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6万2000人のファンを「ひとり」として知る。プレミアリーグ名門、トッテナム・ホットスパー・フットボール・クラブ × Agentforce ファンエンゲージメント変革事例

世界最高水準のスタジアムを持つプレミアリーグの名門クラブが、Salesforceを基盤に、あらゆるデジタルタッチポイントにおけるファン体験を強化しています。Agentforce本番稼働から約2か月が経過、その成果と、次に目指す世界を紹介します。

徹底解説「トッテナム・ホットスパー・フットボール・クラブが挑む、AIエージェント時代のファンエンゲージメント」

【プレミアリーグDXの最前線】スタジアムテクノロジーが変える次世代デジタルファン体験

ロンドン北部に誕生したの新スタジアムは、2019年のオープン以来、スポーツ施設の常識を塗り替え続けています。6万2000人以上を収容できるスケールと、世界最先端のテクノロジーを備えたこのアリーナは、まさに多目的な施設です。

ピッチは3つのセクションに分割・格納が可能で、ピッチの下から別の床面が現れます。これにより、NFL(アメリカンフットボール)の試合やラグビー、世界的アーティストのコンサートなど、多彩なイベントを開催できます。

F1とのパートナーシップによりスタジアム内にゴーカートのトラックも設置でき、「スカイウォーク」と呼ばれるアトラクションでは屋上を歩きながらロンドンの街並みを一望できます。

そのため、このスタジアムには、クラブのコアなファン層にとどまらない多様なオーディエンスが訪れます。コンサートや企業イベントのために訪れるビジターも、それぞれのニーズと期待を持ってやってきます。

では、これほど多様なオーディエンスに対して、クラブはどのようにして「一人ひとり」に寄り添う体験を提供しているのでしょうか。その答えは、「Salesforceとの変革」です。

【データサイロ化解消への道】変革前に立ちはだかっていた3つの壁

これだけ異なるニーズを持つ人々に、適切なタイミングで適切な情報を届けるには、データの一元化とパーソナライゼーションが不可欠です。

①クラブが最初に直面した1つ目の課題は、適切なツールセットの整備でした。データウェアハウスを統合レイヤーとして利用し、スケジュールベースでデータを取得していたため、技術的な限界がありました。

②2つ目の課題は、データがつながっていないことでした。オーディエンスのデータが複数のシステムに分散しており、同一人物の識別情報もバラバラな状態でした。オーディエンスのプロファイルをひとつのビューで把握できず、「この人が誰なのか」を横断的に理解する手段がありませんでした。

③3つ目の課題は、スタッフとファン双方への影響です。ファイルを手動でダウンロードして転送するといった日常的な作業により、データ処理に多くの時間がかかっていました。これが、Salesforceによる変革の出発点となりました。

【オーディエンスデータ基盤統合】Salesforce Data 360 × Unified Viewで実現

変革のファーストステップとして、クラブが最初に集中したのはオーディエンスデータ基盤の整備です。ここが変革全体の核心であり、最も重要な投資でした。

現在、トッテナム・ホットスパー・フットボール・クラブはSalesforceの複数プロダクトを組み合わせて活用しており、ファン情報のデータソースも多岐にわたります。「Data360」がそれらを統合し、ファンのUnified View(統一されたビュー)を提供します。

Data360に集まるデータは、チケット販売、小売の購買履歴、体験型アトラクションの予約、デジタルエンゲージメントのデータなど多岐にわたります。これらがひとつにつながることで、ようやく「このファンはどんなチャネルを好むのか」「なぜスタジアムに来るのか」、さらには「試合の2時間前に到着するのか、10分前なのか」といった情報が明らかになります。

それまでデータウェアハウスに存在しているだけだったデータが、今ではエンゲージメントやコンタクトの履歴と統合されています。単一ビューを持つことで、初めてパーソナライズされた体験の提供が可能になりました。

【Agentforceが本番稼働】第1段階は5つのユースケース

そしていよいよ、2026年4月14日。トッテナム・ホットスパー・フットボール・クラブで、Agentforceを活用したサービスエージェント「Ask Spurs」が本番稼働を開始しました。

Agentforceの導入にあたり、クラブはまず「サポーターサービスへの問い合わせで最も多いのは何か」を分析し、5つのカテゴリーに整理しました。

① チケット購入と予約照会:「自分のチケットはどこにある?」という質問が最も多い問い合わせでした。試合当日には特にこの問い合わせが急増します。そのため、まずここに着手しました。

