『Salesforceだから』だけじゃない。『あなたが担当営業だから、買ったんだ』
Salesforceの営業担当者(AE)の中には、これほど賛辞をいただくほど、お客様から信頼を得ているAEがいます。この記事では、そのAEに信頼を寄せていただいているお客様の生の声と、AEのお客様との信頼関係の作り方や営業という仕事との向き合い方を紹介します。
今回は、Salesforceで関西地域を担当する営業マネージャー、岩崎哲とそのお客様の1社である広川株式会社 代表取締役社長、廣川正和さんのストーリーです。
Key Takeaways
Part1 Customer Voice
広川株式会社(広島県)
廣川正和・代表取締役社長
「岩崎は、とにかく売ろうとしなかった」

1857年(安政4年)創業、1936年(昭和11年)設立。広島県広島市に本社を構え、家庭用・業務用食品卸売と雑貨品卸売を中核事業に、不動産賃貸や経理・労務事務代行も手がける老舗商社。グループには、石油製品販売・LPガス・住宅設備機器・損害保険を展開する広川エナスをはじめ、ヒロカワフーズ、HiroNichi、エナスCS、トラベルボックス広島などが連なる。「食」と「エネルギー」の両軸で広島の生活インフラを支える創業約170年の地域密着グループ。
最初は全く期待していなかった
岩崎さんとの出会いは、2023年2月でした。
その前から、Salesforceを導入はしていました。ですが、岩崎さんが当社の担当営業になった時は、お世辞にもSalesforceの評価は高いとは言えませんでした。2017年の導入時からそれまで、期待していた効果を得られていませんでしたから。岩崎さんの第一印象も、先入観も相まって、これまでの営業担当者と同じくらいで、あまり記憶には残っていないんです。
しかし、岩崎さんに対する私の評価が変わるのは、早かった。
岩崎さんは着任早々、とにかく私のこと、現場の社員のこと、広川株式会社のことを知ろうとしてくれた。現場には何度も足を運んでくれて、さまざまな社員と会話し、私の知らない現場の気持ちや課題、要望を聞き出し、それを私にフィードバックしてくれたんです。現場の社員というのは、社長に直接モノを言いづらいですから、経営者にとってはとてもありがたかった。
しかも、その集めた声が幅広く解像度が高いだけでは終わらない。「この課題に対して、こういう打ち手はどうですか」と解決策まで一緒に持ってくる。一度や二度ではありません。何度も、何度も、です。
食事を一緒にする機会も増え、いつしか肩書きを脇に置いて事業や経営の話ができる関係、相談相手になっていました。いつしか「あぁ、こいつは本気で当社のことを考えてくれている。売るだけのやつじゃない」と感じるようになりました。
「Salesforceだから」だけが投資理由じゃない
岩崎さんは当社に向けてやったことは、主に5つに集約されます。
現場と私を知ろうとしたこと、そして「売ろうとしなかった」こと。営業ですから、当然目先の受注が大事でしょう。それでも岩崎さんはとにかく私の話に耳を傾け、私と広川株式会社を知ることに努めた。 Salesforceの話は二の次、三の次でした。

そして、Salesforceでの「広川株式会社の立ち位置」を用意してくれたことも岩崎さんに感謝していることの1つです。イベントへの登壇や、Salesforceの重役にお会いする機会もセットしてくれて、人脈が広がり、新たな経験と知識を得ることができているのも岩崎さんのおかげです

売ろうとしない岩崎さんですが(笑)、経営課題を解決するソリューションとして必要に応じて提案してくれるSalesforceの各プロダクトは、ことごとくそれにミートしていました。当社のことを熟知していますから、当然ですよね。
岩崎さんに出会った数か月後には、「Sales Cloud(現Agentforce Sales)」をアップグレードし「Slack」を導入。MA(マーケティングオートメーション)も入れ、SlackのAIも使い始めました。
傍から見れば、加速度的な投資に映ったかもしれません。ですが、私の感覚は「Salesforceに投資した」というより、「私が描く将来像に沿って岩崎さんが導いた筋書き」に投資したという感覚に近い。岩崎さんの絵には、当社の課題と社員の気持ちを熟知したうえでの解決策が織り込まれていましたから、納得感がまるで違うんです。

