プレイングマネージャーとは？求められる背景や欠かせない能力を解説

プレイングマネージャーとは、チームを管理・指導する「マネージャー」としての役割をもちながら、同時に現場で実務を担当する「プレイヤー」としても活動する人のことです。

少ない人員で組織を効率的に成長させるためにも、プレイングマネージャーの重要性に注目が集まっています。

本記事では、プレイングマネージャーの役割や必要性、必要な能力、設置するメリット・デメリット、プレイングマネージャーのスキルアップを支援する方法などを詳しく解説します。

プレイングマネージャーとは

プレイングマネージャーとは、チームの管理や指導を行う「マネージャー」の役割をもちながら、同時に現場で実務も担当する「プレイヤー」としても活動する人材です。とくに中間管理職層に多く見られ、近年では多くの職場でこうした形態が増えてきています。

プレイングマネージャーの主な役割

プレイングマネージャーが担う役割は多岐にわたります。チーム全体の目標達成への指揮を取りながら、個人としても成果を出さなければなりません。たとえば営業部門では、部下の営業活動を管理しつつ、自らも大口顧客を担当するといった形です。

こうした立場では、メンバーとの強固な信頼関係が不可欠です。単なる上司ではなく、同じ現場で汗をかく仲間としての一面ももち合わせているため、適切な距離感でチームをまとめる必要があります。さらに、現場の声を経営層に伝える「橋渡し役」としての機能も求められるのです。

関連コンテンツ：マネジメントとは？意味・求められるスキル・管理に役立つツールを解説

プレイングマネージャーと管理職の違い

混同されがちな「プレイングマネージャー」と「管理職」ですが、根本的な違いがあります。管理職は基本的に現場の実務から離れ、チーム運営や人材育成、方針決定に専念する立場です。一方、プレイングマネージャーは、そうした管理業務と並行して、自らも現場の第一線で業績を出す役割を担います。

両者の違いで注意すべきは、労働基準法上の「管理監督者」に該当するかどうかという点です。労働基準法では管理監督者を「労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的な 立場にある者」と定義しています（※）。これは単なる役職名ではなく、実際の職務内容や権限、勤務形態によって判断されるのです。

たとえば、肩書きが「課長」であっても、実態としてプレイングマネージャーとして働いている場合、労働基準法上の「管理監督者」に当てはまらない可能性があります。つまり、残業代などの労働条件が一般社員と同様に保護される可能性があるのです。職場での実際の業務内容や権限の実態が、法的な位置づけを決定する重要な要素となります。

（※）出典：日本労働組合総連合会｜Q&A労働基準法の「管理監督者」とは？

プレイングマネージャーが求められる背景

企業価値を高める施策の一環として、人件費削減のための人員整理やリストラが行われるなかで、プレイヤーとマネジャーの双方が大きく削減される傾向にあります。その結果、限られた人員で組織を維持していくために、プレイヤーとマネジャー両方の役割を兼任するプレイングマネージャーという立場が生まれてきました。

しかし、プレイングマネージャーの状態では本来のマネジメント業務が手薄になりやすいため、これを課題として捉えている企業も少なくありません。また、公式にはプレイングマネージャーという役職を設けていないものの、実質的にその状態に陥っているケースも多いと考いうのが実態ではないでしょうか。

プレイングマネージャーに欠かせない5つの能力

プレイングマネージャーとして成功するためには、以下の5つの能力がとくに重要になります。

• コミュニケーション能力
• スケジュール管理能力
• 育成スキル
• 成長意欲
• リスク管理能力

これらのスキルを磨けると、二重の役割をバランスよく果たせるでしょう。それぞれ詳しく解説します。

コミュニケーション能力

プレイングマネージャーは組織の方向性を決定し部下の育成も担うため、部下からの信頼獲得が非常に重要です。チーム全体のパフォーマンスを向上させるには、部下との間で緊密なコミュニケーションを取ることが必須となります。部下の仕事の進捗状況を適切に把握し、相手の価値観や考え方を尊重しながら、今後進むべき方向性について明確に示唆していくことが求められます。

関連コンテンツ：社内コミュニケーションとは？重要性やアイデア、成功事例などを解説

スケジュール管理能力

自身の目標と組織全体の目標を同時に達成するには、さまざまなタスクを確実にこなしていく必要があります。そのため、プレイングマネージャーには時間やタスクを正確に把握し管理する高い能力が不可欠です。

効果的なスケジュール管理においては、抱えているタスクに適切な締め切りを設定し、進捗状況を常に確認しながら仕事を進めていくことが重要になります。

育成スキル

組織目標の達成には、組織力の向上が欠かせません。そのためには、部下一人ひとりの能力を細かく見極め、得意分野と不得意分野を正確に把握することが必要です。

部下の得意な部分をさらに伸ばし、足りない部分を適切に引き上げられると、全体的な能力の底上げを図ることが可能です。最終的には部下が自立して目標達成できるような育成やサポートが、プレイングマネージャーの大きな役割だといえるでしょう。

