AIを活用することで、週あたり平均4.6時間を創出——。これは Salesforceが2026年6月に発表した社内調査の結果です。
では、AIにタスクを任せてできた時間を、どんな仕事に使っているのでしょうか。
いま、あなたの手元にある仕事を思い浮かべてみてください。 それは「AIにはまだできない仕事」でしょうか。それとも「AIには渡したくない仕事」でしょうか。
前者は、いずれAIに任せられる日がきます。しかし、後者はおそらくずっと手放さないでしょう。前述の調査で95.6%が「AIと人の役割の違い」を実感している通り、AIを使いこなす人ほど、この境界線をはっきりと自覚しています。
そこで今回は、各分野で活躍するインフルエンサーに、AIとともに働く現在地をありのままに語ってもらいました。5つの質問で解き明かします。本記事は、各インフルエンサーへのインタビューをもとに作成しており、随時アップデートしていきます。ぜひブックマークしてお待ちください。
AIに何を任せる?仕事を変える10の視点
「AIに任せる仕事」の見極め方に悩んだら。AI時代の働き方を変える10の実践ヒントを紹介します。
目次
No.4 サービスデザイナー 深津貴之さん
AIを使いこなしても譲らない「五感で世界を味わう人間の特権」

深津貴之(@fladdict)
サービスデザイナー。ユーザーの行動設計や体験設計を主軸に、新規事業の企画やグロース、新技術の導入などの伴走を行う。2009年 株式会社Art&Mobile、2013年 クリエイティブファームTHE GUILDを設立。現在はnote株式会社CSO、弁護士ドットコム株式会社CXOを務めるほか、横須賀市のAI戦略アドバイザーなど、領域を超えた事業アドバイザリーを行う。執筆、講演などでも精力的に活動。主な著書に『メタスキル:努力の価値が変わる時代の「AI×自分」戦略』、『ChatGPTを使い尽くす!深津式プロンプト読本』など。
Q1. 初めて「AIは使える」と思った瞬間を教えてください。
ChatGPTの初期版が登場した時
生成AIという意味では、ChatGPTの初期版に触れたときが明確なブレイクスルーでした。テキストを投げ込んだ瞬間に返ってくるレスポンスを見たとき、「これは人間のデスクワークの作業量が、資金次第で準無限に拡張できるぞ」という明確なイメージが浮かびました。
正直に言って、ワクワクすると同時に「世界や働き方のルールが根本から変わってしまうな」という少し畏怖に似た感覚もありました。人間のリソースがボトルネックではなくなる時代が来たと、肌で感じた瞬間です。
Q2. 今、AIに任せている仕事を教えてください。
健康管理、財産管理、日々の勉強の壁打ち
健康管理や財産管理、そして日々の勉強の壁打ち相手ですね。最初はどこまで任せられるかなと面白半分でしたが、気づけばだいたい生活の全方位で頼っています。
ただ、AIに「100点の正解」や「最高得点」を求めているわけではありません。どちらかというと、見落としによる「一発ゲームオーバー」や「致命的なチョンボ」を回避するための、優秀なセーフティネットとして使っています。自分の死角をカバーしてくれる「冷静な相棒」という感覚です。
Q3. AIに向いていなかったと思う仕事は?
「異常値」を出す仕事/正解が厳密に一つしかない問い
生成AIの性質上、どうしてもスタンダードで優等生的な答えに収束しがちです。ビジネスの新規事業アイデアや、創作におけるエッジの効いた表現など、「人間ならではの異常値やバグ」が求められる場面では、無難すぎて制御が難しい。
また、計算やファクトチェックなど「正解が厳密に1つしかない問い」、「決定論」も意外と苦手です。ハルシネーションがあるため、そのまま信用して任せるのは危険だなと感じています。
Q4. 「これだけは自分でやる」と決めていることは?
五感で世界を味わうこと。仕事の中にはない
仕事という意味では「これだけは絶対に自分で」と執着しているものは特にありません。ただ、しいて言えば「美味しいものを食べる」のは僕の仕事です。
もう少し真面目な言葉に広げると、五感を使って「クオリア」(註:意識的・主観的に感じたり経験したりする質感のこと)を刺激し、世界を楽しむ作業全般は、AIには絶対に渡せません。どれだけAIが進化して効率化が進んでも、肉体を持って世界を味わうのは人間の特権です。
Q5. AIと働く”いま”を、一言で表すとしたら?
