サーバーワークス


Salesforceによる商談管理で“取りこぼし”が激減、主力のAWS事業の売上が1年間で8倍に!
自社でシステム開発可能な従業員32名の急成長SIerが、それでもSalesforceを選んだ理由

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AWS関連のSI事業で
その名を知られる存在に

Salesforceのユーザは全世界で10万社以上。その中には、システムインテグレーターやアプリケーションベンダーといった、システムやソフトウェアの開発等を専門とする企業も数多く含まれている。そうした企業はなぜ、自社でSFAやCRMなどのシステムを構築・改修するのに十分な実力を有しながら、あえて他社製のクラウドサービスであるSalesforceを利用するのだろうか? 株式会社サーバーワークスの事例は、そんな疑問に対するひとつの答えを示すものだ。本稿では、同社がいかなる理由でSalesforceを導入し、どんな方法でどれほどの成果を上げているかを見ていくことにしよう。

東京都新宿区に本社を置く同社は、2000年、現・代表取締役の大石良氏によって設立されたシステムインテグレーターだ。創業からしばらくの間、携帯電話向けのECサイト作成ASPサービスなどを展開していた同社だが、08年に大きな転機を迎える。きっかけは、米Amazon社が提供するクラウドサービス Amazon Web Services(AWS)を社内サーバとして利用し始めたこと。当時、同社は、自社サーバの運営・維持にコストがかかりすぎることに頭を悩ませていたのだが、AWSの利用によって、その問題を一気に解消することに成功。クラウドにビジネスの大きな可能性を見出した同社は、09年、AWSに特化したインテグレーション事業への方針転換を決断し、AWS導入支援サービスの提供を開始する。

AWSソリューションプロバイダーとして米Amazon社から認定を受けた同社は、11年3月に発生した東日本大震災を契機として、一躍その名を世に知らしめることになる。AWSを駆使することによって、震災後のアクセス集中によりダウンした日本赤十字社のウェブサイトを復旧しただけでなく、わずか48時間で義援金を集める新システムをも構築したのだ。

この事例は、クラウドの有用性を示すものとして大きな反響を呼び、同社には大手企業からの問い合わせが殺到。11年時点で数十社程度だったクライアント数は、12年に50社、13年10月には150社とうなぎ上りに増えていった。

Salesforce導入にニ度失敗
システムの自社開発も頓挫……
Salesforceで再チャレンジ

そのような急成長を遂げた同社が、Salesforceを導入したのは08年。クラウドのインテグレーション事業にかじを切る前のことだ。「SFAを使ってみたい」という現場からの要請に応える形で導入したのだが、結論からいうと、この計画は失敗に終わってしまった。Salesforceの利用が社内で定着しなかったのだ。その原因について、大石氏はこう分析する。

「今にして思えば、現場主導の軽いノリで始めてしまって、そもそも経営者である私自身が、Salesforceというクラウドサービスの重要性を理解していませんでした。また、経営改善のために全社的に使っていくんだ、という強い意志にも欠けていました」(大石氏)

実は同社は、その3年後の11年にも、マネージャーからの要望を受け、再度、Salesforceの導入を試みている。しかし、またもやSalesforceの効果を実感できずに計画を断念。方針の転換を余儀なくされた大石氏は、社外の製品に頼るのをやめ、システムを自社開発するという道を選ぶ。

「社員の7割はエンジニアなのだから、弊社の用途に合うシステムを自作すればいいじゃないか、と思って作ってみたんです。ところが実際には、想像したようにはうまく機能しませんでした。自作すれば、自分たちの手にすごくフィットするものができそうな気がしますよね。でも、それは一種の錯覚なんです。現実には、エンジニアのリソースに余裕があれば開発が進むけれど、余裕がないとまったく進まない。つまり、サービスをアップデートするスピードが、自社のリソースによって制約を受けてしまうわけです。結局、現場からシステムの改善要求があっても、使い勝手はいつまで経ってもよくならず、現場のフラストレーションは溜まる一方でした」(大石氏)

普通なら、システムの導入自体を放棄しかねない状況に陥ってしまった同社。しかし、大石氏は諦めなかった。勤怠管理やプロジェクト工数管理を複数のシステムで行っていたため、データの入力に手間がかかり、しかもデータ同士を連携させて経営の改善に活かすことがまったくできない、という状態をこれ以上放置できなかったからだ。そして大石氏は、Salesforceの導入に三たびチャレンジする決意を固めたのだった。

経営者自らがメリットを理解して
失敗を糧にSalesforce定着化に成功!