「Salesforceだから」だけじゃない。「岩崎だから」買ったんです。
今年に入って岩崎さんはマネージャーになり、当社の直接の担当を離れました。少し寂しい気持ちは、正直に言ってあります。ですが、岩崎さんのような営業担当者を1人でも多く育てて、もっと多くの経営者に私が味わったあの感覚を届けてほしい。それが、岩崎さんへの期待であり、Salesforceへの期待でもあります。(談)

Part2 AE Interview
株式会社セールスフォース・ジャパンコマーシャル営業 関西営業本部 第3営業部部長
岩崎哲
「お客様はどうなりたいのか」。そこからすべてを考える

1983年生まれ、福岡県出身。2006年4月、大手SI会社に入社後、ITインフラプロダクトの営業に従事。2019年、セールスフォース・ジャパンに移籍。九州地域の営業業務に携わった後、2026年2月から現職。関西地域のお客様を担当するマネージャーとして8人のチームをまとめ上げる。
入社後3年間は全く売れず、腐っていた
──廣川社長の言葉は、営業冥利につきますね。
身に余る、とても嬉しい言葉です。
私はSalesforceに籍を移して今年で8年目ですが、入社してから3年間は全然成果をあげられませんでしたから、お客様からこのような言葉をいただけるとは、当時の私には微塵も想像ができないでしょうね(苦笑)。
──その苦労話、ぜひ聞かせてください(笑)。
(苦笑)。私は、2006年に中堅・中小企業に強いITベンダーに新卒入社し、主にERP、ITインフラプロダクトなどを扱う西日本エリアの営業担当者として経験を積んできました。Salesforceに転職したのは2019年。主に九州エリアのお客様を担当する営業として入社しました。
前職で13年ほど営業を担当してきましたし、九州地域トップクラスの年商規模を担当していたこともあり、ある程度の自信はあったのですが、全然ダメで……。最初の3年間は未達の連続で達成率は良くて40%程度。半ば腐っていました(苦笑)。
前職ではプロダクトを売ることが中心だった一方で、Salesforceは、単に製品を売るだけではなく、お客様の経営課題や業務、将来像を理解したうえで提案を組み立てる必要があります。
Salesforceそのものの理解も十分でなく、「顧客を理解して解決策を提案する」という本質がわかっていなかったから売れるわけがなかったんです。
ただ、その挫折があったからこそ、「営業として何を大切にするべきか」「営業とは何か」の解像度を上げることができたと今では振り返っています。思い出したくないですけどね(苦笑)。

状況を一変させたのは営業としての「原点」
──そんな状況だったのが一転、4年目から中堅・中小企業向け営業部門で年間最速で目標を達成するなど頭角を表し、今年度からは8人のメンバーをマネージするリーダーです。何を変えたんですか。
「お客様がどうなりたいか」、その一点に集中するようにしたんです。
──「顧客起点」ということですか。
そう。使い古された言葉で、当たり前のことのように感じると思いますが、言葉にするのは簡単でも、それを実行することは本当に難しいんです。
営業という役割上、「数字」はいつでも背中にのしかかっている。戦略上、「今はこれを売るんだ」という自社都合もある。
そんな中でも、「お客様はどうなりたいか」を最優先し、解像度高く聞き取ることに集中し、その上で「自分は何をしてあげられるか」を考える。極端に言えば「売ろうとしなかった」。
「Salesforceがこうしたい」でも「私がこうしたい」でもなく、「お客様はどうなりたいのか」を最も、そして唯一大切にするように決めたんです。
この考えを、それまで全く相手にしていただけなかったあるお客様で実践したら、お客様から徐々に連絡をいただくようになり、その後、成約に結びつくことに。自分を変えることができた瞬間でした。

