Key Takeaways
徹底した営業の仕組み化などによって高収益企業として知られるキーエンス出身者が創業し、今急成長を遂げている営業変革コンサルティングファームのGrand Central。
同社は、「経営にとって当たり前の存在」とSalesforceを評価いただき、創業時に導入・運用しています。爆速成長するスタートアップは、Salesforceをどのように活用しているのでしょうか。
吉田有汰・取締役COO、舩橋慎司・Sales Innovation本部ゼネラルマネージャー、営業アシスタントの小林優希子さんに、 セールスフォース・ジャパンで「Agentforce Sales(旧 Sales Cloud)」 のプロダクトマネージャーを務める伊藤深雪が聞きました。
目次

数字は嘘をつかない。創業当初からSalesforceで徹底管理
伊藤:まず、Grand Centralの事業内容を教えてください。
吉田:お客様の営業支援を軸に「セールスデベロップメント」「セールスDX」「セールスイネーブルメント」を展開しています。
戦略や組織の変革、人材開発、テクノロジー活用などセールスに関連するあらゆることを多角的にご支援できることが強みです。Salesforceとの関係は、ユーザーでもありますが、ビジネスパートナーでもあり、自社のノウハウを生かして導入・活用支援もお客様に向けて手がけています。
伊藤:創業は2021年とまだ5年も満たないのに、年商は20億円に迫る勢いですね。
吉田:はい、初年度は1.6億円でしたが、昨年度(2025年9月期)は18.5億円。今年度は25億円を予定しています。おかげさまで、順調に伸びてきています。
伊藤: Salesforceはいつからご利用いただいていますか。
吉田:創業直後からです。
Grand Centralの創業メンバーは元キーエンス出身者で、私もその一人なのですが、キーエンスは徹底した営業の仕組み化とマイクロマネジメントによって再現性と生産性向上にこだわる組織です。CRMやSFAも独自の理論に基づいて当然活用していましたし、その必要性も十分なほど感じていました。
そうした環境に身を置いていたメンバーが立ち上げた会社という背景もあり、CRMやSFAの導入は当たり前でした。
とはいえ、スタートアップですから、立ち上げ期の出費は極力抑えたい気持ちはあります。規模が小さい間は、スプレッドシートなどで管理するという考え方もあるでしょう。ただ、いずれは必ず必要になる。そうなれば、移行作業に時間をとられ、場合によっては過去のデータを活用できなくなるリスクだってある。
Salesforceの価値を私たちは知っていますから、オフィスを借り、デスクや椅子を導入するのと同じ感覚で、 Salesforceを創業直後に契約しました。

株式会社Grand Central 取締役COO
伊藤:嬉しい言葉をありがとうございます。実際に Salesforceをどのように活用いただいているか、教えてください。
吉田:目標値に対する進捗・実績、現状の着地見込み、それを構成するパイプラインの状況、あるいは付随するKPIといった経営において必要な情報、すべてを Salesforceで管理しています。
舩橋:具体的にいえば、営業領域ではローコードやノーコードでかなりカスタマイズして数多くのダッシュボードを作り、リード流入数、商談数(商談進捗数)、プロジェクトごとの粗利やメンバー管理、問合せ管理といったKGIやKPIの実績値をすぐに把握できるようにしています。
数字は嘘をつきません。ダッシュボードは事業部の健康状態を知るための心強いパートナーと位置付けています。

株式会社Grand Central Sales Innovation本部 ゼネラルマネージャー
精緻な売上管理は絶対必要。Salesforceしかない
伊藤:たくさんのダッシュボードを作成・活用しているとお聞きしていますが、特に重宝しているものがあれば、教えてください。

株式会社セールスフォース・ジャパン 製品統括本部 プロダクトマネージャー
舩橋:売上を管理する「リザルト」ダッシュボードですね。
Salesforceの実装をお手伝いするビジネスでは、業務完了報告書と検収書をお客様からいただいて、初めて売上を計上できます。このダッシュボードでは、契約済みだけれどプロジェクト途中で未計上のもの、今月確定している金額、それぞれどれくらいあるのかをひと目で把握できるようにしています。
下部に表示しているのは、進めている商談の状況です。商談のフェーズ2や3の段階では、まだ金額が確定していないので見込みも分からない。ある程度、提案書が固まってきた段階で、インプリ(実装)、コンサル、ライセンスがそれぞれどれくらいの金額の商談として進んでいるのかという“読み”を、週次で入ってくる情報をもとに管理しています。
ここでは▲、△、◯、◎といった記号で、商談の確度を表現。これらの記号は感覚で使うのではなく、幹部メンバーのキーエンス時代の経験を参考に、Grand Centralとして定義を明確に決めています。だからこそ、この確度の入力を、現在はAIに委ねています。AIの活用は後ほど詳しく説明しますね。
そのうえで、1on1でメンバーと確認しながら、数字が上振れするのか下振れするのかを見極めて、更新していきます。
Salesforceだからこそできる部分でもあると思いますし、絶対にやらなければいけない部分だと思っているのでイチオシとして紹介しました。