これまでの失敗の経験から、経営者自身がSalesforceの利点を熟知しなければならないと悟った大石氏は、ウェブで関連情報を漁り、また自ら実際にSalesforceを操作して、基本的な使い方から活用方法、経営に与え得るインパクトまで、本格導入の前にさまざまなことを学んだ。

「自分で使ってみて、Salesforceには3つの大きなメリットがあるとようやく理解できました。第一に、ユーザインターフェースやデータをレポートに落とし込む仕組みなど、あらゆる部分が非常によく計算されて作られていること。第二に、セキュリティが極めて強固で、弊社の扱っているAWSのアカウント情報など、漏洩したら大変なことになるデータでも安心して入れられること。第三に、それらと同等の機能を持つシステムを自作するには、とてつもないリソースが必要だということです」(大石氏)

折しも同社の内部では、AWSのインテグレーション事業を手がけ始めたことによって、クラウドの重要性への理解が急速に深まりつつあった。それを踏まえて大石氏は、今度は自らの主導でSalesforceの全社展開を開始。会議をはじめ、ことあるごとにSalesforce導入の意義とメリットを訴え、ようやく社内の理解を得ることに成功する。

「Salesforceの定着化にもっとも貢献したのは、やはり目に見える形で効果が表れ始めたことですね。今では、全社員が日常的にSalesforceを使っていて、『Salesforceなしで仕事をするなんて考えられない』といっています。

費用対効果についても、3度目の導入時に試算した通りでした。従業員32名の弊社の場合、Salesforceの年間の利用料金は、だいたい1人のエンジニアの給与3カ月分に相当しますが、そのリソースを割いてこれだけの機能を実現できるかといえば、絶対にできないと断言できる。これと同じようなシステムを自作しようとしていたなんて、今考えると本当に馬鹿げた判断でしたね(笑)」(大石氏)

ニ度の失敗を経て、ついにSalesforceの定着化を成し遂げた同社。次ページでは、同社がSalesforceを具体的にどのように活用し、どんな成果を上げるに至ったかについて解説しよう。

プロジェクト管理によって
各エンジニアを定量的に評価

同社は、Salesforceの利用を再開すると同時に、チームスピリット(チームスピリット社製のグループウェア。Salesforceとの連携によって、勤怠管理やプロジェクト工数管理等を行う)を導入。約25名のエンジニアに、各プロジェクトに費やした時間などをチームスピリットに入力させることによって、プロジェクトの稼働状況や損益をSalesforceのレポート機能で確認できるようにした。

「Salesforceとチームスピリットの同時導入によって、各プロジェクトの採算や、エンジニアごとの売上がひと目でわかるようになり、各プロジェクトにどの程度のリソースを投入すべきかを的確に判断できるようになりました。そういうレベルにまで一気に高められたのは、率直にいって驚きでしたね」(大石氏)

そのように、通常は目に見えにくいエンジニアの売上が数字として明示されるようになったことは、思いがけない副次的な効果を生み出した。

「それまではエンジニアに対して、『あの人はいいエンジニアだよね』『あの人はもっとがんばれる』といった定性的な評価しかできなかったのが、売上という数字で定量的に評価できるようになったわけです。すると、実はエンジニアに対する定性的な社内評価というのは、売上の金額とほぼ一致していることがわかったんです。それによって、『もっと勉強して開発スピードを上げろ、といわれても、自分ではちゃんとやっているつもりなんだけど』と思っていた人が、『やっぱりできていなかったんだ。もっとがんばらなくちゃ』と発奮するようになりました。もちろん、数字を見てへこんでしまう人もいたと思いますけど、全体としては競争意識が高まって、開発の現場に活気が生まれたと感じています」(大石氏)

それは、営業の現場においても同様だ。Salesforceによって、商談数や売上など、営業活動に関するあらゆるデータが一目瞭然になったことで、営業マンたちの意識は目に見えて変化していったという。

「導入後、営業マンから、『どうやったら売上であの人に勝てるか、アドバイスをいただけますか?』という相談をよく受けるようになりました。自分の置かれているポジションやゴールに対するギャップがすべて見えるようになったことが、より上を目指そう、という意識や動きにつながっているのではないかと思います」(大石氏)

売上予測の正確性が劇的にアップ!
会社の成長を促す積極的な先行投資が可能に

マーケティング面においても、Salesforceは同社に数々のメリットをもたらした。マーケティンググループリーダーの佐野通子氏はいう。

「Salesforceに蓄積されたデータをもとに、キャンペーンで獲得したリードがどの程度受注や売上につながっているか、営業マンがどのように追客しているかなどを分析しています。以前は、マーケティング施策の有効性を分析しようにも、マーケティングのデータをリスト化し、さらに営業の動きと照らし合わせる、という作業を自分で行わなければならず、非常に時間と手間がかかっていました。Salesforceなら、そうした一連の作業を簡単な操作で一括して行えますし、データ分析の結果や、データをヴィジュアル表示できるダッシュボード機能などを使えば、営業と打ち合わせをするときにも話が早い。売上に直結するリードや、施策の有効性を数値として把握でき、マーケティング業務と営業業務をうまく連携させられるというのは、マーケティング担当者として本当にありがたいですね。営業部門からも、『取引先情報や商談情報を横断的に見られるようになって便利だ』といった声が上がっています」(佐野氏)

