ポイントプログラムとは、消費者の購買意欲を引き出すために設計された、企業の戦略的なインセンティブ制度です。
この制度を上手く活用すれば、企業はリピーターの獲得や売上向上を実現できます。近年、ポイントプログラムは効率的なマーケティングツールとして多くの企業に導入されていますが、運用にはコストや手間がかかるため慎重な検討が必要です。
本記事では、ポイントプログラムの基本的な仕組みからメリット・デメリット、導入手順、成功事例まで詳しく解説します。ポイントプログラムの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
ポイントプログラムとは?

ポイントプログラムとは、消費者の購買意欲を引き出すために設計された、企業の戦略的なインセンティブ制度です。一般的には、購入やサービスの利用など、顧客のアクションに対してポイントが付与される仕組みです。
ポイントプログラムの活用で、企業は顧客データの収集から購買行動の分析に至るまでのプロセスを効率化できます。その結果、企業のファンであるロイヤルカスタマーの育成や顧客のリピート購入が期待できます。魅力的なポイントプログラムを提供すれば、新規顧客の獲得も可能です。
消費者にとっては、お得に買い物をする手段となり、特典や割引を受けることでブランドへのロイヤリティが向上します。
現在、ポイントプログラムは、オンラインショップから実店舗までさまざまな場面で活用されています。たとえば、ANAやJALといった航空会社が展開するマイレージプログラムも、ポイントプログラムの一種です。これらはフライトの利用に応じてマイルが貯まり、後日、特典航空券や座席のアップグレードと交換できます。
ロイヤルカスタマーやロイヤルティプログラムについては以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひこちらも参考にしてみてください。
関連記事:
ロイヤルカスタマーとは?メリットや育成方法、注意点を解説
ロイヤルティプログラムとは?種類やメリット・成功事例を解説
ポイントプログラムの基本的な仕組み
ポイントプログラムは、消費者が商品の購入やサービスの利用に応じてポイントを貯め、後日特典や割引に交換できる仕組みです。
「100円購入につき1ポイント付与」のように、購入金額に応じてポイントが付与されます。貯まったポイントは、1ポイント=1円として次回の購入時に利用できるのが一般的です。
この仕組みによって、企業は消費者の購買意欲を高め、継続的な利用を促進できます。ポイントは割引や特典だけでなく、商品やサービスと交換できる場合もあるため、消費者にとってより魅力的な選択肢となり、企業へのロイヤリティがさらに向上するでしょう。
ポイントプログラムの種類
ポイントプログラムには、主に「自社ポイント」と「共通ポイント」の2種類があります。
「自社ポイント」は、特定の企業やブランドで使用できるポイントです。たとえば、ANAのマイルや、自営業店舗で発行されるスタンプカードが該当します。このタイプのポイントプログラムは、顧客ロイヤリティの強化やリピーターの獲得において、非常に高い効果を発揮します。
「共通ポイント」は、提携する複数の企業やブランドで利用できるポイントです。楽天ポイントやdポイント、Pontaポイントが代表例です。さまざまな店舗やサービスで利用できるため、消費者の利用頻度が増え、企業は顧客の囲い込みがしやすくなります。その結果、競争力が高まり、市場での優位性確保につながります。
ポイントプログラム導入の4つのメリット

