目標達成に向けて業務計画を立案したものの、各メンバーの行動を後押しできず、思うような成果に結びついていない方もいるのではないでしょうか。
メンバーの自発的な行動を促し、計画通りに業務を進めるには、ただ単にタスクを洗い出すだけでなく「行動」を前提としたアクションプランの策定が重要です。
本記事では、アクションプランを作成するメリットや、具体的な計画の立て方を詳しく解説しています。AIの活用方法や企業事例も紹介していますので、自社の運用に合ったプランニングを実践してみてください。
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目次
アクションプランとは?

アクションプランとは、目標を達成するための具体的な行動(アクション)と、実行に向けた指針を体系的にまとめた「行動計画」のことです。
たとえば、売上目標を達成する場合に「どの顧客にどの製品を提案するか」「どのタイミングで訪問するか」といった、詳細な計画を立てることを指します。
組織やチームの目標に対して「いつまでに・誰が・なにをするのか」を明確にして、各メンバーの行動や達成度を管理するのが主な目的です。
アクションプランは、組織目標に対して中長期的・短期的な内容に分けることで、進捗に応じたプランの見直しがしやすくなります。
アクションプランの目的と必要性

アクションプランを立てる目的は、主に以下の2点が挙げられます。
- 目標達成に向けたタスクを明確にする
- スケジュール・進捗管理を効率化する
行動計画が明確であれば、目標に対する達成度や課題がひと目でわかり、修正が必要な場合でも早期に対処できます。
目標達成に向けたタスクを明確にする
アクションプランを立てる目的は、目標を達成するための具体的なタスクを洗い出し、人や時間のリソースを適切に配分することです。「どのようなタスクがあって、誰がいつまでにこなすべきか」を整理することで、現実的かつ実行可能なアクションが明確になります。
たとえば、売上向上の目標がある場合「今月中に10件の新規顧客と商談する」「既存顧客への追加提案を3件実施する」といったタスクへの反映が可能です。
タスクの洗い出しによって責任の所在・範囲も明確になるため、各メンバーも組織目標を自分事として捉えながら業務を進められます。
スケジュール・進捗管理を効率化する
目標達成までのプロセスを明確にし、具体的な期限やマイルストーン(中間目標)を設定することも、アクションプランを作成する目的のひとつです。
複数のプロジェクトを同時進行する場合、進捗管理やスケジュール調整が煩雑になりやすいですが、アクションプランの作成によって計画的かつ効率的な業務遂行が可能です。
ガントチャートやプロジェクト管理ツールを活用すれば、各メンバーの進捗状況をリアルタイムに追跡でき、進捗の遅れや問題点があっても即座に対処できます。
以下の関連コンテンツでは、営業における進捗管理の方法・項目について詳しく解説しています。すぐに使えるテンプレートも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:営業進捗管理の方法や項目は?Excelテンプレート参考例を紹介>
アクションプランを作成する3つのメリット

アクションプランの作成によって、以下のメリットが得られます。
- 無駄な作業を排除できる
- 自発的な行動の促進につながる
- 目標に対する達成度・進捗を可視化できる
アクションプランをもとに進捗管理することで、目標達成までのプロセスや達成度を把握しやすくなり、問題点の特定と軌道修正がスムーズに行えます。
無駄な作業を排除できる
アクションプランは、目標達成までのプロセスを明確にしたうえで、優先度の高いタスクに集中できるような行動計画を立てます。重要度・緊急度の低い業務や、目標達成に結びつかない行動を排除できるため、人や時間などのリソース不足解消にもつながるのです。
また、具体的な行動が明確になれば「ムリ・ムダ・ムラ」をどれだけ省略できるかもわかり、組織の機能や品質を保ちながら必要なタスクに注力できます。
以下の関連コンテンツでは、さまざまな業務効率化の方法やアイデアを解説しています。アクションプランの作成を含めた業務効率化に取り組み、組織内の無駄な作業を減らせるか検討してみましょう。
関連記事:業務効率化とは?具体的なアイデアや便利なツール、成功事例を紹介>
自発的な行動の促進につながる
アクションプランの作成によって、実行に移すべきタスクが明確になるため、組織全体のモチベーションが高まり個々の自発的な行動を促します。
ただ単に目標を提示しただけでは、現場のメンバーは「どのような行動を起こせば成果に結びつくか」がわかりません。しかし、アクションプランを立てれば、目標達成に向けた自分の役割が明確になり、会社の指示を待つことなく積極的に行動できるようになります。
また、タスクを一つひとつ完了させるなど、小さな成功体験を積み重ねることで自信にもつながり、主体性や自律性の促進にもつながります。
目標に対する達成度・進捗を可視化できる
アクションプランでは、タスクの進捗を管理するガントチャートや、達成度を評価するための指標を活用するのが一般的です。そのため、目標達成までのプロセスにおいて「誰がどこまで業務を進められているか」といった、プロジェクト全体の現在地を可視化できます。
細分化された各タスクには、期限・優先度・担当者などの情報を記録することで、進捗の遅れが生じた場合でも、チーム内でサポートし合いながら業務を進められます。
また、定期的なミーティングやレビューの実施によって、行動計画の見直しやタスクの調整をスムーズに行えるため、メンバー間の連携強化にもつながるのです。
関連記事:タスク管理ツールとは?5つの機能や導入のメリット、選び方を解説
アクションプランを立てる方法・手順

