セールスフォース・ジャパンは、新しいテクノロジーやプロダクト・サービスを発表した時に、定期的にアナリストや記者をお招きして会見を開いています。
ただ、Salesforceやテクノロジーに精通するプロ向けの説明になるだけに、わかりにくいことがあるかもしれません。また、プレスリリースには「一定の型」があり、読み解きにくい体験をされている方もいらっしゃるかもしれません。
そこでSalesforce blogでは、セールスフォース・ジャパンの広報担当者に内容をわかりやすく、そしてフランクに解説してもらいました。
3分でわかるData Cloudとは
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目次
今回の発表内容
Informatica買収がもたらす新たな価値、SalesforceとAgentforceとの相乗効果
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セールスフォース・ジャパン株式会社
マーケティング統括本部 広報部 シニアマネージャー
Question1 Informaticaはいつ・いくらで買収したの?
Salesforceがこれまで買収してきた企業数は、公表しているものだけでも70社を超えます。
その中で、Informaticaは2025年5月28日に買収合意を発表し、2025年11月18日(日本時間は19日)に完了しました。買収金額は約80億ドル(約1.2兆円)です。これは、これまでの 買収の歴史の中で3番目の規模。ちなみに、過去の買収金額のトップ3は以下です。
- Slack(2021年:約277億ドル)
- Tableau(2019年:約157億ドル)
- Informatica(2025年:約80億ドル)
これまでの大型買収は、アプリ(Slack)や分析(Tableau)でしたが、今回はその土台となるデータ管理分野のテクノロジーをまるごと手に入れた形です。
Question 2 Informaticaってそもそも何?実績は?
大変ありがたい「そもそも」の質問です。
Informaticaは、30年以上もデータの整理を黙々とこなしてきた、いわば「IT業界の超ベテランデータ整理屋さん」です。
Informaticaの専門分野は、企業内のバラバラなシステムに散らばったデータ(点)をコンテキスト(線)にし、AIが理解できる正しい状態に整えること。
実績は桁外れです。世界で5000社以上の企業に使われており、クラウドで処理するデータ量は月間100兆件を超えます。グローバルシンクタンクのガートナーの評価でも、長年トップに君臨。殿堂入りレベルの常連です。
AIが話題になって、データ整備の重要性が認知されました。それによってInformaticaの存在意義もより理解されています。知る人ぞ知る領域のInformaticaに興味・関心を持ってもらい「Informaticaって何?」と質問してもらえるのは、担当広報として嬉しいかぎりです。
Question3 なぜInformaticaを買収したの?
なぜ Salesforce はInformaticaを欲っしたのかーー。
極端に言うと「AIがデタラメも言ってしまう天才」だからです。現在のLLMは、世界中の知識を掌握し一般的な情報をもとに答えを出すのは天才的ですが、個別の会社のこととなると、その会社のことをほとんど知らない「会社オンチ」です。
理由は明白で、社内データを有効活用できていないから。なぜ有効活用できないかと言うと、LLMが正確な判断ができるようにデータが整備されていないからです。社内のデータがバラバラだと、AIは平気で嘘をつく。いわゆる「ハルシネーション」です。
そこで、Informaticaの出番です。Informaticaはバラバラに散らばった膨大なデータを整理し、AIが理解できるデータに整えるするプロ。「散財するデータ」を「Trusted Context(信頼できる文脈)」に変えることができる。いわば、AIエージェントに最高精度の社内専用辞書を渡せるわけです。
これにより、Agentforce は単に質問に答えるだけでなく、正確なデータに基づいて自ら判断し、アクションを遂行できるようになります。人とAIエージェントが同じ正しい情報を共有し、阿吽の呼吸でビジネスを動かすことができるわけです。
AIが的確なアウトプットを出すためには整備されたデータが必要であることは、自明の理。AIエージェント時代のリーダーを視野に入れるSalesforceとしては、喉から手が出るほど欲しかったわけです。
Question4 なんでデータ統合・連携って難しいの?