ポイントプログラムを導入することで、企業はさまざまなメリットを享受できます。主なメリットは次の4つです。
- 顧客ロイヤリティを高められる
- 客単価が向上する
- 顧客データを収集・活用できる
- 競合他社と差別化できる
それぞれのメリットについて見ていきましょう。
顧客ロイヤリティを高められる
ポイントプログラムは顧客ロイヤリティを高める手段として、多くの企業で導入されています。顧客ロイヤリティとは、顧客が企業や商品にもつ信頼や親しみ、愛着のことです。
貯めたポイントを割引や特典に交換できる仕組みにより、「同じ店舗やサービスを繰り返し利用したい」という消費者心理が働きます。この心理を効果的に活用し、顧客のリピート購入を促すことで企業への愛着が深まり、顧客ロイヤリティが向上するのです。顧客ロイヤリティが高まると、顧客との長期的な関係を構築でき、ビジネスの安定性にもつながります。
顧客ロイヤリティについては以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひこちらも参考にしてみてください。
関連記事:顧客ロイヤリティとは?安定的な利益を自社にもたらす方法
客単価が向上する
ポイントプログラムを導入することで、1回あたりの購入金額が増加し、客単価の向上が期待できます。顧客はポイントを貯めるために、普段より多くの商品を購入する傾向があるためです。
ポイント還元率が高い場合や、特定の商品にボーナスポイントが付与される場合、顧客はより高額な商品を選びやすくなります。このような施策は、顧客に対して大きなインセンティブを提供し、結果として企業の収益向上を促進します。
顧客データを収集・活用できる
ポイントプログラムは、顧客の購買履歴や行動パターンに関するデータを効率的に収集し、ビジネスの改善に活用できる非常に強力なツールです。
顧客の購入傾向や購買のタイミング、ポイントの利用状況といった情報は、企業にとって貴重な資産です。収集したデータを効果的に活用することで、企業はターゲットに最適化されたプロモーションやマーケティング施策を実施できます。結果的に、顧客満足度の向上と売上増加につながり、企業の競争力が高まるでしょう。
競合他社と差別化できる
競争が激化している市場では、ポイントプログラムの活用が競合他社との差別化に効果的です。
他社と差別化する特典や還元率を設定することで、顧客にとって魅力的な選択肢を提供できます。ボーナスポイントや限定特典など、顧客にとって価値のある体験を提供できれば、他社から自社への乗り換えを後押しすることも可能です。
ポイントプログラム導入の3つのデメリット

ポイントプログラムは顧客との関係強化や売上向上に寄与する一方で、導入にはデメリットも伴います。主なデメリットは次の3つです。
- 運用・管理コストが増加する
- データ活用の難易度が高く、成果を上げにくい
- 顧客の不満やトラブルへの対応が発生する
ここでは、上記の3つのデメリットについて詳しく解説します。
運用・管理コストが増加する
ポイントプログラムを導入する際には、システムの構築・運営に多大なコストがかかります。
まず、ポイント管理や付与、交換のプロセスを支えるシステムの初期投資と維持費が必要です。運営には人的リソースも必要で、スタッフの人件費が増加する可能性があります。ポイント還元を行うための経済的負担や、プロモーションキャンペーンを実施する際の追加費用も考慮しなければなりません。
これらのコストが売上増加に見合うかどうかを慎重に評価し、効率的な運営方法を確立することが重要です。
データ活用の難易度が高く、成果を上げにくい
ポイントプログラムの導入には、顧客データの活用が不可欠である一方、その運用難易度の高さがデメリットとなり得ます。とくに、データ分析スキルや運用ノウハウが不足している企業では、蓄積したデータを有効活用できず、導入コストに対するリターンが見合わないリスクが高まります。
このような事態を避けるには、専門人材の確保や外部パートナーとの連携など、追加のコストや体制整備が欠かせません。
以下の記事では、データ分析の手法や注意点を解説しています。詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:データ分析とは?9つの手法や分析するメリット、注意点について解説
顧客の不満やトラブルへの対応が発生する
ポイントプログラムに関する不具合やトラブルが発生した際、顧客からの不満やクレームへの対応は避けられません。たとえば、ポイントの付与漏れや使用時の不具合、特典交換時の誤解などが発生すると、顧客の信頼を損ねる可能性があります。
こうした問題に迅速かつ適切に対応するためには、クレーム処理のフローを整備し、サポート体制を強化することが重要です。丁寧な対応とトラブルの早期解決が、顧客満足度の維持・向上につながります。
クレーム対応について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:クレーム対応の4つの基本手順|NG行動や防止策についても解説
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ポイントプログラム導入の4ステップ

