Key Takeaways
円安や購買行動変化により販売難易度が上昇する中、「Consumer Goods Cloud」と「Agentforce」がもたらす営業プロセスの変革と先行事例を、石橋史啓が解説します。
目次
消費財メーカーの量販営業プロセスが直面する限界と、自律型AIエージェントが必要な背景
消費財(CPG)業界はいま、かつてないほど「ビジネス構築の難易度上昇」という構造的な困難に直面しています。
この逆風の本質は、一時的な市場の波ではなく、消費財企業を取り巻く経営環境の変化による現場の負荷増大と、それに対応するための労働力が不足しているというマクロな構造矛盾が同時に顕在化していることにあります。
消費財業界を取り巻く環境変化
消費財メーカーは現在、下記3つの激しい環境変化に直面。これまでの売り方が通用しにくくなっています。
- 円安や原材料高、原油高による「利益へのプレッシャーや販促予算の制約」
- 小売のバイイングパワー強化による「棚獲得の難化」
- 生活者の「購買行動変化」
この環境変化に伴い、メーカーの広告・販促予算は従来より制限が必要になりました。これまでのように販売活動費用を潤沢に使用し、物量で押し切るような売り方は難しくなっています。
販売難易度の上昇、どう乗り越える?消費財業界の極意
円安・棚獲得の難化・購買行動変化… 消費財業界の3つの壁。時代の変化で生まれる課題と、顧客体験をデザインし勝ち抜くためのヒントをお伝えします。
さらに小売業界ではM&Aが加速しており、巨大なドラッグストアチェーンが誕生するなど小売企業のバイイングパワーが増しています。
また、小売コスト構造の難化(仕入れコスト、人件費、物流費、光熱費の上昇)も相まって、小売側自らがプライベートブランド(PB)やD2Cブランドを拡充する動きが強まり、ナショナルブランド(NB)の新商品を店頭に配荷してもらう「店頭に並べる難易度(フィジカルアベイラビリティの確保)」も急上昇しています。
一方、生活者(ショッパー)側の変化も深刻です。
コロナ禍以降の買い物頻度が低下した結果、事前のデジタル情報収集に基づいた「計画購買(目的買い)」の割合が、コロナ前と比較して60%も急増しています。生活者は予定していたものだけを中心に購入するようになり、店頭で商品をふと手にとって購入する非計画購買の割合が低下。店頭で「商品を手に取ってもらう」難易度も跳ね上がりました。
このような厳しい経営環境に、慢性的な人手不足、いわゆる「労働人口の減少」という構造的制約が重なることで、従来の「足で稼ぐ営業」や「人間関係頼みの販促」は持続困難となり、根本的な法人営業プロセスの見直しが差し迫っています。
改革を阻む構造的理由とAgenticな営業プロセス
営業改革の必要性を認識しつつも、多くの消費財企業で具体的な変革が進まないのはなぜでしょうか。
問題の原因は営業担当者のスキル不足ではなく、消費財業界特有のビジネス構造とデータの分断にあります。ここからは、「営業・販促・店頭」の3つの領域に沿って、構造的限界と自律型AIエージェントが切り拓く未来のプロセスを解説します。
【営業】業務効率化とデータドリブンな組織的営業。AIによる自律的プランニングへ
従来、多くの消費財企業ではERPなどの基幹システムや、承認申請のための社内システム、メールやチャットなどのコミュニケーションツール、情報共有のためのファイルストレージ、そして標準化されていない多種多様なスプレッドシートが並列稼働。営業活動に必要なデータが、深刻にサイロ化していました。
一つの組織であるにもかかわらず、営業が理想的な意思決定を行うためには分断されたデータを突き合わせるために多大な手作業と時間が必要で、一貫した「360度ビュー(SSOT:Single Source of Truth)」を持てずにいました。
その結果、営業担当者は商談前の分析や配荷率の確認、販促企画の準備などのルーティンワークに追われ、肝心の小売バイヤーの戦略的なパートナーであるための提案活動に可処分時間を使えない悪循環に陥っていました。
データ統合とAIエージェントが前提の世界では、分散していた各種データ(POSデータや市場データなど)がタイムリーに統合され、AIエージェントが得意先ごとの最適な提案シナリオ作成や販売予測を支援します。
セールスプランニングエージェントが取引先における売上や配荷の逸脱を自動で検知し、インテリジェントなアカウントプランニングをサポート。営業担当者をデータ集計などのノンコア業務から解放し、得意先の課題解決を支援するデータドリブンな高付加価値型の営業へと集中させます。
消費財のグローバルリーダーは今、何を考えている?
