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【セールス×AIエージェント】営業チームにAIを5人「雇う」ソリューションを描いて気づいたこと

AIを活用できる人とそうでない人の格差をどう埋めるか。Salesforceでソリューションエンジニアを務める熊倉桃花が日々の業務で得た気づきやヒントをスケッチ、紹介する連載。第1回は、「営業チームに5人のAIを“雇って”気づいたハーネスの重要性」です。

Key Takeaways

This summary was created with AI and reviewed by an editor.

熊倉桃花
株式会社セールスフォース・ジャパン
ソリューション統括本部 アカウントソリューションエンジニア

2023年にセールスフォース・ジャパンへ新卒入社。首都圏の中堅・中小企業を担当するプリセールスとして、お客様に寄り添った課題解決を提案。Agentforceをはじめとする最新テクノロジーを日本のお客様へ届け、AIやデータを活用した働き方の実現と、ビジネスの飛躍的な成長を技術的側面から支援する。

「AIを使いこなせる人と、そうでない人の差が生まれてしまっている」。お客様から何度も聞いたこの声が今回、一つのソリューションを制作したきっかけでした。

Salesforceでソリューションエンジニアとして顧客課題の技術検証を担う熊倉が、AIを「使う」から「雇う」へ発想を切り替え、営業チームにAIの同僚を5人迎えるソリューションを設計しました。

組み上げる過程で見えたのは、AIの実力を決めるのはモデルの賢さではなく「ハーネス」、つまり働く環境の設計だということでした。その気づきとそこから得た発見を紹介します。

お客様の声から始まった問い。「AIの格差」にどう応えるか

こんにちは。Salesforceのソリューション統括本部でソリューションエンジニアをしている熊倉です。お客様の業務課題をテクノロジーで解決し、実際の成果につなげるご支援をしています。

「メールを書いて」「この文章を要約して」。生成AIにタスクを頼むことはすっかり身近になりました。一方で、最近お客様と話していると、繰り返し耳にする声があります。それは、「AIを使いこなせる人と、そうでない人の差が生まれてしまっている」。

そのほか、「何を聞けばいいのかわからない。プロンプトを考えること自体が新たな仕事になっている。一部の社員はAIで大きく生産性を高めている一方、組織全体には広がらず、会社の成果につながらない」。こんな声も聞いてきました。

ソリューションエンジニアとして多くのお客様の現場を見てきた中で、私はある問いにたどり着きました。

すべての社員に「AIへの上手な指示を出せる人」になってもらうことが、本当に唯一の答えなのか。選択肢は別にあるのではないかーー。それが、AIを「使う」から「雇う」へという今回の発想の転換です。

【デモ動画】名刺登録から日報まで。AIが支える営業の一日

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「使う」と「雇う」は何が違うか。発想を変えた理由

AIを「使う」とき、仕事を見つけるのは人です。「このメールを書いて」「この会議をまとめて」。人がタスクを切り出し、プロンプトで依頼する。AIが動くきっかけは、常に人からの指示です。

でも、人を雇うときは違います。一つひとつの作業を教えるのではなく、「このお客様との関係を深めてほしい」「この案件を前に進めてほしい」と、役割とゴールを共有する。あとは本人(AI)が判断しながら動く。

AIも同じように考えられないか。役割とゴールを決め、仕事に必要な情報と道具を渡す。実行していい範囲と、人に確認すべき場面を定める。結果を評価し、仕事の進め方を改善していく。

人が毎回プロンプトを打たなくても、AI側が仕事を理解したうえで、自ら動き始め、必要なアクションを起こす。私はこれが「AIを雇う」ということだと考えています。そしてソリューションエンジニアとして、この考え方を実際に形にしてみたいと思いました。

営業チームにAIを5人「雇って」みた。SEが設計したソリューションの全容

そんなことを考えている中、2026年6月にセールスフォース・ジャパンが開催した最大の年次イベント「Agentforce World Tour Tokyo 2026 Summer」で、営業という仕事を題材に、このアイデアをソリューションとして設計する機会をいただきました。

