Key Takeaways
UCCコーヒープロフェッショナル。業務用で取り扱うコーヒー関連商品は約6万SKU(品目)、顧客基盤は約10万口座にのぼります。この巨大な事業を、約500人の営業とAIで動かしています。
2018年からSalesforceを導入してきた同社ですが、過去2回、定着に至らず拡大を断念した経験を持ちます。3度目の挑戦で選んだのが、AIエージェントでした。
目次
AI活用は「検討」から「実行」の段階へ
労働力不足と競争激化を背景に、AI活用は「検討」から「実行」の段階へ移りつつあります。本番で成果を上げる企業が存在する一方で、「概念実証」から先へ進めない企業も少なくありません。両者を分けるものは何か。この問いが、今回のウェビナーの通奏低音でした。
セールスフォース・ジャパンの製品統括事業本部 プロダクトマネジメント&プロダクトマーケティング本部でプロダクトマーケティングシニアマネージャーを務める王小芬は、AIエージェントプラットフォーム「Agentforce(エージェントフォース)」をこう位置づけます。

株式会社セールスフォース・ジャパン
製品統括事業本部 プロダクトマネジメント&
プロダクトマーケティング本部
プロダクトマーケティングシニアマネージャー
Agentforceは、本番稼働の開始件数は前四半期比70%増、年間経常収益(ARR)のランレートは15億ドルを超え、提供したエージェントの作業単位(AWU)は70億を上回りました(2026年8月時点)。
導入は全世界で2万7000社を超え、ディズニーや富士通、マリオット、ペイパルなど、採用企業は広がり続けています。
Agentforceは、信頼できる業務データを土台に、人とのスムーズな受け渡しと、エンタープライズ品質の制御・監視を備える構造。さらに新たに加わった「Agentforce Coworker(エージェントフォース コワーカー)」は、導入初日から業務を理解し、人に代わってアクションを実行します。
UCCは、この「実行」に踏み込んだ1社です。4人の登壇者が語る45分の全編は、無料・オンデマンドで公開しています。
UCCに学ぶ
AIで強い営業組織を作る術
7年の試行錯誤、包み隠さず開示された数字、そして「勝ち方改革」の全貌。記事で触れたAIが提案文を書き上げる瞬間の操作や、登壇者4人の語りと熱量は、45分の本編でこそ伝わります。視聴は無料。気になったところから、いつでもご覧いただけます。
過去2回断念した会社が、3度目に選んだもの
UCCグループは、コーヒーの栽培から原料調達、研究開発、焙煎加工、販売、品質保証までを一貫して手がけます。業務用で取り扱う商品は約6万SKU。今回登壇したUCCコーヒープロフェッショナルは、その業務用サービスを担う事業会社です。
同社のSalesforce活用は、2018年1月に始まりました。テスト支店に、わずか10ライセンス。そこから段階的に広げていきます。ただし、その道のりは平坦ではありませんでした。過去2回、定着に至らず、拡大を断念しています。
つまずいた理由は、技術ではありませんでした。「営業と経営が逆を向いていた」のです。
現場からは「入力する時間があったら客先に行く」「エクセルで十分、自分たちはちゃんと管理できている」という声。経営からは「営業の動きが見えない」「属人化が進んで、誰かが辞めたら終わり」「データがないから次の手が打てない」。
UCCコーヒープロフェッショナルの小泉世連・販売企画本部デジタル推進チーム マネージャーは、この「営業と経営の「構造のすれ違い」こそが、2度の失敗の真因だった」と振り返ります。

UCCコーヒープロフェッショナル株式会社
販売企画本部デジタル推進チーム マネージャー
その学びの上に立つのが、2025年4月に踏み出した「Step7」、Agentforceの導入(10ライセンス)でした。総括は「SFA展開におけるトップマネジメントの関与は必須」。
乗り越えられた理由は、2つあります。
1つは、トップの徹底関与です。経営陣が率先して部下のコメントに返信し、活動数を数値目標に掲げ、定例の会議で進捗を確認しました。「『使わなくてもお咎めなし』では絶対に定着しない。上が本気を見せることが、すべての起点だった」と小泉氏は言います。
もう1つは、現場が楽になること。「入力してください」だけでは反発を招く。日常業務が実際に楽になる機能を乗せ、「使うと自分も助かる」という体験を積み重ねていきました。

