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Salesforceのリーダーが考える生成AIの価値

生成AIがビジネスにもたらす変革とは何でしょうか?生成AI技術が起こすビジネス変革を通じてこれからの未来がどのように変化するのか、世界No.1のAI搭載型CRM企業であるSalesforceのチーフ・サイエンティストがご説明します。

※本ポストは2023年4月28日に米国で公開された“Salesforce Execs Weigh In: What Is Generative AI?”の抄訳版です。本ポストの正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。

2022年後半、画期的な生成AI技術が続々と発表・公開され、人々の興味と期待を大いに集めました。個人による利用のみならず、ビジネスでの活用においても、その可能性に熱い視線が注がれています。

生成AIとは、平たく言えば、一連のデータを使って新しいものを作り出す技術です。人間からの指示(プロンプト)に応じて、詩や物理学の説明、顧客へのメール、画像、新しい音楽などを生成します。

Salesforce Research エグゼクティブバイスプレジデント兼チーフサイエンティスト、シルヴィオ・サヴァレーゼ(Silvio Savarese)は、こう説明します。「生成AIは、従来のAIモデルのように単に分類や予測を行うのではなく、独自にコンテンツを生み出します。人を相手にするときと同じように指示を出せば、コンテンツを作ってくれるのです」

もちろん、データを正確に分類して予測することは、生成AIに不可欠な要素の一つです。使うデータの質が、直接結果に表れるからです。

AIの良し悪しは、与えるデータによって決まります。また、データセットは、対象を代表するものを用いる必要があります。

ポーラ・ゴールドマン
Salesforce, 最高倫理・人道的利用責任者

生成AIの仕組み

生成AIモデルの開発手法はいくつかありますが、現在主流となっているのは、事前学習済みの大規模言語モデル(LLM)を使って、テキストのプロンプトからまったく新しいコンテンツを作成する方法です。私たちは生成AIの力を借りて、履歴書やプログラミングのコード、デジタルアートなどさまざまなものを作れるようになっています。しかし、Salesforceや企業のビジネスにとって、この技術の可能性はベースギターを弾くシロクマ(英語)の画像を生成して楽しむことにとどまりません。

何を生み出すかについてユーザーが方向性を示すと、使用するLLMにもとづいてAIがさまざまなものを生成します。言葉であったり、コードであったり、さらには、これまでにないタンパク質(英語)を作り出したりもできるのです。

こうしたAIツールはいずれ、「生活のさまざまな側面で人間を支援する、頼れる協力者の役割を担う」ようになるとサヴァレーゼは予言(英語)します。そのようななかで、企業が生成AIの技術を開発、利用するにあたって特に重要になるのが、「人間が介在する」ということ。たとえば、自動化したワークフローを人の目でテストしたうえで、完全自律型のシステムへと移行することで、潜在的なリスクを防ぎ、責任を持って倫理的に技術を利用するよう徹底できます。また、人間が介在することで、関係者やお客様など、関わるすべての人が技術を安心して利用できる信頼が生まれます。

生成AIの多くには、ディープラーニングの2つのモデル、敵対的生成ネットワーク(GAN)かTransformerのいずれかが使われています。

  • GANは、ジェネレーターとディスクリミネーターと呼ばれる2つのニューラルネットワークから構成されます。この2つは競い合う関係にあり、ジェネレーターが入力にもとづいて出力を生成し、ディスクリミネーターはその出力の真偽を判断しようとします。ディスクリミネーターのフィードバックにもとづいてジェネレーターが出力を調整し、ディスクリミネーターが悩まされるようになるまで繰り返して学習を深めていきます。
  • Transformerモデルでは、ChatGPT(Chat Generative Pretrained Transformerの略)と同様に、個々のデータポイントではなく連続したデータ(文や段落など)にもとづいて出力を生成します。モデルはコンテキストを効率的に処理できるため、文章の生成や翻訳に使われる手法です。

生成AIのモデルとしてはGANとTransformerがよく知られていますが、ほかにも使われている技術があります。たとえば、変分オートエンコーダー(VAE)は、2つのニューラルネットワークを利用して、サンプルのデータにもとづいて新しいデータを生成します。また、Neural Radiance Fields (NeRF)は、複数の写真から自由視点画像を生成します。

生成AIはビジネスをどのように変えるのか

世界中のビジネスリーダーの興味や期待が、ChatGPT、StableDiffusion、Midjourneyなどの生成AIモデルに向けられています。

Salesforceが実施した新しい調査では、ITリーダーの3分の2(67%)が今後18か月で生成AIをビジネス上の優先事項とすると回答し、そのうち3分の1(33%)は最優先事項としています。

また、Salesforceは最近発表されたEinstein 1について、「オープンで拡張性があり、CRM用に構築されたパブリックおよびプライベートAIモデルをサポートし、信頼できるリアルタイムデータによってトレーニングされます」と説明しています。 

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Salesforceは長年にわたり、お客様のニーズに応える生成AIの開発、展開に取り組んできました。たとえば、Salesforceが開発したCodeGen(英語)は、ユーザーがシンプルな英語のプロンプトを実行可能なコードに変えられるようにして、ソフトウェアエンジニアリングを民主化します。また、LAVIS(英語)(LAnguage-VISionの略)プロジェクトでは、言語と画像を処理するAIの機能を幅広い研究者や実務担当者が利用できるようにしています。

