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【ダッシュボード披露】Excelとホワイトボードから脱却しAI活用へ。ベルテックスがSalesforceで築いた「営業管理の王道」

部門ごとのExcel乱立やホワイトボード管理からSalesforceを導入し、営業管理の効率化・可視化に成功した不動産企業、ベルテックス。定着までの3年の試行錯誤やダッシュボードの具体的な運用方法、最新の「Agentforce」を用いたAI活用構想に迫ります。

投資用不動産を中心に、開発・分譲、販売、賃貸管理、不動産ファンド、法人向け提案まで事業領域を広げるベルテックス。2010年の設立以来、首都圏を中心とした物件の目利き、幅広い金融機関との連携、販売後の管理まで担うワンストップ体制を強みに成長を続けています。

同社がSalesforceを導入したのは2019年。当時は、部門ごとにExcelファイルが乱立し、物件在庫はホワイトボードで管理していました。営業担当者が朝、ホワイトボードをスマートフォンで撮影し、その日の提案材料を確認する。そんなアナログな運用から、いまでは「Agentforce Sales(旧Sales Cloud)」上で売上、パイプライン、商談ステージ、行動漏れまでをダッシュボードで確認する営業管理体制へと進化しています。

今回は、Salesforce導入を推進してきたリーダーの2人、澤田統吉・取締役不動産事業本部本部長と横溝夏弥・執行役員経営企画本部本部長に、導入当時の課題、定着までの試行錯誤、現在のダッシュボード活用、そして「Agentforce」を中心としたAI活用の構想について聞きました。

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“最新のExcel”が大量にある。部門ごとの情報分断が最大の課題

──まず、ベルテックスの事業内容と強みを教えてください。

澤田:ベルテックスは、主に単身者向けのワンルームマンションを中心に、投資用不動産を販売しています。

物件所在地は主に東京都内、横浜、一部川崎などです。お客様の多くはローンを活用して物件を購入されるため、提携できる金融機関の選択肢が多いことは大きな強みです。お客様の収入や支出、投資経験などに応じて、より適した提案ができる体制を整えています。

また、新築・中古、ワンルームから一棟まで幅広い物件を扱っていること、販売後の賃貸管理まで担えることも特徴です。

近年は不動産小口化商品や建設業にも取り組み、物件の企画・仕様、工期、コストをより自社でコントロールできる体制づくりも進めています。法人向けには、財務諸表を見ながら10年単位の計画を一緒に描き、不動産を企業成長や安定性の向上にどう組み込むかを提案しています。

──Salesforce導入前の業務は、どのような状況でしたか。

澤田:信じがたいと思いますが、私が入社する前の2018年頃は社員1人ひとりにPC1台が整備されている状況ではありませんでした……(苦笑)。

勤怠の入力や経費精算も、隣りの席の人に「PCを貸して」と声をかけるような状況です。営業が扱う在庫も、ホワイトボードにポストイットのような紙を貼り、物件にお客様の押さえが入るとマグネットを置く。営業担当者は朝、会社に来るとそのホワイトボードをスマートフォンで撮影していました。びっくりするほど、アナログな管理です。

さらに、課題はまだあります。部門ごとに情報が分断されていたんです。

物件を仕入れ、物件情報を営業担当者に渡し、販売後は会計や管理部門に情報を渡す。そこから仕入れ先への送金、入居者からの入金と退去、原状回復工事、次の入居者募集へと業務は続きます。しかし、その過程で各部門がそれぞれExcelを持ち、それを更新し、「最新のExcel」がいくつも存在していました。

人の手で転記や引き継ぎを重ねると、伝言ゲームのように情報が少しずつ変わってしまう。どの情報が正しいのかを確認する作業にも手間がかかっていました。

これは抜本的に改革しないとまずいな、と。なので、私が入社した直後にSalesforceの導入を決めました。

定着に3年。カギは制度と現場の推進者

──Salesforce導入時、どのような期待がありましたか。

澤田:1つは、情報の一元化による業務効率化。仕入れ、営業、会計、管理といった一連の流れの中で、同じ情報を何度も入力したり、正誤を確認したりする時間を減らすことを期待していました。

