セールスフォース・ジャパンは、AIチームメイト「Agentforce Coworker(エージェントフォースコワーカー)」を発表しました。
Salesforce に直接組み込まれ、実際に業務が行われるあらゆる場所で動作する——。検索して、要点を掴み、そのまま実行まで任せられるこの機能は、CRMの使い方そのものを塗り替えます。
注目すべきは、その手軽さ。1300ものカスタムオブジェクトを抱える複雑な環境でさえ、あるユーザーはわずか20分でセットアップを終えました。
とはいえ、「どこを・どの順で操作するのか」「自社の契約で追加費用は出ないのか」がわからなければ、最初の一歩は踏み出せないと思います。
本記事は、導入を検討する管理者とその判断を下す経営者のために「何ができるか・どう起動するか・どの契約で使えるか」を整理した実践ガイドです。
【Salesforce実践知】AIエージェント活用の段階別 8ステップ実践ガイド
Agentforce Coworkerを「点ける」だけでは、ビジネス成果は生まれません。Salesforceが実践知をまとめた本ガイドでは、情報収集・検討・展開から組織定着まで、AIエージェント活用を段階的に進める8つのステップを解説。「どこから始めるか」「次に何をするか」を具体的に示す実践ロードマップです。
目次
Agentforce Coworker とは何か。「検索バー」ではなく「同僚」
まず押さえたいのは、これが「賢くなった検索バーでない」ことです。「Agentforce Coworker」は、あらゆる検索を答えに変え、その答えをアクションに変える、AIチームメイト(同僚)です。人々が Salesforce と対話するためのまったく新しい方法と位置づけています。
その働きは、主に3つです。
• 見つける(Find):自然言語で質問すれば、CRM、Slackの会話、ファイル、ナレッジベース、そして270を超える接続済みのエンタープライズソースから、文脈に沿った答えが返ってきます。「今四半期、1000万円以上の商談でリスクのあるプロジェクトは?」。質問した次の瞬間には、もう答えが出ています。
• キャッチアップする(Catch up):会議中や1週間の不在中に変わったことを先回りして拾い上げ、知らせます。会話の流れをまるごと記憶しているため、最初から説明し直す必要はありません(今後対応予定)。
• 計画して、実行する(Plan & Act):ここが本当の価値です。情報を見つけるのは入り口にすぎません。Coworker は専門のAIエージェントを束ね、同じ会話の中で、あなたに代わって行動します。
3つ目を、もう少し具体的に見てみましょう。「昨日落ちた案件は?」と打ち込むと、Coworker は単なるリストを返す代わりに、データ分析・可視化プラットフォーム「Tableau」の分析エージェントを呼び込み、失われた売上をセグメント別に示すチャートを作ります。
続けて「この見込み客にフォローアップメールを作って」と頼めば、今度は「Sales Coach 」エージェントが書き上げる。アプリの切り替えも、新しいタブも要りません。面倒な作業がたった1つのウィンドウの中で片付きます。
単一の会話から、AgentforceのAIエージェントからカスタムエージェント、CRMアクション、Flow、サードパーティAPI、外部システムまでを呼び出し、適切に指揮(オーケストレーション)する。散らばっていた能力を、1つの対話の入り口に束ねる。それがこのCoworkerの設計思想です。
そしてもう1つの特徴が「Headless 360」設計です。同じAIチームメイトが、SalesforceやSlackだけでなく、Microsoft TeamsやChatGPT、Claudeなど他社のツールでも顔を出します。どこからアクセスしても、相手はいつも同じ「同僚」です。
CRMは「入力するツール」から「対話するパートナー」へ。「Agentforce Coworker」が新登場
実際、どう効くのか。実際に使ったお客様の声
言葉を重ねるより、実際に使った企業の声が雄弁です。
自社の組織内で1300個のカスタムオブジェクトを用いて環境を構築した機械メーカーBACA Systems(ミシガン州)。同社でビジネスシステムを統括するアンドルー・ルッソ(Andrew Russo)副社長は、こう語りました。
「これが現実であるとは、にわかには信じがたいほどです。Coworkerは当社の複雑な営業システムやERPを横断的に統合・分析し、従来であれば複数システム間を45〜60分行き来して初めて得られた回答を、瞬時に提示します。セットアップはわずか20分。1300に及ぶカスタムオブジェクトを擁する環境でありながら、そのすべてを踏まえた的確な回答を得られたことには驚かされました」
45〜60分が瞬時に。セットアップは20分。この数字そのものが、導入前後の落差を物語っています。複雑な環境ほど、効果は大きく出るということです。
使い始める前に。「社内に飛び交う質問」を棚卸する
設定画面を開く前に、管理者に1つだけお願いしたい仕込みがあります。それは、「社員が普段どんな質問をしているか」を書き出すことです。
「あの情報はどこにある?」「この件は誰に聞けばいい?」。現場で交わされるこうした問いを集め、分類しておく。すると、最初にどのデータソースを接続すべきかが自ずと見えてきます。
Coworkerの価値は、接続したデータの質と量(範囲)で決まります。ツールを入れてから考えるのではなく、「答えさせたい問い」を先に定義する。この数分の棚卸しが、導入後の効果を大きく左右します。
起動セットアップ手順は最短2分、本格運用でも10-20分
ここからが本題です。有効化そのものは、驚くほど簡単です。
まずは最短ルート(約2分)
1. Salesforceの「設定(Setup)」に移動する
2. 「Quick Find」で「Agentforce Coworker」を検索する
3. トグルをオンにする(Turn onをクリック)
極めてシンプルです。ただし、これは「機能を点ける」までの操作です。実際に現場で使うには、データ接続とユーザー付与まで含めた本格セットアップが要ります。
*上記最短ルートは、「権限の割り当て」が完了している前提です。