1000年単位の「時代の節目」を生きる、最高の瞬間
歴史映画を見て、産業革命や明治維新など激動の時代を生きる人々に憧れたことはありませんか? AIの登場による変化は、まさにそのレベルのパラダイムシフトです。傍観するより、プレイヤーとして色々試して乗っかったほうが絶対に面白い時代だと思います。
No.3 経営者・ベストセラー著者 川岸宏司さん
脳内をAI化しても「感性は、効率の外側(ムダ)にしかない」と言い切る理由

川岸宏司(@OnebookofMAG)
株式会社DIL 共同代表COO。複数の会社を経営し、SNS顧問/デザイン/営業代行/書籍プロデュースの業務を担う。
著書に『1%読書術』『耳を鍛えて4倍速読』『なぜ、あの人の言葉は心に響くのか』など。
Q1. 初めて「AIは使える」と思った瞬間を教えてください。
AIをエージェント化して自分の裏側に組み込んだ瞬間
最初、チャット形式でChatGPTやClaudeを触ってた頃は、まったく使えると思ってませんでした。検索で足りるし、ちゃんと調べたうえで答えてるのかを確認するコストのほうが高かったからです。
変わったのはエージェント化してから。Claude CodeやCodexを挟むと、自分の意思決定も、調べた内容も、集めた資料も、裏側のデータベースに全部溜まっていく。
「調べる」と「貯める」と「書き出す」が同時に回った瞬間、自分の脳内のデータベースが丸ごと外に出ました。思い出す作業がいらないし、どの領域でも車輪の再発明をしなくて良くなる。人ひとりで回せるマルチタスクの量が桁で変わる。これは世界が変わるなと感動しました。
Q2. 今、AIに任せている仕事を教えてください。
意思決定の一部(分解した先の、浅いところ)
結論から言うと、意思決定の一部です。意思決定そのものを預けると思考体力も判断の精度も落ちていくので、ここだけは絶対に手放さないと決めていたのですが……、意思決定が”分解できる”と気づいてから、任せるようになりました。
決定は、①決めることを決める②情報を集める③どこまで集めたら決めるかを決める④決定変更ラインと次の一手を置く……と、4つに分かれますし、②と④はもう一段細かく割れます。
その割った先だけをAIに渡す。思考の総量は1日で決まってるので、深いところに時間を寄せて、浅いところには使わなくてよくなります。任せられる仕事の定義が変わりました。
Q3. AIに向いていなかったと思う仕事は?
自分というコンテンツの発信
人は日々のムダから感性を拾ってると思っていて、たとえば、渋滞の中で見た景色とか、散歩でふと見上げた時の空とか、なぜポストは赤いんだろうと立ち止まった時とか。
仕事でも、今までつながってなかった知識と目の前の現象が噛み合って「ああそうだったのか」と腹落ちする瞬間がありますが、これらの大半はムダの中にあると思っています。
AIは感情とムダの設計が下手で、ロジカルで合理的で正しさを追いにいくので、不合理も遊びも作れない。カメラを回して独り言を全部食わせたとしても、自分が納得できるレベルにはならないと思ってます。
Q4. 「これだけは自分でやる」と決めていることは?
人とのやりとり
メールでもSNSでも、AIを挟む人が増えました。でも実際に会うと、その内容を覚えてないんですよ。自分の内から出た言葉じゃないですし、指を動かしてない分、労力がないので残らない。AIが出したものとAIが出したものでコメントし合ってる人も見ますけど、あれに何のメリットがあるんですかね。
リアルで話す時と同じ温度の文面じゃないと、文章って仰々しくなるので……。仰々しい関係から人との密度が深まるとは思えないし、コミュニケーションは無駄を共有する積み重ねなので、どれだけAIが発展しても任せません。なんなら、任せる人とは付き合わないと決めてます。
Q5. AIと働く”いま”を、一言で表すとしたら?
プレイヤーのままでいることのできない時代
これまでは、質を落とさない責任感のあるプレイヤーと、思考体力と言語化力のあるマネジメント層、この2層で組織が回ってました。一方で、これからは全員が、小さな組織のマネジメント層として言語化力を求められます。
単純な作業はAIが代替するので、深く考えて言葉にできる人だけがアウトプットを増やしていく。センスも言語化力も、隠せなくなりました。
AIエージェントは、仕事をどう変える?