▶︎熊倉が登壇したAgentforce World Tour Tokyo 2026 Summerのセッションは、こちらからご覧いただけます。

もし営業チームにAIの同僚を5人迎えたら、何が変わるか。そんな問いから設計を始めました。ソリューションエンジニアとして意識したのは、単にAIの機能を並べることではありません。

営業という仕事の中で、どこにどんな役割のAIを置けば、チーム全体のパフォーマンスが上がるか。その設計思想を重視しました。設計したAIは、具体的に下記の5つです。

【1人目】24時間上質な接客を担う「コンシェルジュ型インサイドセールスAI」

Webサイトを訪れたお客様と会話し、興味や課題を理解。必要な情報を届け、詳しく話したい場合は、営業担当者とのミーティングを設定します。

【2人目】商談前のリサーチを極めた「敏腕アシスタントAI」

過去のやり取りや問い合わせ、商談情報、外部情報などを読み解き、「このお客様はいま、何を気にしているのか」を整理。営業担当者は情報収集からではなく、最初からお客様との対話に集中できます。

【3人目】商談を逃さず記憶する「専属レコーダーAI」

AIが商談内容を記録し、人は目の前のお客様との会話に100%集中。これまで消えてしまいがちだったお客様の生の声を残します。

【4人目】次の一手を示す「戦略コーチAI」

会話の事実をもとに3つの問いやMEDDPICC(メディピック)などの営業フレームワークを活用し、リスクや次のActionを明確化。単なる「入力代行」ではなく、商談を前に進めます。

【5人目】自ら気づき、声をかける「司令塔AI」

「このお客様へのフォローが止まっています」「この案件、次に進めませんか」。人から指示されるのを待つのではなく、自ら気づき、声をかける。

Webで得た文脈を商談準備へ、会議で得た顧客の声を戦略へ、戦略を次のアクションへ引き継ぐ。文脈が仕事の流れに沿ってつながることで、5人のAIが一つのチームとして機能します。

人は、お客様との信頼をつくること、言葉になっていない思いを受け止めること、難しい判断をすることに力を使えるようになります。

▶︎実際の5人のAIのデモはこちらからご覧になれます。

設計して見つけたこと。AIをエースにするのは「ハーネス」

このソリューションを組み上げながら、強く感じたことがあります。AIに「明日の商談を準備して」と頼むこと自体は、難しくありません。難しいのは、エース級の準備をしてもらうことです。

このお客様とは過去に何を話したのか。どんな問い合わせがあったのか。誰がキーパーソンなのか。この企業はいま何を目指しているのか。この案件はどの状態にあり、次に何をすれば前に進むのか。

トップパフォーマーは、単に商品知識が多いわけではありません。こうした細部にわたる情報を徹底的に収集し、その会社独自のビジネスコンテキストと、経験から身につけた仕事の型を持っています。

AIも同じです。どれだけ優れたモデルでも、その会社のお客様や会話、ナレッジ、業務プロセスを知らなければ、その会社らしい仕事はできません。

ソリューションを設計する中で気づいたのは、「エースとそうでない人の差は、参照できるコンテキストと、使える仕事の型の差なのかもしれない」ということでした。

しかし、コンテキストを渡すだけでは十分ではありません。AIを雇うには、役割とゴール、コンテキスト、権限、評価、監督という5つの設計が必要です。

  • 何の成果を担うのか。
  • どの情報を参照できるのか。
  • どのツールを使い、どこまで実行してよいのか。
  • どこで人の承認を得るのか。
  • 仕事の品質とビジネス成果をどう測るのか。
  • 失敗したとき、どのように止め、原因を確認し、改善するのか。

2026年2月、ソフトウェア・エンジニアであり起業家のMitchell Hashimoto(ミッチェル・ハシモト)氏は、AIエージェントが失敗するたびに、同じ失敗を繰り返さない仕組みを環境側へ組み込む実践を「ハーネスエンジニアリング」と呼びました。

現在では、モデルそのものだけでなく、モデルを取り囲む実行環境を設計する考え方として捉えられています。コンテキスト、ツール、権限、タスクの状態、観測、検証、人の介入などを一体として設計する発想です。