アクションプランを立てる際は、以下の7つの手順で行います。
- 目標を設定する
- タスクを洗い出す
- リソース(人・時間)を割り当てる
- タスクの優先順位を決める
- 期限やマイルストーンを設定する
- アクションプランの実行とモニタリングを行う
- PDCAサイクルでプランを見直す
それぞれのステップを詳しく解説していきますので、チーム全体の自発的な行動を促すようなアクションプランを立ててみましょう。
1.目標を設定する
まずは、組織・チームとして達成すべき目標を定めます。
目標設定はアクションプランの基盤となるため、以下の「SMART」などのフレームワークを活用し、具体的かつ達成可能な目標を決めましょう。
Specific(具体性) | 達成したいことを具体的な数値で示す |
Measurable(計測可能) | 目標を数値化して達成度を測定する |
Achievable(実現可能) | リソースや時間の制約内で達成可能な目標にする |
Relevant(関連性) | 組織目標と個人目標との関連性を持たせる |
Time-bound(期限付き) | 目標達成の期限を設定する |
長期的な目標から短期的な目標に分解していき、メンバー個々の行動が組織目標の達成につながるようなプランを立てる必要があります。
2.タスクを洗い出す
組織・チームの目標が決まったら、達成までのプロセスを明確にしたうえで、具体的なタスクを洗い出していきます。
たとえば、売上目標を達成するためのタスクには、顧客リストの作成や商談方法の検討などが挙げられますが、以下のように行動レベルまで細分化していきましょう。
タスク | 詳細な行動・業務 |
---|---|
顧客リストの作成 | ・ターゲット市場の業種、企業規模、地域などをリスト化する・商談から成約までの可能性を判断し、営業の優先度を決める |
商談方法の検討 | ・アプローチ方法(電話、メール、SNSなど)を決める・顧客のスケジュールに合わせて商談日時を決める |
段階的なタスクに分けることで、不要な作業を排除しつつ、実行に移しやすいアクションプランを立てられます。以下の関連コンテンツでは、タスク管理の方法やおすすめツールを紹介していますので、自社の運用に応じた最適な方法を見つけてみてください。
関連記事:タスク管理とは?おすすめのツールや上手くなるコツ、メリットを解説>
3.リソース(人・時間)を割り当てる
タスクの洗い出しが完了したら、次項の「優先順位の決定」とともに、それぞれのタスクに対して必要なリソース(人・時間など)を配分していきましょう。優先度が高いタスクに関しては、多くのリソースを割り当てるだけでなく、以下のようなアプローチも必要です。
- チーム内での役割分担の明確化
- マネージャーによるリアルタイムの進捗管理
- 経験豊富なメンバーを優先的に配置
- 不測の事態に備えたバックアップ要員の配置
また、リソース不足の可能性がある場合には、他部署への支援要請や追加投資などの検討も視野に入れておきましょう。
4.タスクの優先順位を決める
緊急度と重要度で評価する「アイゼンハワーマトリクス」を活用し、タスクへのリソース配分とともに優先順位も決めましょう。具体的な判断基準として、以下の4つに分類できます。
分類 | 概要 |
---|---|
緊急かつ重要 | 可能な限り早い段階で着手すべき最優先のタスク |
重要だが緊急ではない | 明確な期限はないが、重要度の高い長期的なタスク |
緊急だが重要ではない | 緊急ではあるが自分が取り組むほど重要度は高くなく、他のメンバーに依頼できるタスク |
緊急でもなく重要でもない | 取り組むだけ無駄で、かつ避けるべきタスク |
「どのタスクが重要で、なにを優先すべきか」が明確になれば、スケジューリングやリソースの調整がしやすくなります。
5.期限やマイルストーンを設定する
タスクの優先順位とリソースが決定したら、以下のステップで具体的なスケジュールを決めていきましょう。
- 各タスクの期限(開始日・終了日)の設定
- マイルストーン(中間目標)の設定
- 各ステップ(調査・資料作成・商談など)から逆算してスケジューリング
また、タスクの期限や進捗状況はチーム内で共有することで、メンバー同士で確認・調整し合える環境が構築され、業務の属人化防止にもつながります。目標や各タスクの担当者・期限が決まれば、アクションプランの完成です。
6.アクションプランの実行とモニタリングを行う
アクションプラン決定後は、実際に各メンバーが行動を起こし、必要に応じてマネージャーの指示を受けながらタスクを進めていきます。プラン実行中は、計画通りに進んでいるか以下のような点をモニタリングしましょう。
- タスクの進捗状況・進捗率(%)
- 完成品の品質
- スケジュールとの乖離
- 進捗が遅れている原因の調査
- メンバー間のコミュニケーション状況
進捗を確認する際は、定例報告会や週次ミーティングを開催することで、各メンバーの抱えている問題を把握し、チームとしての改善策を提示できます。
7.PDCAサイクルでプランを見直す
アクションプラン実行後は、各ステップにおける課題や問題点を洗い出して、つぎのプランに反映させましょう。以下のPDCAサイクルを実践し、より高い成果を出せるアクションプランの作成を目指します。
プロセス | 概要 | ポイント |
---|---|---|
Plan | 計画の立案 | 5W1H(誰が・なにを・なぜ・どれほど・いつまでに・どのように)を明確にし、現実的な目標を設定する |
Do | 計画の実行 | 実行した内容を客観的に評価できるように、必要なデータを記録する |
Check | 結果の評価 | 数値を用いた客観的なデータと、アンケートによる現場の声をもとに結果を評価する |
Action | 結果に対する改善 | 改善点がまとまったら「Plan」に戻り、新たな計画を策定する |
PDCAサイクルを通して個々の行動を見直していけば、アクションプランが現実に即したものとなり、目標達成がさらに一歩近づきます。以下の関連コンテンツで、PDCAサイクルの手順やコツを解説していますので、本記事と合わせて確認してみてください。
関連記事:PDCAサイクルとは?運用のコツと事例を使ってわかりやすく解説>
アクションプランを検討・実行する際のポイント