顧客理解を深めれば、必ずSalesforceの出番はある
──ちょっと穿った見方すると、「それでもやっぱり目標の達成が……」と思ってしまいます。
(笑)。お客様の経営の悩みや将来を徹底的に聞く中で、「どうなりたいか」が見えてくる。それができれば、Salesforceの出番は必ずあります。
なぜなら、どんなお客様の課題の解決やビジョンの達成にも貢献できるテクノロジー、プロダクト・サービスが Salesforceにはあるから。経営を支えるプロダクト・サービス群が揃っているからです。これは特定機能のSaaSを提供している会社とは一線を画すプラットフォーマーとしてのSalesforceの強みです。
だから、「お客様をどうなりたいか」と今のSalesforceが提供できるプロダクトとサービスをしっかりと理解することができていれば、お客様の経営に貢献でき、結果的に受注できるわけです。

──短期的な結果を求めずに、徹底的に顧客理解を深めることだ、と。
そうですね。「理解」の前にまず「興味」を持つことが大事だと思っています。営業担当者はよく「お客様のことを理解しています」と軽はずみに言いますが、私からすればそうではない場合もある気がしています。
お客様の置かれている業界、お客様の事業、お客様が実現したい未来、担当者様の考えや人柄、あらゆることに興味を持って理解することが大事だと思っています。

──廣川社長にもそれを実践したわけですね。
そうですね。廣川社長が前述してくれましたが、広川様は私が担当になる前から Salesforceを導入いただいていました。ですが、なかなか投資に見合う効果を感じていただけていなかった。
そこで、社長が解決したい経営課題を徹底的に聞き出すために、社長のもとへ何度も足を運びました。一方、うまく回っていなかった原因を探るために現場にも行ってさまざまな社員の方々から不満、要望、悩みを聞いて回りました。
それを社長にフィードバックしたうえで、その解決策を提案。そんなことを繰り返すうちに廣川社長に少なからず認めていただき、多少は「相談相手」としてみていただけるようになったんだと思います。

「経営戦略の核」を担える醍醐味
──マネージャーになってからもその考えは生かされていますか。
はい、短期的な数字でプレッシャーをかけないようにしています。全く売れなかった私に、目の前の数字を追うのではなく、お客様との信頼関係構築を優先しろと教えてくれ、我慢して待ってくれた当時の上司に、私はとても救われました。それなのに、私が違うことをしてはいけませんから。
メンバーのみんなはたとえ結果が出なくて、限界まで頑張ってくれている。その中で詰めていても短期的な実績は積み上がりません。ですので、中長期的にみてどんな支えが必要かにフォーカスを当ててコミュニケーションをとるようにしています。
──最後に「Salesforceの営業職」の醍醐味を教えてください。
「経営戦略の核」になれることです。
Salesforceは、営業管理や顧客管理のためのツールにとどまりません。お客様の事業成長、組織変革、現場の生産性、経営判断に関わる基盤になり得るものです。
だからこそ、営業担当者も経営者と向き合え、お客様の経営や未来に寄り添える。それに真剣に挑めることが Salesforceの営業の最大の醍醐味です。

編集後記
このインタビューを受けるお客様のメリットは、ありません。それでも廣川社長はこの無理な依頼を快諾いただき、取材の冒頭に「岩崎が出世する手助けになるならね(笑)」と。この時点で、廣川社長と岩崎さんの信頼関係を感じることができ、欲しい情報と感触は得られました。
お客様の事例取材を複数重ねる中で、時にSalesforceのテクノロジーやプロダクトの優位性ではなく、営業担当者の提案や活用支援に感謝いただく、評価いただく言葉を耳にする機会があり、今回の企画を着想しました。
開発思想やテクノロジー、カスタマーサクセス、企業文化など、Salesforceの優位性は複数あると自負しています。でも、今回のカスタマーストーリーで強く感じたそれは、その手前にいる「人」でした。
取材・文:木村剛士、撮影:大橋友樹