もう1つは、売上向上への期待です。Salesforceには、カスタマイズの柔軟性、開発力、そして実績があります。営業の実力が上がれば収益への影響も大きい。そうした狙いもありました。

──導入後、現場定着は順調でしたか。

横溝:大変でした(苦笑)。そもそも1人にPC1台がない状態からのスタートです。入力してもらう、活用してもらうというハードルは非常に大きかった……。

ブレイクスルーになったのは、営業担当者の評価をSalesforceに入っている情報と結びつけたことです。入力しなければ、営業成績として評価されない。制度としてそう位置付けたことで、一定の入力は進むようになりました。

ただ、それだけで定着したわけではありません。実感として、うまく回り始めるまでには3年ほどかかりました。営業の課長陣やSalesforceに前向きなメンバーが、根気強く説明し、現場を引っ張ってくれたことが大きかったと思います。

──定着を進めるうえで、印象的だったことはありますか。

横溝:Salesforceで入力した情報が可視化され、今の状況がすぐに分かる。場合によっては、先の予測もできる。そうした体験を面白がる人が自然と出てきました。

現場では、上から言われるよりも、隣りの席の人や先輩に言われたほうが動くことがあります。「Salesforceが好き、面白い、もっと良くしたい」という人が各所に出てきて、そうした人たちが活用を広げていった面があります。上司も「それは良いね。進められるところは進めていい」と後押しする雰囲気がありました。

また、コロナ禍もある意味ではデジタル化の後押しになりました。在宅勤務が待ったなしの状況になって変わらざるをえなかった。当然、ホワイトボードよりもSalesforceのほうが、相性が良いですよね(笑)。並行運用を経ながら、徐々にSalesforce中心の運用へ移行していきました。

ダッシュボードは営業マネジメントの“共通言語”に

──現在はSalesforceをどのように活用していますか。

澤田:販売領域では、「Agentforce Sales」のダッシュボードを中心に活用しています。特に重視しているのは可視化です。期間、決済予定数、売上見込み、案件のステージなどを細かく確認できるようにしています。

たとえば、売上・見込みのダッシュボードでは、年間目標に対する確定売上と見込み売上、ステージ5以上案件、担当者別の売上金額や件数、四半期の進行中商談などを確認できます。単に数字を見るだけではなく、今どのフェーズにどの案件があり、どこに注力すべきかをマネージャーが判断するための画面です。

──商談ステージはどのように定義されていますか。

横溝:ベルテックスの営業スタイルに合わせて独自に定義しています。アポイントの取得、課題設定、明確な購入条件の確認、クロージング、申し込み、契約、ローン契約、決済といった流れをステージで管理しています。たとえばステージ5は申し込み、ステージ6は売買契約のタイミングです。

「この案件は本当にステージ5なのか」「決済予定日は妥当なのか」「次回行動は設定されているのか」。マネージャーがダッシュボードを見ながら確認し、営業担当者に助言することで、データの正確性と営業活動の質が両方高まります。

──日々の運用では、どのようなダッシュボードを使っていますか。

横溝:獲得アポ件数や商談数などの活動量を確認しています。個人目標と全体目標を設定し、ランキング形式でも見えるようにしています。

加えて、行動漏れを見つけるための一覧も用意しています。次回行動期日超過、次回のアポイント日超過、次回行動期日と次回アポイント日の両方が未入力の案件、2週間進捗更新のない案件、決済予定日超過案件などです。これは単なる監視ではありません。営業担当者本人やマネージャーが、どの案件に手を入れるべきかを把握するための仕組みです。

データがあるから、AIで営業ノウハウを再現できる

──Salesforce導入後の成果をどう捉えていますか。

澤田:会社の成長にはさまざまな要因がありますので、一概にSalesforceを導入したからこれだけ伸びたとは言い切れませんが、ただ、一人当たりの付加価値額という意味では伸びています。

もし現在の規模でSalesforceがなかったら、管理業務の負荷や運用のコストが、もっと大きくなっていたかもしれません。そう考えると、導入によって一人当たりの生産性は確実に高まりました。