*Setup上でAgentforce Coworkerの設定を探す際、7月中旬までは日本語UIで「エージェンティック エンタープライズ検索」と表示されます(= Agentforce Coworkerのことです)。「Coworker」という名称で検索しても見つからないためご注意ください。7月中旬以降は正しい日本語名称に更新されます。
以下、ベータ版時点の管理画面(英語表記)に沿って、詰まりやすい点を添えて説明します。
ステップ1:自分に管理権限を割り当てる
必要なロールと権限:Agentforce Coworker Admin Permission Set
Agentforce Coworker Adminを割り当てると、必要な権限セットライセンスは自動で追加されます。前提として、操作者はSalesforceのシステム管理者である必要があります。
ステップ2:機能を有効化する
設定のクイック検索(Quick Find)で「Agentforce Coworker」を検索し、「Get Started → Turn On→免責事項」を確認してConfirm。Confirm を押すと、エージェント・権限セットグループなどの資産が自動生成されます(数分、進捗はチェックマークで確認)。全ステップにチェックが付き、緑色の「On」ラベルが出れば完了です。
ステップ3:データソースを接続する
Coworker が「何を根拠に答えるか」を決める、最も重要な工程です。
• 標準で「Salesforce」が検索対象として有効化されています(削除不可)。
• Manage Data から、既存の Data 360 ソースの追加、有効/無効の切り替えを操作できます。
• Slackはフェデレーテッド連携方式のため、Slack側の認証を完了させてください。
• 権限モデルを継承したGoogle Drive や SharePoint など外部ソースの追加は、担当営業経由のパイロットプログラムが前提です。権限モデルを継承した
ここで、前節で棚卸しした「答えさせたい問い」が効いてきます。必要なソースから優先してつなぎましょう。

ステップ4:エンドユーザー体験を有効化する
Turn on End User Experience(Global SearchBer(Beta))セクションで Manage → 利用規約に同意しチェック → Turn On。これでグローバル検索バーに Coworker が表示されます。ベータ機能のため、同じ画面からTurn Offでいつでもオプトアウトできます。
ステップ5:ユーザーにアクセスを付与する
Manage Agentforce to Agentforce Coworker→ Manage→ 対象ユーザーを選択→ Assign → Done。各ユーザーには権限セットグループAgentforce Coworker Userと対応する権限セットライセンスが必要です。アクセスを外す際は、権限セットグループとライセンスの両方を削除する点にご注意ください。

補足:デフォルト以外のデータスペースを使う場合は、「Agentforce Coworker」メニュー内の Set Up Data Spaceで明示的に選択します。複数データスペースを運用する組織が見落としがちな箇所です。
適用対象のライセンス条件。「追加費用のリスク」を先に潰す
導入判断で最も気になるのが「自社のプランで使えるか」「使ったら青天井に課金されないか」でしょう。現時点で整理できる条件は次の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象エディション | Enterprise / Unlimited / Agentforce 1(Salesforce Foundations でも利用可) |
| 課金の扱い | Agentforce for Sales / Service / Industries・Agentforce 1 Edition ユーザーは Flex Credit のアンメーター(使い放題)で利用可。これらのライセンスが付与されたユーザーは追加費用なし(ライセンスを持たないユーザーは Flex Credits or Data Services Credits の消費が発生します) |
| 提供状況 | Salesforce(Lightning)は現在ベータ提供中(ベータでも費用は発生します) |
利用チャネル(UI)の提供時期は、順次拡大される予定です。
• Salesforce Lightning:ベータ提供中
• Microsoft Teams / Web・Experience Portals:2026年夏予定
• ChatGPT / Claude / デスクトップアプリ(Mac):2026年秋予定
要点は、Enterprise以上のエディションで対象ライセンスを持っていれば、追加コストを気にせず今すぐ試せるということです。まずは自社の契約エディションと「Flex Credit」の適用状況を、担当営業者に確認していただければ幸いです。
CRMの「玄関」が大きく変わる
Agentforce Coworker は、組織がすでに信頼する権限・ガバナンス・セキュリティを継承する「Agentforce 360 Platform」上に築かれています。
アクションを実行できるAIが、新たなリスクを生まないための設計です。あなたのデータはSalesforceに、会話は Slack にある。その両方を接続し、理解し、チーム全員のために働く——。それが、この同僚の姿です。
どんな問いに答えさせたいかを棚卸しし、ライセンスを確認し、有効化する。この3つを踏めば、今から現場でAIチームメイトが働き始めます。あなたのAIチームメイトは、これから来るのではありません。すでに、ここにあります。
Agentforceの真価を引き出す「AIデータ管理戦略」 ~導入成果を最大化する、信頼できるデータ基盤の作り方~
Agentforce Coworkerの精度はデータの質で決まります。Salesforce管理者向けの本ガイドでは、AIが正しく答えるために必要なデータ整備・品質維持・保護の具体的な手順を解説。今日から始められるチェックリスト形式で、Coworker本格運用への第一歩をサポートします。










