセルでは、関連商品を複数購入してもらうセット販売のような形で、顧客の単価を上げることを目的とします。一方アップセルは、顧客が欲しい製品を勧めつつ、よりランクの高いものを提案する手法です。
どちらも「顧客ひとりあたりの単価向上」という目的は同じです。しかし、目的達成までの手段が異なります。
クロスセルを実施する際は「まとめて購入したほうがお得だと伝える」といった工夫が必要です。アップセルの場合は「グレードの高い製品のみ期間限定キャンペーンを実施する」などの方法があります。
関連記事:アップセル・クロスセルとは?違いや活用方法、成功事例を紹介
ダウンセルは顧客をつなぎとめる効果のある方法
アップセルに対して「ダウンセル」という手法もあります。ダウンセルとは、商品のグレードを下げることで、顧客に購入を検討してもらう方法です。
たとえば顧客が他社の製品と迷っている場合、顧客をつなぎとめる効果が期待できます。結果的に、LTV(顧客生涯価値)を向上させることにつながります。
価格にとらわれない姿勢は、顧客に信頼感や安心感を持ってもらいやすいでしょう。顧客と良好な関係が構築できれば、その後のアップセルやクロスセルにつながる可能性を高められます。
クロスセルを実施するメリット

ここでは、クロスセルを実施することで、企業によい影響を与えるポイントを詳しく解説します。
クロスセルを実施するメリットは、下記の3点です。
- 顧客単価がアップする
- 単体だと販売が難しい商品の訴求ができる
- LTV(生涯顧客単価)の向上につながる
メリットがわかれば、クロスセルをどのような場面で活用すべきかが見えてくるでしょう。
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メリット1.顧客単価がアップする
クロスセルのメリットのひとつ目は、顧客が一度に購入する金額(顧客単価)がアップすることです。
新規顧客を開拓するには時間と手間がかかります。しかし、クロスセルなら顧客数を増やさなくても、売上総額アップにつなげやすいでしょう。
商品を宣伝・広告するコストが削減できるため、効率よく売上を上げられます。顧客のライフスタイルや趣味趣向、求めている商品などをリサーチすることが重要です。
メリット2.単体だと販売が難しい商品の訴求ができる
クロスセルのメリットの2つ目は、単体では販売しにくい商品をまとめて購入してもらえる可能性が高まる点です。
たとえば、風邪薬を飲みやすくするゼリーは、風邪薬の近くに置いてあると購入される確率が高くなります。ほかにもネクタイとワイシャツのセットや、テレビとテレビ台、シャンプーとリンスなどが挙げられるでしょう。
必要に応じて「対象商品2つ以上の購入で10%引き」などのキャンペーンを実施すると、より効果的です。
メリット3.LTV(生涯顧客単価)の向上につながる
クロスセルを実施するメリットの3つ目は、LTV(生涯顧客単価)の向上につながる点です。LTV(生涯顧客単価)とは、顧客が取引をはじめてから終わるまでにもたらす損益を累計した指標のことです。
たとえば、月額のサブスクリプションを利用している顧客がいる場合、基本料金だけでなくオプションも継続して使用してもらえると顧客のLTVが高くなります。
新規顧客が獲得しにくくなってきた近年では、マーケティングにおいて既存顧客のLTV向上を目指すことは大切です。
関連記事:LTVとは?注目される理由と計算方法、向上施策をわかりやすく解説
クロスセルを実施するデメリット

クロスセルには、企業へのネガティブな影響もあります。
クロスセルを実施するデメリットは、下記の2点です。
- 押し売り感が出やすい
- 既存の顧客が離れる可能性がある
あらかじめデメリットを把握しておくことで、対処できるでしょう。
デメリット1.押し売り感が出やすい
クロスセルには関連商品の購入を無理に勧めると、顧客が「押し売りされている」と感じやすいデメリットがあります。
顧客が不信感や不快感を覚えてしまった場合、他社製品に乗り換えるリスクもあります。
企業の売上アップを目的としつつも、顧客のニーズを満たすことを忘れずに対応することが大切です。クロスセルを実施する際は、あまり強く提案せず、顧客の悩みを解決するように心掛けましょう。
購入後のサポートがあれば、さらに良好な関係を築けます。
デメリット2.既存の顧客が離れる可能性がある
クロスセルのデメリットの2つ目は、既存の顧客が離れる可能性がある点です。
クロスセルにより顧客のニーズを満たせない場合、既存の顧客が他社に乗り換えてしまうリスクもあります。また営業トークが上手でも、商品の質が悪いと信頼の低下につながるおそれもあるでしょう。
社内でクロスセルの必要性を周知しつつ、クロスセル以外の手法も検討することが必要です。クロスセルを使用する場面を適切に見極めつつ、顧客のニーズに応える良質な商品・サービスを展開しましょう。
クロスセルをはじめる5ステップ

