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トップ営業の本棚 – インサイドセールスに必須「傾聴力」はこう養う

トップ営業の本棚シリーズは、Salesforceトップ営業のマインドや成功の秘訣について愛読書から探っていくシリーズ記事です。第1回のテーマは、インサイドセールスの成功の裏にある力。成果を出すインサイドセールスの読書術からインサイドセールスでは必須の傾聴力の極意まで、Salesforceのインサイドセールス部門リーダーがご紹介。明日からできるトップ営業のインプット術とは。

セールス ディベロップメント本部 常務執行役員 本部長を務める鈴木淳一は、Salesforceのインサイドセールス組織を統括する立場です。

優れた顧客体験を一貫して提供するために、Salesforceが活用してきた営業プロセスモデル「The  MODEL」の起点となる営業活動を担い、部下のインサイドセールスメンバーを直接マネジメントする現場のファーストラインマネージャーとしてチームを受け持っていたときは、チームメンバーにインサイドセールスを卒業するまでに読み終えるべき15冊ほどの課題図書を設けるなど、読書による知識の獲得を促進していました。自身でも月間4冊ペース以上の読書を続けているそうです。なぜ、鈴木さんは読書を重んじるのか。そしてその学びが日々の営業活動にどう生きるのかについて、深掘りします。

「クラウド誕生」との出合いが転機に

――最初に、鈴木さんの歩んできたキャリアや、Salesforceで現在統括している業務を教えてください。

私は2010年にSalesforceに入社し、入社後に営業職を経験した後、現在は「セールス ディベロップメント本部」という一般的にはインサイドセールスと呼ばれる部門の統括をしています。

インサイドセールスとは、見込み顧客に対して、メールや電話などで行う非対面の営業活動のことです。見込みのお客様へ仮説提示・ヒアリングしながら、顧客の中でも明確ではなかった課題を顕在化し、適切なソリューションを提案することで、を製品の購入意欲を高める活動や、フィールドセールスと連携し受注をアシストします。いわば、Salesforceの営業活動の起点です。

また、Salesforceではインサイドセールスを経験した後、フィールドセールスやポストセールス、マーケティングなどのキャリアに進む人材が多いことから、若手社員や新入社員の育成という面もあり、将来的にさまざまな部門で活躍していく人材の礎を作っていく役割も果たしています。

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――前職でも、営業活動に携わっていたのでしょうか。

はい。スタートアップの営業職として、採用広告、ウェブ広告やSP(セールスプロモーション)広告の営業を担当していました。3年半ほど在籍していたのですが、途中でリーマンショックがあり、それまで順調だった成長路線が鈍化してしまったんです。

回復施策として新たに取り組んだのが、サブスクリプション型の広告でした。サブスクリプションに取り組む中で『クラウド誕生』(マーク・ベニオフ、カーリー・アドラー著。ダイヤモンド社)を先輩からいただいたんです。

実際に本を読んでみたところ、Salesforceが手がけるSaaSのビジネスモデルが安定成長・再現性に非常に優れていると感じました。お客様に誠実に向き合い、製品・サービスを成長させ続けるサブスクリプション・SaaSを自分自身でもっと極めたくなり、Salesforceに転職したんです。

『クラウド誕生』は、SaaSというビジネスモデルの魅力と、お客様に価値を提供し成功し続けてもらうことが自社の成長につながるという基礎が詰まっていると思います。顧客志向の変化に対応する考え方を知るにも重要な本だと思うので、Salesforceに関わりのない方にも、ぜひ手に取っていただきたいです。

特に、この本の著者であり、Salesforceの創業者でもあるマーク・ベニオフが、テレセールスの有効性を説いている章は、仕事の原動力になるメッセージがたくさん入っているんですよ。10年以上前に読んだ本ですが、いまだに何度も読み返しています。

「読む」より「聴く」?読書のカギは習慣化

――鈴木さんは普段どのように書籍を読んでいますか。鈴木流の読書スタイルについて教えてください。

読書というと、読むために時間を「捻出する」とか「作る」といった大変なイメージをみなさん抱くかと思いますが、私の場合、一冊一冊を何時間もかけて丁寧に読むのではなく、書籍の中から心に残るフレーズや章を抜き出し自分自身の「お気に入りプレイリスト」を作る感覚で読んでいます。1つのCDを74分全て聴きこむ人は少ないですよね、3曲目・11曲目を抜き出してプレイリストにする様な感覚で良い部分を集めて知識にしている感覚です。

そして、スマートフォンの機能を使って、電子書籍を2倍速で「聞いて」いるんです。著者の講演を聴いている様な感覚で、意識を音声に集中させ心に残るフレーズ、「あぁこれはそうだな」と感じる内容を心に留める様な読書方法です。その中でも気になるフレーズがあったら、スクリーンショットを残して家に帰ってから見返し、ノートに書き写したり、特に感銘を受けた本は、紙の書籍でじっくりと読みかえすようにしています。書籍を机でじっくり読む時間のない方にはよくお薦めしている方法で、私の周りでは聴読が結構流行ってやっている人が増えています。(最近のKindle読み上げ機能はとても優秀)

