Skip to Content

【Salesforce in Public Sector】広域災害時の被災者支援を再設計する。Data × CRM × AIエージェントで変える「公助」の届け方

Salesforceの公共機関向け事業を解説する連載の第4回。能登半島地震を契機に進む被災者支援システムの共通化と、Data × CRM × AIエージェントで実現する新しい支援の形を解説します。

Key Takeaways

This summary was created with AI and reviewed by an editor.

令和6年能登半島地震では、行政区域をまたぐ広域避難が相次ぎ、被災者の居所把握が困難を極めました。この経験を起点に、国は被災者支援システムの共通化に向けた検討を本格化させています。

「Salesforce in Public Sector」第4回は、防災月間にあわせた「防災」をテーマにあわせ、被災者支援の構造課題と、Data×CRM×AIエージェントによる新しい支援システムのプロトタイプを解説します。これまでの連載記事はこちらからご覧いただけます。

AIエージェントは行政現場をどう変える?

職員不足や情報分断という公共機関特有の課題に、AIエージェントがどう応えるか。具体的な実務シナリオで解説します。

被災者支援の情報連携が進まない。2つの構造的課題

日本の国土面積は世界の約0.25%ですが、マグニチュード6以上の地震の約2割が日本周辺で発生しています。

東日本大震災や熊本地震、能登半島地震、そして今年の熊本地震。大規模地震は繰り返し発生しています。

災害への備えには「自助、共助、公助」の3つがあります。このうち公助は、被災者の救助から避難所の整備、物資支援、住宅再建まで幅広い領域をカバーします。

地方公共団体は、災害時に膨大な業務を短期間で処理しなければなりません。システムやAIの活用が期待されますが、実際には多くの課題が残っています。

デジタル行財政改革会議のワーキングチームでは「被災者支援システム」の共通化に向けた検討が進んでいます。令和8年8月の関係府省庁ヒアリングでは、次の課題が浮き彫りになりました。

①単一市町村内でも情報連携が十分に行われておらず、被災者台帳への情報集約が進んでいないこと

②被災者支援に必要な情報をどのように自治体間で連携するか、法制度と仕組み(システム)が整理されていないこと

国はこれらの課題を受け、被災者支援に必要な情報項目の標準化、支援業務の7区分への整理と優先順位付け、異なるシステム間のデータ連携基盤(ETL)の整備を進めています。

能登半島地震から生まれたプロトタイプ。Data×CRM×AIエージェントの被災者支援システム

これらの検討の起点となったのが、令和6年能登半島地震です。行政区域をまたぐ広域避難が相次ぎ、避難者の居所把握が極めて困難な状況に陥りました。

石川県は被害の大きい6市町を支援するため被災者データベースを構築。この仕組みはその後、広域被災者データベース・システム構築検討ワーキンググループで本格的な仕様策定へと発展しました。

Salesforceは石川県が公開した「広域被災者データベース・システム」の導入手順書・仕様書・業務フロー等の資料を分析し、SalesforceのCRM(Customer Relationship Management)をベースとしたプロトタイプを構築しました。

CRMは顧客との関係性を管理するシステムであり、被災者一人ひとりとの関係を管理するという点で、被災者支援業務と高い親和性があります。実際にSalesforceのCRMは、防災情報共有システムや罹災証明書申請受付システムなど、すでに多くの自治体で活用されています。

Salesforceはこの仕様書をもとに、被災者支援を「管理」から「自律的な支援」へ進化させるべく、4層のエージェンティック・アーキテクチャ(=自律的な認知、判断、行動が可能なシステム設計のアプローチ)でプロトタイプを構築しました。

  • Engagement層(LINEやSlackなど):住民や現場の職員と密接に連携するため、LINEやSMS、Webポータル、Slackといった多様なチャネルを統合し、シームレスなコミュニケーションを実現する「情報伝達の神経網」として機能します。
  • AIエージェント層(Agentforce:情報の要約や支援が必要な対象の抽出、最適なマッチングの提案など、行政職員による高度な判断や認知作業を強力にバックアップする自律型のAIエージェントです。
  • CRM層(Agentforce Public Sector:「災害対策基本法」などの法制度に基づき、発災直後の応急対応から生活再建に向けた復旧期にいたるまで、あらゆる公的記録や申請手続きを一元的に管理。信頼性の高い行政運営の実行基盤として機能します。
  • Data層(Data 360:住民基本台帳や固定資産情報、気象・道路状況などの構造化・非構造化データを包括的に集約。AIが導き出すアクションに対し、揺るぎない「事実と根拠」を供給する上で最も重要なレイヤーになります。

「1被災者=1レコード」の被災者カルテ。支援漏れをAIエージェントが検知する

このプロトタイプの核となるのが「被災者カルテ」です。被災者一人ひとりに1レコードを作成し、避難所から仮設住宅、在宅復旧に至るまで、いつどんな支援を受けたかを時系列で追跡します。

この被災者カルテは、人とAIエージェントの協働を前提としています。AIエージェントがカルテを解析し、「未受給の給付金がある」「健康リスクが高まっている」といった支援漏れ候補を自動抽出して職員に提示します。最終判断は職員が行います。

