イノベーション

SECIモデルとは？身近な例や企業事例を用いてわかりやすく解説

SECIモデルとは、個人の暗黙知を形式知に転換し、組織全体で共有することで新たな知識を創造するフレームワークです。身近な具体例や企業の導入事例を用いて、概要や実践のポイントをわかりやすく解説します。

Salesforce Japan

2025年12月22日 14 分（読み終わるまで）

SECIモデルとは、個人の暗黙知を形式知に転換し、組織全体で共有することにより新たな知識を創造するフレームワークです。

本記事では、SECIモデルの基本的な仕組みについて、身近な事例を交えてわかりやすく解説します。

知識管理やイノベーションの向上を目指す企業の担当者にとって、実践的なヒントが得られる内容となっているので、ぜひ最後までご覧ください。

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ガイドを読む

SECIモデルとは
SECIモデルの4つのプロセスと身近な例
SECIモデルが提唱する4つの場と身近な例
SECIモデル導入の3つの問題点
SECIモデル実践の3つのポイント
SECIモデルを活用した企業の成功事例
SECIモデルを導入して、組織の知識共有とイノベーションを加速しよう

SECIモデルとは

SECIモデルとは、経営学者の野中郁次郎氏らが提唱した理論で、個人の暗黙知を形式知に転換し、組織全体で共有することにより新たな知識を創造するフレームワークです。

暗黙知とは

個人の経験や直感にもとづく知識で、言葉にするのが難しいもの
（例）ベテラン営業担当者の交渉力や、顧客との信頼関係を築くノウハウなど

形式知とは

言葉や数値、図表などで明確に表現でき、他の人と共有しやすい知識
（例）営業マニュアル、顧客管理システムに記録されたデータなど

競争が激しい現代のビジネス環境では、SECIモデルは知識を効率的に活用し、持続的な成長を実現するための重要な手法として、多くの企業や組織で活用されています。

SECIモデルを活用した知識の創造は、ナレッジマネジメントの一環として、組織全体の競争力を高めるために欠かせません。効果的なノウハウの共有方法については以下の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

SECIモデルの4つのプロセスと身近な例

ここでは、SECIモデルを構成する次の4つのプロセスについて、身近な例を交えながらわかりやすく解説します。

共同化（Socialization）
表出化（Externalization）
連結化（Combination）
内面化（Internalization）

それぞれのプロセスが実際のビジネスシーンでどのように活用できるのかを詳しく見ていきましょう。

1.共同化プロセス

共同化プロセスは、暗黙知を他者に伝達する最初のプロセスです。この段階では、言葉ではなく、実際の体験や作業を通じて知識を共有します。

たとえば、ベテラン社員が仕事の進め方を実演したり、一緒に作業したりすることで、言葉では表現しにくいスキルやノウハウを若手社員に伝えることが共同化の一例です。

共同化の過程では、知識は暗黙知のままであり、形式知には変換されません。

共同化を通じて得られた知識は、あくまで個々の体験として蓄積され、次のプロセスである「表出化」に進むための基盤となります。

2.表出化プロセス

表出化プロセスは、個人の暗黙知を言語化し、他の人が理解できる形に変換するプロセスです。この段階では、個人がもつ知識や経験を、言葉や図表、マニュアルなどを使って表現し、他者と共有します。

たとえば、業務の進め方や注意点をマニュアル化したり、会議で上司や同僚に業務の進捗を報告したりすることが表出化の一例です。

表出化された知識は、誰でも理解し、再現可能な形で組織内に共有されます。

表出化が進むと、知識が体系化され、他のメンバーが知識を有効活用できるようになります。

3.連結化プロセス

連結化プロセスは、異なる形式知を統合して新たな知識を創出するプロセスです。この段階では、さまざまな知識や情報を結びつけ、革新的なアイデアやソリューションを生み出します。

たとえば、他の部署で成功した手法を自分の業務に取り入れたり、チームメンバーの意見を結集して新しい改善案を生み出したりすることが連結化の一例です。

連結化プロセスでは、個々の知識が統合・アレンジされることで、組織全体で新たな価値創造が促進されます。

4.内面化プロセス

内面化プロセスは、新たに生み出された形式知を実際の業務で繰り返し使用し、個人の暗黙知として習得するプロセスです。

たとえば、新しいソフトウェアを導入した場合について考えてみましょう。最初はマニュアルを参照しながら操作しますが、何度も使用するうちに、マニュアルなしで素早く操作できるようになります。これが内面化の一例です。

内面化された暗黙知は、次回以降のプロセスでも活用され、知識がますます洗練されていきます。

SECIモデルは、知識がどのように生成・伝達・活用されるかを理解するための効果的なフレームワークです。4つのプロセスを通じて、個人の知識を効果的に共有・蓄積することで、企業の競争力を強化できるのです。

