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10年来のコミュニティ仲間が、初めて”仕事”で組んだ。大企業のAI検証、3か月の軌跡

クラレがCRMとして利用するSalesforceに蓄積した面談記録。その活用に向け、NTTテクノクロスとともにAIエージェントプラットフォーム「Agentforce(エージェントフォース)」を試行的に検証しました。十年来のコミュニティ仲間である2人が、大企業で検証プロジェクトを立ち上げ、可能性と課題を見極めるまでの道のりを語り合いました。

Key Takeaways

This summary was created with AI and reviewed by an editor.

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素材メーカーのクラレと伴走したNTTテクノクロスは、AIエージェントプラットフォーム「Agentforce(エージェントフォース)」の3か月の概念検証を通じ、AI活用の可能性と実用化に向けた課題を明らかにしました。

2人を引き合わせたのは、十年以上にわたるSalesforceのコミュニティでした。クラレの衛藤奈々さんと、NTTテクノクロスの鈴木貞弘さん。ともにSalesforceコミュニティのリーダーを務め、日本に8人しかいない「Golden Hoodie(ゴールデン・フーディー)」の所持者に、大企業でAIプロジェクトを立ち上げ、成果に結びつけるまでの道のりと、そこで越えた「壁」を語り合ってもらいました。

10年以上の付き合いも“仕事”で組んだことがなかった

──2人は、共通してSalesforceのコミュニティメンバーとして久しく活動いただいていて、もう十年来の知り合いだそうですね。

衛藤:私がコミュニティ活動を始めたのが2012年でした。当時の「全国活用自慢チャンピオン大会」(現:SFUG CUP)に出場したのが最初です。鈴木さんとはその頃からですから、かれこれ12、13年になります。

衛藤奈々
株式会社クラレ DX-IT本部 企画管理部 GCRMグループ 主管

鈴木:Salesforceとの付き合いは20年以上になります。コミュニティのリーダーを始めたのは2015年、社内でエバンジェリストに指名されたのがきっかけでした。ユーザー企業の衛藤さんと、パートナー企業の私。立場は違いますが、ずっと同じコミュニティで活動してきました。

鈴木貞弘
NTTテクノクロス株式会社 ビジネスイノベーション事業部 第四ビジネスユニット プリンシパルエバンジェリスト

──10年来の間柄なのに、”仕事”で一緒に組んだことはなかったとか。

衛藤:ありませんでした。パートナーとユーザーの関係ですから、お願いしようと思えばできた。でも、なんだか遠慮といいますか、コミュニティで築いた関係を壊したくないという気持ちがあったんですよね。

鈴木:Salesforceのコミュニティって、一歩外に出るとお客様になる人もいるし、ライバルになる人もいる。でも、中では売り込みや争いが一切ない。参加者の心理的安全性が保たれていて、”大人の友達”ができる場所なんです。

だからこそ、下手に商売を持ち込まないという距離感があるんです。他のイベントだと、参加した翌日から営業メールがどっと届くなんてこともある。でも、Salesforceのコミュニティグループにはそれがない。競合同士が同じ部屋で勉強会をしている。初めて見たときは「大丈夫?」と思ったくらいです(笑)。

面談記録の活用に向け、「Agentforce」を検証

──「Agentforce」を、今回試行的に検証することになった背景を教えてください。

衛藤:クラレは2017年頃からSalesforceを使っていて、お客様との面談記録が大量に蓄積されています。ただ、そこから必要な情報を引っ張り出すのが本当に大変で。グローバル検索を使っても、なかなか欲しい情報にリーチできなかったり、見落としているデータがあったりもしました。

面談記録を貯めるオブジェクトには、みなさん真面目にしっかりした平文で書いてくださるんです。事業部によってはかなりのボリュームで、必要な情報を必要なときに引っ張り出すのは、専任の担当者がいてもおかしくないほどの手間でした。

現場からも「AIでなんとかならないか」という声が上がっていました。そこで、CRMとして利用しているSalesforceの中で、蓄積した面談記録をAIで活用できないかと考えたんです。

それで、面談記録の「検索」「要約」、そして記録の「作成支援」の三本柱でAgentforceを検証することにしました。既存のSalesforceに蓄積した面談記録を対象に、業務でどこまで活用できるかを確認したいと考えました。

──伴走先にNTTテクノクロスを選んだ理由も教えてください。

衛藤:何社か検討する中で、Salesforceに関する知見に加え、Agentforceを自社で導入し、検証を重ねてきた経験を評価しました。

今回の検証で、技術的な課題も相談しながら進められるパートナーだと考え、NTTテクノクロスにお願いしました。検証を進める際には、システム構築に入る前に、現場の課題整理やユースケースの絞り込みから支援いただきました。