被災者カルテを軸に、物資供給や災害ケースマネジメントのアプリケーションも構築できます。

たとえば、被災者が住宅・生活を再建するまで途切れなく伴走する災害ケースマネジメントでは、訪問員がモバイルアプリで現場写真や署名を記録し、NPOや外部専門機関とも情報共有できます。

防災と福祉をつなぐ「フェーズフリー」の発想

被災者カルテの仕組みは、災害時だけでなく平時にも活用できます。連載の第2回「待つ行政から届ける行政へ。Salesforceと共に拓く公共サービスの新しい姿「アウトリーチ」」で紹介した、支援が必要な住民に行政側から能動的にアプローチする「アウトリーチ型行政」においても、CRMをベースとしたシステムは有効です。

平時はアウトリーチ型行政の基盤として運用し、災害時は被災者カルテとして切り替える。この「フェーズフリー」の発想が、被災者支援システム単体では課題になりがちな「費用対効果」や「職員のシステムへの習熟」を解決します。

4層のうち、AIエージェントの判断を支える揺るぎない「事実と根拠」を供給するのがData層です。Salesforceの「Informatica」がこのData層を支えます。

Informaticaは強力なETL機能を標準で備えています。豊富なコネクタを持ち、ノーコード+AIの支援によりETLの開発工数は大幅に削減できます。

データ統合に加え、データの鮮度や真正性を担保するマスター管理機能、アクセス制御を可視化するガバナンス機能など、被災者に関わる「事実と根拠」を人とAIエージェントに供給する基盤として機能します。

被災者情報を守る3つのガードレール

被災者支援の現場には、もう1つ見過ごせない課題があります。内閣府が令和7年度に被災自治体をヒアリングしたところ、次のような声が上がりました。

「平時・災害時を含め、被災者の個人情報を他部署や他自治体に提供することに、業務に従事する職員にとって大きな抵抗感やメンタルブロックがある」(出典:国・地方デジタル共通基盤推進連絡協議会ワーキングチーム(関係府省庁等ヒアリング) 議事要旨

職員が安心して情報を共有できる環境がなければ、システムは機能しません。Salesforceはこの課題に対し、3つのガードレールを提供しています。

  • Dataに関するガードレール:LLMへのデータ送信時に個人情報を自動でマスキング処理。外部のAIモデル側にデータが学習・蓄積されない「ゼロデータ保持」を徹底し、情報の秘匿性を担保します。
  • Accountabilityに関するガードレール:AIによる推論プロセスや応答内容を監査ログとして網羅的に記録。「いつ、誰が、どのような根拠で判断したか」を可視化し、行政機関に求められる高度な説明責任の遂行を支援します。
  • Accessに関するガードレール:役割ベースのアクセス制御(RBAC)により、情報の参照権限を細密に管理。他自治体からの応援派遣職員に対しても、必要な権限を安全かつ迅速に割り当てることが可能です。

信頼できるプラットフォームの上に4層のアーキテクチャを構築することで、被災者を安心・安全に、そして自律的に支援する仕組みが実現します。

42万件の問合せを支えたCRMの実例

記事で紹介したData×CRM×AIの仕組みは、すでに神奈川県の#7119で実運用されています。県民920万人を支える体制を事例で確認できます。

Data×CRM×AIエージェントが「公助」を前に進める

災害対策基本法の第二条の二では、基本理念のひとつとして以下が定められています。

「被災者による主体的な取組を阻害することのないよう配慮しつつ、被災者の年齢、性別、障害の有無その他の被災者の事情を踏まえ、その時期に応じて適切に被災者を援護すること」(出典:災害対策基本法(e-Gov法令検索より)

自然災害の規模と頻度が増す一方で、対応する公務人材の不足は顕著となっており、被災者に寄り添ったきめ細やか対応を行うために、テクノロジーの力を取り入れていくことが重要です。

「事実と根拠」を支えるData層、被災者の状況を管理するCRM、そして職員を支援するAIエージェント。この3つを組み合わせたアーキテクチャが、防災DXを前に進め、この理念の実現を支えます。

こうしたData×CRM×AIエージェントの仕組みが災害時に効果を発揮した事例が、海外ですでに生まれています。アメリカの非営利団体Good360は、余剰物資を抱える企業と被災地の非営利団体をつなぎ、需給ギャップの解消に取り組んでいます。

Good360はAgentforceを活用し、物資の割り当てから配送、引き渡しまでを自動化するリソースマッチングエージェントを開発しました。

被災地への距離、輸送手段、在庫状況などを考慮して最適な物資を提案するこの仕組みにより、推定1500万人への追加支援と45億ドル(約6750億円)相当の物資配布を実現しています。以下の動画もぜひご覧ください。

Salesforceを用いた被災者支援システムのプロトタイプにご関心のあるお客様は、どうぞお気軽にSalesforceにご連絡ください。

▶ご連絡はこちらのフォームから

4層アーキテクチャの全体像をおさらい

Data・CRM・AIエージェント・信頼が支える公共機関向けソリューションの全体像を、この資料で総整理できます。

【公共機関さま向け お問合せ窓口】
Salesforce全般に関するお問い合わせはこちらのフォームからお気軽にご連絡ください。

関連記事