モデルがAIの「頭脳」だとすれば、ハーネスはそのAIが働くための職場、道具、ルール、研修、評価制度、マネジメントの仕組みだといえます。

もともとはソフトウェア開発エージェントの文脈で生まれた議論ですが、ソリューションエンジニアとして企業のAI活用を設計する立場からも、同じ発想が不可欠だと感じています。

Salesforceにあるのは、顧客マスタだけではありません。お客様との関係、過去のやり取り、会話、ナレッジ、業務プロセス、メタデータ、権限、ワークフローなどが盛り込まれています。

いわば、「その企業がどう仕事をしているか」という文脈そのものです。そこに、AIが実行できるアクション、人の承認フロー、公開前のテスト、公開後の観測と改善を組み合わせることで、AIがその会社らしく、安全に働くためのハーネスをつくることができます。

Agentforce」では、Testing Centerでトピック、アクション、応答を公開前に検証でき、Session TracingやObservabilityで公開後の振る舞いや成果を確認できます。人の承認を業務フローへ組み込むこともできます。

AI時代の競争力を左右するのは、モデルの賢さだけではありません。自社のコンテキストをAIが正しく理解し、適切な権限のもとで行動し、結果を評価されながら改善できる環境をどこまで設計できるか。そこが「便利なAI」と「仕事を任せられるAI」の分岐点です。

【ウェビナー】SFAの入力負担ゼロへ。AI活用の最新ユースケース

自動活動記録や商談準備、Slack連携によるチーム営業の効率化をデモで解説。営業活動の質と量を変える最新ユースケースが分かります。

すべての社員がエースになる未来。Dreamforceでの注目点

今回は営業を題材にしましたが、今回お伝えした内容は、営業だけの話ではありません。

例えば問い合わせ対応なら、AIがお客様の状況や過去の経緯を理解し、必要な情報を探し、解決に必要な業務を支える。人は複雑な判断や、お客様への寄り添いに集中できます。

バックオフィスなら、AIがメールや文書から必要な情報を読み取り、システムへ自動登録し、見積もりや申請の下書きを準備する。人は例外処理や承認、部門間の調整に集中する。

これまでトップパフォーマーが高いレベルで行ってきた仕事をAIが支えることで、人は、信頼をつくる、判断する、創造するといった、より人にしかできない仕事へ力を使えます。

AIを雇い、AIと一緒に働くことで、一人ひとりが自分にしかできない仕事でエースになる。そこにAI時代の働き方の大きな可能性があると考えています。

そして、AIの価値を測る視点も変わるはずです。「何件処理したか」「何分削減できたか」だけではなく、その先で人の仕事がどう変わり、どんなビジネス成果につながったのか。AIを雇う時代には、そんな成果まで見ていく必要があるのではないでしょうか。

2026年6月のAgentforce World Tour Tokyo 2026 Summerから3か月が経過しました。そこでセールスフォースが示したビジョンは、いくつも形となっています。

Piper(パイパー)」はSalesforce Japanの公式サイトで日本語による対話を始め、お客様の関心を理解し、次のアクションへつなげています。

2026年3月に買収を完了したMomentumは、ZoomやGoogle Meetなどの顧客との会話を捉え、AIエージェントのワークフローへつなげる方向を示しています。

Agentforce Coworker(エージェントフォース・コワーカー)」によって、AIエージェントはSlackやTeamsなど、人が普段仕事をしている場所でビジネスコンテキストを理解し、必要なアクションにつなげるチームメイトとして日本でも提供が始まっています。

2026年9月15-17日、Salesforceは世界最大級のAIエージェントプラットフォームの祭典「Dreamforce 2026」をカリフォルニアで開きます。毎年、このイベントでは数々の新たなテクノロジーやプロダクトが発表されますが、私が注目しているのは、それではありません。

AIは、どこまで深く私たちの仕事を理解できるのか。どんな役割やゴールを任せられるようになるのか。そして、どこまでビジネス成果を共につくれるようになるのか……。

Dreamforce 2026で、その未来がどこまで進むのかを確かめたいと思います。そして、この連載の場で、そのポイントを私なりの視点でご紹介したいと思います。

Dreamforce 2026はオンライン映像配信プラットフォーム「Salesforce+」でもリアル視聴、アーカイブ視聴できますのでぜひチェックしてみてください。

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