ここでは、ポイントプログラム導入を成功させるための4つのステップを詳しく解説します。
- 目標設定とターゲットの明確化
- ポイント付与ルールの設計
- 適切なプラットフォームの選定
- 効果的なプロモーションの実施
上記の4つのステップを適切に実行することで、顧客にとって魅力的なポイントプログラムを構築できます。
1.目標設定とターゲットの明確化
ポイントプログラムを成功させるためには、まずプログラムの目標を明確に定めることが重要です。目標には、顧客のリピート購入促進や売上向上、新規顧客獲得などがあります。
目標を設定したら、次はターゲットとなる顧客層を細かく絞り込みましょう。たとえば、年齢層や購買履歴、購買頻度などをもとに、どの顧客にもっとも効果的なポイントプログラムを提供できるかを検討します。ターゲット層を明確にすることで、顧客のニーズを的確に把握し、よりパーソナライズされたプログラムを設計することが可能です。
2.ポイント付与ルールの設計
ポイントプログラムを設計する際は、以下の要素を明確に定めます。
- ポイント付与の基準
- ポイントの還元率
- ポイントの有効期限
- 交換可能な商品・サービス
これらのルールは、シンプルでわかりやすくし、顧客に負担を感じさせないよう工夫することが重要です。ポイントプログラムが複雑すぎると、顧客が利用を避けてしまう可能性があるため、誰でも簡単に理解できるルール設計を心掛けましょう。
また、顧客が積極的にプログラムに参加したくなる仕組みを作ることも大切です。商品購入時だけでなく、会員登録や友達紹介、特定のイベント参加時にもポイントを付与することで顧客の参加意欲を高められます。
3.適切なプラットフォームの選定
ポイントプログラムを導入する際は、顧客がよく利用するチャネルや購買行動に合わせて、最適なシステムを選びましょう。
顧客がどのチャネルでポイントプログラムを利用するかに応じて、導入すべきプラットフォームは異なります。以下に、チャネルごとに必要なシステムやプラットフォームをまとめました。
チャネル | 必要なシステムやプラットフォーム |
---|---|
オンラインショップ | ECサイトに対応したポイントシステムが必要。購入時に自動でポイントを付与できる仕組みなど。 |
オフラインの実店舗 | POSシステムと連携したプラットフォーム。店舗でのポイント付与や管理を効率化できるツールも必要。 |
モバイルアプリ | リアルタイムでのポイント管理や特典提供ができるプラットフォームが必要。 |
また、データ管理や顧客の購買履歴分析を効率化するために、クラウドベースのプラットフォームを導入することも有効です。顧客情報を一元的に管理し、さらに細かなデータ分析が可能となるでしょう。
4.効果的なプロモーションの実施
ポイントプログラム導入後は、顧客にその価値を認知してもらい、積極的に利用してもらうために、効果的なプロモーションを実施しましょう。
たとえば、新規登録時のボーナスポイント付与は、初回利用を促進し、顧客の参加意欲を高めることにつながります。季節ごとの特典や定期的なキャンペーンを開催すれば、顧客のリピートを促進できるでしょう。
SNSやメールマーケティングを活用して、プログラムの最新情報やキャンペーン内容を定期的に通知することで、顧客との接点を増やし、エンゲージメントも高められます。誕生日月の特典など、個別のターゲットに合わせたプロモーションを実施すれば、顧客の関心を引き、積極的な反応を得られるでしょう。
メールマーケティングについては以下の記事で解説しているので、こちらも確認しておきましょう。
関連記事:【例文あり】メールマーケティングとは?種類やツール、成功事例を解説
ポイントプログラム導入後に実施すべき3つの重要なアクション

ポイントプログラムを導入した後、ただ運用を続けているだけでは成功につながりません。効果的に運用し、ビジネスの成長を促すためには、次の3つのアクションを実行しましょう。
- 効果を定期的に分析する
- 顧客からのフィードバックを活用する
- サポート・セキュリティ体制を強化する
これらを適切に実施することで、プログラムの改善が進み、顧客の信頼獲得につながります。
効果を定期的に分析する
ポイントプログラムが目標通りに機能しているかを確認するには、定期的に効果を分析する必要があります。
まずは、顧客の参加状況やポイント獲得・利用動向を追跡し、ポイントプログラムが目標に沿った効果を上げているかを分析しましょう。必要に応じてプログラムを改善することで、顧客満足度の向上や売上の増加を実現できます。また、ポイントプログラムが費用対効果の高い施策であるかを判断するために、ROI(投資対効果)を測定することも効果的です。
ROIや費用対効果については以下の記事で解説しています。詳しく知りたい方は、こちらも合わせて確認しておきましょう。
関連記事:
ROIとは?ROASとの違いから計算式、最大化の方法まで
費用対効果とは?意味や計算式、高める方法をわかりやすく解説
顧客からのフィードバックを活用する
ポイントプログラムの効果を最大化するためには、顧客からのフィードバックを活用することが重要です。
まず、アンケートやレビュー、カスタマーサポートを通じて、定期的に顧客の意見を収集します。収集したフィードバックをもとに、顧客がポイントプログラムのどの部分に満足しているか、または改善が必要と感じているかを把握し、プログラムの改良に活かしましょう。顧客の声を反映させることで、プログラムの魅力を高め、顧客ロイヤリティを強化できます。
サポート・セキュリティ体制を強化する
ポイントプログラムを運営する企業は、顧客からの問い合わせやトラブルに迅速に対応するサポート体制を整えることが重要です。専用窓口やFAQの充実、チャットサポートを導入することで、顧客の信頼を獲得し、満足度やロイヤリティを向上させます。
また、個人情報や購入履歴などを取り扱うため、最新のセキュリティ対策が必須です。暗号化技術や二段階認証を導入し、顧客が安心して利用できる環境を提供することで、企業への信頼を強化し、長期的な顧客関係を構築できます。
以下の記事では、個人情報漏洩を防ぐための具体的なセキュリティ対策を紹介しています。詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:個人情報が漏洩する原因とリスクは?具体的なセキュリティ対策を紹介
ポイントプログラムを導入した企業の成功事例