アクションプランを検討・実行する際は、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 達成可能なKPIを設定する
- 「行動」を前提にプランを立てる
- 想定されるリスクの対策を検討する
目標達成への戦略を練るためには、管理者によるマネジメントだけでなく、チーム全体を巻き込むような協力体制も重要です。それぞれのポイントを詳しく解説します。
達成可能なKPIを設定する
アクションプランを実行する際は、達成可能なKPI(重要業績評価指標)を設定することで、実行可能性の見極めや達成度の把握ができます。KPIは、目標達成までの進捗を評価するだけでなく、チーム全体の方向性を決める役割も果たします。
営業・セールス部門でKPIを設定する場合は、以下のような指標が一般的です。
- 営業機会数(訪問件数)
- 見込み客の成約率(コンバージョン率)
- 営業案件数(メンバー個々の担当案件数)
- 顧客単価(顧客ひとりが1回の購入で支払う金額の平均)
- 受注期間(営業開始から成約までの日数)
過去の実績や業界の平均データを参考にしながら、達成可能かつ現実的な目標を設定しましょう。以下の関連コンテンツでは、KPIの設定方法や具体例を解説していますので、本記事と合わせて確認してみてください。
関連記事:KPIとは?KGIとの違い・設定方法・メリット・管理のコツを解説>
「行動」を前提にプランを立てる
アクションプランを立てる際は、目標や結果だけを意識するのではなく「行動」を前提としたプランニングを行いましょう。
具体的な行動が示されていない計画だと、目標達成までの道筋が不明確なため、現場のメンバーはどのように行動すればいいのかわかりません。
アクションプランには「いつ」「誰が」「どのように行動するか」を明記したうえで、個々のメンバーが自発的に行動できるようにタスクを細分化しておきましょう。
想定されるリスクの対策を検討する
アクションプラン実行中に予期せぬ事態や問題が発生しても対処できるように、起こり得るリスクを洗い出し、事前に対策を検討しておきましょう。考えるリスクとして、主に以下の2つの要因が挙げられます。
- 内的要因(リソース不足、チーム内の対立、システム障害 など)
- 外的要因(市場・経済環境の変化、法規制 など)
想定されるリスクの優先順位を付けたうえで、リスクを回避する方法や、発生時の影響を最小限に抑える対策を準備しましょう。
AI活用でつぎのアクションをピンポイントに把握

