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第4次産業革命を、日本はどうチャンスに変えるのか?

―日本をリードする著名パネリストが熱く議論

 

第4次産業革命は、社会や私たち一人ひとりにどのような変化をもたらすのか?」この問いに対する答えをイメージできるでしょうか。

「すべてがインテリジェンスを持ってつながり、可視化された世界」「あらゆる産業が影響を受けて変化を強いられる」「企業と顧客が対等になる」――。第4次産業革命はさまざまに表現されます。

技術的側面だけを見れば、モバイルデバイスやAI、IoTやクラウドといった技術の発展によって推進されていることは確かです。しかし、この革命の波は技術やビジネス領域だけに留まらない、政治、教育、組織論、働き方といった幅広い領域に及び、変化をもたらします。

日本、そして日本企業はこの大転換の時期をどのように捉えればチャンスに変えることができるのでしょうか。

 

第4次産業革命を日本がリードするために

世界のリーダー層が集まり、グローバル課題の解決に向けて議論を行う場であるダボス会議では、2016年から第4次産業革命を中心的なアジェンダに据えています。その主催者である世界経済フォーラムとの共同企画として、パネルディスカッション「日本は第4次産業革命時代をリードできるか?」を開催。世界経済フォーラム日本代表の江田麻季子氏をモデレータに、衆議院議員の小林史明氏、freee株式会社 CEOの佐々木大輔氏、CYBERDYNE株式会社 代表取締役社長CEOの山海嘉之氏が意見を交わしました。

江田氏が最初に投げかけた問いは「第4次産業革命をどう捉えているか」でした。小林氏は、「大きな変化が起きるということは、国民にとっても多くのチャンスが生まれるということ。デジタルが広がると、政治や行政が一人ひとりをしっかりと見られるようになり、同時に個人も多くの情報を得ることで自分の人生に合った選択が可能になります。65歳定年という常識はなくなり、福祉の未来も暗いものではなくなります」と語りました。

江田 麻季子 氏(写真左)、小林 史明 氏(写真右)

 

人材育成の議論では、山海氏が「AIは社会で重要とされている分野であるにもかかわらず、その人材供給元であるはずの大学には十分な育成環境が整っていません。現在の教育システムはいつも後手に回っています」と懸念を示しました。また、多くの中小企業を知る立場として課題を尋ねられた佐々木氏は、中小の生産性が大企業の半分以下であることは問題であり、その原因の一つが銀行などにおける紙書類の煩雑さにあるとし、「よく中小企業の経営者は高齢者が多いからデジタル化が難しいという意見がありますが、それは単なる思考停止です。弊社のサービスのスマホ版は、実は若者よりも高齢者に利用されています。理由はパソコンやキーボードが苦手だから。そのようなデジタルデバイドを技術で解決するべきです」と話しました。

山海 嘉之 氏(写真左)、佐々木 大輔 氏(写真右)

 

佐々木氏の発言に対して小林氏は、「これは視点を変えると、伸びしろともいえます」と発言し、行政の手続きでもシニア層に優しい技術を用いることで良い社会になるだろうと語りました。

では、そのような社会を実現するには技術者が中心となるべきなのでしょうか。山海氏は、技術者ではなく政策面から変えるべきだろうとの考えを示し、その理由を「社会インフラが整っていない地域のほうが、QRコード決済のように新しい技術が入っていきやすいものです。その点で日本は難しく、どこかで政治が大きく舵取りをする必要があります」と説明しました。本企画のメインテーマである「日本はどうすれば革命をリードできるか?」について佐々木氏は、「日本の良さを活かそうと考えるのは逆効果です。アセット(資産)があるなどと考えず、危機意識を持って必死で知恵を絞るほうが上手くいくのではないでしょうか」と議論を展開しました。

最後に江田氏は、「フィジカルな世界とサイバーな世界がボーダーレスになる中、法制度が追いついていません。ただ、第4次産業革命は一部の人々だけで進めるものではありません。その恩恵を私たち一人一人が享受できるようにするために、会場の皆さんとも一緒に考えていきたい」とディスカッションを締めくくりました。

 

求められる顧客中心主義の姿勢

第4次産業革命を「顧客中心主義」という観点で捉えたのが、セールスフォース・ドットコム 常務執行役員でデジタルトランスフォーメーション&イノベーション本部のエロン・スナンドーです。

スナンドーは、「顧客は革命の中心にいて、さまざまなものとつながり、膨大なデータにもアクセスできます。顧客の体験がますますリッチになる一方で、ビジネスの現場はむしろ遅れていることさえあります。このような課題は多くの企業が抱えており、解決にはビジネスに「人」という要素を盛り込み、個々の顧客の背景を理解する必要がある」と説明しました。

 

たとえば、YouTuberの台頭という世界的な動きは、コンシューマーとインフルエンサーの変化を示しています。自社の顧客が誰をフォローし、誰の声を聞いているのか。これまでのように「作れるから作っている」のではなく、顧客のニーズに応えるものを作る必要があります。そのために必要なこととして、スナンドーが示したのが3つの原則です。

(1)業界と組織の通説に対する挑戦

(2)イノベーションのカルチャーを築くよう意識する

(3)トレイルブレイザー(先駆者・開拓者)魂を育む

さらにスナンドーは、「アップルがアップルストアを出店して小売りを始めようとしたとき、多くの批判がありましたが結果は大成功。アップルストアの体験は、それまでとはまったく異なるものでした。1999年に登場して音楽業界を破壊したといわれるナップスターもそうです」と変革の例を挙げました。そして最後に、ナップスターのような現象は、あらゆる業界で起こっていて、それに備えなければならないと語りました。

 

革命に適応するための考え方と働き方

第4次産業革命は、技術革新によってのみ引き起こされるわけではありません。米国セールスフォース・ドットコムの戦略イノベーション担当シニアバイスプレジデントのジェイソン・ワイルドは、働き方の観点からこの革命を説明しました。

多くの成功企業を生み出してきた米国シリコンバレーには、イノベーションを育む土壌があります。ワイルドは、それを5つの要素――「質の高い公教育」「住民の多様性」「利用しやすい金融資本」「長期的な視点」「異なる働き方」――に整理しました。そして、大手企業が変革に苦労しているのは、技術の導入を重視し過ぎているからではないかとの考えを示しました。

技術とはあくまでもenabler(手段)であり、目的ではありません。顧客のニーズやウォンツを見つけ、ビジネスチャンスにつなげるにはどうすればよいのでしょうか。ワイルドは、「あらゆるモノがつながる第4次産業革命において求められるのは、企業優先から顧客優先へと考え方を変えることです。それは新たな価値を構築することであり、従来とは異なる働き方や管理方法を必要とします」と説明しました。

Salesforceが提供するIgnite(イグナイト)は、このような新しい働き方を促し、支援するためのプログラムであり、デザイン思考にもとづくアプローチです。ワイルドは、Igniteが多くのグローバル企業で成果を挙げてきたことや、そのリソースが「Work Differently」として公開(英語)されていることを紹介しました。

 

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