Key Takeaways
データ&アナリティクス最新事情
本レポートでは、約8,000人のビジネスおよびデータリーダーへの調査をもとに、AIがデータ基盤やガバナンス、活用方法に与える影響を分析しています。
目次
分析への「信頼」は、人が作るもの
生成AIの進化により、分析のあり方は大きく変わり始めています。AIに質問すれば、グラフが生成され、要因分析が行われ、次に取るべきアクションまで提案されるーー。未来だと思っていたそんなことが、すでに現実になり始めています。

Tableau Conference 2026のキーノートでは、1つの重要なメッセージが語られました。
「AIにできないことが1つある。それは、分析への「信頼」を作ること」。
TableauのChief Product Officerであるサウサード・ジョーンズは、次のように語りました。
「人がTableauを開き、ダッシュボードや指標を信頼するのには理由がある。それは、誰かがその正しさを担保しているからだ」
データ結合(Join)が正しいか。KPIの定義が組織内で統一されているか。集計レベルや計算ロジックに誤りがないか。可視化した表現が誤解を生まない形になっているか。
こうした「見えない努力」の積み重ねがあるからこそ、経営層や現場はその数字をもとに意思決定できます。
AIは、分析を加速させることはできます。しかし「この数字が本当に正しいのか」という問いに、責任を持つことはできません。
実際、キーノートでは「89%のリーダーが、不正確または誤解を招くAIの出力を経験している」というデータが紹介されました。背景にあるのは、AIが企業ごとの指標定義や業務文脈を理解できないという課題です。
キーノートでは、「Data alone is not enough(データだけでは不十分)」というメッセージも示されました。
AI時代に重要なのは、分析を「速くすること」ではなく「正しくすること」。そのために必要なのは、単なるデータではありません。AIが正しく理解し、正しく判断するための「知識(Knowledge)」です。

AI時代に求められるのは、信頼できる知識
では、信頼できる知識とは何なのか。たとえば「売上」という言葉も、受注時か出荷時か、国内かグローバルかで意味は変わります。しかし、AIに必要なのは、こうした指標定義だけではありません。

Tableau の GM である マーク・レッカーは、「データだけではエージェントには不十分だ」と述べ、指標(Metrics)、定義(Definitions)、セマンティック(Semantics)、公開データソース(Published Data Sources)といった Tableau 上に蓄積された資産こそが、エージェントに必要な知識だと説明しました。
Tableau のユーザーコミュニティ「DataFam」は、過去20年間で3300万以上のセマンティック資産を構築してきました。ダッシュボードや計算式、定義済み指標、データソースーー。企業の中で積み上げられてきたこれらの資産こそが、AI時代における競争優位の源泉になります。
レッカーが示したのは、新たに知識をゼロから構築するのではなく、企業がこれまで Tableau に蓄積してきた既存資産を活用するアプローチです。
今回発表された「Knowledge Graph(ナレッジグラフ)」も、この考え方を基盤としています。新たに知識をゼロから構築するのではなく、企業がこれまで Tableau に蓄積してきた資産を知識として再活用し、AIエージェントが理解・推論できる形へつなげていく。それが Tableau の描く方向性です。
ナレッジグラフは単なるデータモデルはなく、「どのデータが何を意味し、どう関係しているのか」という企業の知識をAIが理解できる形にするもの。これにより、AIは初めて「信頼できる分析」を行えるようになります。

AI時代に重要なのは、「どのAIを使うか」だけではありません。どれだけ信頼できる知識を持っているか。それこそが、これからの企業の意思決定力を左右する。そんなメッセージが語られていました。
分析は「見る」から「意思決定を実行する時代」へ
そして、レッカーは、これまでのBIの役割についてこう説明しました。
「これまでBIの役割は、データを可視化し、人が意思決定できるようにすることでした。異常値や変化を発見し、その先の判断や実行は人が担ってきた。従来の分析は、何が起きているかを把握すること、つまり『見る(See)』までだったとも言えます」