近年、DXや自動化の領域で注目を集めているAIは、アクションプランの作成・実行においても効果を発揮します。
Salesforceの「Marketing Cloud」では、顧客データや過去の取引履歴をもとに、最適なタイミングでアプローチするためのインサイト(潜在的な購買欲求)の特定が可能です。
「いまアプローチすべき顧客」や「成約可能性の高い案件」などをリアルタイムで営業担当者に提案してくれるため、すぐに行動を起こして成約に結び付けられます。
AIの活用によって、人の感覚的な判断に頼ることなく、データにもとづく戦略的なアプローチができるようになります。
アクションプランを実践している企業事例

アクションプランを実践している企業について、2社の取り組みを紹介します。
- 営業の活動状況の見える化で、つぎのアクションが明確に(キユーピー)
- カスタマージャーニーにもとづいて個別のアクションを実行(Z会)
事例を通して、アクションプランの作成が「どのような行動・成果につながったのか」を確認してみてください。それぞれの事例を詳しく解説します。
営業の活動状況の見える化で、つぎのアクションが明確に|キユーピー

会社名:キユーピー株式会社
事業内容:ソース類の製造販売等
マヨネーズやドレッシングの製造・販売を行うキユーピーでは、社内に50種類以上あった営業関連のシステムをSalesforceに統合し、営業活動の効率化を図っています。
無駄な内勤時間は削減されたものの、現場の営業メンバーからは「従来の日報システムと大差なく、むしろ入力項目が増えて大変になった」といった不満の声がありました。
そこで同社では、ダッシュボードの活用方法をオンライン学習サービスで学び直し、活動状況の「見える化」と、つぎのアクションにつなげられる仕組みを構築しています。
社内でモデルとなる営業の意見を参考に、各フェーズの基準とゴールを再設定したことで、つぎのフェーズへ進むタイミングや課題がひと目でわかるようになりました。
カスタマージャーニーにもとづいて個別のアクションを実行|Z会

会社名:株式会社 Z会
事業内容:通信教育事業等
通信教育の大手企業であるZ会では、会員獲得の重要性が増しているなか、基幹システムをベースとしたアクションにより、資料送付などのプロセスが硬直化していました。
そこで同社は、Salesforceの「Marketing Cloud」を導入し、カスタマージャーニーにもとづいて個別アクションができるプロセスを構築しています。
広告を見て興味を持った潜在顧客に対しては、資料請求があった際に情報をMarketing Cloudに統合したうえで、適切なタイミング・内容のメールを送付しています。
営業・マーケティングのプロセスを自動化したことで、最適なタイミングで個別のアクションができるようになりました。
アクションプランを作成して目標とタスクを明確にしよう

アクションプランは、組織・チームの目標を具体的かつ実行可能なタスクに分解し、実際の行動につなげるための重要な戦略です。
目標達成までのタスクを洗い出し、適切なリソースを割り当てることで、チームとしての方向性が定まり、各メンバーの自発的な行動が促進されます。
アクションプラン実行後は、PDCAサイクルで目標と行動の見直しを継続し、より成果を挙げられるようなプランニングを検討していきましょう。
営業組織を強化し、売上向上に繋がる資料3点セット
「営業力の強化」に関するヒントをまとめた3つの資料をセットにしてご用意しました。小さな取り組みから取り入れて、着実に営業力を強化しましょう。