顧客のニーズに応えつつ企業の利益をアップさせるために、クロスセルは大切です。しかし、具体的に何から手を付けたらよいのでしょうか。ここではクロスセルをはじめるための下記の5つのステップを解説します。
- 既存顧客のデータを整理・分析する
- 関連する商品やサービス選定する
- クロスセルを実施する流れをまとめる
- クロスセルの導入
- 効果・検証と改善につなげる
クロスセルを実施する手順がわかれば、商品やサービスを効率よく展開できるようになるでしょう。
ステップ1.既存顧客のデータを整理・分析する
クロセルを実施する際は、まず既存顧客のデータを整理・分析します。顧客リストの中から、クロスセルの対象者を選定することで、効率よく戦略を実施できるでしょう。
顧客との接触頻度やアプローチに対する反応など、いくつかの要素を分析します。「RFM分析」や「LWP分析」などを活用するのがおすすめです。
RFM分析
RFM分析とは、「最終購入日(Recency)」「購入頻度(Frequency)」「購入金額(Monetary)」などの指標から、既存の顧客をランク分け、グルーピングする手法のことです。
顧客グループの分布を確認することで、自社の状況を可視化できるメリットがあります。どの顧客グループに対して、どのような施策を実施すべきかの判断材料にもなるでしょう。分析結果から選定された顧客のニーズを掴み、それを解決するタイミングでクロスセルを活用します。
関連記事:RFM分析とは?エクセルを使った基本手法とツールの活用例を解説
LWP分析
LWP分析とはList(顧客リスト)、What(行動内容)、Pace(行動頻度)の観点から、クロスセルの対象者を選定する手法です。
顧客との接触頻度や直近の購買行動などをまとめ、マッピングやランク付けを実施します。顧客情報をもとにアクションプランを考え、クロスセルを実施すべき顧客を絞り込む流れです。
関連記事:顧客分析とは?6つのフレームワークや分析の手法、注意点を解説
ステップ2.関連する商品やサービスを選定する
既存顧客データからクロスセルの対象者が絞り込めたら、次に関連する商品やサービスを選定しましょう。
クロスセルに適した、自社商品やサービスを選定することが大切です。単なる抱き合わせにならないよう、あくまで顧客のニーズに応える商品の組み合わせを検討します。
顧客と同じ目線に立ち、コストを支払っても商品を購入したいと思われるように、顧客の悩みを解決する商品を提案することが大切です。
ステップ3.クロスセルを実施する流れをまとめる
次に商品やターゲット、契約するタイミングと期間、価格など、クロスセルを実施する際の流れをまとめましょう。顧客や提案する商品ごとに、最適な提案方法は異なります。
たとえば、ECサイトのおすすめ機能ならシステムの構築を、訪問営業やテレアポなら営業担当者にクロスセルを周知させるなど、状況に応じた対応が必要です。
ほかにも消耗品なら、顧客の使用頻度に合わせて割引価格で提供できる定期購入を勧めるといった施策も考えられます。
ステップ4.クロスセルを導入する
これまでに策定した戦略・流れに沿って、クロスセルを導入します。
たとえば営業社員用のクロスセル提案のマニュアルを作成したり、ECサイトの構築メンバーを集めたりするなどの施策を実行します。
クロスセルとは何か、どのようなメリットがあるのかを社内で従業員に周知することも大切でしょう。クロスセルを開始するときは、最初は小さくスタートして、売上拡大が見込めると感じた場合に徐々に拡大していくのが効果的です。
ステップ5.効果検証をして改善につなげる
クロスセルを導入した後は、効果検証を実施しましょう。あらかじめ立てた仮説は正しかったのか、よい点と悪い点を分析することで、クロスセルの効果を可視化できます。
反省点は、次回以降の改善につなげましょう。場合によっては、クロスセル以外の手法も検討します。
クロスセルの提案後も、今回紹介した手順に沿って、顧客分析や戦略設計を見直すのがおすすめです。仮説検証を繰り返すことで、クロスセルの精度を高められるでしょう。
AIによる既存顧客の分析でクロスセルの成功率が向上

SalesforceのCRM(Service Cloud、Marketing Cloudなど)に組み込まれたAI機能に「Einstein Copilot」があります。
Einstein Copilotは、パーソナライズされた商品・サービスの提供が可能なため、既存顧客の満足度を高める効果が期待できます。クロスセルにおける既存顧客のデータ整理・分析をサポートし、作業時間を短縮できることもメリットです。
対話型AIアシスタントなので、自社の顧客情報を効率よくまとめられます。クロスセルを実施すべき顧客を選定し、ニーズに応える提案を実施できるでしょう。
クロスセルを効果的に活用し既存顧客の単価アップを目指そう

クロスセルとは、顧客が購入しようとしている商品と関連する別の商品を提案し、顧客単価をアップさせる施策のことです。クロスセルの手順を理解することで、既存の顧客情報を整理し、優先的にアプローチすべきターゲットや訴求すべき商品・サービスを特定できます。
クロスセルを成功させるためには、AI機能が組み込まれたCRMを活用することも効果的です。効率的に顧客情報をまとめ、最適な提案をしてもらうことで、クロスセルの成功率向上と顧客満足度の強化につなげましょう。