関連コンテンツ：【セールスフォース流Salesforce活用術】従業員エンゲージメントの高め方、解説します。

成長意欲

プレイングマネージャーは自身の業務領域だけでなく部下の担当業務についても把握する必要があるため、幅広い知識やスキルを身につけなければなりません。これまでプレイヤーとして業務を行ってきた人がプレイングマネージャーに昇格した場合、プレイヤーとしては優秀でもマネージャーとしては未経験であることが多いです。そのため、組織を率いる能力や人を指導・育成する能力を、新たに獲得する必要があります。

リスク管理能力

組織マネジメントのみを専門とする一般的なマネージャーと比べて、より多くの業務種類とステークホルダーを抱えるプレイングマネージャーは、問題の芽を早期に発見し対処するスキルが必要です。わずかな時間であっても通常との違いを即座に察知するためには、日頃からの細やかな観察が非常に重要になります。

プレイングマネージャーが組織にいる3つのメリット

プレイングマネージャーを配置することで、組織には次のような利点がもたらされます。

• 現場と組織の生産性が高まる
• 組織に対するロイヤリティが高まる
• 現場の課題が明確になる

それぞれ詳しく解説します。

現場と組織の生産性が高まる

優秀なプレイングマネージャーであればあるほど、実務能力と管理能力の両面で高い水準を示します。自らが能力を最大限に発揮して成果を上げるだけでなく、周囲のメンバーの士気も高める効果があるため、組織全体として高い生産性を実現できます。

個人とチームの生産性が向上すれば、企業価値の向上にもつながる可能性が高まるでしょう。

関連コンテンツ：成長する組織づくりの基礎と従業員のエンゲージを高めるための実践法

組織に対するロイヤリティが高まる

自分自身もメンバーの一員として現場に関わるプレイングマネージャーは、現場への理解度が高いため、メンバーの立場に共感し現場の考えを尊重する傾向があります。また、メンバーからも厚い信頼を得やすいため、組織全体としてのロイヤリティが向上します。

ロイヤリティは目に見えないものですが、組織が一丸となって目標達成に向かう際に欠かせない重要な要素です。

現場の課題が明確になる

プレイングマネージャーは管理職と異なり、実際に現場で業務を遂行します。そのため、現場の実態や課題を直接把握しやすく、現場や部下が抱える問題に対して近い視点で寄り添うことが可能です。現場状況や課題の把握が正確にできることで、迅速な問題解決につながり、結果として効率的に成果を上げられる可能性が高まるのです。

プレイングマネージャーを配置するデメリット

メリットがある一方で、プレイングマネージャーの配置には以下のようなデメリットも存在します。

• プレイングマネージャー自身の業務量が増える
• マネジメント力に差が生まれやすい
• 評価基準が曖昧になりやすい

それぞれ詳しく解説します。

プレイングマネージャー自身の業務量が増える

「プレイングマネージャー」に抜擢されるのは、プレイヤーとしても優秀な人材が多い傾向にあります。そのため「他人に任せるより自分がやったほうが早い」と考え、部下に仕事を適切に分担できないケースも珍しくありません。

その結果、プレイングマネージャー自身が過度に業務を抱え込んでしまい、最終的には組織全体の業務が滞ってしまう可能性があります。

マネジメント力に差が生まれやすい

プレイングマネージャーは自身も業績目標を達成する必要があるため、プレイヤーとしての側面が強くなりすぎて業務バランスが偏ると、部下や組織の管理が困難になります。また、元々プレイヤーとして高い能力をもっていた人材でも、必ずしもマネジメント能力が高いとは限りません。

プレイヤーとしての実務能力でマネジメント機能の不足を補っている場合、その問題に気づきにくくなり、状態が継続すればチームの団結力が低下する恐れもあります。

評価基準が曖昧になってしまう

自らも現場で活動するプレイングマネージャーの場合、「個人目標は達成したがチーム目標は未達成」という状況が発生することもあります。逆に「チーム目標は達成したが個人目標は未達成」というケースも考えられます。

このような場合に、プレイングマネージャーの評価が曖昧になってしまいます。プレイヤーとマネージャーのどちらの評価を重視するか明確な基準がなければ、評価結果に大きなばらつきが生じてしまう可能性があります。

プレイングマネージャーのスキルアップを支援する方法

プレイングマネージャーの成長と活躍を促すために、組織として以下のような支援策を講じることが効果的です。

• コミュニケーションスキルを向上させる
• 管理の経験とスキルを磨いてもらう
• SFAやCRMなどの業務効率化ツールを導入する

それぞれ詳しく解説します。

コミュニケーションスキルを向上させる

プレイングマネージャーにとくに求められるのは、メンバーとの信頼関係を構築するスキルです。上司やメンバーへの情報共有を意識的に行うよう促し、ひとりで問題を抱え込まないよう支援することが大切です。コミュニケーション能力を高めるには、チームメンバーと積極的に関わる姿勢をもつことが重要だと認識させましょう。