プロジェクト管理の一元化もSalesforceで実現
伊藤:模範のような活用法で、お話を聞いていて嬉しくなります。Grand Central以外では見かけない、ユニークだと思うダッシュボードはほかにありますか。
舩橋:当社らしい活用方法としてプロジェクト管理をSalesforceで行っていることです。プロジェクト内の大まかなタスク管理を、このダッシュボード1つに集約しています。
プロジェクトをタスク管理ツールで管理していると管理が緩くなってしまいがちです。そこで、このダッシュボードを使って社内キックオフをしたか、お客様とのキックオフをしたか、メンバーをアサインしたかといった進捗を、週次のプロジェクト進捗会議で確認しています。
メンバーのアサイン管理もダッシュボードで管理しています。どのメンバーが今どうアサインされているのか、今月や来月で完了するプロジェクトはどれで、どれくらい空きが出てくるのかを見ながら、受注案件をPM(Project Manager)に渡していきます。
外部委託の管理機能もあります。毎月の会議で外部発注の金額をチェックしながら、契約と発注が整合しているか見ています。アライアンス活動の管理も、ダッシュボード化しています。セールスフォース・ジャパンと今月どれだけ打ち合わせをしているか、他のアライアンス先とどれだけ活動しているか。定量的に見ながら、活動量を把握してマネジメントに生かしています。
加えて、ユニークという点では、営業アシスタントの小林さんが作った「ゼロダッシュボード」も、ぜひご覧ください。


能動的なデータ更新を促す「ゼロダッシュボード」
伊藤:「ゼロダッシュボード」とはどのようなものか、教えてください。
小林:営業戦略の立案と実行を支援する「セールスディベロップメント事業部」向けに作ったものです。
商談の更新漏れ、見積もりの登録漏れ、原価や外注費の入力漏れ、業務委託管理の漏れ……。最多のメンバーが所属する事業部ということもあり、こうした漏れや不備が多くて、私が毎日のようにアナウンスして入力を促していました。
入力漏れ件数が一目瞭然のダッシュボードがあれば、自分たちの状況が分かるし、自分たちで動こうという風になるはずと考え、「どんな表現をすれば見る人に刺さるものになるか?」という視点を意識して、この「ゼロダッシュボード」を作りました。入力漏れに対応して数字を減らし、ゼロを目指すのでこの名称にしました。
数字だけでは「自分ではない」という意識になりがちなので、「誰のレコードが漏れているか」「何を更新すれば数が減るのか」まで明示。自分の名前が出ていたら意識が高まりますし、チームメンバーが本人に声を掛けて助け合う文化が根付いているので、敢えて詳細を出しています。
例えば、「継続するかどうかが未定で更新されていない」「今月、本来なら失注か受注か決まっていなければいけないのに、まだそのフェーズのまま」といったものが、すべて名前付きで分かる形になっています。絵文字でカテゴライズもしていて、ぱっと見てチームで助け合えるようにしています。

伊藤:すごい。こんな使い方もできるのですね!
小林:ダッシュボードは、売上を管理するという側面でも大切ですが、「レコードの情報を更新させる」といった目的でも長けていると思います。「見えてないからやらない」「言われてないからやらない」などの受け身な更新ではなく、能動的にメンバーへ更新させることにもつながっていくので、Salesforceのデータを健全に保つためにはとても重要です。
舩橋:データが綺麗に保つことで、BIを活用して、経営分析のスピードと深さを向上させることができます。AIの活用においても重要。小林さんには頭が上がりません。
伊藤:データ入力はお客様の中で苦労されているポイントなんです。データ入力を定着させるために、ダッシュボードの他にもどんな工夫をされていますか。

小林:日常の運用では、「Slack」のワークフローで決まった時間に呼びかけます。ただ、見慣れると効果が薄れてしまうため、チームミーティングでも呼びかけ、さらに改善が見られない人には個別に声をかけます。ごく当たり前のことですね。
吉田:Salesforceの利用が当たり前の会社なので、特別にデータ入力の意義を浸透させるような取り組みはしていないんですよね。ただ、新しいリリースや入力項目の追加を行う際には、全体ミーティングを開催し、その意義と目的をしっかりと伝えながら周知するようにしています。