鈴木:NTTテクノクロスは、Agentforceの前身といえる「Einstein GPT」が発表された2023年から「これはやらなければ」とプロジェクトチームを立ち上げて、ライセンスが売り出された瞬間に自社導入してきました。

Agentforceは2024年11月、社長からの至上命令で「すぐ使いなさい」 と(笑)。「最も詳しいパートナーになる」という勢いで、知見を貯めてきたんです。実際にAIの概念実証をやったことのある会社は、当時ほとんどなかったと思います。そのような姿勢が評価されたのかなと感じています。

──「真っ先に取り組んでいた」という話がありました。なぜ、そこまで早く動けたのでしょう

鈴木:手前味噌ですが、私たちが「Salesforce MVP」であることは大きいと思います。MVPだと、一般に公開される前のアルファ版・ベータ版の段階から新機能に触れられる。だから最新のAIにも、いち早くキャッチアップできるんです。

お客様がいちばん不安なのは、やはり「実績のないパートナー」です。だからこそ、誰よりも早く自分たちで導入し、知見を貯めておく。それが、安心して任せていただける材料になると考えています。大企業とのプロジェクトですから、ご報告の品質にもこだわりました。

システムを作り始める前に、大事なこと

──AIの概念実証プロジェクトで、成功の分かれ目はどこにあったのでしょう。

鈴木:システムを作る前に、必ずワークショップをやる。今回もそこから始めました。4つの事業部に参加いただいて、丸一日かけてユースケースを出し合い、どの業務が最も効果を測りやすいかを見極めてから、対象を絞り込む。いきなり「システムを作りました」で始まる概念実証は、絶対に失敗します。

衛藤:パートナーによっては、早い段階からシステム構築の話に進むケースがありますが、今回はその前段の課題整理を丁寧にやっていただきました。

鈴木:現場の人にも、上層部にも、「これをシステム化したらどんな未来が描けるか」を一緒に見てもらう。自分事にしてもらわないと、動かないんです。目線合わせと合意形成を、立場の違う人たちを巻き込んで一気にやる。ばらばらの糸を束ねて、一本につなげていく感覚です。

──“上”を説得するには、やはり”見せる”ことが効くと。

鈴木:みなさん最初は懐疑的なんですよ。「本当に使えるの?」「やって何かいいことあるの?」と。可能性を知っている人と知らない人の差は大きいので、それを縮めるには見て、触ってもらうしかない。上の人にも一緒に体験してもらう。それが一番早いんです。

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機能がどんどん増える。追従こそが、最大の”苦難”だった

──鈴木さんが特に気にしたことは何だったんですか。

鈴木:機能のアップデートに追従することでした。Salesforceの年3回のメジャーリリースに加え、Agentforce関連機能はより高い頻度でアップデートされる。先週まで動いていた機能の挙動が変わっている、設定メニューそのものが変わってしまう、ということも起きます。

新しいテクノロジーに触れられるのは嬉しいけれど、常にキャッチアップしなければならず辛い(苦笑)。NTTテクノクロスにはAgentforceをはじめとしたAI専門チームを確立しており、機能の変化をチャットでタイムリーに共有しながら、シナリオ通りに検証できるかを確認していきました。

概念実証を6か月持たせることは、まずありません。3か月でどこまで作り切れるか、そのスピード感がすべてでした。逆に、毎週のように良い機能が出てきたおかげで、当初掲げた概念実証の目標を超えられた部分すらあったと思います。

──触ってみて、限界を感じた場面もあった。

衛藤:ありました。いくつか、プロコードを書かないと先に進めない課題があって。「そこは諦めてください」と。私はコードを書けるアドミンではないので、そこはプロの力を借りるしかなかった。

1人でやっていたら、間違いなく無理でした。「そんなところで詰まるんだ」という発見も含めて、何ができて、何が難しいのか。その切り分けがはっきりできたのが、大きかったですね。

鈴木:正直に言うと、Agentforceの前のEinstein Copilotが出てすぐ試したときは、Salesforceが提供するAIに対しての期待値が高すぎたこともあり、実際にリリースされた機能とイメージしていた理想とのギャップがあったことは確かです。Agentforceも出た当初は設定が本当に大変で。「これを設定しきれるアドミンがいるのか」と。

でも、Salesforceは昔からプラットフォームなんです。SaaSとしては60点、70点でも、プラットフォームの機能を全開にすれば、100点に近づけられる。そこが最大の魅力だと思っています。

──新しいものへの抵抗は、今に始まった話ではないと。

鈴木:実は過去にも全く同じことを私たちは経験しています。

「Lightning Experience」が出たときもそうでした。「なぜお金をかけてまで変えるのか、見た目が変わるだけだろう」と。あの時も、設定すればこんなに良くなるという事例を自分たちで集めて、ユーザーさんを説得していった。やっていることは今と変わりません。