SECIモデルが提唱する4つの場と身近な例

SECIモデルの知識創造プロセスにおいて、次の4つの場が重要な役割を果たすとされています。

創発場
対話場
システム場
実践場

それぞれの場がどのように機能し、知識創造にどのような影響を与えるのかについて、詳しく見ていきましょう。

1.創発場

創発場は、SECIモデルにおける「共同化」が行われる場で、主に暗黙知を共有するための環境です。

ここでは、社員同士が気軽な会話や交流を通じて自由に意見を交わし、知識や経験を共有します。リラックスした雰囲気のなかで、無意識に知識を交換する点が特徴です。

（例）
・ランチタイムのカジュアルな会話
・休憩室や廊下での立ち話
・オンラインチャットや社内SNSでの情報交換

創発場での知識の共有を活性化するには、フラットでオープンなコミュニケーションが重要です。

2.対話場

対話場は、SECIモデルにおける「表出化」が行われる場で、知識を明確かつ体系的に整理し、共通の理解を形成するための場です。

ここでは、議論を通じて参加者が自らの知識を言語化し、他者と共有することで形式知へと変換します。創発場のような気軽な会話とは異なり、業務のなかで計画的に行われる点が特徴です。

（例）
・定期的な業務ミーティング
・部署間のディスカッションや全社会議
・1on1面談や社員研修

対話場では、参加者が意識的にディスカッションできるように、事前に目的や議題を設定することが重要です。

3.システム場

システム場は、SECIモデルにおける「連結化」が行われる場です。

ここでは、組織内の知識を効率的に結びつけるために、オンラインツールやナレッジマネジメントシステムを使用します。

（例）
・Googleドキュメントやスプレッドシートでの共同作業
・社内Wikiやナレッジベースの活用
・チャットツールでのディスカッション

これらのツールを活用することで、リアルタイムで意見交換を行い、組織全体で迅速に解決策や創造的なアイデアを生み出すことが可能です。

4.実践場

実践場は、SECIモデルの「内面化」が行われる場で、新たに学んだ知識を自分の実務に落とし込む場所です。

ここでは、知識を単なる理論として学ぶのではなく、実際の業務で繰り返し活用することで、暗黙知として定着させることが求められます。

（例）
・会社の個人デスクや作業スペース
・自宅でのテレワーク環境

実践場には特定の場所があるわけではなく、個々の作業スペースや業務を行う場が実践の場として重要な役割を果たします。

SECIモデル導入の3つの問題点

SECIモデルは知識管理の有効なフレームワークですが、導入には次の3つの問題点が挙げられます。

ベテラン社員のメリットが少なく、参加意欲が低い
内面化プロセスに時間を要する
明確なゴール設定が難しい

それぞれの問題点について詳しく見ていきましょう。

1.ベテラン社員のメリットが少なく、参加意欲が低い

SECIモデルでは、ベテラン社員が自分の豊富な経験やノウハウを共有するメリットを感じにくいことが大きな課題です。

たとえば、長年培った専門的な知識を他の社員に教えることで、自分の競争力が損なわれるのではないかと感じ、知識共有に消極的になることがあります。また、多くの業務を抱えるベテラン社員にとって、知識共有に割く時間は大きな負担です。

このような状況で報酬や評価といった見返りが明確でなければ、ベテラン社員の参加意欲はさらに低下してしまいます。

結果的に、組織内での知識共有が滞り、競争力の低下を招く恐れがあります。

2.内面化プロセスに時間を要する

SECIモデルの内面化プロセスでは、組織内で共有された知識を個人の知識として定着させることが重要です。

しかし、このプロセスは容易ではありません。特に経験が浅い社員は、知識を実践的に活用し、習得するまでに多くの時間がかかります。

個々の能力や学習ペースには差があり、すべての社員が同じ速度で内面化できるわけではありません。また、内面化が一度で完了することはなく、長期間にわたる学習と努力が求められます。

内面化がスムーズに進まないと、組織全体の知識共有サイクルが遅れ、効率の悪化につながる恐れがあります。

3.明確なゴール設定が難しい

SECIモデルは継続的な知識創造プロセスであり、プロセスの繰り返し回数や知識の深化の度合いが明確でないため、ゴールを定義するのが困難です。

また、ナレッジマネジメントの対象となる知識は多岐にわたり、企業や部門によって必要な知識の種類や専門性が異なります。分野ごとに異なる評価基準が求められるため、共通のゴール設定はいっそう困難です。