利益率を圧迫する市場変化のなか、世界の消費財業界リーダーの本音とAI活用の着眼点を調査データにまとめました。ぜひお役立てください。
【販促】手作業からAIエージェントによる管理の最適化へ
消費財メーカーにとって販促費は大きなコストですが、その計画立案や大量の請求処理は、得意先ごとに作成された標準化されていないスプレッドシートに長年依存してきました。そのため、属人的で非効率な入力作業、投下費用と販売データの突合が困難であることによる投資対効果の不透明性、販促終了後の大量の請求処理作業などさまざまな問題の要因となっていました。
最適化されたトレードプロモーション管理プロセスでは、エージェントが過去の販促企画や販促実績データをベースに、最適な販促計画の推奨、請求書との自律的な突き合わせ・承認処理までを一気通貫で支援します。
これにより、手作業に依存していた販促管理の業務負荷を大幅に削減するとともに、データにもとづいて販促投資対効果を最大化させることが可能になります。
【店頭】事後対応からリアルタイムデータ駆動の店舗支援へ
店頭実現の現場では、営業担当がバイヤーと握った「店頭でのアウト展開や棚割り」の指示がメールやPDFなどに依存して構造化されていないことによって、店舗を回るフィールドスタッフへ適切かつタイムリーに伝達されないことが発生しがちでした。
そのため、従来型の店舗巡回業務は非効率に漫然と実施されることが多くなりがちです。消費財企業が多額の販促費を投じて計画するプロモーションの多くが、意図した通りの成果を得られずに終わる一因となっています。
AIエージェントを活用した店舗巡回では、本社の計画と店舗データがしっかりと連携されます。
訪問アシスタントがリアルタイムインサイトと活動リストを基に、店頭調査やコンプライアンス維持(Perfect Storeの実現)に必要な優先度の高い「ハイポテンシャル店舗」を抽出。フィールド担当者には、訪問時に取るべき「Next Best Action(最も店頭売上に直結する店頭活動)」がモバイル上で直接指示されます。
担当者は、指示書に基づく正確かつ無駄のない完璧な店舗実行を迷いなく遂行し、欠品や陳列不備による売上機会損失を未然に防ぎます。
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Agenticなプロセスを実現する技術基盤
前述した「データドリブンな組織的営業」「販促管理の最適化」「店舗実現の最適化」というビジョンを具現化するのが、Salesforceの消費財業界専用ソリューション「Consumer Goods Cloud」です。
複雑に絡み合った既存の基幹システムを刷新(リプレイス)することなく、最速で「AI-Ready」な環境を構築する技術基盤の役割を解説します。主なソリューションを紹介します。
1. 営業担当者の業務効率化とデータドリブンな組織構築「Consumer Goods Cloud for Sales」
「Consumer Goods Cloud for Sales」は、業界専用に設計されたデータモデルと営業機能によって営業担当者に必要な業務を支援し、「Data 360」や「Tableau」、「Agentforce」の連携によってデータドリブンなフォーキャストや販促企画の支援を実現します。

Consumer Goods Cloud for Salesは、消費財業界ならではのビジネス取引関係を管理する専用データモデルを備えています。Data 360によって、社内に分散するB2Bデータ(契約情報・販売情報・販促情報・在庫/返品情報等、市場データ)とB2Cデータ(消費者調査データ・EC販売データ・消費者会員データ等)を「ゼロコピー」で安全に統合・アクティブ化します。
これにより、ボリューム、ベースライン、目標などを統合した「本来あるべき顧客ビジネスプラン」を実現。AIの支援を得ながら、組織全体の営業生産性とフォーキャスト精度を飛躍的に向上させます。
(参考:消費財業界 営業向けConsumer Goods Cloud詳細ページ)
2. 販促管理の高度化「トレードプロモーション管理」
Consumer Goods Cloud上で動作する「トレードプロモーション管理(TPM)」は、スプレッドシートで管理されていた販促情報や基幹システムの請求情報を統合管理することで、販促投資の可視化を進め、販促予算の最適配分やデータにもとづく販促企画の質的向上、請求関連処理の効率化を実現します。

本製品は、SAPなどの既存ERPと「MuleSoft」やData 360を介して緊密に連携。従来、個人管理のExcelシートに閉じていた販促計画、販促費予算、リベートや請求関連の資金管理を一元的なデジタル環境(販促計画カレンダー等)へと引き上げます。
TPMエージェントが、アクティブな取引プログラムの見越債務を自動的に計算・照合し、財務マネージャーと営業担当者の負担を劇的に削減。手作業による照合ミスを完全に排除し、販促ROI(費用対効果)の最大化を可能にします。
(参考:消費財業界 販促活動の管理 詳細ページ)
3. 店頭実現の最適化「Consumer Goods Cloud for Retail Execution」
「Consumer Goods Cloud for Retail Execution」は、モバイルオフライン環境でも稼働する訪問支援機能です。リアルタイムのインサイトと活動リストを現場従業員にガイドし、完璧な店頭実行を実現します。