「働き方改革」から「勝ち方改革」へ
約10万口座の顧客を、約500人の営業とAIで支える。効率的な営業手法が求められる中、UCCコーヒープロフェッショナルは顧客を3層に区分け。営業が直接対応する最優先の「Tier1(顧客数の35%で売上の75%)」、マーケティングとインサイドセールスが支える「Tier2」、ECで完結しAIが自動対応する「Tier3」としています。
限られた人員を大口に集中させれば、小規模な顧客へのフォローは手薄になり、売上を取りこぼす。この構造的な課題が出発点でした。
営業の役割について、UCCコーヒープロフェッショナルの社長からは明確な方針が示されています。「これからの営業に求めるのは、お客様が提案を聞いてくれる場をセッティングすること。関係構築が人の役割で、提案やヒアリングはAIになる」。人がやるべきことと、AIに委ねることを、経営が線引きしたのです。
それを受けて、UCCグループのIT子会社であるユーコット・インフォテクノのビジネスデザイン&ソリューション本部、木村 智貴・ビジネスデザイン部係長が掲げたのが「勝ち方改革」です。

株式会社ユーコット・インフォテクノ
ビジネスデザイン&ソリューション本部
ビジネスデザイン部係長
業務を効率化する「働き方改革」ではなく、成約率そのものを上げる改革で、まずインサイドセールスで効果を検証しました(Step1)。試したのは、あえて営業未経験のメンバー。商材知識も薄い布陣で、AIの支援で提案から受注まで到達できるかを試したのです。
提案到達後の受注率は7%。BtoBのインサイドセールスでは商談化率が一般的に5〜10%とされ、受注率はさらに低いことに照らせば「決して低くない」と同社は受け止めます。
ただし、「提案まで到達する率にはまだ課題が残る」とも正直に添えました。基幹の購買履歴を「Data 360」に連携し、注文が減っている顧客をインサイドセールスが見つけて提案する。そんな流れも動き始めました。
検証を経て、経営はフィールド営業への展開(Step 2)に踏み切ります。判断の軸は明快でした。「トップ営業を増やすより、平均点を底上げしたほうが経営インパクトが大きい」。目指したのは「誰もが70〜80点の提案をできる状態」です。
そのためにUCCが築いたのは、営業の隣りに並ぶ「相棒」のようなAI群。ボタンひとつで使える得意先サマリや訪問アジェンダ、自然言語で相談できるコーヒーの専門AI、活動を自動で記録しレビューするAI。「全商談にコーヒーマイスターAIが同席してくれる未来」。それが、プロジェクトの掲げるテーマです。
ウェビナーのデモでは、ある飲食店の得意先に対しAIがその場で提案文と訪問アジェンダを生成してみせました。担当者がすることは、自然言語で指示するだけ。裏側で最適なAIが動きます。
AIがその場で提案文を書き上げるその瞬間。この画面操作のテンポは、テキストでは再現できません。AIがリアルタイムに支援してくれる様子は、アーカイブ映像でご確認ください。
UCCに学ぶ
AIで強い営業組織を作る術
7年の試行錯誤、包み隠さず開示された数字、そして「勝ち方改革」の全貌。記事で触れたAIが提案文を書き上げる瞬間の操作や、登壇者4人の語りと熱量は、45分の本編でこそ伝わります。視聴は無料。気になったところから、いつでもご覧いただけます。
利用率71%、だが毎日使うのは15%
UCCの事例が誠実なのは、きれいな成功譚で終えていない点です。導入現場の数字を、そのまま開示しています。
利用率は71%(66人中47人)。一方で「満足」以上と答えたのは43%にとどまり、過半は「どちらともいえない」。毎日使う「本当の定着層」は15%(7人)でした。数回で止まった人も23%います。しかも、活用は役割で二極化していました。支店責任者は利用率80%、毎日の利用率は33%。営業社員の利用率70%、毎日利用は9%。