ここでは、ポイントプログラムの導入・運用に成功した2社の事例を紹介します。
- ポイントプログラム導入で顧客リピート率が向上|日本ピザハット
- ポイントプログラムの効果的な運用で大幅な売上増を達成|JR東日本
これらの事例を通じて、ポイントプログラム成功の秘訣を確認しましょう。
ポイントプログラム導入で顧客リピート率が向上|日本ピザハット

会社名:日本ピザハット株式会社
事業内容:ピザの製造・販売および宅配サービス
日本ピザハット株式会社は、Salesforceの『Loyalty Management』を活用し、購買頻度やリピート率アップを目的とする、会員向けのロイヤルティプログラム『HUT REWARDS』を導入しました。
導入後、デジタル技術を活用したターゲットマーケティングとポイントシステムにより、顧客のエンゲージメントが向上し、リピート率の向上を実現しました。競争が激化する宅配業界で、ピザハットはポイントプログラムを通じて顧客のロイヤリティを高め、安定した売上を確保しています。
ポイントプログラムの効果的な運用で大幅な売上増を達成|JR東日本

会社名:東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)
事業内容:鉄道を中心とした多角的な交通・不動産・各種サービス事業
JR東日本は、グループ全体のサービス利用を促進するため、『JRE POINT』を活用したポイントプログラムを運用しています。しかし、Salesforceの導入前は最適なタイミングでのアプローチやパーソナライズが困難で、プロモーション効果に限界がありました。
そこで、Salesforceの『Marketing Cloud』を導入し、会員一人ひとりにパーソナライズされたメールを最適なタイミングで配信することを実現しました。これにより、駅ビルやエキナカでの購買促進キャンペーンのエントリー率が向上し、売上の大幅増を達成しています。さらに、会員データの統合と精密なターゲティングにより、より効率的なプロモーションが可能となりました。
ポイントプログラムの効果的な運用により、顧客のロイヤリティが向上し、持続的な売上成長を実現しています。
ポイントプログラムの効果を高めるにはAI活用が効果的

ポイントプログラムにAIを活用することで、単なるポイント付与の枠を超えて、パーソナライズされた顧客体験を提供できるようになります。
たとえば、SalesforceのAgentforceとAIコマースツール を利用すれば、顧客の購買履歴や行動データを詳細に解析でき、より効果的なポイントプログラムの設計が可能となります。さらに、AIによる予測分析を活用することで、離脱のリスクがある顧客を簡単に分析し、再エンゲージメントのキャンペーンを始めることも可能です。
SalesforceのAI機能を駆使したデータ駆動型のアプローチにより、企業はプログラムの運用効率を高め、持続的な成長を実現できるでしょう。
ポイントプログラムを活用して顧客との関係を強化し、ビジネスの成長を実現しよう

ポイントプログラムは、顧客との関係強化とビジネスの成長に効果的な施策です。
顧客に対して価値あるインセンティブを提供し、リピート購入の促進・顧客のロイヤリティ向上を図ることで、競争優位性を築けます。さらに、プログラムを通じて収集した顧客データを活用すれば、パーソナライズされたサービスやマーケティング戦略を展開でき、顧客満足度向上を実現できます。その結果、企業は売上拡大や持続的な成長を期待できるでしょう。
ポイントプログラムを導入して効果的に成果を上げるには、顧客データの統合とリアルタイムな分析が欠かせません。Salesforceの「Eコマース最新事情」レポートは、AIを活用して顧客に価値ある体験を提供し、ロイヤリティを強化するための情報を提供しています。
顧客との関係を強化したいとお考えの方は、Salesforceを活用し、データに基づいた戦略的なアプローチを実現しましょう。
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