管理の経験とスキルを磨いてもらう

プレイングマネージャーは、現場業務だけでなくマネジメントも担当するため、必要な知識や経験を積む機会の提供が欠かせません。会社として、マネジメントを学ぶための体系的な制度を整備することが重要です。

プレイングマネージャーが無理にチームをまとめようとするのではなく、上層部の経営陣が適切な方法でマネジメントをサポートする体制を構築することが大切です。

SFAやCRMなどの業務効率化ツールを導入する

プレイングマネージャーになると、自分自身の業務と部下のマネジメントを両立させる必要があるため、仕事量が増加する可能性が高くなります。そのため、従来以上に業務効率を意識することが非常に大切です。

普段から仕事に優先順位をつけて取り組む意識をもたせましょう。また、プレイングマネージャー自身が権限をもって自由に仕事ができる環境を整えることで、効率的な業務遂行が可能になります。

その手段のひとつとして、SFAやCRMなどの業務効率化ツールを導入することが効果的です。これらのツールは情報の一元管理や業務の自動化を実現し、プレイングマネージャーの負担を大きく軽減します。

SFAは営業支援システムを指す言葉で、営業活動のさまざまな工程を効率化するためのツールです。具体的には、顧客情報の管理や商談記録の一元化、営業プロセスの可視化などの機能をもち、営業部門のパフォーマンス向上に貢献します。プレイングマネージャーが営業部門を統括している場合、SFAを導入することで部下の営業活動を把握しやすくなり、適切な指導やサポートが可能になります。

一方、CRMは顧客関係管理システムを指す言葉で、顧客との関係性を構築・維持・強化することを目的としたツールです。顧客情報の一元管理や過去の対応履歴の記録、顧客ごとのニーズ分析などの機能をもち、顧客満足度の向上に役立ちます。プレイングマネージャーがCRMを活用することで、顧客対応の質を維持しながら、効率的な業務運営が可能になります。

業務効率化ツールの導入は、プレイングマネージャーが限られた時間のなかで最大限の成果を出すために不可欠な戦略といえるでしょう。適切なツールを選定し、チーム全体で活用できると、プレイングマネージャーとしての役割を効果的に果たすことが可能になります。部下との情報共有もスムーズになり、チーム全体のパフォーマンス向上にもつながるでしょう。

関連コンテンツ：
・SFAとは？CRM・MAとの違いや効率的な営業活動のための活用方法を解説
・SFA・CRM・MAの違いや活用方法とは？連携のメリットや事例も解説

SalesforceのSFAツール「Sales Cloud」でプレイングマネージャーの業務をサポート

プレイングマネージャーとして、効果的なマネジメントを行うには、業務の進捗やメンバーの動きなどさまざまなデータを管理する必要があります。日々忙しいプレイングマネージャーの立場では、自身の営業活動とチームのマネジメントを両立させるため、データ管理の効率化が不可欠です。

営業に関わるデータを一元管理し、効率的なマネジメントを実践するためには、SalesforceのSFA「Sales Cloud」がおすすめです。

このツールは世界中の多くの企業に導入されており、プレイングマネージャーの複雑な業務を強力にサポートします。「Sales Cloud」では、見込み顧客とのコミュニケーションや取引先との商談などを一元管理できますし、複雑な営業プロセスの自動化によるタスク管理、リアルタイムの売上予測機能なども利用可能です。

これにより、プレイングマネージャーは部下の営業活動を効率的に監督しながら、自身の業務にも集中でき、両者の成果に貢献できるでしょう。マネジメント業務にSalesforceのツールを活用することで、より効率的かつ効果的に組織やチームの目標達成を目指せるでしょう。限られた時間のなかで最大限の成果を出すためにも、「Sales Cloud」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

プレイングマネージャーは組織にとって欠かせない存在

プレイングマネージャーは、現代のビジネス環境において不可欠な存在となっています。自らが現場で成果を出しながら、チーム全体も導くという二重の役割は決して容易ではありませんが、適切なスキルと支援があれば大きな価値を生み出せます。

重要なのは、コミュニケーション能力やリスク管理能力を高め、自身の業務と管理業務のバランスを取ることです。また、組織は評価基準の明確化や効率化ツールの導入など、プレイングマネージャーが力を発揮できる環境づくりを行うことが求められます。

現場を知り尽くした視点で組織全体を見渡せるプレイングマネージャーは、今後のビジネス環境がさらに複雑化していくなかで、ますますその重要性を増していくことでしょう。