これからの分析は「見る」だけでは終わらず、意思決定を実行するところまで支援するーー。それがTableauの考える「Agentic Analytics(エージェント型分析)」の世界観です。
こうした方向性を象徴するメッセージとして、キーノートでは次の言葉が紹介されていました。
「This era is no longer about insights decoupled from actions. (これからの時代は、インサイトとアクションが分断された世界ではない)」
これまでの分析では、「何が起きているか」を知ることはできても、その後のアクションは別のシステムや人の判断に委ねられていました。
たとえば小売業で在庫不足が起きそうな場合、ダッシュボードで異常を発見し、要因分析を実施し、会議で議論し、オペレーションチームへ依頼し、在庫を移動するというプロセスが必要でした。
デモでは、架空の企業「Bolt Bikes」を例に、需要予測と在庫最適化のシナリオが紹介されました。
西海岸で特定商品の需要増加が予測されると、AIが販売データ・在庫データ・アナリストレポートなどの非構造化データまで統合的に分析。「500台を別倉庫から西海岸へ移送すべき」という推奨を提示し、最終的にはエージェントがその実行まで自動化する世界が描かれていました。
これは単なる「分析の高速化」ではなく、分析と実行の間にある距離がゼロに近づいていく方向性として描かれています。
分析体験は「ダッシュボード」から「仕事の流れの中」へ
では、具体的に何が変わろうとしているのか。
従来、分析には「場所」がありました。データを確認したいときはBIツールを開き、ダッシュボードを見る。必要に応じて分析チームに依頼し、レポートを作ってもらう。分析とは、「分析のための製品」の中で行うものでした。
キーノートでは、その前提が変わり始めていることが示されています。
分析は「見に行くもの」ではなく「仕事の流れの中で使うもの」。
Slack、Microsoft Teams、Salesforce、さらには外部のAIエージェントなど、組織がすでに働いている場所の中で分析を利用する世界観が描かれていました。
その象徴的なデモが、Slack上での分析体験です。
「現在のトップ販売商品は?」「地域別ではどうなっている?」「なぜ今月の売上が落ちているのか?」といった質問をSlack上で自然言語で行うと、AIが企業のデータ・指標定義・過去の分析文脈を理解した上で回答し、推奨アクションまで提示しました。ユーザーはTableauを開いていません。しかし裏側では、Tableauのナレッジグラフが動き、企業固有の文脈を理解した分析が行われています。

ただし、これは「ダッシュボードが不要になる」という話ではありません。
むしろ、分析体験の選択肢が広がる変化と捉えるのが自然だと言えます。日々の業務ではSlackやAgentから素早く状況を把握し、深い探索や背景理解が必要な場面では引き続きダッシュボードやビジュアライゼーションが重要になる。目的に応じて使い分けるべきです。
実際、Tableau Conferenceでは、分析体験をどう設計するかを整理した「Decision Framework」が紹介されていました。繰り返しモニタリングするKPIには「Metric」、継続的な探索や比較分析には「Dashboard」、その場で質問しながら背景を深掘りするには「Agent」。分析をひとつのUIに閉じるのではなく、目的に応じて最適な体験を選ぶという考え方です。

では、「仕事の流れの中」で使うには、どうすればいいのか。キーノートでは、次の言葉が使われていました。
「Take your trusted knowledge anywhere” (信頼できる知識を、あらゆる場所へ届ける)」

重要なことは、「どこで分析するか」ではなく、「どのように信頼できる知識を構築し、意思決定するか」です。
Tableauが目指しているのは、信頼できる知識を、組織が働くあらゆる場所へ届けること。分析が「見るもの」から「仕事の流れの中で使うもの」へ変わり始めています。
Tableau Conferenceで描かれた未来を、日本でどう実践するか
分析は「見るもの」から「意思決定を実行するもの」へ。信頼できる知識(Knowledge)をもとに、AIが仕事の流れの中で分析し、提案し、行動を支援する世界が現実になり始めています。その前提として繰り返し強調されていたのが、「信頼」の重要性でした。
「信頼できる知識」があって初めて、AIは企業にとって意味のある判断を支援できる。
それが、Tableau Conference 2026を通じて感じた、最も重要なメッセージでした。
AI時代に競争優位を生むのは、単にAIを導入した企業ではなく、“信頼できる知識”を意思決定につなげられる企業なのかもしれません。AIそのものが差別化要因になるのではなく、企業固有の文脈や知識を、どれだけ信頼できる形で活用できるか。その重要性が、これまで以上に高まっていくように感じます。
Tableau Conference 2026で見え始めた未来を、日本企業はどう実装していくのか。その問いへのヒントは、日本でも議論が始まろうとしています。6月に開催される Agentforce World Tour Tokyo、そして DataFam Tokyo でも、このテーマをさらに深めていく予定です。ぜひ会場で議論できればと思います。
データ&アナリティクス最新事情
本レポートでは、約8,000人のビジネスおよびデータリーダーへの調査をもとに、AIがデータ基盤やガバナンス、活用方法に与える影響を分析しています。