──当初の計画を超えて、追加の検証に入っていると聞いています。

衛藤:はい。ちょうど概念実証の報告をしていた頃に「Agentforce Coworker(エージェントフォース・コワーカー)」が発表され、こちらも追加で検証しています。

対象は、CRMに蓄積した面談記録の検索や要約といった用途です。既存のアクセス権限に沿った情報参照となるかも含め、機能や課題を確認しているところです。今回の概念実証で構築したAgentforceとの違いも整理しながら、業務での活用方法を検討しています。

鈴木:Salesforceを使っているけれど、Salesforceを意識させないという方向にも可能性を感じています。「Teams(チームズ)」やCopilotから呼び出す、SharePointのデータと組み合わせる。ユーザーにとっての選択肢が、確実に広がっています。

管理者は「システムのお守り役」ではない

──AIの時代に入って、Salesforce管理者、アドミンの役割も変わる印象があります。

衛藤:変わってきています。もう、プラットフォームの管理や構築だけができればいい、という存在ではなくなってきた。とはいえ、全部をマルチにこなせる人は、本当に稀です。だから、自分の足りないところを、外の力や社内のリソース、人を巻き込みながら補っていく。それがますます大事になってくるな、と。

鈴木:私がリーダーを務めている「アドミングループ東京」でずっと言っているのは、「アドミンハブになろう」ということです。どこにどんな情報があって、つなぎ込むときは誰と調整すればいいのか。全体を俯瞰して、グランドデザインを描いていく。

「一つひとつのシステムのプロになれ」とは言いません。でも、システムのお守りをするだけの存在から、人とシステムをつなぐ側へと変化させていかなければなりません。

衛藤:結局、いちばん大事なのはコミュニケーション力なんですよね。この十年、そこは変わっていない。私はもともと営業という役割が得意と思っておらず、黙々とやる仕事がしたくてアドミンになったのに、気づけば社内で営業活動をしているような動き方で。「営業より営業じゃないか」と思うくらいです(笑)。

概念実証を実らせる勘所と、これから挑む人へ

──大企業で概念実証を始め、成果に結びつけたい人へ。勘所を教えてください。

鈴木:スムーズに進めるコツは、課題を隠さずに伝えることです。AIは、昨日と同じプロンプトを入れても、今日は違う結果が出る。それが当たり前の世界です。なぜそうなったのかを調べて、隠さず報告し、ではどう改善するかを一緒に考える。

概念実証を3か月一気に走らせて、最後に上の人が結果を見て「話と全然違うじゃないか、本番採用はやめよう」と言われてしまうのが、最悪のパターンです。日々フィードバックを重ねていれば、「これはAIの特性なんだ」と理解してもらえる。ここは絶対に外してはいけません。

衛藤:私からは、伴走の姿勢について話をさせてください。ユーザー企業側もパートナー任せにせず、同じ方向を向いて一緒に取り組むことが大切。プロジェクトメンバーとして、二人三脚で。そのためには、鈴木さんのコメントと同じになりますが、しんどいことや大変なことも、隠さず共有しないといけないと思います。

鈴木:わたしたちも資料などから読み取れるお客様の課題は事前に把握したうえでプロジェクトに臨んでいますが、真の課題は実際に現場のお客様に直接ヒアリングすることが確実です。

クラレは、事業部の人間もきちんと出してくださって、現場の課題が見えた。だからこちらも、いいところも悪いところも隠さずフィードバックできた。いい循環でした。これは余談ですが、要件定義をまるごとベンダーに投げてしまうユーザー企業さんも少なくないと聞いています。その点、クラレは違いました。

──コミュニティから新しい挑戦をしたい人たちにもエールをください。

鈴木:技術的な課題なら、私たちも新機能が出るたびにワークショップをやっています。まず使ってみる、その最初のきっかけをイベントとして作れる。私たちコミュニティメンバーは自分たちが学んだ、経験したことを惜しげもなく共有しているので、ぜひコミュニティをうまく活用してもらえればと思います。

仲間と学ぶ、AI活用の近道は?Salesforceコミュニティ入門

今回の事例のように、仲間と学び合う力は大きいもの。会員の65%がAI・CRMスキル向上に活用しています。まずは自分に合うグループを探してみてください。

衛藤:私が運営しているのは「Admin女子部」や「Salesforce Japan Women in Tech」といった、少人数の対話を大事にするグループです。「実はこういう悩みで困っている」とその場で出してもらって、有識者みんなで答える。「そんなやり方があったのか」と持ち帰って、社内で動き出せたと言ってくださる方がいる。

「AIだ、AIだ」と言われる時代ですが、だからこそ大事にすべき基礎の部分もある。そういう問いも、対話の場から一緒に取り組むことができたらと思っています。

Agentforceの導入、まずは専門家に相談してみませんか


概念検証の進め方やユースケースの絞り込みなど、Agentforceの導入で迷ったらエキスパートにご相談ください。まずは気軽に話してみてください。