「データ連携なんて、ポチッとボタンを押せばつながるでしょ?」そう思われるかもしれませんが、現実は地獄のパズルです。
なぜ難しいのか。最大の理由はデータが社内のあちこちで、勝手な方言を喋っているからです。たとえば、あるお客様企業のことを、営業部門は「A社」、カスタマーサポート部は「お客様A」、経理部は「ID:999」と呼ぶ……。
同じものごとを指しているのですが、部門ごとに呼び方が異なる。人間なら「ああ、あの会社ね」とまだ分かりますが、AIにとっては完全に別の会社です。さらに、データの書き方もバラバラ。
あるシステムは「2026/03/10」、別の古いシステムは「R8.3.10」。この表記の揺れを一つずつ手作業で直す絶望感といったら、砂漠で失くしたコンタクトレンズを探すようなものです。
結局、データ統合とは別々の言語を喋り、仲の悪い親戚一同を1つの部屋に集めて、無理やり標準語で会話させるようなものです。それは時間もかかりますし、喧嘩(システムエラー)も起こるかもしれません。
だからこそ、私たちはInformaticaという強力な仲裁役を仲間に加えました。AIエージェントに信頼できるコンテキスト(文脈)を与えるには、この整理整頓が肝要なのです。
Question5 MuleSoftだけじゃだめなの?
確かに、どちらもつなげるイメージがありますよね。でも、結論から言うと、「道路を作る人」と「荷物を検品・洗浄する人」くらい役割が違います。
MuleSoftは、バラバラなシステム同士を高速道路でつなぎ統合する天才です。A地点からB地点へデータを運ぶためのパイプラインを引くのはMuleSoftの仕事。しかし、そのパイプの中を流れているデータが「泥水(不正確でバラバラな形式)」だったらどうでしょうか。 AIはその泥水を飲んで、もっともらしい顔で正しくない回答をしてきます。
Informaticaは、運ばれてきた膨大なデータをAIが理解できる清流水に精製し、ラベルを貼り、整理整頓するデータのクリーニング屋であり司書でもあります。
つまり、MuleSoftがデータの通り道を作り、Informaticaがデータの中身を磨き上げる。この2製品がタッグを組んで初めて、Agentforceは会社の事情を完璧に理解したAIエージェントになれるわけです。
Question6 InformaticaとMuleSoft、
Data 360の役割分担と関係性を教えて
結論から言うと、この3製品の関係は「物流網」「精製工場」「活性化装置」という完璧なエコシステムで成り立っています。
まず、MuleSoftは先ほど話したように、社内外のあらゆるシステムを繋ぐ「超高速な物流網」です。古いサーバーや外部のクラウドに埋もれたデータを、孤島から連れ出す道を作って引っ張り出します。MuleSoftがなければ、情報は各部署の引き出しに眠ったまま、日の目を見ることはありません。
次に、運ばれてきた泥だらけの生データをInformaticaが引き受けます。ここは「超一流の精製工場」です。表記の揺れや重複を瞬時にクリーニングし、AIが理解できる清流水へと変えます。この磨きの工程があるからこそ、AIエージェントは嘘をつかずに済むのです。
そして、Data 360(旧Data Cloud)。ここは、静止したデータをAIを動かす力へと変える、高出力の発電所です。
Data 360の真骨頂は、その圧倒的な調和力(ハーモナイゼーション)にあります。四半期で32兆件という天文学的なデータをリアルタイムで処理し、バラバラな断片を一人の顧客の生きた物語として一本の線に繋ぎ合わせます。
MuleSoftが運び、Informaticaが磨き上げた信頼できる最新の事実を、1人の顧客に紐づけてAIエージェントや業務アプリがすぐに活用できるようにするいわばエネルギー変換装置なのです。
このAIエージェントの動力にそのまま変換できる装置があるからこそ、Agentforceは迷いなく「今、何をすべきか」を正しく判断して実行できます。 物流、工場、そして発電所。この三位一体が揃って初めて、AIエージェントは企業レベルで活躍できる、会社のすべてを把握した「最強の右腕」になれるのです。
これらを揃えることで初めてAIエージェントが真に活躍できる環境が整うんです。

Question7 自社開発すれば良かったんじゃないの?
「自社開発できたのでは?」という鋭いツッコミ、ありがとうございます。でも、これは週末に近所のDIYショップで棚を作るのとは訳が違うんです。
Informaticaの凄さは、30年以上かけて磨き上げたデータの整理術にあります。世界中の巨大企業の化石のような古いシステムから最新クラウドまで、あらゆる場所からデータを引っ張り出し、きれいに洗って整える技術を持っています。
今のAIに必要なのは、単なる計算力ではなく、社内の複雑な事情を正しく理解するための信頼できるコンテキスト(文脈)です。Informaticaは、バラバラのデータに意味を持たせるデータ管理の絶対王者。その座は簡単に奪うことができない。だから、Salesforceは買収という形を今回とったんです。
3分でわかるMuleSoftとは
インテグレーションとAPI管理だけではなく、IDPやA2A対応など最新の機能も含めて3分でご理解いただけます!