現場のフィールド担当者は、店舗のバックルームや地下の売り場など、通信環境が極めて不安定な場所でも、専用の「オフラインモバイルアプリ」を介して本社の最新指示書やタスク一覧にアクセスできます。
AIアシスタント(訪問アシスタント)が、店舗訪問スケジュール、取引先概要の自動生成、最適な製品レコメンデーションなどを自動化。現場従業員への適切なタスク割り当てとリアルタイムのインサイトにより、店頭活動時間の圧縮と質的向上を実現し、現場の生産性を極大化します。
(参考:消費財業界 Retail Execution 詳細ページ)
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先進企業の変革事例
AIとデータを統合した「Agenticな量販営業プロセス」への移行は、すでに理想論ではなく「先行する現実」となっています。KellanovaとPepsiCoの具体的な事例が、その実効性を裏付けています。
【米Kellanova(ケロッグ)】営業担当者の業務効率化と販促管理の高度化
シリアルやスナックのグローバルリーダーであるKellanovaは、Consumer Goods Cloudを活用して販促業務(トレードプロモーション管理)の最適解を導き出したとともに、データに基づく組織的なキーアカウントマネジメントの高度化を同時に実現しています。
同社は、市場の激しい環境変化に抗い、収益性の高いブランド成長を維持するため、営業・販促プロセスのデータ駆動化に注力しました。
Consumer Goods Cloud上にすべての顧客データ、商談データ、販促費予算を集約。それにより、営業担当者が「個人の経験や勘」から完全に脱却し、販促提案の正確性を高めデータに基づく顧客ビジネスプランを提示できる体制を確立しました。
この営業活動の効率化と高度化により、プロモーションのリフト予測(販促条件・需要・棚割り)の精度が飛躍的に高まり、ROIを極大化するための「真に科学的なプロモーション計画」の策定を実現しています。
(事例:Kellanova社(ケロッグ)と深掘りする販促業務の最適解)
【米PepsiCo(ペプシコ)】データ統合と現場業務の最適化
PepsiCoは、食品と飲料部門で分断されていたシステムをData 360とAgentforceにより統合。販売・受注・店頭巡回や配送を担う約10万人のフロントオフィスユーザーの現場業務を最適化しました。
PepsiCoでは、スナック(食品)とドリンク(飲料)の事業部門が並列運営されており、各部門が個別のシステムを運用していたため、データやプロセスの共有が行われず、重複支出や店舗巡回時の非効率、売上機会の損失が発生していました。
そこで同社は、Data 360とAgentforceを活用したConsumer Goods Cloudを導入。食品と飲料の顧客データを完全に一元化し、あらゆる売り場・部門で一元的な顧客対応を可能にしました。
さらに、約10万人にのぼるフィールド担当者の業務をデータ駆動で最適化し、事後対応からプロアクティブな店舗支援へと現場プロセスを刷新しました。また、同プラットフォーム上で36億ドルにのぼる販促予算の一元管理と最適化された取引計画の導入を両立させ、全社規模での収益性成長を牽引しています。
(事例:PepsiCo builds an Agentic Enterprise with the Salesforce Platform. ※英語)
「よくある質問」でおさらい
A.はい、強い危機感を持って早急に変革を進める必要があります。
円安・原材料高による販促予算の制約、小売のバイイングパワー強化、生活者の購買行動変化といった「3つの経営環境変化」は、従来の属人営業や、足で稼ぐだけの店舗巡回プロセスの効果を急速に失わせています。
これまでの売り方を漫然と継続しているだけでは、利益率が圧迫され、小売の棚から徐々に排除されていく「静かな衰退」を招きます。競合に先駆けてITやAIを活用して生産性を上げ、データドリブンで効果的な営業・販促・店頭プロセスを確立することこそが、今後勝ち残るための唯一の戦略です。
A.はい、可能です。
トレードプロモーション管理がシステム化され、過去のプロモーションの投資対効果や見越額、支払実績データが正確かつリアルタイムに蓄積されることで、「プロモーションによる売上リフト(増分)」の予測精度が向上します。
これにより、既存ビジネスの販売計画とプロモーション影響を加味した「フォーキャスト管理」が営業組織全体で実現します。この営業側が弾く正確なフォーキャストが、本社の需要予測や工場の生産計画へタイムリーにフィードバックされることで、全社レベルでの強固なS&OP体制構築に寄与します。
Agenticな量販営業プロセスへの移行に向けた次のステップ
ビジネス環境の激しい変化は、これまでの属人的なやり方からの即時脱却を求めています。しかし、これは試練ではなく、データを武器に組織や部門の壁を越え、利益率の高い「真のパートナーシップ」を小売企業と構築する最大の好機です。
まずは、AIとデータ、CRMが一体となった業界特有のソリューションが、貴社の営業・販促・店頭のプロセスをどのように変革するか、製品デモ動画や無料ウェビナーを通じてイメージを確認することから始めてください。
▶︎消費財業界向け製品「Consumer Goods Cloud」の紹介動画を見る
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