──今後はAIエージェントプラットフォーム「Agentforce」の活用も計画されています。どのような課題を解決しようとしているのでしょうか。

澤田:営業組織では、トップ層と中堅・新人層の差がどうしても生まれます。特に投資用不動産の提案では、初回面談での信頼構築、リスクの伝え方、ご理解を深めていただくための継続的なご説明、ご契約判断に向けたご説明、融資リスクの見極めなど、経験に依存しやすい要素が多くあります。

そこで、商談の会話データを蓄積し、トップ営業の質問順序、ヒアリングの深さ、提案内容などを分析できるようにしたいと考えています。

商談前には、AIが顧客データや類似案件を整理し、確認すべき論点を示す。商談後には、良かった点や改善点をフィードバックする。営業担当者一人ひとりが、自分の伸びしろを把握し、セルフ学習できる状態を目指しています。

提案資料では、商談準備、商談、商談学習、商談更新の流れの中で、過去の会議記録からAIがヒアリング状況を可視化し、確認漏れを把握したうえで商談に臨める姿を描いています。商談内容を自動で蓄積することで、属人的だった商談準備や振り返りを仕組みに変えていく構想です。

コンプライアンスと顧客提案の高度化にもAIを活用

──AI活用では、コンプライアンスもテーマになっています。

横溝:投資用不動産の営業では、お客様に誤解を与える表現や、リスク説明の不足が大きな問題になりえます。現場のすべての会話にマネージャーが目を配ることは難しい。そこで、面談記録をAIでチェックし、コンプライアンス上適切でない表現が出ていないかを把握する仕組みを検討しています。

たとえば「絶対儲かる」のような表現が出ていた場合、即座に否定するというより、マネージャーが会話のポイントをつかみに行くための手がかりにする。営業を縛るためではなく、お客様との信頼関係を守り、プレイヤーを適切に支援するための活用です。

──顧客提案の高度化では、どのような可能性がありますか。

澤田:投資用不動産では、お客様に「買いたい」という意思があるだけでは不十分です。そもそも買うべき状態かどうか、ローン枠としてどの程度の取り組みが可能か、どの金融機関なら可能性があるかを見極める必要があります。

これまでは、営業担当者が直感や経験で「このお客様は購入いただけるはず」と判断する場面もありました。今後は、Salesforce上の顧客データや金融機関情報を活用し、ローンサジェストのような仕組みで、より再現性のある判断を支援していく構想があります。

将来的には、既存のお客様が数年後に追加購入できる可能性を判定し、どのタイミングでどのような提案を行うべきかを見極めることも視野に入ります。

ただし、AIがすべてを置き換えるわけではありません。お客様のモチベーションや不安、営業担当者との相性、関係構築といった人間だからこそ捉えられる領域もあります。AIでデータを整理し、営業効率を高めながら、最後は人間が相手に合わせて向き合う。そのバランスが重要だと考えています。

データがあるからこそ営業基盤になる

──改めて、Salesforceをどのように評価していただいていますか。

澤田:ベルテックスのSalesforce活用が示しているのは、優れたダッシュボードを作るだけでは営業管理は変わらない、ということです。

商談ステージ、決済予定日、金額、次回行動、活動量。これらの項目が正しく入力され、現場の共通言語となり、マネージャーが会議や1on1で使う。そこで初めて、ダッシュボードは“見るだけの画面”から“営業を動かす仕組み”になります。

2019年の導入から定着まで約3年。Excelやホワイトボードとの並行運用、入力への抵抗、評価制度との連動、現場の推進者の出現、マネージャーによる活用。そうした積み重ねの先に、ベルテックスの現在の営業管理があります。

そして、その土台に6年以上の顧客・商談・物件データが蓄積されているからこそ、Agentforceを活用したAIの取り組みにも現実味が生まれています。営業ノウハウを科学し、AIで再現性を高める。ベルテックスの次の挑戦は、Salesforceを顧客管理・営業支援の枠組みを超え、営業組織の成長基盤として進化させることです。

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取材・文:木村剛士
撮影:大橋友樹

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