――インプットのツールとして読書が欠かせないのですね。

そうです。メンバーにもよく伝えているのですが、良いアウトプットには、インプットの種類や幅を広げる以外に方法はないというのが持論です。自分が成長していくためにも、一定量のインプットを維持し続けるのはとても重要だと思っています。そしてそのインプットのために、読書はとても効果的だと感じています。

――とはいえ、日々忙しい中で、読書時間を確保するのは難しくないですか。

読書に限ったことではありませんが、自分を成長させるためのポイントは、「習慣化」だと思います。プロのスポーツ選手、プロの営業もそうですけれど、一流の人って「当たり前にできること」のレベルが高いじゃないですか。

一流の人は目標を達成するのは当たり前で、それ以上の価値を出そうと考えます。限られた時間の中で「当たり前」のレベルを上げようと思ったら、日々の習慣の範囲を広げていくのが一番の近道のような気がするんです。私の場合は元々ジムに行く習慣があったので、そこに耳で聴く読書を付け加え、読書も習慣化させました。以前は音楽を聴いていたのですが、今は本が読みたくてジムに行く日もある位です。

傾聴力の極意:コミュニケーション力を磨くテクニック

――今日お持ちいただいた本を拝見すると、ビジネス書に限らず、ノンフィクションや小説、エッセイなどかなり幅広いジャンルの作品を読まれている印象です。どのような基準で読む本を選んでいますか。

いくつかあるのですが、ひとつは、自分が悩んでいることや成長したいと思っているテーマに沿ったものです。メンバー育成に悩んでいたら、それに役立ちそうな本を読みますし、組織課題があれば、それについて書かれている本、解決のヒントを得られそうな本を読みます。

私は、自分の発言に対してしっかり裏付けを取っておきたいという感覚があります。「こうなんじゃないか」と自分の感覚でただ発するのではなく、事実やデータに基づく「ファクト」を説明したほうが、説得力が出ると思います。自分がアウトプットするときの礎となるものを探すために読書をしているという側面もあります。

もうひとつは、他者からのおすすめです。出会った方の中で「お話がすばらしい・面白い」と思った方や、「言葉の選び方や思考が深い方」、「バラエティに富んだお話をされる方」にお会いしたときは、必ず「どういう書籍を読んでいらっしゃいますか?」「おすすめの本はありますか?」と尋ねるようにしています。

教えていただいた本はすぐに買って読み、その方とまたお会いしたときに感想をお伝えしてというサイクルですね。この方法だと自分では選ばないジャンルや作家の本に出会えるため、インプットの幅が広がります。

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――インサイドセールスは、お客様に直接会わず、メールや電話を使う非対面での営業活動です。インサイドセールスに読書は必要だと思いますか。

私は読書を通してインサイドセールスの業務につながる部分は多いと思っています。特にインサイドセールスは、The MODELの起点として初めてお客様にアプローチする部門です。お客様へのお電話と通して、相手の思考を深く汲み取り、理解していくことで、相手の気持ちを引き出すことが必要になります。お客様より情報を引き出すヒアリング力を支えるのは情報の豊富さ、知識の幅が重要だと考えています。

インサイドセールスに取り組むにあたって私がオススメだと思う『LISTEN』(ケイト・マーフィ著)では、相手の話を聞くだけでは、傾聴は完成しないと書かれています。多くの人が相手の話をただ聞き取ることを傾聴と勘違いしていますが、本当の傾聴とは、相手から話を聞き、そこで聞いた内容を行動で返して、初めて成り立つものであると書かれています。

つまり、相手に「◯◯してほしい」と要望されたとき、「わかりました。素晴らしい内容ですね。」といったお返事だけでは傾聴とならないんですね。本当の傾聴とは、「わかりました。素晴らしい内容ですので、弊社からも役立つ資料をお送りいたします。」といって行動に移すことなんです。お客様のお話を聞き、貢献で返してこそ初めて傾聴が成立すると考えなければ、お電話の向こうにいらっしゃるお客様を動かすことはできません。そのため、ヒアリングや傾聴というのは、私の中では非常に大きなトピックとなっています。

また、『人は話し方が9割』(永松茂久著)というベストセラーがありますが、以前、会社のイベントで対談させていただいた著者の永松茂久さんによると、『人は話し方が9割』という本は、実は「人は聞き方が9割」ということについて書かれたそうなんです。

傾聴力があれば、相手がたくさん話してくれるようになり、コミュニケーションがうまく進むようになる。この考え方も非常に腑に落ちました。たくさん話していただけたケースというのは、その方にとっては話がはずみ、充実した時間になるはずなので、その考え方は音声だけでコミュニケーションをしていくインサイドセールスという部署においては、非常に重要だと思います。