一方、経営側にとっても、Salesforce導入のメリットは大きい。大石氏は、Salesforceに入力された商談の数や確度、Web-to-リード(自社ウェブサイト経由のリードをデータとして自動的に取り込む機能)で収集したリード数などをダッシュボードで確認。そして、それらのデータを利用して売上予想を行っている。

「営業マンから見た商談の確度というのは、結構高い確率で当たるものなので、そうしたデータをSalesforceにきちんと入力していけば、統計的にかなり正確な売上予測が可能になります。しかも、商談の数が多くなればなるほど、正確性はいっそう高まる。経営者にとって、そのように3カ月先、6カ月先を読めるようになるというのは、極めて重要なことです。なぜなら、先行投資が非常にやりやすくなるからです。例えば、新たにマーケティングの専任者を雇うべきかどうかを決めるとき、売上予測が立っていれば、マーケティングにどの程度の予算を費やしてもちゃんとペイするか、という観点から判断を下せます。そのように、3カ月先をまともに予測できなかった頃と比べて、会社を成長させるための活動をより積極的に行えるようになったことが、Salesforceのメリットとして私が一番強く感じている点ですね」(大石氏)

取りこぼし激減で主力事業の売上が8倍に!
オールクラウドによる次世代のIT戦略を目指す

Salesforceが同社のビジネスに与えたインパクトの大きさを端的に表す数字がある。前述の通り、営業活動に関するすべてのデータを入力し、商談管理を行うようになったことで、いわゆる“商談の取りこぼし”が激減し、主力事業であるAWS関連の売上が、導入後1年でなんと8倍に膨れ上がったのだ。

「営業活動をしていると、『1カ月後にまたきてくれ』というようなお話が結構あるんですよ。ところが今までは、そのお話を営業マンが忘れてしまって、かなりの数の案件をロスしていたんです。そうした情報をSalesforceに入れておけば、期日が近づくとアラートで知らせてくれますし、上司が商談のステータスを確認して適切なタイミングで手を打つこともできて、案件化につながる。もちろん、売上が8倍になったのはすべてSalesforceのおかげ、というわけではないと思いますが、Salesforceがあったからこそ、市場の伸びに乗り遅れることなくお客様の数を増やすことができた、というのは間違いないと思います」(大石氏)

それまで隠れていた数々の経営データを可視化し、ビジネスのポテンシャルを最大に引き出したSalesforce。大石氏は、Salesforceを活用した次のビジネス展開についてこう語る。

「普通なら見えにくい情報を簡単な操作で可視化したり、重要な情報をSalesforceで安全に管理したり、といった弊社の使い方それ自体が、システムインテグレーションというビジネスにおいては非常にいい“売り物”になります。そのような、私たち自身が実践するベストプラクティスを販売することで、『企業のIT戦略は、SalesforceやAWSなどを組み合わせれば、実はオールクラウドでも成立するんだ』ということを実証していきたいですね」(大石氏)

システムを自社で構築できる高い開発能力を持ちつつも、それに固執しない柔軟性。ニ度の導入失敗にも挫けず、むしろその経験を糧とする粘り強さ。そうした点こそが、大石氏の、ひいては同社の最大の武器なのかもしれない。

株式会社サーバーワークス
  • 業種
  • IT・サービス
  • 業種詳細
  • クラウドコンピューティングを活用したシステム企画・開発及び運用
  • 活用用途
  • 営業支援・顧客管理
  • 導入製品
  • Sales Cloud ›
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株式会社サーバーワークス代表取締役の大石良氏。「Salesforceの機能面でもっとも優れていると感じるのはセキュリティですね。AWSのアカウント情報という非常に貴重な情報をどこに置くべきかと考えたとき、結局、Salesforceが一番安全だと判断しました。それも導入の決め手のひとつになりましたね」(大石氏)
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マーケティンググループリーダーの佐野通子氏。「マーケティングにおける現時点での最大の効果は、作業効率と分析の確度が上がったことがです。といっても、まだたくさんある便利な機能のうちの一部しか使いこなせていないので、マーケティング関係のトレーニングに参加するなどして、活用の幅を広げていきたいと思います」(佐野氏)