また最近では、SalesforceのProGenプロジェクト(英語)で、文字や単語ではなくアミノ酸配列を使って言語モデルを作成することにより、自然界では見つかっていない、より高機能なタンパク質を生成AIで生み出せることを明らかにしています。こうしたタンパク質を、医薬品やワクチンの開発、病気の治療に利用できるようにするため、さらに研究を進めていきます。

AIが生成する提案、顧客とのやり取り、売上の予測モデルなどの機能により、中小企業は、優れたカスタマーエクスペリエンスを提供し、営業費用を管理し、持続可能な成長を実現するための強力なツールを手に入れることができるでしょう。

ケタン・カルカニス

SalesforceのSales Cloud担当エグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー、ケタン・カルカニス(Ketan Karkhanis)は、生成AIは大企業のみならず、中小規模の企業にも恩恵をもたらすものであると述べています。

また、Salesforce AIのCEO、クララ・シャイ(Clara Shih)は、生成AIによって「カスタマーサービス分野が完全に再構築される」と考えています。

Einstein for ServiceとCustomer 360に生成AIを組み合わせることで、パーソナライズした応答を自動的に生成し、エージェントが顧客にメールやメッセージをすばやく送れるようになります。より複雑な問題に対応したり、顧客と長期的な関係を築いたりするために、多くの時間を割けるようになるということです。

クララ・シャイ

カスタマーサービスを一変させる生成AIの3つの用途

コンタクトセンターやコールセンターなどのカスタマーサービス部門に求められる期待値はますます膨み、多くの業務に忙殺される厳しい状況が続いています。カスタマーサービス部門に、生成AIを活用することでこのような状況はどう変わるのでしょう。3つのユースケースをご紹介します。

生成AIがもたらすリスクとチャンス

生成AIは非常に大きな可能性を秘めていますが、Salesforceの最高倫理・人道的利用責任者、ポーラ・ゴールドマン(Paula Goldman)と、AI倫理の実践に取り組むSalesforceの倫理AIプラクティス担当主席アーキテクトであるキャシー・バクスター(Kathy Baxter)は、生成AIにはリスクもあると指摘します。

共同で執筆した記事の中で、2人は次のように述べています。「生成AIでできることを実現するだけでは、十分ではありません。私たちには、責任あるイノベーションを重視し、この革新的な技術をどのように利用できるのか、利用すべきかを示す義務があります。また、従業員、パートナー、お客様が、この技術を安全に、正しく、倫理を持って使うためのツールを提供しなければなりません」

Siliconのインタビュー(英語)でゴールドマンは、「AIをビジネスで利用する際には、正確であることが最も重要になります。プロンプトに応じてAIが提案する、顧客とのチャットや営業メールの内容には、嘘が含まれていないことを確認する必要があります」と述べています。データが正しく、信頼できるものであることが、ビジネスにおけるAI利用の基本です。

ChatGPTの回答は信頼できそうな感じがしますが、サヴァレーゼはそれこそが留意すべき点だと指摘します。AIは、「自信満々に失敗」することがあるからです。

これらのAIモデルが質問に回答するとき、落ち着き払った、いかにも専門家のような調子で返してくるので、思わず感心してしまいます。しかし、そこに正しくない回答があっても気づけないという危険が潜んでいます。その説得力は、プロですら油断して足をすくわれることがあるほどです。

シルヴィオ・サヴァレーゼ

企業規模でChatGPTのようなツールを活用するようになると考えれば、その危険性がイメージしやすくなるでしょう。ITリーダーは、当然そのリスクを認識しており、10人中6人ほど(59%)が、生成AIの出力は正確でないと考えています。

考えるべきはリスクだけではありません。生成AIを、倫理と責任を持って、誰もが使えるようにするにはどうすればいいでしょうか。

Salesforceはそれを実現するために、信頼できるAI機能を開発しています。安全に利用するための「ガードレール」やガイダンスを組み込み、問題が起こる前に食い止める仕組みづくりをしています。社会が生成AIを有用と認めるには、あらゆるレベルでモデルが信頼に足るものであるという根拠が必要になるでしょう。

責任あるAIとは、持続可能なAIの開発も意味します。AIは従来型の業務よりもはるかに多くの電力を消費します。ITリーダーの71%が、生成AIによってエネルギーの消費が増え、カーボンフットプリントが増加するだろうと考えています。

考慮すべきことは多々ありながらも、生成AIという技術には、CRMの未来に影響を及ぼす大きな可能性が秘められています。

Salesforceの生成AI – CRMにとっての意味

AIは、Salesforce Platformにとって切っても切れない存在です。Einsteinは、Customer 360全体で1日あたり2,000億件以上の予測を提供して、スピーディな成約を後押しし、よくある質問に会話形式で回答したり、顧客の行動を理解したりできるように支援します。

先日、Salesforceは世界初のCRM向け生成AI、Einstein 1を発表しました。Einstein GPTは、パーソナライズされた営業メールから自動生成されたコードまで、営業、サービス、マーケティング、コマース、IT全体にわたりあらゆるAI生成コンテンツを大規模に提供します。また、Einstein GPTは、Data Cloudのデータと公開されているデータを組み合わせて、Customer 360全体でコンテンツを作成するため、お客様それぞれに合わせた出力が可能です。

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