――確かに、電話だと話がつまらなければすぐに切られてしまいますよね。

そうなんですよ。対面と非対面の大きな違いは、対面の場合はお客様が30分なら30分、1時間なら1時間、時間を取ってくれているので、途中で失敗してしまったとしても後からリカバリーができます。

けれども、インサイドセールスの場合は話が食い違ってしまったら、そこで電話が続かなくなり終話。そうなってくると、いかにお客様とのコミュニケーションが続くように話を進めていくかが大事になってきます。そのため、傾聴する姿勢はもちろん、アウトプットするときの表現力も、日々レベルを上げていかなければなりません

たとえば、『言語化力』(三浦崇宏著)で記載されていますが、何かを言語化する際には、

  1. 自分自身の立ち位置を決める。
  2. そこから聞くべき、伝えるべき本質を考える。
  3. 相手の感情を想像する。
  4. それらに合わせて言葉を整える。

という4段階で言語化することが大切だと的確に書かれています。ですから、お客様にお電話を差し上げる前に、まずはしっかりとお客様の情報を事前に調べ、そしてお客様にご案内する内容とその本質を考え、その上でお客様の立場や感情を想像し、完結に分かりやすく伝えることが理想だと思っています。

別の観点で言えば、私はネガティブな単語をできる限り発言しないように心がけています。

言葉の選び方ひとつで相手のとらえ方が変わってきますので、お客様の言葉に「受注率が下がっている」というような表現が出たとしたら、「御社にはまだ伸びる余地があるということですね」とか「売上を上げるためのスペースが存在するということですね」と言い換えるなど、できるだけポジティブに話す工夫を徹底していました。

やはり、お客様からすると他社の営業から自社のネガティブポイントを指摘されると、それだけで話を聞く姿勢がなくなるのではないかと思うんですよね。ですから、お忙しい中わざわざお時間を取っていただいたお客様のためには、なるべく本質的な内容をポジティブな言葉でお伝えすることが、お客様からの「信頼」につながっていくと感じています。

明日から実践!トップ営業のインプット術

――そのようなアウトプットを発揮するためにインプットが必要ということですね。

私たちインサイドセールスが向き合っているお客様は、長くビジネスを続けていらっしゃる製造業のお客様から、最新のSaaS企業まで、非常にバラエティに富んでいます。また業種に限らず、お客様のお立場や役職なども非常に様々で、企業の経営層の方とお話させていただくことも少なくありません。そういった多種多様なお客様とのお話ですので、アウトプットの領域も非常に幅広いものとなります。

もちろん事前にしっかりと会社について調べ、仮説を持った上でお電話するのですが、実際の会話の中では事前に想定した仮説以外にも話が多岐にわたるので、それに対応していく能力が必要なんです。インサイドセールスという仕事には非常に素早く、しかも精度の高いアウトプットが求められるため、結局アウトプットの質と量、そしてスピードを上げようと思ったら、インプットの質と量、スピードを増やすしかないですよね。そういう意味で読書を通して、自分の「お気に入りプレイリスト」、知識やフレーズ集を作るという流れは非常に有用だと思っています。

――最近は生成AIの登場や、noteなどの新たなメディアなどによって、情報源が豊富となっています。そのため、読書は必要ないのではないかという風潮もあります。これについて鈴木さんはどう思われますか?

私もいろいろな方のnoteを読みますし、さまざまなメディアを見ます。ただ、書籍というのは、読者に伝えるために、表現方法だったり構成だったりが、プロの編集者によって磨き込まれていると思うんです。生成AIやソーシャルメディアの瞬発的な文章の良さもあるんですが、書籍の磨き込まれた表現や構成を知り、そこに書いてあることをしっかりと受け止めて、自分自身で噛み砕いて理解することが重要ではないでしょうか。先程もお伝えした通り、私もアウトプットは磨き込んでいきたいですし、限られた文字数の中でも本質を伝えたいと思うので、書籍から得るものの価値はすごく高いと思います。

――最後になりますが、鈴木さんの営業活動におけるフィロソフィーを教えてください。

繰り返しになりますが、やはりアウトプットを高めていこうと思ったら、インプットの種類を増やす方法以外にありません。インプットが増えない限り、きれいなアウトプットも、人が驚くような表現も、人に気づきを与えるようなこともできないと思っているので、毎日の習慣として積み上げていくしかないと考えています。その努力を怠らなければ、自分自身の未来も開けてくるのかなと思っています。

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Yuki Okatake コンテンツエディター

ハードな体育会系から何故かSalesforceにやってきた異色の新人エディター。マーケティングはまだまだヒヨッコだが、何かと社内で「よろしく!」と頼まれがちな苦労人だったりする。(ニア)Z世代の風を社内に吹かせるべく、色々企んでいるらしいぞ。

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