インフルエンサーが語った「AIに任せた仕事」。その具体像を、Slackの新しい働き方から動画で覗いてみませんか。
No.2 作家・YouTuber堀元見さん
日記もAIに任せるクリエイターが大切にする「おもしろさの責任」

堀元見(@kenhori2)
作家/YouTuber
1992年生まれ、北海道出身。慶應義塾大学理工学部卒業(情報工学専攻)。YouTube/Podcast「ゆる言語学ラジオ」では聞き手を務める。著書に『教養悪口本』(光文社)など。
Q1.初めて「AIは使える」と思った瞬間を教えてください。
「スマートフォンとPCのデータ転送を楽にする」というタスクを任せた時
既存のアプリを使う方針で進めていたのに、そのアプリの動作が微妙に安定せず、バグが多かったことがありました。すると、AIが途中で「もうこれのデバッグやるよりアプリごと自作したほうがいいよ」と言い出して、見事に自作してくれました。
驚いたのは能力以上に、態度のほうでした。言われた作業を頑張るのではなく、上流の方針ごとひっくり返してきた。便利な道具が増えた感覚ではなく、有能な同僚が一人入社してきた感覚です。
以来、手順を細かく指示するのをやめて、「次に何をやるかもそっちで考えて」と依頼するようになりました。その日の僕の日記に「おもろいな、こいつ。優秀な人間みたいだ」と書いていました。
Q2. 今、AIに任せている仕事を教えてください。
ほぼすべて。意外なところでは、毎日の日記
ほぼすべてですが、意外なところで言うと、毎日の日記をつけること。もともとテキストで書いていたんですが、「書く時間がない」という理由でサボりがちだったんです。
今は、風呂上がりにストレッチしながら喋るだけで、AIが文字起こしして、要点を整理して、Googleカレンダーの情報なども統合してまとめてくれるし、その日撮った写真まで勝手に貼ってくれます。AIに日記を書かせていると、もはや僕という人が存在しないような錯覚に陥ります。
あと、もちろんですがその日記を読むのもAIです。「僕にまつわるこういうエピソード出して」と言うと、過去の日記から出してくれます。僕よりも僕についての記憶があるので、AIのほうが本当の僕なのかもしれません。
Q3. AIに向いていなかったと思う仕事は?
ラジオ台本の構成
AIはおもしろく台本構成ができない。リサーチはめっちゃ上手いんですけどね。
一番こわいのは、出てくるものがつまらないことです。正しくて、網羅的で、律儀に「そもそも◯◯とは」から始まって、そしてつまらない。間違っているなら直せばいいんですが、つまらないのは直せません。構成レベルで全部やり直すことが多いです。
最初はAIが出した構成を削って使おうと思ったのですが、大枠の構成がつまらないと結局つまらないので、やめてしまいました。今ではAIが出す台本は参考程度にして、ゼロから書き直すことが多いです。要素として使えるものはあるんですが、構成は使えません。
Q4. 「これだけは自分でやる」と決めていることは?
おもしろさに責任を持つこと
「おもしろさに責任を持つこと」ですね。AIが作ったものはつまらないし、つまらないものをそのまま世に出してしまったら、それは僕の価値を下げてしまうので。
おもしろさって極めて繊細なので、チェック機能が働きづらいんですよね。間違ってるものを間違ってると指摘するのは比較的簡単だけど、おもしろくないものをおもしろくないと指摘するのは結構難しい。ぼうっと読んでるとスルーしがちです。
AIはなんとなくおもしろそうなものを出してくるので、全身全霊でおもしろさチェックをする必要があります。ゼロから自分で書いてみて同じ構成になるか確認するとかが必要ですね。
Q5. AIと働く”いま”を、一言で表すとしたら?
おもしろさ以外は、AIに任せられる
「正しさ」や「網羅性」はAIにかなり丸投げできる時代です。ただし、「おもしろさ」はまだ全然無理。おそらくむこう3年は無理なんじゃないかなと思います。僕はまだまだ仕事取られなくて済むぞ~!