AIが営業の質と効率を高める
伊藤:ダッシュボードの運用や営業活動を支えているAIの活用法についても教えてください。
吉田:急成長してきた中で、教育や育成に時間を割けないことが課題でした。時間を捻出するために、クライアントワーク以外の業務を極力なくしたいと思っている中で着目したのが、議事録を作ったり、その内容を要約してSalesforceに入力したりする作業です。これを簡略化しています。
舩橋:当社は商談の大部分をZoomで行います。そのやり取りをAgentforceで文字起こししたうえで、議事録の要約、ネクストアクションの抽出、事前準備や商談後の自己振り返りまで、Agentforceで実現しています。
商談は1回目でヒアリング、2回目で提案が基本。1回目の自己振り返りとして、BANT情報(Budget:予算、Authority:決裁権、Needs:ニーズ、Timeframe:導入時期)をちゃんと聞いているかなど、22項目をAgentforceでチェックします。同時にビデオ通話のヒアリング結果をまとめてくれるので、効率的に入力項目を埋められます。
また、商談中は「議事録を漏らさないようにしないと」と心配せずに、お客様との会話に集中できるように。マネージャーとしても、営業とのミーティングを設定しなくても商談内容を詳しく把握してフォローできます。
伊藤:AIの精度や導入効果をどのように評価していますか。
舩橋:点数をつけるとすれば、セールスディベロップメント事業部では90点。ほかの事業部では使い方が異なるので、同じような点数とは言えませんが、今後、事業部ごとにプロンプトをメンテナンスしていく必要があると考えていますが、概ね満足しています
吉田:定量的な効果では、議事録の要約やSalesforceの項目入力に費やしていた時間が3分の1程度に減少しました。Zoomの動画を見返して提案書を作る作業も、半分から3分の2くらいまで時間を短縮できています。その結果、営業活動そのものにかけられる時間が、各自の活動全体の半分程度に増加。社内の研修や育成に充てる時間も増えました。

メンバー以上にマネジメントがSalesforceを活用するべき
伊藤:AIの価値を実感いただいている中で、今後はどう活用を拡大するお考えですか。
舩橋:Agentforceは導入したばかりなので、ブラッシュアップしながら、徐々に活用レベルを上げていくつもりです。
その中で「どこまでAIに任せて、どこで人が確認するか」が重要な論点になります。今はリスクを避けるためにも、人がしっかり内容を見てから次のアクションを起こすようにしています。ですが、将来的にはAIの精度が上がれば、Salesforceで特定のタイミングでお客さまに自動でメールを送るなど、完全にAI任せにすることもあり得ると思います。Agentforceにメール対応を任せたり、問い合わせ対応を自動化したりすることを構想中です。
吉田:Agentforceを導入した背景には、Data 360(旧 Data Cloud)と連携させて過去の支援実績をベースに仮説を立てたいという狙いもあります。今は手作業で探したり、メンバーに聞いたりしながら提案を準備していますが、Agentforceにベストな実績や過去の提案を提示してもらいたい。
また、営業の育成で欠かせないロープレでの活用も考えています。さまざまな業界・業種・規模のお客様のパターンがあるので、いろんなケースを作れますよね。
Agentforceを使ったロープレで育成時間を短縮して、即戦力をどんどん輩出できる仕組みを構築したいと思っています。
伊藤:ご期待、ありがとうございます。最後に、とても有効的な活用をいただいている先進ユーザーとして、Salesforceの活用で迷っている企業へメッセージをお願いします。

舩橋:おかげさまで順調に業績が伸びていますが、この成長の背景には創業直後にSalesforceを導入したことが少なからず寄与しています。歴史を積み重ねるほどにデータが増え、会社の財産としての重みが増し、それをもとに進化していけます。
スプレッドシートだと属人化が問題になったり、過去年のものが捨てられたり、一貫性がなかったりする。これから事業を始めるのであれば、その時点でSalesforceなどSFAを導入するという観点は必要不可欠だと思います。
吉田:一方で、導入してもきちんと使いこなせていないお客様が非常に多い。当社では、Salesforce導入済みの企業に対して、再構築の支援をすることが少なくありません。
ポイントは、マネジメント側が意識を改革して、Salesforceを使って会話をしたり、議論をしたり、資料を作ったりすることの習慣化です。そうしないとSalesforceをメンバーに浸透させることは難しい。それができれば、売上を二桁レベルで毎年伸ばすことも十分可能だと思います。
伊藤:とても勉強になり、私も多くのヒントをいただきました。ありがとうございました!
データ×AgentforceでひらくAI時代の業務変革
顧客・従業員体験の向上からAIガバナンス、Salesforce活用まで―AI導入の成功に導く実践ガイド
執筆:加藤学宏
撮影:北山宏一
取材・編集:木村剛士












