セールスフォース・ジャパンは、新しいテクノロジーやプロダクト・サービスを発表した時に、定期的にアナリストや記者をお招きして会見を開いています。
ただ、Salesforceやテクノロジーに精通するプロ向けの説明になるだけに、わかりにくいことがあるかもしれません。また、プレスリリースには「一定の型」があり、読み解きにくい体験をされている人もいらっしゃるかもしれません。
そこでSalesforce blogでは、セールスフォース・ジャパンの広報担当者に内容をわかりやすく、そしてフランクに解説してもらいました。
目次
今回の発表内容
Salesforce、「Salesforce Headless 360」を発表 システム全体をプログラム可能にする開発者とAIのための新しい基盤
▶プレスリリースはこちら

セールスフォース・ジャパン株式会社
マーケティング統括本部 広報部 シニアマネージャー
企業向けAIエージェントの最新事情
パーソナライズ×信頼を両立する自律型AIエージェントへの道筋
企業がAIを効果的に導入し、顧客との信頼関係を築くための具体的な方法を紹介します。自社のAI戦略やロードマップをどのように描いていくかのヒントが満載です。ぜひご覧ください。
Question1 ストレートに「Headless 360」って何?
Salesforceの機能とデータを、Salesforceの画面を開かなくても(Salesforceのアプリケーションを立ち上げなくても)、どこからでも使えるようにする設計思想であり戦略です。
「Headless(ヘッドレス)」とは文字通り「頭のない」という意味で、ここでいう「Head」とはユーザーインターフェイス(UI)のこと。つまり、「UIのないSalesforce」ということです。
正確には、「UIがない」ではなく「UIはなんでもいい」。従来は、ブラウザやアプリでSalesforceを開かないと顧客のデータやCRMの機能に触れられませんでしたが、Headless 360ではその制約をなくしました。
SlackからでもSalesforceから提供しているアプリケーションじゃなくても、LLMからもあらゆる手段でSalesforceを活用できるんです。いわば、Salesforceの“解放宣言”です。

Question2 なぜこの名称なの?名称に込めた思いは?
「Headless」は、ECサイトの世界では普及している考え方です。従来のネットショップはユーザーが使う画面(フロントエンド)とデータ(バックエンド)が一体化していましたが、「ヘッドレスコマース」はその2つを切り離し、どんな画面やデバイスからでも商品データを呼び出せるようにしました。
Salesforceはこの発想をCRMに持ち込みました。Salesforceという”頭(UI)”を外して、データと機能だけを純粋なインフラとして開放する。その宣言が「Headless」という言葉に込められています。
そして「360」は、Customer 360(Salesforceが長年掲げてきた”顧客を360度理解する”というビジョン)の継承です。UIがなくなっても、「顧客理解という本質は変わらない」というメッセージでもあります。
次の一手として注目される「ヘッドレスコマース」とは何か
Eコマースを取り巻く変化を俯瞰したうえで、ヘッドレスコマースとは何か、そのメリットと導入のハードル、推奨したい導入方法について解説します。
Question3 なぜ今のタイミングなの?
理由は2つあります。それは「AIエージェントの普及」と「ツールの多様化」です。
人間の代わりにタスクをこなしてくれるデジタルな相棒(=AIエージェント)が急速に広まり、そのAIエージェントが「正確な顧客データ」にアクセスできるかどうかが仕事の質を左右するようになりました。
どんなに賢いAIでも、参照するデータが手薄で古ければ的外れな回答・提案しか出てきません。最新モデルに3年前のデータを食わせるのは、最新のカーナビに江戸時代の地図データをインストールして運転するようなもの。目的地には永遠にたどり着けません。
また、SlackやTeams、ChatGPT、Claude、Geminiなど、企業・組織で従業員が使うツールは多様化。企業が管理・使用しているアプリケーションの平均数は897(MuleSoft「2025 Connectivity Benchmark Report」、IT リーダー1050人調査)にもおよぶという調査結果もあります。
ユーザーにとって、業務に合わせてアプリケーションを切り替えるのはこれまで以上に苦痛なはず。それを解消する1つの手段として考案したんです。
Question4 Headless 360がない世界とある世界の違いを教えて
営業の商談でイメージしてみましょう
まず「ない世界」。商談前日、Salesforceを開いて顧客情報を確認し、Teamsのチャット履歴を掘り起こして過去のやりとりを思い出し、ChatGPTに「この会社向けの提案ポイントを教えて」と打ち込みます。
でも、ChatGPTはその会社に関する深い知見を持っていませんし、そもそも顧客情報という超機密情報をChatGPTに食わせるわけにも行きません。結果、解像度がとても低い提案内容を持って商談に挑むことになります。
では「ある世界」。Teamsで「明日の商談、何を押さえればいい?」と入力するだけで、AIエージェントがSalesforceの商談履歴・過去の問い合わせ・最新メールを自動で参照し、「先月の価格交渉が未解決です。競合他社の提案が届いている可能性があります」と教えてくれます。Salesforceを開く必要はありません。顧客データが、あなたの使いたいツールで”生きて動く”わけです。
Question5 どうすれば実現できるようになるの?