ゴールを明確に定義できない場合、成果を可視化したり、進捗を評価したりすることが難しくなり、効果的な知識共有や組織成長が妨げられます。

SECIモデルを導入しても、目標が不明確なまま進行すると、期待通りの成果を得られないリスクがあります。

SECIモデル実践の3つのポイント

ここでは、SECIモデルを実践する際に押さえておくべき3つのポイントを解説します。

知識を共有しやすい体制を整える
継続的に循環できる仕組みを構築する
ツールを導入して知識の共有・創造をサポートする

具体的なポイントを確認し、SECIモデルを効果的に実践しましょう。

1.知識を共有しやすい体制を整える

SECIモデルを効果的に運用するためには、社員が知識を気軽に共有できる環境作りが欠かせません。

たとえば、勉強会やワークショップを通じて知識を共有する機会を定期的に提供することで、社員の情報交換を活性化できます。

参加するメリットを明確に伝えることも重要です。たとえば、積極的な知識共有を促進するためには、インセンティブ制度を導入するなどの取り組みが効果的です。

2.継続的に循環できる仕組みを構築する

SECIモデルを継続的に運用するためには、4つのプロセス（共同化、表出化、連結化、内面化）を繰り返し実行し、知識を循環させる仕組みを構築する必要があります。

SECIモデルでは、新たに生成され続ける暗黙知を組織内で共有し、業務の改善や課題解決に役立てることを目指します。

知識の循環を実現するには、フィードバックや評価を通じて、知識が効果的に活用されているかを確認し、結果を次のサイクルに活かすことが重要です。

進捗の評価や成果の可視化を支援するシステムを導入すれば、プロセスが円滑に回る仕組みを効率的に構築できます。

知識の循環を支える仕組み作りには、PDCAサイクルの活用も効果的です。PDCAサイクルを効果的に運用する方法やコツについては、以下の記事を参考にしてみてください。

3.ツールを導入して知識の共有・創造をサポートする

SECIモデルの連結化プロセスでは、異なる形式知を結びつけ、新たなアイデアや価値を創出することが重要です。

しかし、知識が分散していたり、検索性が低いシステムを使用したりしていると、円滑な情報共有が妨げられ、知識創造のプロセスが遅れてしまいます。これを解決するためには、適切なツールの導入が不可欠です。

特に、AI技術を活用したツールが効果的です。AIを活用することで、データの解析や知識の整理を効率化・自動化できるため、必要な情報を探す手間が省け、業務効率が向上します。

AI搭載のツールを導入すれば、SECIモデルを効果的に運用し、さらなる生産性向上が期待できます。

AIを活用して業務の生産性を向上させる資料3点セット

ガイドを読む

SECIモデルを活用した企業の成功事例

最後に、SECIモデルを活用して成功を収めた2社の事例を紹介します。

事例を参考に、SECIモデル導入の具体的なイメージを膨らませましょう。

生成AI活用によるサポートデスク業務の効率化と知識創造｜富士通

富士通株式会社は、Salesforceのカスタマーサービス向け生成AI『Einstein for Service』を活用し、サポートデスク業務の効率化を実現しました。

この取り組みは、SECIモデルの知識創造プロセスを活用しています。

項目	詳細
共同化	・AIに関する知識を社員間で共有するため、試験運用を開始・社内で得たノウハウをもとに北米で実証実験を行い、結果を日本にフィードバック
表出化	・AIの活用方法や生成したナレッジ（例：サービス返信、会話のサマリーなど）を外部の部門やパートナーと共有
連結化	・さまざまな生成AIの機能を組み合わせ、新しいワークフローを構築
内面化	・オペレーターがAIから得た知識を日常業務に反映

富士通株式会社は、SECIモデルを通じて知識を効果的に活用し、サポート業務の効率化と顧客満足度向上を実現しています。

AI導入による営業プロセスの最適化と成果向上｜GLナビゲーション

GLナビゲーション株式会社は、Salesforceを活用した営業改革とAI技術の導入により、業務効率と営業成果の向上を達成しています。

この取り組みは、SECIモデルのプロセスを通じて実現されました。

項目	詳細
共同化	・Salesforceを活用し、営業チーム内で知識や経験を積極的に共有
表出化	・営業プロセスや顧客情報をデータ化し、顧客ニーズや商談の進捗を整理・AIを活用し、セールスメールの内容や商談戦略を自動化
連結化	・収集したデータをAIで分析し、失注データや受注データを組み合わせて新たな営業アプローチを設計
内面化	・AIが生成した商談メールや提案内容を確認し、顧客理解を深める

AIを駆使して商談データを整理・分析し、個別対応の精度を高めた結果、商談数は2倍に増加しました。