なぜ差がつくのか。UCCがたどり着いた答えは、通説を裏返すものでした。
「営業がAIを使いこなせない」のではない。「営業が必要とするデータが、まだAIに入っていない」のだと。支店責任者は「滞留商談を抽出する」といった毎日発生する定型の問いを持つから使い続ける。営業社員が本当に欲しいのは商品情報や在庫、納品実績です。そうしたデータがまだAIに供給されていないだけでした。
ここから、ひとつの学びが立ち上がります。プロンプトを一から考える機能は使い手のスキルに左右され、定着しにくい。訪問前の要約は好評でも精度に個人差が出る。それに対して、活動を作れば必ず起動する自動レビューは、業務プロセスそのものに入り込むから定着する。業務に埋め込まれたAIほど、現場に根づくのです。
支店責任者と営業社員で、なぜこれほど差が開いたのか。登壇者が数字の裏側を語る場面は、本編でじっくりご覧ください。
UCCに学ぶ
AIで強い営業組織を作る術
7年の試行錯誤、包み隠さず開示された数字、そして「勝ち方改革」の全貌。記事で触れたAIが提案文を書き上げる瞬間の操作や、登壇者4人の語りと熱量は、45分の本編でこそ伝わります。視聴は無料。気になったところから、いつでもご覧いただけます。
無駄な開発をなくす「3つの問い」
現場から挙がった課題は19件。UCCはこれを3つの問いで順番にふるいにかけました。
Q1:「仕組みを変えず、伝え方・使い方で解けるか」。解けるなら運用でカバーし、開発はしません(5件)。
Q2:「Salesforceの標準機能が提供される見込みがあるか」。あるなら作らず、標準提供を待ちます(6件)。
Q3:「自社固有のデータや業務ロジックが要るか」。要るものだけを、自社で開発する(8件)。
「運用で解ける課題を開発に回すのが、最大の無駄」。この判断基準は、AI投資の優先順位に悩むどの企業にも効くはずです。
UCCが見据える先は、散在する個別ボタン型のAIを、自然言語で話しかけるだけの統合ハブへまとめることです。ユーザーは話しかけるだけ、裏で最適なサブエージェントが動く。「個別のタスク自動化から、営業戦略全体のナビゲーションシステムへの昇格」を目指しています。この構想は、Agentforce Coworkerが描く方向と重なります。
AIを「真の相棒」に育てる3つのメッセージ
小泉氏は、これからAI実装に取り組む企業へ、3つのメッセージを残しました。

1つ目は、目的の再定義。業務効率化の「働き方改革」から、成約率を上げる「勝ち方改革」へ。経営陣が自らコミットし、トップ営業の知恵を全員に授ける、売上に直結した「営業戦略ナビゲーションシステム」と位置づけること。
2つ目は、運用の覚悟。全員に配って終わりにはしない。熱量のあるメンバーを「完全挙手制」で選び、「2週間使わなければライセンスは即時剥奪」という厳格なルールで稼働率を保つ。もっとも小泉氏は、稼働率100%はあくまで掲げた基準であり、現時点では未達だとも率直に認めています。
3つ目は、現場との向き合い方。最初から完璧なAIを求めず、各拠点に1人ずつ置いた現場の「デジタルキャプテン」を中心に、隔週・週次で課題を拾い、トピック修正やデータ連携の改善を泥臭く繰り返す。この「共に育てるループ」こそが、AIを”真の相棒”に進化させる、と小泉氏は語ります。
UCCが今向かう先は、セールスフォース・ジャパンの製品統括事業本部 プロダクトマネジメント&プロダクトマーケティング本部でプロダクトマーケティングマネージャーを務める楊莉佳が示したAgentforce Coworkerの進化と地続きです。

株式会社セールスフォース・ジャパン
製品統括事業本部 プロダクトマネジメント&
プロダクトマーケティング本部
プロダクトマーケティングマネージャー
Agentforce Coworkerは、企業データを「信頼できる業務アクション」に変えるAIエージェント。「このアカウントが解約リスクに瀕している理由は」「四半期レビューの下書きを作って、プランを更新して」など誰でも、自然言語で質問し、その回答を得られます。
楊が残した一言は、UCCの7年と重なります。「AIの価値は機能の数ではなく、現場の業務に入り込み、次のアクションを変えられるかで決まる」。UCCが7年かけて得た学びと、その先に広がる景色。両方を45分で受け取れるのが、今回のアーカイブです。ぜひご覧ください。
UCCに学ぶ
AIで強い営業組織を作る術
7年の試行錯誤、包み隠さず開示された数字、そして「勝ち方改革」の全貌。記事で触れたAIが提案文を書き上げる瞬間の操作や、登壇者4人の語りと熱量は、45分の本編でこそ伝わります。視聴は無料。気になったところから、いつでもご覧いただけます。