Headless 360は、60以上のMCPツールとCLIを外部に公開することで実現します。これにより、あらゆるAIエージェントが最小限のセットアップでSalesforceのデータにアクセスできます。カギは3つのレイヤーです。
- Data Cloud — 顧客データを1か所に統合し、AIが参照できる「唯一の正解」を作る
- MuleSoft — SalesforceとTeams・Gsuiteなど外部ツールをつなぐ「翻訳機」
- Agentforce — そのデータを使って実際に動くAIの現場スタッフ
その環境(Salesforce+Teams+複数LLM+Google Workspace)に営業シーンで当てはめると、
- Teamsで商談の事前確認 :「〇〇社との明日の商談、何を確認すべき?」と入力するだけで、Agentforceがリアルタイムでセールスデータ・問い合わせ履歴・競合情報をまとめて返答します。Salesforceを一度も開くことはありません。
- 複数LLMとのデータ連携:MCPプロトコル経由でChatGPTやGeminiにSalesforceの顧客データを安全に渡せます。LLMに「この顧客に最適な提案書を書いて」と頼むと、実際の購買履歴を踏まえた文章が生成されます。
- Googleドキュメントに顧客情報を自動挿入:提案書テンプレートにSalesforceのデータが自動で流し込まれる。MuleSoftがGoogleドライブとSalesforceをつなぐ橋渡しをします。
- 承認フローをTeamsで完結:見積もり承認をSalesforceで行うために画面を切り替える必要がなく、Teamsのカードで「承認」ボタンを押すだけで完了できます。
エージェント活用戦略:データ資産で構築するAIアプリケーション
AIアプリケーションを構築することによる課題拡幅のアプローチも紹介します。
Question6 Salesforceは単なる「データの格納庫」になりさがるの?
むしろ逆です。Headless 360の世界で、Salesforceの価値はさらに高まります。
どんなに優秀なAIを使っても、参照するデータが不正確でバラバラ、古ければ良質な結果は出ません。「データが正確で、構造化されていて、セキュア」。これがすべてのAIエージェントの大前提です。
Salesforceは頭を開放する代わりに、企業の意思決定を支える信頼できるデータの中枢(System of Record)として欠かせない存在になります。これは、格下げではなく、役割の進化です。The Registerも「Salesforceが長年かけて作り上げてきたデータ構造とワークフローこそが、ユーザーをプラットフォームに留める価値だ」と指摘しています。
日常業務の即戦力となるAgentforceの始め方と3つのユースケース
業務に活かせる生成 AI・エージェント活用のヒントを、ぜひ本資料でご確認ください。
Question7 Salesforceは何の会社になるの?
「人とAIエージェントを支える、AI CRMの会社」です。かつては「CRMソフトウェアの会社」でした。次に「クラウドSaaSの会社」になりました。そして今、Salesforceが目指すのは「あらゆるAIエージェントが信頼して動けるAI CRMの会社」という立ち位置です。
UIを持たないからこそ、どのツール・どのAIとも組み合わさる「縁の下の力持ち」になれます。Salesforceは「AIが動くためのインフラ」として存在感を高めていきます。
Question8 Salesforceのビジネスモデルは変わるの?
変わりません。が、拡張されます。
これまでは「Salesforceのシートライセンス(1ユーザー×月額料金)」が中心でした。Headless 360の時代、これに加えて「AIエージェントが処理したアクションに応じた従量課金」モデルが加わっています。すでにAgentforceは会話やアクション単位での課金モデルを導入済みです。
つまり「人間が使う席の数」から「AIがこなした仕事の量」へと収益の柱が進化します。
Notionは導入後、平均営業サイクルを4か月から3週間に短縮。DocuSignはQ4 2025に200件以上のプライベートオファーを処理し、署名完了までの時間を60%削減したという事例も発表されています。
企業が「成果で費用を払う」モデルへの移行は、むしろSalesforceにとって追い風です。