② 小売・購買関連:注文状況の確認、返品・返金対応、商品のトラッキングなど、オンラインショッピングに関する問い合わせに対応します。

③ メンバーシップ:会員資格の更新時期、メンバーシップに含まれる特典内容など、会員向けの問い合わせを扱います。

④ 一般的な問い合わせ:FAQやウェブサイト上の情報に関する質問が対象です。情報はサイト上に存在するものの、見つけにくいという場合にエージェントがシンプルに答えを取り出します。

⑤ スタジアムイベント&ビジター向けアトラクション:コンサートなどでのスタジアム来場や、スカイウォークをはじめとした体験型アトラクションの予約に関する問い合わせです。

【4つの強み】Ask Spursが「特別」な理由

では、Ask Spursはなぜ優れているのでしょうか。クラブが特に重視した4つの特徴があります。

① サイトアクセス履歴の活用:エージェントはウェブサイト上に存在する最新情報にリアルタイムでアクセスできます。毎日更新されても、更新した瞬間にエージェント経由でファンに情報が届く。そんな仕組みが実現しています。

② マルチ言語対応:英語だけでなく、日本語を含む複数の言語に対応しています。グローバルなファンベースを持つクラブにとって、多言語対応は不可欠です。

③ スマートエスカレーション:エージェントが人間のオペレーターへのエスカレーションをシームレスに行います。サポートチームの空いているスタッフがいる場合、エージェントがチャットの会話に入り込み、ユーザー側からは自然なやりとりの中でハンドオフが完了します。複雑なケースや繊細な内容については、当然ながら人間が対応します。

④ WhatsApp連携:ウェブサイトだけでなく、WhatsAppからもAgentforceにアクセスできます。利便性が大幅に向上するとともに、ウェブで未ログインのユーザーが利用する場合と同じ体験を提供します。

【稼働6週間の成果】AIエージェント エスカレーション率10%・完了率向上

Agentforce本番稼働から約2か月。早期の段階ではありますが、この期間の成果として3つの重要指標を紹介します。

①エンゲージメント率:単に「こんにちは」と返答するだけでなく、エージェントが実際にデータを検索して何らかのアクションを取り、ユーザーに回答するやりとりの割合を指します。挨拶だけの返答はエンゲージメントとカウントしていません。満足度は非常に高い水準にあります。

②オペレーターへのエスカレーション率:約10%という数値が出ています。複雑なケースは引き続き人が担当しますが、エージェントが相当数の問い合わせを自律的に処理できています。

③AIエージェントの問い合わせ完了率:エージェントが単独で回答して、ケースをクローズできた割合です。特にチケット関連の一部カテゴリーでは、お客様情報とデータを結びつけてAIが完結できるケースが着実に増えています。

注目すべきは問い合わせ率が上がっているという事実です。複雑なカテゴリーでも問い合わせやエンゲージメントが増えていることは、それだけ多くのファンがAsk Spursを活用し、AI単独で回答が完了しているケースも増えているということです。私たちはこれを、変革初期の前向きな成果と捉えています。

【次のステップ】Ask SpursのAgentforce活用を広げる4つの領域

現在、クラブは以下の4つの領域でさらなる発展を計画しています。

① ネイティブなデジタルファン体験:次のステップとして、よりシームレスに統合されたデジタル体験を実現するネイティブUIを構築します。

② ファンとの「意味あるやりとり」への拡大:例えば選手の動画を「もう見ましたか?」という形でおすすめするなど、コンテンツを通じたエンゲージメントを深めていきます。

③ マーケティング・コマーシャルのユースケース:小売の領域では、商品を返品したい、欲しいものが見つからない、在庫切れだったというような場面でエージェントが介在し、適切な代替案を提案する仕組みを構築します。

④ プレミアム体験へのシームレスな統合:ホスピタリティエリアには、プレミアムなファンとの関係を管理する専任チームがいます。エージェントとこのチームをシームレスにつなぐことで、プレミアム顧客へのハンドオフも自然な形で行えるようにしたいと考えています。

【まとめ】スポーツビジネスAI活用の本質。データ基盤なくして、成功するエージェントなし

私たちの事例が示すのは、AIの力を最大限に引き出すために何が必要かという問いへの明確な答えです。

まず、データの基盤を整えること。オーディエンスのプロファイルを単一の統合されたビューで把握できるようになって初めて、パーソナライズされた体験が可能になります。

次に、適切なツールセットを選ぶこと。そして、従業員がテクノロジーに時間を使うのではなく、世界レベルの体験を生み出すことに集中できる環境をつくることです。

6万2000人以上のファンがスタジアムを訪れる世界で、一人ひとりを「個人」として把握し、最適な体験を提供する——。

このAgentforceのストーリー、私たちは、心からワクワクしています。

ファンエンゲージメント診断「あなたのファンエンゲージメント、どこで止まっていますか?」

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