No.1 AI事業経営 安達裕哉さん
全デスクワークをAIに任せるコンサルタントが「手放したいのに、手放せない」こと

安達裕哉(@Books_Apps)
AI事業経営/Books&Apps運営
Deloitteにて12年間コンサルティングに従事し、大企業・中小企業あわせて1000社以上を訪問、8000人以上のビジネスパーソンと仕事をしてきた。企業の現場でコンサルティング活動も行うほか、仕事とマネジメントに関するメディア「Books&Apps」を運営。
Q1. 初めて「AIは使える」と思った瞬間を教えてください。
2023年3月にChatGPT-4が登場した時
それまでのAIは、根拠のはっきりしない発言が多かったんです。ところがモデルが進化して、「根拠をつけろ」という命令にきちんと従うようになり、信頼性の高い根拠を示してくるようになった。
その瞬間に、これはデスクワークの肩代わりをさせることができると思いました。リサーチャーの代わり、ライターの代わり、事務員の代わり、エンジニアの代わり、新人コンサルタントの代わり……。それだけのことができると確信して、AIの企業を創業する決意をしました。
Q2. 今、AIに任せている仕事を教えてください。
デスクワークのほぼすべて
すべてのデスクワークを少しずつ任せています。今では「自分でやらなければならない」仕事のほうが少ないくらいです。正直に言って、設計さえちゃんとやれば、デスクワークは人よりAIのほうが圧倒的にクオリティが高い。そう思っています。
Q3. AIに向いていなかったと思う仕事は?
プレゼンテーション資料の作成/音声認識
プレゼンテーション資料の作成は、下手くそです。生成された画像に対して、一部だけを編集できない。情報を詰め込むことはできるのに、情報を引くことは苦手で、図がごちゃごちゃしてしまう。「オブジェクトの配置」そのものに意味がある図も作れません。変な漢字や文字が相変わらず出現しますし、ストーリーの一貫性もない。
音声認識も下手くそですね。応答が遅すぎるし、音声を正確に聞き取れない。文字起こしは、あくまでも人の補助が前提だと思っています。
Q4. 「これだけは自分でやる」と決めていることは?
決定と責任を伴う仕事。ただし、消極的な理由で
文章の最終チェックと校正、リサーチに対するファクトチェック、企画や記事のテーマ決め、そして意見の形成です。これらは自分でやらざるを得ない。ここだけは「AIがこう言ってるので」を信頼できない。アウトプットを自分の責任とするために、最終的に自分でやっています。
ただ、正直に言うと、これは「手放したい仕事」なのに「手放せない」だけなんです。理由は単純で、自分が求めている仕事の質に対して、AIの能力が足りなさ過ぎるから。
AIが十分なクオリティでその仕事を遂行できるようになれば、ぜひ手放したい。ですから、これは「自分でやりたい」という強い動機ではなく、消極的に「仕方がないから自分でやっている」話です。
あとは、紙の書類や手書きが要求される手紙など、相対する人が「AI嫌い」だと、自分でやらざるを得ません。これはAIの能力とは別のボトルネックになっています。
Q5. AIと働く”いま”を、一言で表すとしたら?
過渡期「チェック」や「決定」の手間が増えて、あまり楽になっていないようにも見えます。でも、それこそが仕事の本質だと認識することですね。ここで頑張って「自分のデスクワークの大半をAIができるように」して、「決定や責任を伴う仕事」により時間を使わないと、「あなたの存在意義って何?」と言われて困ることになります。
AI時代の生存戦略は「責任」の引き受け方
今回お話をお伺いしたAIを使いこなすトップランナーたちに共通していたのは、任せられる仕事は躊躇なく渡す、徹底したAI活用のスタンスでした。
その仕事を手元に残すかどうかの境界線は、もはや「単純作業かどうか」といった仕事の種類ではありません。AIに任せられない領域に共通していたのは、自分自身の「責任」や「五感」、「感情」が伴う、効率化の枠外にある時間です。守る中身や理由は人それぞれですが、その境界線には、仕事において一番大切にしている「矜持」や「スタンス」が浮き彫りになります。
AIエージェントのような有能な同僚が隣りに座ったとき、私たちは初めて「自分自身の仕事の核」と向き合うことになるのかもしれません。
この記事では今後も、さまざまな分野のプロフェッショナルに「AIと働く現在地」を問い続けます。彼らの声が積み重なるにつれ、これからの働き方の輪郭がさらにクリアになっていくはずです。ぜひブックマークをして次の更新をお待ちください。
あなたは今、AIに何を任せ、何を手元に残しますか? ぜひ本記事をSNSでシェアして、あなた自身の仕事の「核」を教えてください。
AIエージェント活用の実態、数字で見る
週4.6時間創出という数字の先に何があるか。Slack x Agentforceの最新調査で、生産性向上の全体像を掴めます。














